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41 小屋の夜

ああ、また今回もサミューさんが目立ってしまった……


それと前回のアラの台詞のうち、みんなの呼び方を少し変えました。


「さてと、アラの事も済んだし、他の事も話し合うか」


 俺の言葉に今度はサミューがびくりと震える、なんとなく何を気にしているのかは想像がつくけど、それに触れるつもりはないからスルーで。


「とりあえずは、『迷宮』から出るまでの作戦だな、アラの装備は成長したせいで、サイズが合わない、街に着き次第買い替えるつもりだが、それまではミーシアが付きっきりで守ってくれ。ハルの前衛にはサミューが付いてくれ、敵の撃退は俺がするが、出来るだけ戦闘は避けていく」


 俺の言葉に、抱き着いたままのアラが見上げてくる。


「アラも戦えるよ」


 確かに動くことは出来そうだけど、やっぱり無理に窮屈な服を着てちゃ動きにくいからな、アラに何かあると心配だし。


「じゃあアラ、試しに装備を着てみなさい」


「いいよー」


 アラが着替えている間に、アイテムボックスから細剣と幾つかの宝石を取り出す。


「それはなんですの」


「ああ『迷宮核』から出たアイテムだ、宝石類はなにも『付加効果』はないが、細剣はそれなりに威力がありそうだ」



出血の細剣 LV1

付加効果 回復阻害



 武器自体の威力もそれなりだけど、この効果は凶悪そうだよな。


(この剣で付けられた傷は、魔法や薬では治りにくくなる効果じゃな)


(治りにくいって事は、前にミーシアがやってくれたみたいに、何度も魔法をかけ続ければ何とかなるって事か、もしくはおれの『超再生』に近い能力なら多少は効果が有るのか)


 でもまあ、手の裂傷数本を直すのに、オオカミ四頭と百匹近い蝙蝠を食べながら一晩かけて回復してたんだから、戦闘中に回復させるのは無理か、あの時はミーシアの魔法だけじゃなくて俺の『超再生』も効いてたはずなんだし。


(『回復魔法』の重ね掛けはやらぬよりはまし程度かもしれぬが、効果はあるじゃろうな、武器のレベルが上がれば難しくなるやもしれぬが。それでも『超再生』ならば回復速度が多少遅くなる程度じゃろう)


 生物系の魔物や盗賊相手なら使える武器か、しかし俺の『切り裂きの短剣』もそうだけど、なんか対生物系に特化してきたな、もっと強いゴーレムとかが敵に出てきたら面倒かもな。


「ハルは、細剣が使えるか」


「あまり長いと上手く取回せませんわ、訓練しろとおっしゃるのならやぶさかではありませんけれど」


「いや無理をする必要はない」


 まだしばらくは、仕込杖の短剣でいいかな、サミューは力が付いてきたから、細剣である必要ないんだよな、となると……


「リャー、着替えたよ」


 物陰で着替えてきたアラがいきなり飛びついてくる。


 うーん、やっぱりパツパツだよな~、おへそが見えてるし、いやこれもかわいいんだけどね。やっぱり動きにくそうだよな~


「やっぱり駄目だな、着替えなさい」


 上着は俺のワイシャツでいいとしても、下は……


「サミュー、ハルのズボンを一本、裾上げできるか」


 確かサミューには『裁縫』のスキルが有ったよね。


「明日の朝までなら、間に合うと思います」


「それは良いですけれど、これからはどうなさるの、買い替えると言われましても」


 ん、ハルが予算の心配をしてるのか、金銭感覚が付いてきたのかな。


「それなら大丈夫だ、この宝石類は売る予定だし、『迷宮鎮静化』の報酬が伯爵領から出る予定だ。それに剣はこの細剣を使わせるつもりだから、防具と弓矢だけだしな」


 ここ最近は他にも結構儲けたから、余裕はあるんだよね。


「アラの装備を買っても少し余裕がある、みんなにも何か買うつもりだから、希望が有れば言ってくれ」


 サミューも前衛に出ることが増えるから防具をよくした方が良いだろうし、ミーシアの盾も買い直すかな。


「本当ですの、わたくし、欲しかった魔法石が八個ほど」


 おい、そこのお嬢様、限度を考えようね。


「一個にしろ」


「そんな、全然足りませんわ、使える魔法が増えたのですから、その分補助具の幅を広げませんと、これは譲れませんわ」


「だめだ」


 予算がね、足りなくなるから、非常用の予備費だっていくらかは取っておかなきゃダメなんだから。

 

「それでしたら六個にいたしますわ」


「金がない二個だ」


「なら五個ではどうですの」


 まあ、今回ハルは頑張ってくれたし、実際戦力に成ってるし。


「三個だ」


 うん、この位は妥協しないとね。


「分かりましたわ四個ですわね、ありがとうございます」


 おい、三個って言っただろ。


「なんですの、半分もだめですの」


 ああーもう、仕方ないか……


「あまり高い石は買うなよ」


「解っておりますわ」


 今回は負けたか、うーんハルの勝ち誇った顔が悔しいな。





 

 小さなろうそくの明かりを頼りに、チーズをナイフで切り分けて少しずつ口へ運ぶ。


 うーん濃厚な味、うまい、こっちのチーズは地域ごとに味が違うから新しい土地に行くのが楽しみなんだよな。問題は、食べると酒が欲しくなることだけど、まあそれは仕方ないか……


 うん、酒が無くてもうまい物はうまいし、チーズには水とパンの方が合う……はず……


 ホントなら『巡礼向け』のチーズだけじゃなくて、一般的なチーズも食べてみたいけど、あれは生臭になっちゃうからな。


「ご主人様、まだ眠られないのですか」


 奥から子供用のズボンを持ったサミューが近づいて来るけど、蝋燭明りしかない中でよく平気で歩けるな、足元怖くないのかな。


「サミュー、裁縫は終わったのか」


「はい、他にも少し手を加えたのできっとかわいいですよ」


 サミューもアラには甘いよな、まあサミューはみんなに甘い気がするけど、よくミーシアに自分の食べ物を分けたり、疲れてるハルの為だけにハーブティーを入れたりしてたし、なんかパーティーのお母さんみたいだな。


 いやこの思考は危険だな、サミューにバレたらなんて言い出すことか……


「終わったのならサミューも休め、ボス戦で疲れているだろ」


 小屋の奥では、年少組が纏まって寝ている。獣態になったミーシアにアラとハルが毛布に包まりながらしがみ付いている、ここの夜は冷えるからな、ああやった方が温かいんだろう、うんミーシアの毛皮はフカフカで気持ちいいもんな~


「ご主人様は休まれないのですか」


 俺の隣、少し離れたところに座ったか、サミューの事だから密着してくるかと警戒したんだけど、サミューも解ってくれたのかな。


「俺はそんなに疲れてないからな、いくら小屋の中といっても見張りは必要だろう、ここは冷えるサミューもミーシア達と一緒にいた方が良い」


 年少組はゴーレムに止めを刺すのに全力を使ってへとへとだろうし、サミューもここ数日は、あまり眠れてなかったように見えるからな。


 俺自身は『闘気術』を使えば、多少の寒さは我慢できるし、一晩や二晩徹夜しても体を誤魔化せる、なら俺が見張りにつくのが一番だろう。


「わたしは寒さに強いので大丈夫です、それにまだ眠くないですし」


 うーん、サミューも疲れてるように見えるんだけどなー


「それなら、少し練習してから寝るか」


 指から『雷炎の指輪』を外して差し出す、魔力制御の練習なら俺が一番出来るから何とかなるだろうし。


 サミューの人差し指にはめられた指輪から溢れる小さな炎が、不規則に揺らぐ。


「落ち着いて、火の形を見つめるんだ」


「昨日も思っていましたが、難しいですね」


『魔力視認』スキルで確認すれば、火の回りにサミューの魔力が集まってるんだけどな、もう一息、もう少しで出来そうなんだけどな。


「手伝おう」


 指輪をはめたサミューの指に絡めるように片手を合わせて魔力を込め、不規則だった火の揺れを止める。


「解るか、今俺の魔力が火を制御している」


「は、はい」


 今俺の魔力は、サミューのしなやかな指の中を通ってから、火に向かっていく、うーん魔力に触覚が有ったらやばかったかも。


「火の回りを漂っている俺の魔力を感じ取れるか」


「なんとなくですけれど、わかります」


 鞭剣士の『職業補正』と勇者の『成長補正』が有るから、感覚や魔力操作力も上がってるんだよな。


「少しずつ、俺の魔力を減らしていく、その分を自分で制御するのを意識してみろ」


「分かりました」


 俺が魔力を引いていくと、火の先端が小さく揺れ出す。


「落ち着いてゆっくり先端に意識を向けるんだ」


 徐々に揺れが無くなっていき、俺の魔力の通っていない先端部分の揺れも完全に無くなる。


「よし、もう少し魔力を減らしていこう」


 少しづつ俺も魔力を減らして、その分をサミューにさせる事を繰り返し、一時間程度で三分の一までをサミューの魔力だけで制御できるようになる。


「ここまでにしておこう、余り一度に魔力を使いすぎてもきついだろう」


 火を消させて、サミューの指から指輪を抜き取る。


「あの、ご主人様」


 ん、なんだろ。


「わたしに聞きたい事が有るのではないでしょうか」


 ああ、来たか、そのうちこういう話題が出るだろうと思ってたけど。


「あのクソガキの事か」


 俺が誰の事を言ったのか一瞬わからなかったようだけど、すぐにサミューはうなずく。


「はい、マイラス様の事です、先日のような事がまたあっては、ご主人様にご迷惑が」


 うーん、本当は言いたくないんだろうな、サミューの手が小刻みに震えてるし。


「ご主人様には話しておかないと、わたしは、わたしはあの方との間に、いえマイラス様だけではなく、他の方との間にも、それ以外にも多くの男性と……」


「サミュー、言いたく無いなら無理に言う必要はない、サミュー自身が話したいと思った時に話してくれればいい、話さなければならないなんて義務はない、言うのも言わないのもサミューの好きにすればいい」


 むかし何かで読んだよね、ただ話すだけでもカウンセリングの効果はあるらしいけど、それは無理やり話させるんじゃダメだったはずだし。


「ですがそれでは、ご主人様は……」


「サミューの作ってくれる料理はうまい、精進物しか取れない俺にも毎日違う味で飽きないように出してくれるし、他の皆もよく食べる、俺が肉を焼いた時とは大違いだ。お茶も美味しくてただの休憩時間が贅沢になる、毎朝サミューがやってくれる身嗜みのおかげで周りからもよく見られるし、顔を剃ってもらったり髪を梳いてもらうのは気持ちがいい、アラの事を安心して任せられるし、今回みたいに服の手直しも出来る」


 揺れる蝋燭の小さな明りの中でサミューの白い顔が不安そうに浮かび上がっているのをしっかりと見つめながら話を続ける。


「戦闘にしても、二種類の鞭で近距離と中距離で戦えるし、剣を使えるようになれば攻撃の威力もどんどん上がって来るだろう。それに他の皆に的確な指示を出して戦闘を有利に運べる、今日もミーシアとの連携でゴーレムを転倒させてただろ」


「それは……」


「戦闘では貴重な戦力で、それ以上に日常で無くては成らないほどいろいろなスキルが有る、その他に知っておく事が有るとは思えない」


「ご主人様」


 サミューの瞳が濡れだし、数滴の滴が零れ落ちる。


「もう一度言う、サミューが話したくなった時に話してくれ、それまで待ってるし、ずっと話したくないのならそれでもいい、もしあのクソガキを生かしておけないのなら、明日から『迷宮』を探して襲ってもいい」


 本当は、そんなの間違ってるかもしれないけど、それでも俺はうちの娘達の事が一番だから、敵になるのなら誰であっても……


「そんなことは必要ありません、ただ、ただどうかわたしを手放さないで下さい、何でもします、この身の全て、わたしのなにもかもをご主人様に捧げますので、どうか、どうか」


 数日前と同じように、縋り付く様な必死の表情で見つめてくるサミューの瞳を見返しながら答える。


「勘違いするな、あの日に奴隷商から貰い受けてからサミューの全ては俺のものだ、サミュー自身が望まない限り誰にも渡したりはしない」


「ありがとうございますご主人様」


 本当ならここで抱きしめたりした方が、絵になるんだろうけど、こんな暗い中でそんな事しちゃね、俺の理性が持たないかもしれないし……


「くす、そういえばマイラス様の事をクソガキだなんて、あの方は私より一つ上のはずなのでもう二十六ですよ」


 てことはサミューは二十五か、実際の年よりもすこし若く見えるかも、うん、どう見ても二十歳ちょっとくらいだよね。いやいや、そうじゃなかったクソガキって何か変かな、二十代半ばなんて俺からすればまだまだ半人前のガキだろ、うちの職場で二十六なら、大卒四年目でやっと仕事ができるようになってきた位だし。


(お主、自分の肉体がいくつなのか忘れておるのではあるまいな)


 あ、そういえば今の見た目は十八だったっけ、周りから見ればサミューより年下なんだよな俺。


「マイラス様でそうなら、わたしもまだまだ子供に見られてるって事ですね」


 座ってたサミューが前のめりになって来てる、これはまずいかも、みんな寝てるし。


「いや、そんな事はないぞ、年相応の色気が有るし、育つところは育ってるし」


(落ち着かぬか、それでは墓穴を掘っておるぞ)


 しまった、ここは否定的なセリフを言うべきだった、マズイ、サミューがその気になってきたっぽい、四つん這いで近付いてくる。


「うれしいです、ご主人様がそう思っていてくださっていたなんて」


 座ったまま後ずさる俺の上に被さる様にのしかかって……


「ご主人様、綺麗なお姉さんは嫌いですか」


 なんですか、その昔のCMみたいなセリフは。


「サ、サミュー」


 下から見上げる俺の顔にサミューの金髪がかかる、少し癖のある髪は艶やかで気持ち良いけどそれ以上に目の前の少し上気した顔と、そのすぐ下にある大きなふくらみが……


「どうしましたか、ご主人様」


「おやすみ『入眠』」


 きれいな青色の瞳が閉じられ、力の抜けた肢体が落ちてくるのを全身で受け止める。胸の上に温かいふくらみを感じるのは気にしない気にしない。


「疲れてるんだろうから、ゆっくり眠らせるか」


 サミューを抱き上げてミーシアの体に立てかける、それにしても。


「いくら疲れてるからって効きすぎだろ、無詠唱が一度で成功したぞ」


 いや効かなきゃ、それはそれで困ったんだけどさ。


(おそらく魔法に対しての抵抗が弱いのだろう)


(どういう事だ)


(あの小僧が言っておったじゃろう、少し薬を渡せばすぐに回復したと)


 ああ、そういえばそんなむかつく事を言ってたな。


(『魔法薬』といえども耐性が付くほどのダメージをそう簡単に回復させることは難しいじゃろ、『回復魔法』や『魔法薬』の効果を簡単に上げる方法は二つある、まずは『回復魔法』へ順応する事、もしくはすべての魔法に対して抵抗しない事じゃ)


(なんでそんな事になるんだ)


(拷問の時に使う手の一つでな、徹底的に痛めつけてから相手を回復させ、また痛めつける、そうすれば間違って殺してしまう可能性も減り、責めを止めて暫らく休ませ、自然回復を待たなくてはならないような傷でも、すぐに拷問を再開できる)


 下種な手だな、サミューはそんな目にあってたのか。


(そう言う状況下で生き延びる為に、『回復魔法』を出来るだけ受け入れるような体質になったのじゃろ)


 なるほどな、あれ、でもそれって不味くね。


(という事は『状態異常』の魔法にもかかりやすいって事か)


『睡眠』や『麻痺』なんかならともかく、『毒』や『石化』、『即死』なんてシャレにならないぞ、いくらボス並みに強くなってもバ〇シュ〇スとかチェ〇ソーでバラバラとか、リアルでそんな事になったらサミューの命が。


(当然じゃのう)


(どうにかならないのか)


(方法としては、先ほどみたいに軽い魔法を掛け続けて、慣らしていくしかなかろう)


 そうすればそのうち『魔法耐性』スキルとかできるのかな、あれ、そういえば。


(さっき言ってた、『魔法順応』みたいなスキルはサミューに無かったよな)


 うん、間違いなくなかったはずだ。


(おそらくはスキル化する手前くらいまで行っておるのじゃろう、あと一押しすれば新たなスキルになるじゃろ、もしかすれば他にも試してみれば色々なスキルを覚えるやもしれぬの)


 おい、それって。


(耐性スキルを覚えるようなことを試すって事じゃないだろうな)


(当然そうなるじゃろうな)


(ラクナ、叩き壊されたくなかったら、二度とふざけたことは言うな)


 この石っころは、何をほざいてるんだ。


(失言じゃったな、先ほどの意見は撤回しよう)


(それならいい)


 それにしてもサミューの過去か。


 気にならないと言えばウソになるけど……

すみません、仕事の関係で、来週いっぱい更新が難しそうです……

こんな状態ですが見捨てないでください~~~


H26年10月29日 誤字、句読点、三点リーダー、一部台詞修正しました。

H27年1月18日 出血の細剣の傷と『超再生』の関係を変更しました。

H27年2月16日 誤字修正しました。

H27年2月22日 チーズに関するリョー君のモノローグを一行追加しました。

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