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395 ブラック・バー〇・ダウン 3

今回は少し短めです。



「だがな、あそこがどういう状況なの二人も解っているだろう」


 普通に考えれば、俺達の被害も十分あり得るような場所なんだから。


「だからこそでございます。たとえ敵将が倒れ、この地を去ったとはいえあの場には強靭な防御陣地とそれを十分に運用出来得る兵員が残っております。いくらミーシア様の突撃力でも、それに対応できる場所へ正面から向かうなどと。わたくしであれば、旦那様の突撃に合わせて敵陣内部へ『隠密』スキルを使って潜入し、敵集団の内部から攪乱し旦那様方の行動を支援する事も、敵に気付かれずにアラ様方を探索する事も出来ましょう。無理さえせねば敵に見つかることなく行動できますので、ご心配はいりません。どうかわたくしにもお役目を頂けませぬでしょうか」


 確かにトーウならそれも出来るのか、いや考えてみれば彼女は『暗殺者』の職が有るんだから正面から戦うよりも、そっちの方が本職なのかも。トーウと連携した方が成功率は……


「ご主人様、私もお役に立てるかと」


 いや、サミューはメイドさんでしょ、トーウはともかくサミューは危険すぎるでしょ。


「敵に突入するにしても、近距離攻撃が主となる御主人様やミーシアちゃんだけだと、遠距離攻撃が出来るゴブリン・ソルジャーを相手にするのは無理があるのではないですか。指輪の『魔道具』も今までの突撃でかなり使ってますからMPの残りも僅かではありませんか、中距離攻撃が出来る鞭使いがいた方が、何かと便利じゃないかと思いますけど」


 そ、それはそうだけど、やっぱり危険すぎる。ん、なんだサミューの表情が変わった、怪しげな笑みを浮かべて、これは最近見ていなかった俺をからかう時のでもなんでこんな時にこんな顔。


「それに忘れましたか御主人様、わたしには『刺突耐性』のスキルが有るんですよ、ゴブリンの貧弱な槍程度の突き上げでは、同時にどれだけ突き立てられても何も感じませんよ、もちろんその応用である遠隔スキルもです」


 いやなんだ、言いたい事は解るんだけど、その言い方はちょっとさ、なにかね違う事を言っていそうでさ。


「もちろん、御主人様の御立派な物でしたら、ふふ」


 そう言いながら、サミューが俺の下半身を優しく艶めかしく撫でてくるけどさ、その手ってさっきマーシャルのを握り潰して引き千切った手ですよね。いやでも気持ちいいい、ってこんな時に何を考えてるんだよ俺は、はあ、情けないな。


「ふふ、少しは落ち着きましたか御主人様」


 もしかして、サミューは俺を落ち着かせようとしてたのか、まあ確かに似たような事は今までも有ったけど、なんでこんなタイミングで。


「え、あ、ああ」


「アラちゃんやハルさんが心配なのはわかりますし、わたし達の事をご心配くださっているのもうれしいですが、そのように焦られて自分だけで何とかなさろうとされては成る事も成りませんよ、普段の御主人様なら、わたし達の適性を考えて此方から申し出なくても、指示をしてくださるのに」


 それもそうか、確かにトーウやサミューの言う通り俺とミーシアだけではできない事も有る。それを考えずに、ただ心配というだけで二人を帰そうというのは救出の成功率を下げるだけか。


「そうだな、サミュー、トーウ一緒に来てくれ、出来るだけ早くアラ達と合流し全員で防衛線に戻るぞ」







「リョ、リョー様、も、もうすぐ、ゴブリンの、しゃ、射程に入ります」


 いつもの接近戦特化の鎧に着替えたミーシアの背中にサミューと一緒に乗りながら前方の塹壕陣地を見つめる。


「あそこにアラ達がいるはずだ、ある程度まで二人に近付ければ『範囲内探知』で正確な場所が分かるが、それまではミーシアの鼻が頼りだ、何とか二人の匂いを探してくれ」


「わ、わかりました、が、がんばります」


 俺達に気が付いたゴブリン達が隊列を組んで槍を構えだす。


「ご主人様、行きます」


 俺の後に乗ったサミューが鞭を振るって近くに転がっている瓦礫を絡めとり、ミーシアの正面に居るゴブリン達に投げ付ける。


「グギャ、ダイデヅダボデ、ガダベエ」


 サミューが続けざまの投擲で、十数体のゴブリンを倒したけど、その左右には無事な隊列がそれぞれ数十体分は残ってる。


 このまま突っ込めば、いやミーシアの防御力と俺の再生力を信じるしかない、サミューはこの体勢なら俺が盾になるはずだから大丈夫なはずだ。


「行くぞミーシアこのまま突破して塹壕陣地に突っ込むぞ」


「は、はい」


「ネダベエ、ウ、グボ」


 左右から俺達を狙っていたゴブリン・ソルジャーの隊列の片方、俺達から見て右側の集団が、急に紫がかった霧に包まれ、その中から数体がふらつき喉をかきむしるように姿を現し倒れていく。


「先行したトーウが『毒霧』を使ったのか、よし左側だけを警戒して突破するぞ」


「は、はい、このまま行きます」


 ミーシアがさらに加速して疾走する脇をゴブリンの遠隔スキルが通り抜け、そのままゴブリン達の隊列の手前に彫られた塹壕を跳び越え、左側の隊列の脇を走り抜ける。


「ご主人様、これは……」


「ああ、まるで迷路だな」


 最初の塹壕を跳び越えた先には、無数の塹壕が複雑に入り組むように掘られ、その所々からゴブリンが下半身を隠し胸元だけを出してこちらに槍を向けていたり、地面の上に整然と数十体が隊列を組んでこちらへ移動していたり、いやそれよりも。


「御主人様、地上部分は予想よりも柵が多いようですが、他にも土塁などの障害物が」


「き、騎兵や、魔獣用の、さ、逆茂木も、い、いっぱい、そ、それに……」


 ミーシアやサミューの言う通り、地上部分には障害物だらけだな、鉄条網代わりに使っていた荊も回収して再利用されてるし、虎バサミなんかの罠が有るって鑑定結果まで出てるし。


「これは、地上を進むのは難しいか」


「そうですね、それにこのままでは全周囲から狙い撃ちにされかねませんし」


 とは言え、塹壕は迷路みたいな感じになってるし、俺の『聖者の救世手』についてる『範囲内探知』じゃ、生き物や物体の位置を探せはするけど、地形なんかは解らないから、それこそゲームで言うならマッピングされてない真っ暗な画面に、敵味方の位置だけがポイントされてるような物だから。


 いや、それでも行くしかないか、このまま地上を進めば、罠や柵で動けなくなったところに集中射撃をされかねない、そうなればいくらミーシアでも。


 塹壕なら、狭い分一度に戦えるゴブリンの数は限られる、少数の俺達にとってはそっちの方がまだ安全か。


「よし、ミーシア、塹壕の中を進むぞ、ハル達の匂いは解るか」


「は、はい、だ、大体の方向は、わ、解りました」


 手早くミーシアが周囲にある塹壕の中で最も大きな溝へと跳びこみ、着地と同時に走り出す。この規模ならミーシアのサイズでもギリギリ引っかからずに走れるし、深さも十分あるから背中に乗ってる俺やサミューも少し前かがみになれば塹壕の中に隠れられるから、地上の集団から水平射撃される事は無いか。


 まあ、塹壕の縁に敵が来れば斜め上から狙われそうだけどさ。


「グギャ、ギャギャギャ」


 前方に数体のゴブリン・ソルジャーが横に並んでこちらに槍を向け、更にその後方には三十近いゴブリンの姿が……


「つ、突っ込み、ます」


 数発の遠隔スキルを鎧で受け止めたミーシアが、速度を落とす事なく突撃してゴブリン達を吹き飛ばし、体重を掛けた前足の爪で手近な数体を切り裂き踏みつぶしながら、突破する。


 よし、さっきの予想通りだ、やはり狭い塹壕の通路内に複数のゴブリンが展開すると、前の個体が邪魔で後ろのゴブリンはスキルを撃てなくなるし、前列と後列の入れ替わりも狭い場所だとしずらそうだ、これなら数が居ても実際に戦える敵は限られるし、ミーシアのパワーと重量なら縦隊陣形でも強引に蹴散らして突破できる。


「無事でいてくれよ、ハル、アラ」


R4年3月17日誤字修正しました。

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