表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
396/694

392 撃て、僕らのシロクマ号Mk-IIゥゥゥゥゥゥゥ



「い、いきます」


 巨大な白熊の姿で自信な下げに叫んだミーシアが四肢を動かすと同時に、俺とサミュー、トーウを乗せた馬車がゆっくりと走り出すし、徐々に速度を上げていく。


「無理はするなよミーシア、俺達の役割は牽制だし、単独行動なんだからな」


 ホントは、他の連中と一緒に行動した方が安全なんだけどなにせこの特注馬車のサイズがサイズだし、『獣態』を取ったミーシアのステータスは、馬車馬とはかけ離れてるから、一緒に行動するとお互いに邪魔になりかねないんだよね。


 しかしまあ、幾らあの巨体でステータスが上がってるとは言え、これだけの重量をよくもまあ一人で動かせる物だよな。


 車のサイズの感じとしては高さを半分にして平べったくなった大型ダンプを二台連結したような感じだけど、強度を上げるために、かなり頑丈で重量のある木材を使ってるらしいし、ところどころを金属で補強してるし、何より乗員保護の為に乗車スペースなんかは幌じゃなくて箱それも、弓やスキルにも耐えれるように金属板を貼り付けた分厚い木材だし……


「これだけでも相当な重量だっていうのにな」

 

 乗車スペースの屋根や側面、荷台にはこれでもかってぐらいに床子弩と小型のクロスボウが積まれてるし、その弾用の矢に槍なんかも積んでるからな。


 更には弓の弦を曳いたり、弾倉からの矢の装填までが絡繰りでほぼ自動で出来るんだけど、それの動力源が車輪に繋げられた歯車だってんだから、全部ミーシアの体力次第なんだよな。


 まあ、走ってさえいれば一定間隔で発射準備がされて前方に一斉斉射されるから、中に入ってる俺達の作業は状況に合わせて絡繰りの作動を抑える歯止めを外したり、残り少なくなった弾倉を補充したりするだけだから楽ちんなんだけど。


 ミーシアの負担を考えるとさ、ちょっと俺が楽してるのが申し訳なくてさ。


 しかも引き棒と一体化しているミーシア用の鎧も、ゴブリン達が遠距離スキルで反撃してくるのを見越して、普段のよりもガチガチの鎧で全身を覆ってるし、その鎧自体も所々に攻撃魔法を飛ばす『魔道具』が仕込まれてるから、俺だとその鎧のパーツを持っただけでも『軽速』なしじゃ身動きが取れなくなりそうなんだよな。


「ミーシアちゃん、本当に大丈夫ですか」


「申し訳ございません、ただ乗っているだけしかできず、心苦しく思うのですが……」


「だ、大丈夫です、こ、この位重い方が、あ、安心できますし、そ、それに、朝ごはんたくさん貰いましたから、い、いっぱい走れます」


 なんだろうな、何時もの可愛いミーシアのセリフだけど、全身金属の塊で思いっきり走ってるから、なんかメカメカしくて、まだ普段のフワフワモフモフの方がさ威圧感が少ないんだよな、まああくまでも少ないだけで、全くない訳じゃないんだけどね、何しろ普段の姿からして猛獣さんだから。


「よし、ミーシア次はあの場所へ向かってくれ」


 弾倉の交換と絡繰りの歯止めを外して、突撃する場所を指示する。


「は、はい、い、行きます」


 さっきから狙った敵の集団へ、やや斜め気味に突撃しながら、馬車の前方へ一斉射撃を数回して、敵の少し手前で弧を描くように方向転換、距離を取って次の準備をしてからまた別な集団に突撃ってのを繰り返してるけど何とかなる物だな。


 敵、味方の状況は、上空を飛んで俺らの動きに合わせて爆撃をしてくれてるハルとアラが、『術送の指輪』を使ってある程度教えてくれるから、比較的安全でゴブリン軍団の動きを上手くけん制できる場所を選べてるからさ。


 まあ、俺はタダの元サラリーマンだから戦術とか戦略の事はチンプンカンプンなんで、元々武家の娘でそう言った教育も受けてるらしいハルやトーウにアドバイスして貰ってるおかげなんだけど。


「旦那様、まもなく敵集団が射程に入ります」


 鉄板で囲まれた馬車の覗き窓に顔を寄せて距離を測っていたトーウの叫びとほぼ同時に、ハルの背中に乗っているアラからも同じ内容の信号が飛ばされてくる。


「よし、サミュー、歯止めを外すぞ、斉射は間隔を空けて三回に分けてくれ、ただし高威力の弩は使わず矢を十分に残しておいてくれ」


「解りました、歯止めを外して絡繰りを作動させるのに間隔を取ります」


 俺の指示に合わせてサミューが、弩に連動した歯車を止めていた歯止めをタイミングを計りながら外していく。


「旦那様、敵の前衛がこちらに隊列を向けて槍を構えました、スキルがまいります」


「ミーシア、耐えれるか」


 今回仕掛ける敵集団は、今日攻撃してきた中では一番数の多い集団だから、いざと成ったら途中で反転して逃げる事も考えておかないと、馬車はすぐに方向転換できる訳じゃないから早めに判断しないとな。


「あ、あのくらいでしたら、だ、大丈夫です、こ、この鎧、なら」


 ミーシアの返事と同時に馬車の前面に張られた金属板から震動と共に無数の鈍い音が車内に響く。


「ご主人様、弓が引き終わります、一斉斉射がまもなく始まります」


「サミュー、斉射の三連続間隔は大丈夫だな、ミーシアは斉射後に合わせて鎧の『魔道具』のうち威力が低いものを発動させてくれ、俺もそれに合わせて指輪を使う。これを三回繰り返した後で方向転換し離脱する」


 この速度で絡繰りが弓を曳き終えて発射するまでの時間を考えれば、一定間隔を空けての三連射に魔法の斉射を挟めばほぼ間を空けずに撃ち続けて相手の防御スキルの使い潰させる事が出来るし、相手が防げなくなれば、それ以降はダメージを与え続けて行動を抑えこむ事が出来るから、これで敵部隊の連携に多少なりとも差を出させて、味方が対応しやすく出来るらしいから。


「トーウ、今俺達は風上から仕掛けてる。方向転換した直後に、毒霧を撒いて風に乗せてくれ」


 俺の声にかぶさるように、車の外から風切音が響いていく。


「よし、俺も顔を出す、サミューとトーウはそのままでいてくれ」


 俺だけなら出した顔にゴブリンのスキルが直撃しても大丈夫だけど、サミュー達はね。


「ご主人様お気を付けて」


 サミューの声を聴きながら天井のハッチを空けて顔を出すと同時に顔の横をゴブリンのスキルが通り過ぎる。


 怖え、当たっても回復するって言っても、流石にこれはさ、今まで受けてきたゴブリンの一斉斉射なのかで一番弾幕が濃密なんじゃ、ミーシアよく耐えれてたな。


「グルガゲイェ」


「ガダラダバ」


「ま、まだ、だ、大丈夫です、い、いきまーす」


 濃密な弾幕に撃ち返すように矢が飛んでいき、それに合わせるように俺とミーシアも『魔道具』を発動させる。


「ジールドアアア」


 やっぱり、交代交代で防御スキルを使ってくるか。


「だがそれも織り込み済みだ、こっちも時間差で仕掛ければ、そっちのスキルが先に尽きる」


 今までの戦闘経験でも解ってるからな。


 それに……


「グギャ、ガラガ」


 よし、向こうの防御スキルが切れた。


「サミュー、残しておいた弩も作動させてくれ、反転までの時間で削れるだけ削るぞ」


 今使ってるこの馬車もミーシアの装備も遠距離特化だから、接近し過ぎると危ないからな。


 そのせいで敵と近接戦闘にならない距離を見計らって、ルートを決めておかないといけないのが、大変だけどね。普段の戦車ならただ突っ込むだけでいいけど、流石にアレだけ密集隊形取ってる所に突っ込めば速度が落ちるだろうし、敵陣のど真ん中で足が止まろうものなら、この間のプテック達みたいになりかねないからな。


「まあ、かなりの数を削れるのは間違いないけどな、何せ……」


「さあ、参りますわよアラ」


「うん、いっくよー」


 俺達の乗る馬車からの飛ぶ矢の数が一気に増えるのとほぼ同時に、上空高くを旋回していたハルが一気に高度を下げてアラが弓を構える。


「機動力やロングレンジ戦法ってのも有効だけど、制空権を抑えて相手の頭上を取るっていうのも重要だよな」


「い、一気に行きます」


 ミーシアの鎧の各所が光り、それぞれの部位から炎や雷撃が大量に打ち出される。


「グギャ、ヒギャ、ヒガヤ」


 火球の直撃を受けたゴブリンが、火だるまになりながら転げまわるのにあわせ、他のゴブリンが土を掛けて火を消そうとするが、そこへ雷撃が走り数体を打ち倒していく。


「アラ、魔法は上から下であろうと、その魔法の限界距離を越えますと消失してしまいますわ。高度が十分下がるまでは、長距離専用の魔法を使うか、真下への攻撃なら落下速度で威力を高められる弓になさい」


「わーったハリュ、よーし、『制圧射撃』『連射』」


「グギャ」「へべエ」「ハビヤ」


 上空から撃ち落とされる、矢の雨が十数体のゴブリンを数秒でズタズタにしていく。


「さあ、魔法の射程に入りましたわ、まあこの姿では使える魔法が限られてしまいあまり威力の高い攻撃が出来ないのが残念ですけれど、そうですわ、アラ『旋風』『乗風』を使って貰えないかしら」


「え、でも、それじゃ、攻撃できないよハリュ」


「構いませんわ、その分わたくしの新しい魔法でゴブリンを片付けて差し上げますわ」


「わーった、それじゃあいくよ『旋風』『乗風』」


 なんだ、アラのあの魔法は、あんな高い所で『旋風』を使っても殆どゴブリンを吹き飛ばせないだろ、っておい。


「ハルが変身を解いた、あんな高い所で何をやってるんだ」


 両手足と翼を大きく開いて風を受けるようにしてるけど、そうか体重の軽い鳥人族ならあの姿勢を取れば空気抵抗で落下速度を落とせるのか、そう言えばハルは翼の羽ばたきで多少なら移動できるんだし、飛ぶのは無理でも短時間の滞空位ならできるのか。それに『旋風』の魔法のおかげで上場気流が出来てるようだし。


「でも何のために、いやあの姿なら強力な魔法も使えるからか」


「ふふ、やっとこの魔法を試せますわ。さあ耐えられる物でしたら耐えてごらんなさい『溶岩波』」


 ハルが手を振りながら魔法を発動させると、まるでバケツを振って水を掛けたみたいにドロドロに溶けた溶岩が放射状に放たれる。あれは『溶岩波』か、ハルが普段使う『溶岩密封』みたいに細かいコントロールや相手を押し包むような事は出来ないけど、地面とは関係なく発動させられる利点があるからな。だけどあの高さからあの魔法か……


「エグイ事になりそうだな」


「ガルデダ」「ポンペエエエ」


 上空からまき散らされ広がって行く高熱の溶岩を、頭上からもろに浴びたゴブリン達が次々と潰され焼け落ちていく、そうだよな、元が石だもんな重量も十分あるはずだから衝撃も強いだろうし、液状だから盾や鎧で防ごうとしても縁や隙間から流れ込んでくるし、何より高熱だから掠っただけでも火傷は必至、直撃すればよほど強くない限り焼死間違いなしって感じの攻撃だからな。


 隊列のど真ん中に溶岩の池が出来て陣形が崩れたゴブリン達に十分な矢を浴びせてから俺達の馬車が方向転換するのに合わせて、『鳥態』を取り直したハルが、『乗風』で空中に留まりながら弓を射ていたアラを回収して一気に高度を上げる。


「よし、トーウ毒霧だ、残ったゴブリンを仕留めるぞ」


「承知いたしました、旦那様」


 俺の指示通りにトーウが口から毒霧を大量に噴くと風に乗った毒が、ゴブリン達を覆い徐々に人影が倒れていくのが見える。


 うん、多少反撃が有るとはいえ遠距離からほぼ一方的に相手を蹴散らすっていうのは、楽だし安全だし良いもんだな。いつもこうだといいんだけど。


R4年3月17日 誤字修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ