39 ボス
お久しぶりです、お待たせしました……誰も待ってないかな……
ちなみに前回は只の顔出しなので奴らはしばらく出てこなかったり……
串に刺した肉に魔力操作で火を纏わりつかせる、強火で表面を一気に焼いて肉汁を閉じ込めてから、弱火にしてじっくりと焼いていく。
(ところでこの新しいスキルの名前は考えたのかの)
(もちろんだ、『念力』にしようと思っている)
どうだ。
(なんじゃその名前は、以前の勇者からその単語は聞いた事が有るが、もう少し威厳のある名前にはできんのか)
なんだよ、厨二ッぽい名前でも考えろっていうのか、四十近い中年オヤジにそれってなんて拷問ですか、それにこの能力の目標は本物の念力みたいに物体を動かしたり、敵を拘束できるようになることだからね。この名前は俺の努力目標を表してるんだ。
さて、肉もいい感じに焼けたし、切り込みを入れたパンに野菜と一緒に挟んでサンドイッチ完成。
スープもいい感じにできたし、まあ肉が入ってるせいで味見はできないんだけどね、これって料理失敗のフラグっぽいけど大丈夫なはず分量は体で覚えてるから。
さて次は俺の分か、沸かしたお湯にカミヤさんに貰った麺を一気に放り込んで、一茹でしてからザルに空けて、水と氷を魔法で作って一気に冷やす。
醤油ベースのツユに刻んだ唐辛子を少し入れてそうめんの完成、これだけだと栄養バランスが悪いからサラダとチーズも付けてと。
「できたぞ」
食事を皿に並べて声をかける。
「解りましたわ、それじゃあサミューここまでにしますわね」
「ハルさんありがとうございました、ご主人様、申し訳ありません」
「りゃー、ごはんー」
「い、いただきます」
サミュー達ではなくて俺が食事の用意をしているのは、他の皆にやらせておきたい事が有っただけで、決して俺の立ち位置が低くなったせいじゃない、はずだ。
ミーシアは壁に付けた的に向けてナイフ投擲の練習を、サミューは俺の貸した『雷炎の指輪』を使って魔法上達の為に魔力操作の仕方をハルに教わっている、アラはというとずっとサミューに抱かれている。
昼間の一件が有ってから、サミューはいつも以上にアラを気にしだして、事あるごとに抱き上げている。
ハルに言わせると、魔法の才能のあるアラが見本を見せたり手伝ったりできるからちょうどいいらしいけど。
でも食事中も抱っこってのはどうかと思うな、良いな俺もアラを抱っこしたい温かいんだよなあれ。
小さくちぎってあーんとかマジで羨ましいんだけど、ハムハム食べるアラがマジでくぁあわいい。
「アラちゃんおいしいですか」
「うん、さみゅ、ありあと」
「いいんですよ、アラちゃんはかわいいですから」
あ、またギュっとした、いいなー、こうしてみるとまるで親子みたいだな。
(もしかすると、ああすることで精神の均衡を保とうとしておるのかもしれんのう)
ああ、そうかもしれないな、しばらくはアラとサミューは一緒にした方が良いかもな。
そうめんを箸で摘み上げ少しツユにつけてから啜る、うんちょっと唐辛子を利かせたのがいいアクセントになってる、やっぱり暑いときはこういうのがいいね。
「音を立てて食べるなんて非常識ですわ」
「ご主人様、アラちゃんも見ているので、出来ればもう少し行儀よくしてほしいんですけど」
「りゃーおいしそ、アラも」
解ってないな、日本の麺は音を立てて啜るもんなんだぞ、それとアラまず箸を使えるように練習してからにしような。
さて、まだ日も落ちてないけど今日はこの小屋で一泊する予定だから、特にやらなきゃならない事もないんだよな。
魔物狩りは、ミーシアが食う分は十分あるし、山猫の毛皮はそんなに金にならない、それに他の冒険者に鉢合わせるのもなんとなくめんどくさいし、小屋の近辺で軽く狩る程度に済ませるか。
「ミーシア食事が終わったら、片づけを頼めるか、ハルは昨日教えた魔法の復習、サミューとアラは俺と一緒に剣の練習をしよう」
今日の戦闘を見てて思ったんだが、やっぱりハルやミーシアに比べてサミューは戦闘慣れしてないからな、と言うか守りがすごく甘い。
ハルは実家にいた頃にしっかり鍛えられたのか、意外と上手く短剣を使うし、自分の能力をしっかりと把握して無理な攻撃はせずに、堅実に戦っていたから相手の反撃にも的確に対応できてたし、悔しいけど様になってるんだよな~
ミーシアは元々前衛だったから、大抵の攻撃は盾や剣で防ぐし、懐に入られた時もとっさに体を捻ったりして鎧の厚い部分で受けてダメージを食らわないようにしている。
それに比べるとサミューは練兵所で少し鍛えられただけだから、攻撃は大分しっかりしているけど、守りに関してはほぼ身体スキルの耐性頼みになってるからさ、まあそもそも、ただの侍女だったサミューがあれだけ鞭を使えるってのが異常だったんだろうなー
つい、サミューも普通に戦えるものだと思い込んでたからな、今日の被ダメージ、サミューだけが圧倒的に高かったから、下手すればけっこう危なかったかも。
アラは、まあ子供だし、意外と回避が強いからサミューを優先でいいかな。
アイテムボックスから訓練用の木剣を三本取り出して、それぞれ構える。
「とりあえず俺の攻撃を防ぐのを優先して、攻めるのは二の次だ、行くぞ」
『軽速』と『闘気術』を使って一気に二人との距離を詰める。さて練習を始めるか。
「さてと、もうすぐボスだが、みんな用意は良いか」
『切り裂きの短剣』を抜いて振り返ると、それぞれが自分の武器を持って頷いてくれる。
「たった五人で、ボス攻略なんて非常識ですけれど、まあ何とかなりそうな気もしますわ」
「ボ、ボス退治に挑戦なんて、ゆ、夢みたいです頑張ります」
「すべて、ご主人様の指示通りに、アラちゃんがんばりましょうね」
「りゃー、がんばおー」
うん皆やる気は満々だな、よしよし、それじゃあ行くか。
(気を付けるのじゃぞ、ここは低級迷宮と言えども、『子鬼の穴』よりも強いボスがいるはずじゃ)
解ってる、ゴブリンキングだって手負いなのにあんなに苦労したんだから、最悪でもうちの子達は守らないと。
(言わずとも解っておると思うが、ゴブリンキングはたまたま人型だったからあのような手が使えただけで、運が良かっただけじゃ。あれがボスの平均では無いゆえ油断するでないぞ)
だから、解ってるって、しつこいな、あんまり言うと変なフラグが立ちそうだろうが。
さていくか、雑魚が山猫で、フロアボスが豹、となるとボスは虎とかライオンだろうなー
「行くぞ」
ストーンゴーレム LV28
技能スキル 格闘
戦闘スキル 殴り落とし 踏み付け 強震
身体スキル 硬質 剛腕
おい、いや確かに岩山だからさ、材料はたくさんあるんだろうけど、これはないだろ。
みんな生物系の敵のつもりで作戦を立てて来たんだぞ、ミーシアなんて『今日のお昼ご飯はボスのお肉だから朝ごはんは少なめ』とか言ってたのに、俺だって最初から『切り裂きの短剣』で来たんだぞ。
(呆けるではない、来るぞ)
地響きを立てながらゴーレムが突っ込んでくる、クッ、ここで逃げるのは無理か。
「俺が囮になるミーシアは出来る範囲で攻撃、ハルとアラは魔法攻撃、サミューはムチで援護しろ」
これで行けるといいな、俺の攻撃力じゃダメージは無いだろうし、それは多分サミューも同じかな、ミーシアの力ならもしかしてと思うけど、期待は二人の魔法だな、威力のある魔法を連発するのはきついだろうけど仕方ない。
「行きますわよ『火矢』」
先制攻撃の為にハルが放った火炎魔法は厚い岩石の表面を軽く焙っただけで霧散する。
「多少時間がかかってもいい、破壊力の強い魔法で表面を削って行け」
「解りましたわ」
「わーた」
ゴーレムの足元で飛び上がり、膝、腰、肩の順に足場にして眼前へゴブリンズソードを叩き込む。
(お主の攻撃では効かぬぞ)
んな事は、解ってるって、でもこうやって目の前をうろちょろすれば、俺に意識が向くだろうからさ。
ゴーレムは小虫を払うかのように眼前で両手を振るが、小石を足場にして空中機動を行い避け続ける。
「食らいなさい『落雷陣』」
「りゃー、いきゅよ『ふうしょう』」
二人の魔法が同時に発動して、アラの『風槍』がゴーレムの胸部装甲を少し削り、ハルの魔法で放たれた無数の雷がさらに全身の装甲を徐々に削っていくって、ちょっと待てーー
ゴーレムの頭を強く蹴って宙返りをしながら距離を取る、危なかったもうちょっと遅れたら俺も黒こげになるところだった、仲間が密着して戦ってるってのに範囲魔法を撃つか普通。
「何を睨んでいるのかしら、当たっても問題ないのでしょう」
あ、そういうこと言うんだ、幾らなんでも酷くないかそれは。
「それに非常識な貴方なら、このくらいの魔法は簡単に避けて連携できるのでしょう」
あれ、俺ひょっとして信頼されてる、それともただ単におだてられて誤魔化されてるのかな、いやいやここは良いほうに取らないとね。
とやばい、魔法を食らってゴーレムの狙いがハル達の方に、マズイ、ゴーレムの右足が高く上げられる、これは『踏み付け』をするつもりか。
「くううう」
ハル達の前に飛び込んだミーシアが盾を掲げて右足を防ぐ、おいおいすげーな。
(『鉄壁防御』スキルか、流石じゃのう)
いや確かにこないだの岩よりゴーレムの方が小っちゃいけどさ、スキル込みの攻撃だよ、それをあっさり防ぐって、しかも、押し返してるよ。
「があああ」
(ふむ『怪力』と併用したか、やるのう)
ミーシアが楯を振り抜くと押し負けたゴーレムが転倒する。凄い、凄いけど女の子が「があああ」とか叫んでるのはどうなんだろう。
「ぐおおお『強斬撃』」
だから女の子がそんな叫び声を上げないで、ひょっとして戦闘になると性格が変わるのかな。
(あまり効いておらぬようじゃの)
確かに、『強斬撃』だと軽い傷が付くだけだね、どうもミーシアは防御系に特化しだしてるのかな、ちょっと鍛え方に気を付けた方が良いかも。
でもこの感じだと下手な攻撃よりも転倒のダメージの方が大きいみたいだな、まあ重量ある分だけ衝撃がデカいんだろうな。
「作戦変更だ、直接攻撃より転倒させてダメージを稼ぐぞ」
(じゃが、そう簡単にできるかの)
手はある、指輪を使えば行けるはず、起き上がろうとしているゴーレムに数発切り掛かりながら、距離を取って誘導する。
転倒させるのなら、立ち上がってからの方がダメージデカいよな、それに歩いてる時の方が倒しやすいしね。
俺を追いかけてくるゴーレムの足に張り付き、膝関節の隙間に手を当てる。
(挟まれぬように注意するのじゃぞ)
そんなドジな事をするかよ、『風砂の指輪』を使って隙間に大きめの石を作り出す。
片足の関節を急に固定されて、バランスを崩したゴーレムが前のめりに倒れる。衝撃で石が砕けるが、まあまだ指輪のMPは有るし、氷でも代用できるから何とかなるかな、それに。
「ハル、アラ、タイミングを合わせて『岩石弾』と『風弾』の魔法を喉元に」
「えっと」
「こんな魔法で倒せますの」
俺の指示したのは破壊力よりも衝撃の強い魔法、そんなのを二足歩行の喉元に当てれば。
「やった」
「簡単に倒れましたわね」
バランス崩してこけるよね普通ならさ、どうせ作るなら四足以上にすればいいのに、二足歩行なんてコントロールの難易度を上げるだけだろう。まあこっちとしては都合良いけど、おっ立ち上がるのが早いな。
「倒すだけなら」
サミュー、一体何をするつもりだよそんな前に出てきて、危ないだろう。
「行きます『巻付け』」
え、ムチを足に絡めるって、そこからどうするつもりなんだよ。
「ミーシアちゃん」
「はい、うらあああ」
ああ、ミーシアが引っ張るのね。いや、ミーシアでも凄いって、ゴーレムが足を取られてこけたし。
よし、これならみんな攻撃ができるな、この調子ならなんとか倒せそうだね。
(しかし、もう少し勇者らしい戦い方と言うか、こう力と技のぶつかり合いを見たいと思うのじゃが)
うん、そういうのは素で強い人たちに頼んでくれ。
結局、昼頃にはゴーレムは粉々になっていた、最初のうちはこける度に手を付いてたから、負担がかかって真っ先に折れちゃったし、さらに俺の魔法で関節に負担がかかってるところに、サミューとミーシアが本来は曲がらない方向に引っ張ったりしたから足もポキンと折れちゃったし。
うん、受け身って大事なんだな。
手足を失ってダルマ状態になってからが逆に大変だったかな、反撃が無くなったとはいえ転倒ダメージが狙えなくなったから、実力で破壊しなきゃいけなかったから。
俺とサミューは無理なんで下がってたけど、変身したミーシアの『圧潰爪』と、ハル達の魔法でちまちまと砕き終わるのにかなり時間がかかったからなー
「さてと終ったか、怪我は無いか」
「あ、サ、サミューさん、怪我が、ち、治療します」
「ヒッ、嫌っ」
え、サミューがミーシアの腕を弾いた、急に顔色が悪く、てミーシアもか。
「ご、ごめんなさい、サミューさんに確認しないで勝手な事……」
「え、いえそうじゃないの、わたしは『自動回復』のスキルが有るから、必要ないのよ」
「そうだったんですか、余計なことして……」
「いえ、ミーシアちゃんがわたしを心配してくれてたのは解ってるから、うれしいわ」
うーん、ミーシアは周りの顔色を窺う所が有るからな、今のはショックだったかも、サミューもまだ顔色が悪そうだし。
「それよりも早く『迷宮核』の所へ、向かいませんこと」
お、まさかハルが話を変えようとした、気が利くねー、まあ偶然かもしれないけどさ。
「そうだな、いつ活性化するかわからないんだ、先に進むか」
ボス部屋の奥に入っていくとすぐに『迷宮核』が浮いていた、ここは泉じゃなくて石の台座なんだな、まあ大差はないか。
振り返ると、皆初めて見る光景のせいか黙ったまま立っている、まあちょっと幻想的なシーンだもんな。
「これが『迷宮核』ですか綺麗ですね」
「『迷宮踏破』パーティーしか入れない、この部屋にいるなんて、すごいです」
ミーシアやサミューも落ち着いたみたいだな。
「まあ、当然の結果ですわね」
ハルは平常運転か、いや羽がちょっとぴくついてる、ひょっとしてうれしいのを我慢しているのかな。
(無理もあるまい、『迷宮踏破』は冒険者にとっては名誉な事じゃからの)
そういうもんか、さてこれを『鎮静化』すれば『魔力回路』がちょっとマシになる、これでもう少し威力のある魔法が使えるようになるか、ついでにアイテムは何か手に入るかな。
「りゃー、アラもー」
え。
『迷宮核』に触れた俺の横には、同じように手を伸ばしているアラの姿が。
瞬間、全身に激痛が走る。
「ぐう」
それよりもアラだ、痛みが治まると同時にアラの居た場所へ視線を向ける。これだけの痛みをアラも受けていたら。
「アラ、え」
そこにいたのは見慣れない少女だった、肩の少し下まで伸びた癖のあるふわふわな金髪、とんでもなく整った容姿に、赤い瞳、そして褐色の肌、特徴はアラと全く同じだけど。
「リャー、どうしたの」
サイズの合わないピチピチの服を着て、ハキハキとした発音で問いかけてくる少女は、八歳か九歳くらいに見えた。
気が付けばユニークの総合が一万を超えてました、明日で丸二か月、この時点で一万が他の作品と比べて多いか少ないかはわかりませんが。
こんなに見て貰えていたと思うととっても嬉しいです。
H27年2月11日 誤字修正しました。




