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383 勇者《ミリオタ》の残したもの

本日二回目の更新になります。


「ゴブリン・ソルジャーみてえに、下手に知恵が回って組織化された群れじゃ、集中射撃の中央部分に盲目的に突っ込んでくるってこたあねえだろうが。『誘魔香』を使えば敵主力をこの辺りに集めて、主要な攻略目標をこの陣地にさせる事ぐらいはできるだろうよ、そうなりゃ後は、作戦次第で幾らでも料理できらあ、下手に分散されちゃそれを一つ一つ叩くってのは面倒だし取りこぼしもありえるからよ、集めときゃ一網打尽に出来る」


 一網打尽ね、せっかく分散してる敵を集めるってどうなんだろ。昔見たアニメとかだと、各個撃破が理想とかってイメージだったんだけどな。


「こっちにだって、『迷宮』包囲の全周を丸ごと改造する余裕はねえしよ、現状で結構な被害が出て今のままだと後一月もつかどうかって陣地も有るらしい。そういった所に敵が気付けば殺到されて突破されかねねえし。分散した敵集団の動向を全部把握するってのも難しいからよ、それなら、多少キツクてもよ一か所に集めておいた方が、作戦を立てるにも対応しやすいんだよ。敵を叩こうと戦力送ったら、こっちの知らねえ別動隊に側撃されて壊滅したなんてなりゃ目も当てられねえだろ」


 敵が一か所に固まってた方が監視しやすいって事か。


「『稜堡』を築くのが有効そうなのは解ったが、実際問題としてそれを造るのは難しくないか、敵集団を前にして工事なんて出来るものなのか、出来たとしてもどれだけ日数がかかるか」


 どう考えても、無茶な話だよね。


「そのための俺達魔法工兵隊にコンナの僧兵連中だろうがよ、簡単にいやあ、僧兵連中を中心とした戦力で戦線を防衛線から更に前に押し上げて、その後ろで『稜堡』を一つづつ作って行く。アンちゃんに依頼してえのはそれに関してだ」


 あ、来たぞ、この流れで考えれば、前線の押し上げに協力しろって事かな、となると今日みたいな感じでやるしかないのかな。


「めーなの、リャーが無理して痛いのは、めーなんだからね」


 俺に抱き付いたまま、黙って話を聞いていたアラがいきなり叫び出したけど、やっぱりアラも今日の俺の状態を考えちゃったのかな。


「ん、なんだいきなり、ん、ああ、そうか、それなら安心してくれや、そっちのアンちゃんがそこまで戦えねえって話は聞いてる。戦力である嬢ちゃん達には無理のねえ範囲で前に出て貰いてえがよ」


 あ、俺が戦力外っていうのは、もう確定事項なんだ。


アンちゃんは、数日であの防衛陣地を作ったっていう魔法士の嬢ちゃんと組んで、『稜堡』を構築する手伝いをして貰いてえ、うちの魔法工兵隊は、他の貴族の軍隊や騎士なんかじゃ冷遇されてた築城魔法や行軍魔法なんかの使い手なんかを何百年も前から集めて、何世代もかけて血を重ね技術を磨いて継承してきた選りすぐりだ。十何年も使うような砦ってんならともかく、数か月持てばいい野戦陣地の構築なら、安全さえ確保出来りゃあ数日も有れば出来るだろうよ。そこにアンちゃんも手伝ってくれるってんなら、あっていう間よ」


 まあ、ハルと二人でここの陣地を作ったペースを考えれば、安全さえ確保されていればそこまで大変な事じゃないのかな。


 いやいや、そうじゃないって。


「確かに、『安全なら』難しくないんだろうが、本当に安全なのか。前線を押し上げるって話だが、この図面を見る分だと工事しなければならない範囲まで押し上げれば、後衛の支援射撃の射的距離外になるんじゃないか、そんな状況で戦い続けられるのか」


 今日の戦闘でも感じたけど、後方からの支援射撃っていうのはかなり重要っぽいんだよね。


 突撃の時は、敵集団と接触する直前に一斉射撃をして、敵陣を崩して穴を空ければ、突撃が潰される恐れが減って、そのまま空いた穴を中心に突き崩していけば敵部隊を壊滅させられる可能性が出て来るし。


 敵の突撃に対してもその鼻っ面に集中射撃を浴びせれば、突っ込んでくる敵の勢いを落として迎撃しやすく出来る。


 戦闘中に回り込んでくる敵の別動隊だって、射撃で足止めしてくれれば、人員を割いて対応するための時間が取れる。


 小規模な部隊なら集中射撃だけで十分に数を削って後退に追い込むことだってできるからな。


 俺達が戦線を押し上げるためにした突撃だって、本陣からの援護射撃の射程内で戦ってた『百狼割り』達は、危なげなく戦い続けられてたけど、そこからさらに進んだミーシア達はゴブリン・ソルジャーに囲まれて危ないところがあったからな、あれだってアラの支援射撃が分岐点になった訳だし。


 それに俺を投石機トレビュシェットで飛ばしてくれた、ラッテル領の騎士に聞いた話だと、ゴブリン・ソルジャーは密集隊形を取るから遠距離攻撃が効きやすいらしいからさ。


 まあ、考えてみるとそうか、隊同士は間隔を空けてるとは言え、数十体が寄せ集まって一緒に動くんだから、その分だけ機動力は低いし細かい動きもしにくいだろうからね。


 それに、集団だからある程度大雑把に狙って撃って、狙った個体を外しても隣の別な敵に当たったりするから、そこまで狙わずに済む分だけ連射しやすいし、投石機とか『四弦万矢』みたいな威力の高い攻撃も散開してれば一体ずつにしか当てれないけど、密集してれば一つの岩で数体潰すとか、並んだ数体を貫通して一撃で複数攻撃なんて事が出来るからな。


 特に弓隊の一斉射撃なんかは、細かく狙うんじゃなく一定範囲内に矢が落ちればいいみたいな感じだから動きの遅い密集隊形の方が戦いやすいらしいし。


 こうやって考えるとやっぱり、遠距離攻撃の支援なしっていうのは辛いんじゃないかな。


 かと言って、投石機なんかのデカ物を陣地から前に運び出すのは一苦労だろうし、何かあったらそのまま放置して下がるしかなくなりそうだよな。


 遠隔スキルがメインの連中を安全な陣地から出して戦わせるにしても、もしもゴブリン・ソルジャーの部隊に強襲されたりしたら被害がデカくなりそうだし。かと言ってそいつらに護衛を付けたら、押し上げる戦力を減らす事になるかもしれないよな。


「それに関しても、考えがある、コイツも勇者クニオ様が残した図案を基にしたものだが『テクニカル』を作る予定だ、幸い床子弩は大量に届くが、『稜堡』が出来るまでは使い道がねえから、輸送用に集めた馬車に乗せればすぐに使える。弓兵なんかもこの陣地にはそれなりに居るようだしよ」


 えっと、クニオ(ミリオタ)が残した案で『テクニカル』っていうとアレかな、商社に就職した大学の同期が『左遷されて紛争地域になりかねないようなところに飛ばされると、国産のピックアップトラックが嫌いになるぞ』って言ってた奴だよな。


 確か、ピックアップトラックの荷台に機関銃とかの重火器を乗せた奴だっけ。


 こっちの世界なら、戦車じゃない普通の荷馬車とかの上に余ってる床子弩とか『四弦万矢』辺りを乗せて移動させるって事か。


「まあ、民間用の荷馬車なんかを使うから、戦車みたいに敵陣に突っ込ませられるような強度はねえし、速度もそこまで出ねえが、極端な話、走って向かってくるゴブリンに追いつかれず、奴らの遠隔スキルの射程に入らないようにできればいいんだからよ」


 確かに馬車なら徒歩のゴブリン集団から逃げる事は十分可能か、陣地と『迷宮』の間は多少森や林なんかがまばらに有るだけでそれ以外は平野だから、騎馬や馬車なんかが使いやすいのか、まあ今までは守りがメインだったからほとんど出る幕が無かったけど。


 考えてみれば、野戦でそれなりの機動力のある遠距離手段って強力だよな。


 クロスボウやそこそこのレベルがある弓職連中なら、ゴブリンの遠隔攻撃よりも射程がかなり長いから、十分な距離を取って射掛ければ一方的に撃ち削れるし、ゴブリン・ソルジャーが近付いてくれば相手よりも早く逃げられる。馬車の上なら命中率さえ気にしなければ走りながら撃ち続ける事が出来るだろうから追われても逃げながら相手を削り続けられるって事か。


 そうやって相手と一定の距離を取って、来れば逃げて、引けば追うって感じで行けば油断して接近されない限りは結構いい戦いが出来るんじゃないかな。まあ、ゴブリン・ソルジャーとかだとそのうち対策立ててこっちを追い込んだ先に別動隊が待ち伏せてるとかしてきそうな気がするな……


 まあ、それを考えるのは俺の仕事じゃないか、俺はあくまでも一冒険者なんだからハルと一緒に陣地構築をしたり、ミーシア達と一緒に前線の押し上げで頑張ればいいんだし。


「それに、遠距離攻撃手段に関しては、ちょいと腹案があってよ。アンちゃん等についての話を色々聞いて、ちょいと考えてたネタをとある御方が認めて下さってな、いくつか材料を頂いてるんだ」


 神殿関係者のゴリョウが、こんなふうに言うって事は、その御方っていうのも多分神殿の偉い人なのかな、となるともしかして神官長さんかな。それなら結構いい材料をくれてたりして。


「まあ、そいつに関しちゃ、悪いが後回しになるがよ、とりあえずは十分な数の『テクニカル』が出来てからになるんでよ」


「心配召されるなリョー殿、『テクニカル』が十分に揃うまでのしばしの間は、支援射撃が不足致しましょうが、その分だけ我ら僧兵達が最前線にて戦い修練を積めると言う物。拙僧らが戦働きをとくとご覧召されよ、明日の初戦は拙僧がいくさ前の口上と舞手の筆頭に指定されておりましてな。『武威口上』と『戦の舞』にて味方の士気を高めて支援効果を与え、更にその後で『誘惑の舞』を踊ってゴブリンどもの注意を惹き、味方の突撃の援護をする予定でしてな」


 なんか、自慢げにコンナが言ってくるけど、そう言えばコイツって見た目通りのいかにも戦闘狂って感じのスキルの他にも、歌とか、踊りとかそう言う支援系のスキルをいくつか持ってたんだよな。


 確か前に一緒に戦った時も戦闘前に敵への威嚇と味方の士気を上げる『武威口上』とか、戦闘後の疲労回復なんかを助ける『勝ち鬨』なんかを使ってたから。


 しかし、舞って事は踊りだよな、ファンタジーで支援バフの有る踊りっていうと、ビキニみたいな最低限の服とひらひらした布だけを纏って、艶めかしく踊る綺麗なねーちゃんってイメージでうちの子ならサミューがピッタリって感じなんだけど、まさかこの狐というよりもゴリラの獣人と言われた方が信じられそうなスキンヘッドマッチョなコンナがそんな感じの踊りを踊ったりするのだろうか。


夏場に入り、仕事、複数の職場飲み会、旅行、イベント、夏バテ、その他の関連で、八月中頃まで更新速度が落ちそうです。


H30年8月07日 誤字修正しました。

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