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381 戦闘後処理

この作品は、ファンタジーでフィクションです。実在の人物や団体、アニメーション、アニソン、選手などとは一切関係ありません。

「ライフェル神の忠実にして敬虔なる使徒たる、ステミ神官長猊下の御名にてこの地に集う貴族諸家に対して発せられた聖令である。これより我が伝える言葉の尽くは猊下の御意思によるものであり、猊下の御意思はそれすなわちライフェル神の神意、神の御言葉に等しいと心得られよ」


「はは」


 神使の前に急遽集められた防衛線に参加する貴族達が、篝火の焚かれた中で跪き更に深く頭を下げて敬意を示してるけど、ライフェル神って存在しないんだよね。


 まあ、それ言っちゃったら神様みんながそうなんだろうけどさ、なんかさ、神官長本人からその事実を聞かされてるのに、こうやって神の言葉とか言われてありがたがってる人達を見るとさ、ちょっと思う所が。


 まあ、今のライフェル教やライフェル神はあの神官長がでっち上げたって事だから、神官長の意思はライフェル神の意思と同じっていうのはある意味で、事実なのかもしれないな。


 しかしなんで俺、こんな所に居るんだろ、俺ってただの冒険者の筈だよね。そりゃまあ、『百狼割り』達を含めるとそれなりに大きなパーティーの代表って事になるんだろうし、それなりに有力な冒険者や人数の多い傭兵団の団長なんかも集められてるから、その一環なのかもしれないけど、冒険者生活に慣れたせいかこういう堅い場は少し息苦しい感じがするな。


「予、ムルズ王国西方域の諸迷宮における危機を知るに至り、この地に住む衆生の事を想いその危機を憂慮す。予、衆生の安寧を保持する一助とすべく、ライフェル神の忠実なる戦士たちを遣わす。この地を護る諸卿にあっては、ライフェル神の戦士と共に、迷宮を鎮め、活性化による魔物を尽く抑えるよう、奮闘する事を望む」


 神官長さんの言葉が書かれているだろう書状を、目線よりも高く掲げながら読み上げた後で、使者がそれを元の様に折りたたんで、頭上に掲げると、貴族達が再度頭を下げる。


 うーん、なんか難しい言葉を使ってるけど、要は、この辺りの『迷宮』の話を聞いて心配だから、僧兵や神殿の軍隊を送ったよ、みんなで協力して頑張ってねって事だよね。


 しかしまあ、もう暗くなってきてるってのによく読めるな、いや文面を暗記してきてるのかな。この式典が終わるまであとどのくらいかかるのかな、サミューが食事の用意をしてくれてるだろうけど、あれだけ動き回った後で夕食が遅れるのって、キツいよな。








「とりあえず、今日はもうやる事は飯食って寝るくらいしか無いな。ゴブリン達が夜襲でもかけてきたら別だろうが」


 ふう、式典が終わったおかげでやっとのんびりできるけど、疲れたな。昼間にあれだけの戦闘をして、夕方に褒賞の式典が有って、そのままの流れでコンナ達を連れた神使の謁見まで続いて夜になっちゃったからさ。


「しっかし、神使様たあ、とんでもねえもんが来たもんだな。この陣地に御一行が入って来るのを見た時は、見ちまったことでばちが当たって目が潰れんじゃねえかと思っちまったよ」


 割り当てられた野営地で焚火を囲みながら、少し遅い食事の用意が出来るのを待ってると、『百狼割り』がちょっと怯えたような感じでそんな事を言うけど、コイツでも神様相手だとそんな風に考えるのか。


 いや神様とか宗教に懐疑的な現代日本人の俺だからこんなふうに思うだけで、信仰や迷信、宗教なんかの影響が強い時代や地域なら当然の反応なのかな。現代人だって国によっては、創造論とか、地球は平らだとか本気で言ってる人がいるらしいし。


「まあ、これで俺らも神旗を掲げてライフェル神様の御加護を受けて戦う、神軍の一員って訳だな。この防衛戦の間だけって短い間だが、うちの若けえ連中なんざは問題を起こして故郷に居られなくなったっていう奴も多いが、この話が広まりゃ堂々と国元に帰れるってもんだ」


 ああ、そう言う物なんだ、神旗ってのは『錦の御旗』みたいなものなのかな。


「ところで『虫下し』よ、オメエさんはさっきから何してるんだ、まさかとは思うがそう言う趣味なのか」


 少し引いた感じで『百狼割り』が俺の腹のあたりを見てくるけど、椅子代わりに置かれた丸太に腰かけた俺の太腿の上にアラが跨るように座り、こっちの方を向いたままでコアラみたいにぎゅっと抱き付いて見上げてくるけど、この姿勢って対面坐……


 いやいや、アラ相手に何考えてるんだよ俺は、一瞬でもこんなこと考えちゃうから、『百狼割り』に変な誤解されちゃうんだろ。


「いや、これはな……」


「放しちゃめーなの」


 誤解された事で思わずアラを持ち上げようとすると、アラが思いっきりしがみ付いて来る。


「もー、これはアラとの約束をぜんぜん守らないリャーへのお仕置きなんだから、明日まで離れちゃめーなんだからね」


 う、そうなんだよな。今日の戦闘で爆弾を腹に抱えたり、強襲の為に高いところから飛び降りたり、一対一でカーネルに殺されかけたり、その後でエスコートに袋叩きにされたりで、普通なら数回は死んでておかしくない状況だったから、アラが思いっきり拗ねちゃってね。


 明日の朝までずっと抱っこするって事で一応許してもらったんだけど、この状況のせいでまた変な噂が立ちそうな気がしてきたな。


「おい、見ろよ公衆の面前で、あんな幼い子供を相手に何やってやがるんだよあいつ」


「いや、それもそうだが、あれ例の『雷滅幼女』だろ、それをあんな風に手懐けて、いやそれだけじゃねえ、きっとあの野郎は他の奴隷とも……」


 あ、既に遅かったか。


「まあいい、テメエがどんな性癖持ってようが、戦場でまともに仕事をしてくれるんなら大した問題じゃねえがよ、『コボルト一匹殺せねえ聖者様より、オーガ百匹狩れる変態のがまし』ってのは冒険者や傭兵じゃよく言う事だしな」


 変態って、いやこの状況を見られればそう言われても仕方ないけどさ。


「そういや、オメエはゴブリン・カーネルを仕留めたんだろ、死骸はどうしたんだ。オメエの持ってる『アイテムボックス』なら余裕で入ったんだろ」


 ん、カーネルの死体って、そう言えばエスコート達が地面に置いてそのままで放置しちゃったっけ。


 まああの状況じゃ、回収する余裕なんてなかったし、そもそも使い道が無いだろ。


 上位種って言ったって装備は普通だったし、ゴブリンは牙も爪もそれほど価値が無いし、それ以外は素材としてまったく役に立たないって話じゃなかったっけ。というかそもそもの話さ……


「そのまま、捨てて来た、人型の魔物を加工するのはあまり誉められた事ではないだろ」


 俺の言葉に『百狼割り』が呆れたような表情を浮かべるけどどうしたってんだ。


「かーもったいねえ、そりゃ貴族様や騎士様なら鬼を加工するのは嫌がるだろうが、俺らみてえな傭兵や冒険者がそこまで気にしてどうするってんだよ。そりゃエルフや獣人なんかの話が出来る種族の死体を使うってんなら、腐れ外道扱いされるがよ、オーガやゴブリンならそこまで言われやしねえ、ていうかオメエだってオーガの素材を使った装備を使ってんだろうがよ」


 いやそうだけどさ。


「素材として役に立つのか」


「まあ、装備品の材料としちゃ役に立たねえが、使いようは幾らでも有らあな。よくあるのは、腹を空にしてから塩干(ミイラ)にしてよ、そいつの首に縄掛けて馬車なり拠点の壁なりに吊るしときゃあ、ハッタリとしても魔除けとしても上等なもんになる。モノホンのヒトじゃねえから、文句を言われる筋合いはねえし、鬼ならパッと見はヒトに見えるから盗賊なんぞを相手にした時の脅しにゃちょうどいい。武器なんかに加工しちまったのと違って、ほぼ全身が残ってるフロアボスの塩干ミイラなら、匂いや威圧を放つから、獣や雑魚の魔物なんざは寄ってこなくなるからな」


 へー、魔除けってそう言う事か。


(確かに、ある程度原形をとどめた魔物の死骸は、弱い魔物を怯えさせる効果があるのう。まあ敵対種族の強い個体を引き寄せる事も有るがのう。とはいえ、過去には『活性化』で魔物が溢れ町が壊滅した際に、冒険者が溜めたツケの代金代わりに置いて行ったオーガキングの干し首を吊るしていた宿屋とその中にいた者だけが無傷で済んだ、そんな逸話も有る位じゃし、こういった荒くれ者達にはそれほど珍しくないのじゃろ)


 なるほどね、しかしまあ宿屋に入って干し首が飾ってあったらちょっとアレだな。


「もったいねえ話だが、まあ言っても仕方ねえか、今頃は他のゴブリンの餌か土嚢の一部にでもなってて回収は出来ねえだろうからな」


 うん、次は気をつけよう、うちで使うかどうかはちょっと悩みどころだけど、売る事も出来そうだからね。


「そ、そうだ、リョ、リョー様、あ、あの、戦闘後に色々あって、い、言い出すのが遅くなったんですが、こ、これ、ひ、拾いました、つ、強そうな、ゴブリンが持ってて、倒した時に……」


 そう言ってミーシアが差し出してきたのは、鎖付き鉄球(モーニング・スター)か。『魔道具』みたいだけど、そう言えば『活性化』の時って魔物と一緒に『魔道具』やアイテムなんかも大量に湧くんだっけ。


巨球の鎖 LV3

付加効果 巨大化 延長


(どうやら、鎖の長さや鉄球の大きさを自在に変えられる効果のようじゃのう。まあその分重くなるようじゃから、使える大きさはおのずと限られようが、いや……)


 これって、ミーシアのパワーで使えば、それこそ解体重機並みの鉄球を振り回して、家とか壁とか壊せるんじゃないか。いや、この戦場で考えればさ、鎖を伸ばせばある程度離れた敵数体を一撃で叩き潰せたりするんじゃないかな。


「その『魔道具』はミーシアに向いてそうだからそのまま持っていると良い、この戦場でゴブリンの群れを相手にするには丁度いいだろう」


 武器としての効果や威力ならミーシアが普段使ってる『鬼の大剣』の方が色々ついてるし強度も有るけど、あれは『鬼族の祝福』が有るからここじゃ使いにくいし、これと比べるとそこそこ強い少数向けの装備だからな。


「は、はい、これなら重たそうですし、持ってて、あ、安心します。で、でも、私、や、役立たずなのに、ち、治療だって……」


 周りの被害を気にせずに振り回して、大集団を蹴散らすならこっちの『巨球の鎖』方が向いてそうだもんな。しかし、ミーシアはその事を気にしてるのか、そのうちフォローしないとダメかな。


「おお、リョー殿こちらに居たか、おや、そちらも今日の戦闘で戦利品が有ったようだな」


 俺がミーシアに『巨球の鎖』を渡したのに合わせる様にミムズ達が来るけど、そちらもってことはミムズ達も何か見つけたのか。


「これをプテックが拾ったらしく貴殿に渡しに来たのだ、この合同パーティーを組む際の約束では、『百狼割り』殿の一党以外の者が見つけた戦利品は貴殿に優先権があるのだからな」


 ああ、そう言えば、手打ちの際の約束はそうだったっけ。『百狼割り』達はあの手打ちに関係ないからそれ以外が該当って事になるのか。


 でもそれって『蠕虫洞穴』での話じゃ、いやこっちの鎮圧に移る際に合同パーティー内での条件や決まり事は、そのまま持ち越すって事になってたから、ミムズや『四弦万矢』達の見つけた戦利品は、俺が好きに出来るって事か。


 うーんでもさ、俺と関係ない所で他人が見つけた物を何でもかんでも俺の物にするっていうのはちょっとな。


「これ、剣と、盾で、組みに」


 プテックが差し出してくるのは、やや縦長なカイトシールドとそれを鞘代わりにした片手剣か、多分上位種のゴブリンが持ってたんだろうけど、ミムズの槍にやられたのか、それともライガーに変身したプテックの爪や牙にやられたのか。


 まあいい、とりあえず『鑑定』だけでもしてみるか。


空裂くうれつ雷轟らいごう角牙剣かくがけん LV2

付加効果 空裂斬 雷轟撃 獣角牙化

付与効果 聖 雷


怒燃どねん爪盾そうじゅん LV2

付加効果 憤怒 怒気炎化 獣爪化 

付与効果 火 走力補正


(剣の方は、威力が高めな飛斬を飛ばすのと刀身や使用者の攻撃に雷撃を纏わせる効果、盾の方は使用者の怒りを昂らせ、それを炎に変えて身に纏ったり放ったりできる効果のようじゃの、しかし生体装備とは珍しいの)


 ん、『生体装備』ってなんだろ聞き覚えが無いけど。


(それぞれ、『獣角牙化』『獣爪化』と有るじゃろう、これは装備した獣人が『獣態』になった時に、その武器が牙や爪、角へと変化するのじゃ、それも獣用の武器としてではなく、生体の物と同じ様に口や指先から生えるのじゃ)


 なるほど、一つの武器で人の姿でも獣の姿でも使えるってのは経済的かもしれないな。


(多少壊れても、徐々に再生するし、レベルアップすると使い手に合わせて形状などが変化したりもするが、問題は使っておるうちに使い手の身体と同化してしまい外せなくなる事も有るのじゃ)


 なんかホントに生きてる装備って感じなんだな。うーん、うちの子達だとこれが使えそうなのはミーシアだけどさ。


「わ、私なんかが貰っちゃっていいのかな、で、でもおっきな盾と、おっきな武器だと、安心します」


 嬉しそうに、俺が返した『複獣の大楯』とさっき渡した『巨球の鎖』を持ってる姿を見るとね。うん、この装備じゃ多分ミーシアには軽くて小さそうだよね。


 それに、装備の効果で、ミーシアが怒り狂ったりしたら誰も止められなさそうだし、どれも装備の種類としてはミーシアの持ってるのと被るんだよね、効果はそれなりだけど、ミーシアの装備にもいろいろ効果を付けてるから、比べると少し見劣りするんだよね。


「一応、この二つの武器を『鑑定屋』に見せてはきたのだが」


 ミムズが俺に鑑定結果を書いた紙を見せてくるけど、内容はさっき見たのと一緒だな。


「ミムズこれは見つけた御前達で使ってくれ」


「リョー殿、よいのか、これは『魔道具』なのだぞ」


 まあ、確かに高級品だけどさ、うちのパーティーの現状だと予備として『アイテムボックス』にしまいっ放しになるか、売るかだけど、そこまで金に困ってないし、これからも続くゴブリン軍団との戦闘やその後の『蠕虫洞穴』での事を考えれば、一緒に行動するミムズ達の戦力アップは重要だよな。


「ああ、御前達が見つけたんだ、それにうちのパーティーではこの装備の効果を活かせないからな。そんな状態で俺が独占しても戦力になる訳でもないからな」


「そうか、ならば、ありがたく使わせて頂こう。プテック、リョー殿のせっかくの配慮だ、お前が見つけた事だしお前が使うといいだろう」


 まあ、装備的に考えれば、プテックかサーレンさんなんだろうな。


「いい、の、剣なら、サーレン、でも」


「サーレンが使うのは大剣だ、片手でも使えるとは言え基本は両手持ちで盾は使わないのは知っているだろう、それにこの剣ではサーレンが使うには少し小さい。お前が斧を使う時は片手で振る場合が多いから盾が有った方がいいだろうし、何より斧を使いにくい状況でも使える剣も持った方がいいだろう。『獣態』で戦うにしろ、牙や角だけならともかく爪も有るのなら、サーレンよりプテックの方が適しているだろうしな」


 そう言えば、サーレンさんもミーシアほどじゃないけど結構大きな剣を使ってたよな。


 うん、そう考えるとあの盾と剣をそれぞれ片手で振り回すミーシアの規格外さがよくわかるな。しかしあの巨大ライガーの牙と爪が更に凶悪になって、追加で角も生えるってか、かなり凶悪な見た目になりそうだよな。


「何より、これらの装備にはいくつかの属性や魔法攻撃の効果がある。自分やディフィー、サーレンはそれぞれ魔法が使えるが、お前は魔法を苦手としているし、装備にも属性攻撃の出来る効果は無いからな。今は良いがこれから先、純粋な物理攻撃の効かない敵を相手にした時、今のままでは困るだろう」


 なるほどね、ミムズも自分パーティーの事を色々考えてるんだな。


「しかし炎や雷を身にまとうという、この『魔道具』の特性を活かす為には素手での組打ちも出来るようになった方がいいのかもしれないな、そう言えば今日の突撃に参加されたムラム卿は、格闘の名手と聞く。機会を見て御教示いただけるよう頼んでみるのもいいかもしれぬな」


 クリグ・ムラムの使う格闘技って言えばたしかプロレス技だよな、あの手の技って密着が多いから、確かにこの『魔道具』には丁度いいかも。まあ人型にしか効果なさそうだけど、ミムズ達は将来はアクラスやパルス達の護衛になるんだろうから、武器の持ち込みが許されないところで刺客と戦ったりする分にはいいのかな。うーん、しかし。


「極め技や投げ技などはともかく、格闘の当て身や打撃などの技術は『獣態』での戦闘にも活かせる事だろうしな」


 雷や炎を纏ってプロレス技をぶちかましてくるライガーか、敵にはしたくないな。


ついつい年齢のバレそうなパロディネタを入れてしまった。

いやでも、プテックのキャラを考えた頃から狙ってたネタではあるんですよ。


H30年8月07日 誤字修正しました。

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