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349 精密の弓



「とは言え、この『殺弓士』のスキルにも欠点がある」


 ん、これだけやっておいて、欠点があるのか。


「最後の技の威力はこの『加剛の弓』とそれを曳けるだけのステータスが有っての物、だがこの弓を渡せるわけではなく、そのような膂力をアラ殿に求める訳にもいかぬであろう。普通の弓では一人を殺めるのがせいぜいであろう。また、破壊力へと変え貫通力を落とす事の弊害も有る」


 まあ、考えてみればアラにあの破壊力が出来る訳ないか、まあそれでも一撃必殺になるからかなり有効なんだろうけどさ。いやでもさっきのアラの試し打ちを考えれば二、三人くらいなら……


「リョー殿、その位置で盾を構えて貰えぬか」


『四弦万矢』がアラから弓矢を受け取って、考え込みかけてた俺の方へ構えながら言ってくるけど、それってまさか俺を撃つつもりなのか。さっきあんなのを見せられた後だとね、どうしてもビビっちゃうのは仕方ないと思うんだよな。


 しかも、手打ちになったとはいえ、ついこないだまでは下手をすれば殺し合いになっててもおかしくない関係だったってのに。


「安心されよ、盾を構えておれば危険は有らぬ」


 ホントかよ、ま、まあ俺には『超再生』が有るんだし、万が一内臓がズタボロにされても痛いだけで大丈夫だろうけどさ。まあ、ここでビビってもしょうがないか。第一、手打ちになった以上俺に危害を加えれば向こうは只じゃすまないんだしね。


 ここは相手を信じて構えるしかないか。


「よいか、行くぞ」


 結構至近距離から放とうとしてるけど、ホントに大丈夫なのか。


「う、あ、あれ」


 なんだ、痛くない、いや盾を構えた手にはちょっとしびれが有るけど、それだけだ、この感じは盾の表面を鈍器で思いっきり殴られたような衝撃が有っただけで、それ以外は何ともないな。


「このように、『衝射』を使えば貫通力が落ちる為、多少の防具で簡単に防がれてしまう。もちろん強力な弓から放てば盾を砕く事や、先ほどのように防具を貫通した後で、残った力を衝撃力に変えて相手を殺傷するという事も可能だし、貫通させる矢で相手に痛みを与えて防御を崩した後に、『衝撃』の矢を放ちトドメをさすという風に使い分ける事もできるかもしれぬ。だが狙撃というのは一撃目を失敗すれば二の矢を放つ余裕が無い場合も有ろう。また頭部に当てた場合では堅い頭蓋骨に阻まれ脳を破壊できないという事も有る」


 いや、それでもこの衝撃なら結構なダメージだと思うよ、例えるならプロボクサーのストレートを思いっきり喰らったみたいな感じでさ。まあ、相手を確実に仕留めるという目的ならダメなんだろうけど。


「とは言え、相手を瞬時に無力化し絶命させるには頭部を破壊するのが最も確実な手となる以上、狙いの第一優先は頭部となる」


 ん、相手を殺すだけなら、別に頭じゃなくてもいいんじゃないか、今のスキルで心臓を破壊すればいいだけだろうし、腹だって臓器や血管がずたずたになれば、よほどの回復手段でもなければ助からないだろうからさ。


「街中などを歩く相手を仕留めるだけならば、もっと狙いやすい場所でもよいが、戦場では今まさに味方へ止めを刺そうとする敵や、広範囲の魔法やスキルを放とうとする敵を即座に倒さねばならぬ事がある。だが心の臓を潰された相手が意識を失い斃れるまでの間には、ほんの僅かだが時間が有る。そして達人ならばそのわずかな時間で自らの目的を完遂して見せる、もしくは狙撃手へ遠隔スキルを放ち相討ちに持ち込もうとして来うる。また高レベルの魔法薬や治癒師がその場で即座に対処すればそこからの回復も不可能ではない」


 いや、そんな反撃が出来るのかよ、あ、でも昔受けた応急手当講習で、不整脈で心臓が働かなくなったら、十数秒で脳は必要な酸素や栄養が足りなくなって意識を失うって言ってたっけ。


 言い方を変えれば十数秒は意識が有るって事だもんな。それに、3分以内に心臓マッサージとか電気ショックを始めて心臓が動けば、後遺症なく生き返るって聞いたような、そう考えれば回復ってのもあり得るのか。


「それらを防ぐ方法はいたって簡単だ、頭、そのうちに有る脳を破壊しつくせば、その瞬間に意識を失い絶命する。そして、頭部は他の急所と違い完全に守り切る事は出来ない」


 いや、守り切る事が出来ないって、さっき頭蓋骨が堅くてって言ったばかりじゃないか。


「フレウ・ミレンの装備を見ればわかると思うが、重装備をすれば胸部や腹部の隙間はほぼ無くなり、貫通力を落とした弓で心臓などの急所を撃つ事は出来なくなる」

 

『四弦万矢』の言葉に釣られて、その隣にいるフルプレートメイルの女騎士を見るけど、確かに固そうな金属板を重ねてるから矢の通りそうな隙間ってのは無いね。


「だが一か所だけの例外として、どれほど強固な鎧であっても兜の目の位置だけは必ず開いている。人が視力をもって外を認識し戦っている以上、どれほど小さくとも視野を得るために、目と外を繋ぐ隙間は存在する。そして目の奥には脆く薄い骨を境しただけで脳が有る」


 一瞬、『四弦万矢』がニヤリと笑ったような気がするけど、いってる事はかなり無茶苦茶じゃね。カブトの隙間ってすっごく狭いよね、それを打ち抜くってどんだけだよ。


「返しを無くし、針の如き細さにした鏃を付けた専用の矢で、狭い一点を打ち抜く長距離精密狙撃、それこそが当家のもう一つの職『針孔の射手』のスキルによるもの」


 いつの間にかフルプレートを着たままのフレウ・ミレンが的代わりにしたリンゴの近くに立って片手を横に伸ばしてるけど、何か摘んでるのかこの距離だと見えないな。そうだよ『範囲内探知』を使って、見ればいいだけじゃないか。


 対象をフレウ・ミレンにすればたぶん見えるだろうって、指二本で摘んでるのは普通の縫い針、もしかしてこれって。


「行くぞ、よく見ておられよ」


 いつの間にか『四弦万矢』が構えていた弓につがえられた矢の先は、本来の鏃が外されて代わりに針が糸で結び付けられてるけど、ホントにやるのかよ。


「いざ」


 声と同時に矢が放たれると、摘まれた針の穴を、鏃代わりの針先が通り抜けていく。マジかよ……


「ごらんのとおり、『針孔の射手』による一撃必中、『殺弓士』による一撃必殺の二つの技を代々受け継ぎ、当家は狙撃手として技を磨き続けて来た。某はこの二つの職に『加剛の弓』と高レベルによる膂力を合わせた事で『四弦万矢』などという過分な二つ名を得た、だがこの二つの職のみであっても、対人戦等においては切り札と成り得るであろうし、対魔物戦でも役に立とう」


 うん、確かに普通の盗賊なんかだったら、遠距離から正確な狙撃で致命傷を与えたり出来るっていうのはかなり有効だし、魔物だって目が急所なのは変わらないもんね。


「さて、その上で問おう、ここに当家秘蔵の『職業石』が有る。ある程度以上の弓系スキルや職が有れば、当家の二つの職を取る事は可能であろうが、十分に使えるようになるには職のレベルやスキルの熟練度をあげて行かねばならぬ。当然知って居ろうが、職は増えれば増えただけ、戦闘で得る経験値が分散されレベルが上がりにくくなる。となればこれから先の成長に影響しよう。アラ殿は、弓だけではなく剣も使われるとの事、そちらの成長との兼ね合いも考えたうえで決められよ」


 ああ、そっか、アラは今だけでも『魔術剣士』『弓師』『速斬剣師』と三つ職を持ってるから、これにさらに二つも追加されちゃったら、最初の頃のミーシアみたいな事になっちゃうかもしれないのか。


「大丈夫だもん、いっぱいいっぱい魔物さんやっつけちゃえばいいだけだから、これからもアラは、もっとがんばって、もっともっと強くなるんだからね」


 アラが両手を握りながら掲げて、簡単そうに結構凄い宣言をしてるけど、なんだろうこの子なら普通にやっちゃいそうな気がしてくるな、今までだって一人で盗賊団を壊滅とかしちゃってるし、大物の魔物を退治したりなんかもしてるからな。


 それに俺の都合を考えれば、これからも『迷宮攻略』をしてくんだし経験値を稼ぐ機会は有るか。


「ふむ、よい答えだ、ならばこの石に手を置き、職を取られるがよい」


『四弦万矢』が拳大の石を掌に乗せたまま差し出すと、アラがその上に手を乗せて目を瞑る。


「えっとね、これと、これと、あとこれ」


 ん、今三回選ばなかったか、もしかしてアラ、と、とにかく一度『鑑定』してみないと。



アラ・フォティ

魔術剣士 LV36 速斬剣師 LV10 『連撃弓師 LV1』 『殺弓士 LV1』 『針孔の射手 LV1』


技能スキル 剣道 細剣術 片手剣術 短剣法 速斬剣法 弓術 長弓 弾弓 曲射 軌道予測『長距離精密狙撃』風魔道 闇魔術 植物魔法 雷 氷 高速詠唱 無詠唱 待ち伏せ 幻魔法 雷撃操作 スキル二連続発動


身体スキル 聴力上昇 視力上昇『遠距離視認』魔力上昇 速度上昇 快速 風耐性 暗算 MP回復


戦闘スキル 風牙 闇牙 雷牙 氷牙 風弾 闇弾 雷弾 氷弾 闇刀 氷刀 風刃 闇矢 氷矢 雷矢 風槍 風陣 雷陣 氷陣 裂風陣 闇幕 闇毒風 闇痺風 闇痺雷 闇痺氷 涼風 吹雪 風雷 強風 突風 飛行妨害 葬風 旋風 竜巻 乗風 草操 草剣 木操『雷乱域』『掘地』強斬 速斬 断斬 瞬斬 斬突進 扇圏斬 飛斬 横斬波 二連続切 三連続切 六連斬 連斬撃 強刺突 三連刺突 精密射撃 長距離狙撃 二段撃 三段撃 連射 制圧射撃 影縫 幻影 闇幻 視野暗幕 偽痛覚 幻聴 暗中狙撃 急所突 三連速飛斬 八連瞬斬 十連瞬刺 縮地斬撃『鏃潰』


生活スキル お手伝い


特殊スキル 軽装時高速化(五分) 


装備品制限 重装防具不可 硬衣類不可



 おお、スキルが幾つか増えてる、それにレベルも有る程度上がってるしやっぱり『迷宮攻略』や盗賊や薬屋退治なんかで、経験値が、じゃなくてやっぱり三つ職取っちゃってるよ、『連撃弓師』なんてもってなかったよね。


(元々あった、『弓師』が無くなって居るところを見るに、『連撃弓師』という上級職に上がったのじゃろう、職の総数自体は二つ増えただけじゃ、これならば予想通りであろう、むしろ弓師の上級職になれたのじゃ、儲けものであろう)


 ま、まあそう考えればいいのか、そうだよな、今だってアラは十分強いんだから成長速度が多少落ちたとしても大丈夫だよね。


「い、いいな、で、でも今のわたしが取っちゃったら、た、ただでさえ、職がいっぱいなのに……」


 あ、ミーシアが悩んでる、確かに色々と強力なスキルだしアラ以外にも役に立ちそうな気はするけど、聞いている分だとアラ以外が取るのは難しそうなんだよな。


「もし必要であれば、この先、別な機会に会った時でも職を渡す事は構わぬ、特に期限を区切った約束でもない事だしな。また、アラ殿がどこかの『職業石』にこの職を登録し、貴殿らを始めとした誰かに渡そうとも某は関知せぬ」


 おいおい、大盤振る舞いだな。うちらのパーティーで登録するかもしれない『職業石』ってなれば、カミヤさんか神殿かでなきゃラッテル家ぐらいだろうけど、どこも喜びそうだな。


「いいのか、そんな事をして、もともとそちらに殆ど利の無い話だっていうのに、そこまでやってしまえば、そっちにとって悪い事ばかりだろう」


「構わぬ、このスキルの秘密が広まったとしても、対応できるのは目を使わず戦える者だけ。そうでない相手が目を重点的に守ろうとすれば、こちらを見られずに済む分だけ好きに出来るし、それ以外の場所が無防備となろう。それにこの弓の威力があれば、そもそも相手の防御を気にする必要はない」


『四弦万矢』が『加剛の弓』を掲げてそう言ってくるけど、確かにさっきのあの威力を見れば本気で言ってるってのがよくわかるもんな。ほんとコイツと戦闘にならなくてよかったわ。


今回で連日更新は終了になります、まだ少しストックが有りますが、執筆速度がまだ以前ほど戻ってはいないので、このままだとあっという間にネタ切れになってしまいそうですので。


H30年2月24日 誤字修正しました。

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