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348 衝撃の矢



「では、某の弓技について説明致そう」


 町を出て大分来てから、『四弦万矢』が周囲を見回しながら言ってくるけどいいのかな。


「この場には、アラ以外にも俺達が居るが説明しても良いのか」


 今回は、特に用件も言われずにこの場所に呼ばれたから、うちのパーティーの皆とミムズ達まで来ちゃったけどさ、うちのパーティーで弓を使えるのはアラだけだし、ミムズ達の方には弓使いがいないから、アラ以外が説明を聞いても意味がないというか、下手をすれば『四弦万矢』にとっちゃ必要以上に技を漏らす事になるから、マズイんじゃ。


 テトビやラクナも言ってたけど、流派の技とかって本来は秘密の筈だよね。普通に考えたって戦闘職にとっては飯のタネなんだから、企業秘密みたいなもんだよな。


 いくら、手打ちの条件で技を伝授する事になったって言ったってさ、必要以上に広めちゃうとさ、『四弦万矢』にとってデメリットがデカすぎるんじゃないか。メシの種を明かす事になるってのはもちろんだけど、技の秘密が解れば対策を取られる事になるかもしれないし。


「構わぬ、家伝の技とは言え一族の者達は皆死に絶え、某しか継承者がおらず途切れかけている技、より多くの後進を残し技を残して絶やさぬ事こそ、流派を起こした先達への供養となろうし我が流派を疎んじる者達への意趣返しとなろう。そもそも特殊すぎる技ゆえ、当家秘蔵の『職業石』に登録されている職を取らねば再現は難しく、原理を知られたとて対策を取れる物でもない。とは言え貴殿らが当家の技を何かに応用できるのであれば、是非とも見てもらいたい」


 なんだろう、この言い方だと何か過去に有ったっぽいけど、まあそれに関しては深くかかわらない方がよさそうだな、下手に踏み込んで、面倒事にこれ以上巻き込まれるのもアレだし、そもそも『四弦万矢』なら自分の問題は自分で解決できるだろうからさ。タネを知られても問題にならない位スキルに自信があるみたいだし、まあ実際聴いている威力を考えれば防御は無理だろうからな。


「キテシュ殿がそう言われるのであれば、無作法とはわかっているが後学のため自分も拝見させていただこう。自分やプテックは弓を使えぬが、投擲スキルが有るゆえ、それらに何か応用できればと思うので」


 ミムズがそう言って、少し離れた所に立つけど、まあミムズは勉強熱心だからな、そもそも以前に俺と一緒に行動するってなったのも、冒険者の戦い方を学ぶためだったしね。


「あ、あの、リョー様、わ、わたしも、見て行きたいです、わ、わたしも、投擲スキルが……」


 そっかミーシアも『投擲』スキルが有るもんね、なんか最近は『獣態』で大暴れしたり、大剣を振り回してるイメージが強くて忘れてたけど、ミーシアには『盗賊』の職も有るんだし、実際それ用のナイフなんかも持たせてるんだから、遠距離攻撃の知識や経験も必要か。


「そうだな、悪いが俺達も見ても構わないという言葉に甘えさせてもらおう」


 もしかすれば、『暗殺者』のトーウとかも使えるようになるかもしれないし、ハルだって魔法に何か応用できるかもしれないからね。


「構わぬ、もっとも先ほど言った通りそれ用の職を取らねば、再現するのは難しかろうが。某の技は当家で引き継いできた二つの職によるもの、他にも弓系の職を持ってはいるが、それらはすべてこの二つの職を『隠蔽』しても不審に思われぬようにする為と、弓系のスキルを高める為だけの物にすぎん」


 そう言えば、オリジナルでスキルを作るっていうのはかなり難しいんだったっけ。となると、やっぱり見てもあんまり意味はないのかな。


(まあ、お主ではこやつを参考にスキルを作るというのは難しいかもしれぬが、『成長補正』の影響を受けて成長し続けて行けば、ミーシアやトーウたちも何かスキルを編み出せるようになるかもしれぬの)


 うーん、短期的な成長は期待できないけど、将来的に役に立つかもしれないって事か。


「さて、では説明いたすが、まずは論より証拠というし、実際に見せた方が早かろう。実際に某のスキルを見て、説明を聞いたうえで、職を取るかどうかを考えて貰いたい」


 そう言って、『四弦万矢』が少し離れた岩の上に、何個か果物を並べ始めたけど、このパターンは的代わりって事かな。


「では比較の為にアラ殿、左端のリンゴを一撃で仕留めるべき敵だと見立て、君の弓で射て貰いたい」


「うん、わーった、えいっ」


『四弦万矢』に言われた通りアラが弓を構えていつも通りに矢を放つけど、うわ、簡単にリンゴを貫通してその後ろに立ってる大木まで貫通しちゃって、さらに後ろの岩に深々と突き刺さってるよ。


(ふむ、かなりの威力じゃのう、あの樹はかなり固い種類のはずじゃがスキル無しで貫き通し、その上で岩にまで刺さるとはの、成長補正によって弓系の技能スキルとステータスがかなり高まっているという事じゃろうが、この幼さでこれとは、いやはや末恐ろしいのう)


 うん、だってこれってさ、下手な鎧位なら簡単に貫いちゃうって事だろうからさ。


「ふむ、見事な腕前、だが某は一撃で仕留めるつもりでと言い申したが、果たしてこれで一撃で相手を絶命させ得るかどうか」


 ん、だってここまで行けば、ほとんど防御無視みたいなもんだろ。


「お言葉ではあるがキテシュ殿、今ほどの威力で有れば相手の防具を越えて急所を穿てましょう」


 やっぱりミムズも同じように思ったんだな、そうだよな普通に考えれば貫通力の高い徹甲弾みたいなもんだからさ。


「確かに、今の一撃で有れば確実に相手に手傷を負わせられよう。だがそれが致命傷となるとは限らぬ。矢の一撃は、矢じりの大きさと等しく言わば点の攻撃となる。某が倒すべき敵として指定したのはあくまでもリンゴであり、その背後の立ち木や岩ではない、それらを貫き刺さった分の勢いは、それだけの力を無駄にしているともいえる」


 ん、なんだオーバーキルって事か、もっと力をセーブしてリンゴを射抜く必要最小限にしろって事なのか、でもそれだとさっきの点の攻撃っていうのと繋がらないし。


「では、某が見本を見せよう、先ほど的としたリンゴの隣にあるカボチャとスイカを別なスキルを使い射るので、それぞれどうなるのかを見てもらいたい、まずは一の矢」


 そう言うと同時に『四弦万矢』が矢を放ち、それが当たった瞬間にカボチャが破裂したって、なんだこれ、どうなってるんだよ、刺さるんじゃなくて破裂するって鉄砲じゃないんだからさ。


「二の矢」


 続けて放たれた矢がスイカに刺さるけど、あれ、矢じりがギリギリ抜けない程度にしか突き刺さってないけど、これは思いっきり威力を抑えたって事なのか。


「まずは、二つの矢とスイカの状況を見て貰おう」


『四弦万矢』のパーティーメンバーである、フルアーマーの女性がカボチャを砕いて地面に落ちた矢と、矢が刺さったままのスイカを持ってきて、いつの間にか用意していたタライの中にスイカを置いて包丁で一気に二つに割る。


「これは、どうなっていますの、こんな事は非常識ですわ」


「え、え、ジュ、ジュースになってる」


 ハルとミーシアが、驚いた声を上げてるけど、気持ちはよく解るわ。だって身が詰まってそうなスイカを切ったらまるでミキサーにかけた後みたいなジュース状の果汁が詰まってたって、おかしいだろ。


「これが、我がキテシュ家の家伝、『殺弓士』のスキルとなる。当家のスキルは元々様々な場面での暗殺を目的としたものであり、これらのスキルの肝要は敵を貫通する事ではなく、敵の肉体を破壊し確実に絶命させる事を目的とすること。先ほどのアラ殿のように貫通する一点を貫く矢では、たとえ脳天や心の臓を貫いたとしても、当たり所が良ければ、相手を死に至らしめる事が出来ぬ事がある」


 ああ、そう言えば昔テレビのドキュメンタリーなんかで、胸のど真ん中をナイフで刺されて心臓にも刺さってたけど病院に運ばれて緊急手術で助かったとか、拳銃で頭の半分を吹き飛ばされても助かったなんてのを見たことが有るような気がするな。


「確実に相手を仕留める為、本来ならば相手を突き抜けてしまうその力を、効率よく破壊力に変えるのが当家の技であり、その初歩がこの一の矢『鏃潰ぞくかい』」


 そう言って『四弦万矢』が矢を持ち上げるけど、あれはカボチャを砕いた矢だよな、あれ鏃の部分が潰れて平らになってる、まるでキノコみたいだな。


「体内に刺さった直後にこのように、矢じりをスキルで蕾が花開くように変形させ続け最終的にこのような形になる事で、矢の進む点の勢いを周囲へ広がる衝撃へと変えて、相手を貫き通る事なく体内を破壊していく」


 なんだろ、昔即売会で間違って買っちゃったミリオタ系の同人誌で読んだ、ホローポイント弾とかソフトポイント弾みたいだな。


 しかし放った矢の鏃の形状を変化させるとか、スキルって無茶苦茶だな、まあ剣を振っただけで斬撃が飛んでったり、人間が宙を飛んで突っ込んでいくようなスキルが普通に有るんだから、原理とかそんなのを考えるだけ無駄なのかもしれないけど。


「そして、矢じりの形を変える事無く、スキルにて思うままに推力を衝撃力へと変換させ、その割合や力の向き、伝わり方を自由に調整し放つのが中級技である二の矢『衝射しょうしゃ』」


 好きなように力の向きや性質を変えられるって、力学的にどうなんだ、いや考えても仕方ないかそう言う物だと思おう。


「これらのスキルを使う事で、頭を穿てば脳を砕き、胸に刺されば心肺を潰し、腹を射らば臓腑を引き裂き、相手を内部から破壊し殺傷能力を高める事が出来る。またこうして勢いの全てを威力に変え貫通させぬ事で、密集した場でも対象のみを仕留め、反対側へと抜けた矢で他の者に被害を与えるのを防ぐ事も出来る。もちろん『衝射』でも先ほどのカボチャを吹き飛ばした『鏃潰』ような破壊も可能ではあるが」


 うーん、もともとは暗殺用って言ってたもんな、となると複数人の中から一人だけ殺すなんてのも必要になるのか。しかしこれってホントにスナイパーみたいだな。


「また、殺傷力を高める方法としては、力の方向を変えるのではなく、矢を旋回させ相手を貫く際に周囲の肉をえぐり取って行くようにする『旋射せんしゃ』という技も出来る」


 そう言って、四弦万矢が矢を放つと、当たった木の幹にまるでドリルを掛けたみたいにねじれた大穴が空いてるよ。


「さらに『衝射』の熟練度が上がると同時に威力の高い強弓を使えるように成れば、こうして推力を衝撃力に変える量と回数を調整し、同一線上に並んだ複数の対象を思うがまま破壊する事も適おう」


 思いっきり弓をしならせてから放たれた矢が、その進路上にある木を次々と破壊しながら飛んでくけど、弓矢とは思えない光景だな。しかも、自由に破壊力を調整できるってのを証明する為か、それぞれの壊れ方を変えて、一本目と二本目は当たった部分を中心に大穴を空けて吹き飛ばし、三本目は普通に貫通、四本目も大穴を空けて、さらにその先の岩を粉々に砕くって。


 うん、これなら軍隊を撃退したってのも頷けるわ。



H30年2月24日 誤字修正しました。

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