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345 尋問

流血注意。

更新再開に伴う連続更新五日目。


「さて、お前の名前と所属を教えてもらおうか」


 伯爵閣下の前へ捉えている女騎士を一人連れてきたが、コイツから聞き出せることはもうほとんどないはずだ。


 すでに十分な『取り調べ』を行い、知っている情報の全てを吐き出させたのだから。


「モ、モブラ男爵家家臣、シューン・リョだ、です」


 縛られたままで既に怯えている女騎士に、閣下は一本の剣を取り出されるが、あれは銅剣か、しかし伯爵閣下が持たれるにはあまりにも。


 所々に錆が浮き、刃もいたるところで欠けてボロボロになっている、ゴブリンですら使わぬような品、あれではいくら閣下で有られてもまともに斬る事は出来ないのではないか。


「そうか、シューン、お前に聞きたいことが幾つかある。素直に俺の言葉に答えて欲しい物だ、お前が『俺の聴きたい話』を語ってくれるなら、すぐに終わる」


「わ、わかり、ました」


「よし、それじゃあ、まずは一つ目だ、お前は今回の陰謀に参加した貴族達が集まって話し合う場に立ち会って、その話の内容を聞いたことが有るんじゃないか」


 な、そのような情報は、どこからも入っていない筈だ、捕虜からもそう言った話は全くなかった。伯爵閣下は一体どこからこんな話を。


「し、知らない、そんな会合が有ったなどと聞いた事はありません、もしあったとしても、私程度ではそのような場には、がああああ」


 すぐに答えた、女騎士の腹に伯爵閣下の持った銅剣が深々と突き刺さる。


「ほ、ほんと、だ、し、しらな」


「いいや、お前はその場に居たはずだ、そうに違いない、そうだろう」


「ぐが、ぎゃ、あが、げっ」


 伯爵閣下は単語ごとに、手を動かされて剣を前後に出し入れされ、その度に女騎士が悲鳴を上げるが、やはりあの剣では刃毀れが引っ掛かるのか、時折剣の動きが不自然に止まり伯爵閣下が力ずくで剣を動かされる。


「がああああ、ばう、えご」


 そうか、閣下はあえてこのような剣を使われたのか、この刃毀れした剣ならばこうした場合の苦痛が切れ味の良い剣よりも増す事となるだろうから。


「ほ、本当だ、う、嘘、じゃ、ない」


 何度も往復された剣に抉られた傷口から、血と共に、ボロボロになった臓物の欠片がこぼれ落ちていく。


「そんな筈はないだろう、お前はその会合の護衛として現場に居たんだ、そうだろ、そうだと言え、居たと言うんだ」


 苦痛に苦しむ女騎士の耳元に口を寄せられ剣を前後に動かし裂け目を抉り続けながら、伯爵閣下は同じ言葉を何度も繰り返される。


「そ、そうだ、わ、私は、貴族の、方々、が、我が主君、と、と共、共に、車列を、襲撃すると、決め、た、か、会合の、場に、い、いまし、た」


「よく教えてくれた、いい子だ」


 途切れ途切れの声で、口から血を吐きながら答えた女騎士の腹から剣を抜かれた閣下は、優し気に微笑まれてその頭を撫でられてから、こちらを振り向かれる。


「回復だ、『不苦無痛丸』の欠片を飲ませてやれ」


 水と共に薬を無理やり飲まされ、痛みの引いたであろう女騎士の顎を掴んで自分の方へ向かせた閣下が再び問いを発せられる。


「お前が居たその会合の場には、今回の襲撃に騎士を派遣した貴族以外にも誰か爵位の高い貴族が居たはずだ」


「え、え、ぐぎゃああああ」


 なにを聞かれたのか、解らなかったのか女騎士が呆けたような顔をした直後、閣下は女騎士の右胸に銅剣の刃を押し当てられ、ノコギリを使うかのように、刃毀れの酷い刃を上下に数回動かし、胸をゆっくりと切り裂いていく。


「え、じゃないだろう。誰か居たはずだ、そうだろ」


「ぐぶ、い、いました、げだあ、たしかに、い、いました」


 こ、これは、尋問ではない、いや、少なくとも小官の知る相手の情報を吐き出させるための尋問ではない。


「そうか、うん正直は良い事だぞ、で、それは誰だったんだ」


「え、誰、あっつ」


 答えを知るはずのないことを聞かれ、何と言っていいのか解らなかった女騎士の頬を閣下が平手で叩かれると、数本の歯が血に混じって吐き出される。


「思い出せないか、よーく考えてみろ、きっとそれはクエラン侯爵だったんじゃないか」


「そ、そんなこと、があああああ、あじい、あじいいいいい」


 言いよどみかけた女騎士へ、伯爵閣下は今度は右の太腿に銅剣を当てて削り切り始め、骨が削られていく固い音と絶叫が響く中で、閣下は手を動かしたまま女騎士の耳元へまた口を寄せて囁かれる。


「クエラン侯爵だったんだよな」


「あ、あい、ぞ、そう、でず」


 女騎士の肯定する言葉にも、閣下は手を止める事無くさらにささやく。


「何が、そうなのかはっきりと言葉にして貰わんと、解らんな」


「ぐ、グエランごうじゃくが、いまじだああああ」


「ふむ、それだけじゃわからんな、どこに誰が誰と居たのか解らんとなあ」


 切断された右足がそのまま落下し地面に叩きつけられる中、閣下はもう片方の太腿に銅剣を当て同じ様にゆっくりと動かし続ける。


「が、がいごうの、ぜぎに、ごんがいの、事を、はなじあう、ぎぞくのかいごうの、ぜきに、ぐ、ぐ、グエランが、いばじだ、だからもう」


「そうか、なるほど、うん、答えにくい事を良く教えてくれた、ありがとうシューン。よし、回復してやれ、丸ごと一つ飲ませてやるんだ」


 兵士が落ちた右足を拾い傷口に当てながら、『聖馬の不苦無痛丸』を飲ませると、見る間に足が繋がり胸の傷もふさがっていく。


「それじゃあ、次の質問だ、その会合でグエラン候はどんな話をしていたか。『俺の話』をよーくきいて『きちんと正しい答え』を言ってくれよ」


 女騎士に見せつける様に銅剣を掲げ、その刃で軽く肩を数回たたき小さな傷をつけながら、閣下が言葉を続けていく。


「あ、あ、あ、ああああああ」


 閣下の言葉の意味と、また与えられるであろう痛みを察して女騎士が呻く中、尋問が続けられていく。







「それじゃあ、今までの話をひとまとめにして話してもらえるか」


 閣下が銅剣を片手でもてあそぶように女騎士の眼前で数回振ると、怯えた表情を浮かべたまま女騎士が口を開く。


「は、はい、わ、私が主君であるモブラ男爵の護衛として居合わせた会合は、ライワ伯爵家の車列を襲撃するための計画の同調者を募り、派遣する騎士の人員や襲撃計画を纏める為の物でした。そしてその場にはその計画の首謀者であるグエラン侯爵ご自身が居り、話を聞くと侯爵が直々に派閥の貴族達を計画に誘い入れたとの事でした。また侯爵はその会合の場にて、略奪品の分配も決めており侯爵家からは騎士を出さないにもかかわらず、戦利品の半分をもらい受け、残りを参加した貴族家へ分配すると、さらに成功の暁には参加した貴族達の派閥内での序列を上げるとの約束をしていました」


 あれから、同じように回復を繰り返す事二度、女騎士は痛みと共に長い時間をかけて伝えられた言葉を間違う事なく言いあげる。


「よし、それでいい、それじゃあこれが最後のクスリだ、しっかりと傷を治せよ」


 女騎士の口にまるで飴玉をあげるかのように『不苦無痛丸』を放り込んだ閣下が、兵士達へ顔を向けて指示を出される。


「今の証言の内容は書きまとめたな」


「は、これに」


 書記役を務めていた兵士の差し出した書類に目を通された閣下は、軽く頷かれてからそれを兵士に戻す。


「よし、この内容でこいつにサインと印章を押させろ。その後で湯を浴びさせて血や埃の汚れを全て洗い流せ、しっかりとした騎士用の服を着せろ。顔色が悪いな目立たない程度に化粧を施し、髪も櫛を当ててから結い上げろ。身なりを整えさせたうえで、『記録の石』を用意して今の言葉を自己紹介と宣誓の上でもう一度言わせておけ。血だまりや武器、拷問器具が映らないように、コイツの表情や口調にも気をつけろ。あくまでもこいつが自発的に証言したという体裁を整えろ。証言を強制されたなんて言われないようにな。『自白は証拠の王様』だ、それも文書の記録ではなく、映像にして自ら自白するところを残しておけば文句はつけられないだろうさ」


「御意」


「分かったか、これが『こちらが欲しい情報』を言わせる尋問のやり方だ、同じ要領でもう数人証言をさせて、内容の信憑性を高めろ。話の内容に齟齬が生じないよう気を付けろよ」


「は、承知いたしました」


「それと、今日から五日以内に講和に意思を示した貴族家と、それ以降に講和を申し込んできた貴族家とは扱いを変えるように文官連中に伝えろ。賠償の額や権益の移譲もろもろで早く下った者には、誰の目からも解るような便宜を図り、遅い者は無条件降伏とまでは言わないが俺に敵対しておいて、それをすぐに認めないような馬鹿がどうなるかはっきりさせるように。どうせ六日後以降は殆どの貴族が血相を変えて降伏してくるさ」


H30年2月18日 誤字修正しました。

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