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33 夜襲

ぎりぎり間に合ったー、なんとか四日連続投稿~~~~


今回はバトルオンリー、今までで一番の流血になります……

 月明かりの中で、無数の焚き火が浮かび上がる。


 やや離れたところに隠れてその様子をうかがっていた俺の背後から声が掛けられる。


「何時までこうしているつもりなんだ、早くしないと」


『鑑定』スキルを使って視界に浮かび上がる情報を整理しながらも、後ろに控えているヤッカに答える。


「奴らはここで野営するつもりだ、大半が寝付いてから仕掛ける、お前も今のうちに寝ておけ」


 前方から目をそらさずに相手の人数を数え直し、危険そうなスキルや装備を持った相手を一人一人ピックアップしていく。


「早く倒さないと、里のみんなが危険だろう」


 全員で五十七人、見張りは交代で八人で一人ずつバラバラに、野営地から少し離れた場所で持ち場に付いてる、これなら。


「さっきの男が言っていただろう、何事もなければ街までは危害は加えられないはずだ」


「ぐ」


「解ったらさっさと休んでおけ、戦闘の時に体力が戻っていなければ置いて行くぞ」


「わかった」


 ヤッカが意外におとなしく指示に従ったことで安心しため息をこぼすと頭に別な声が響く。


(ヤッカだけではなくお主も少しは休んだらどうじゃ)


 何を言ってるんだ、俺が眠ったら誰がタイミングを計るんだ。


(お主も疲れておるじゃろうし、昼間から広範囲の『超回復』を二度も使っておるのじゃぞ)


 確かに、ヒョウに片腕を千切られたし、全身に矢も食らったしな。


(MPなら大分回復しているだろ、MP回復系のスキルもあるんだし)


(儂が気にしておるのは精神面の疲労じゃ、緊張の続く戦闘と大きな痛みの連続、それに何回吐いたのかわかっておるのか)


 ラクナの言うとおり、里の戦闘後に数回吐いている。


 アラが同行していないせいで予備の服を用意できず、戦闘の直後は服にしみ込んだ血の匂いを嗅ぐたびに吐き気がこみ上げていた。


(あれはもう収まった、問題はない)


 幸い一人でいる間に殆どを吐き終えた為、偵察に出ていたハルや後ろから追いついてきたヤッカに気付かれはしなかったからな。


(強がるではない、人に手をかけたのは初めてじゃろう、誰であろうともすぐに慣れるものではない、お主ら『勇者』はなおさらじゃ)


(他の『勇者』もそうだったのか)


 意外さを感じながら、足元に落ちていた小石を数個拾っていく。


(人それぞれの違いはあったがの、お主ら『勇者』たちの世界は平和なのじゃろ、殺人に抵抗が有る者が多く、その直後は多かれ少なかれ疲弊しておったの)


 そうか、当然だな、俺だってユニコーン達の被害を見るまでは殺さずに済ますつもりだったしな、獣型はもちろんゴブリンなんかの人型魔物を倒した時とは全然違うな。


(少しでいいから眠っておけ、儂の空間を使って休めば、体感時間を伸ばして少しの時間でも気分を落ち着ける事が出来るじゃろう、時間を見て儂が起こすゆえ心配するでない)


(分かった、済まないな)





 小休止を終えた俺達は野営地を大きく迂回して迷宮の出口側に回っている。


 一人でも逃がせば同じことになるかもしれないと思い、退路側から攻めた方が良いと考えたからだ。


 たとえ逃げられても、逆側の出口に出るにはミーシア達の居る山小屋の近くを通らなければならないし、『軽速』のある俺や、ユニコーンのヤッカなら十分追いつける。


「俺が見張りを片づけながら接近して仕掛ける、ヤッカはこの道を守って一人も通すな」


「分かった」


 頷くヤッカをその場に残して、俺は物陰を移動しながら近づいていく。


(まったくお主は毎回毎回『軽速』をうまく使うのう)


 重量が無くなれば砂利を踏んでも小石は動かないし、小枝を踏んでも折れない、『軽速』があれば特に意識をしなくても足音を消せる。


 物陰から物陰への移動も素早く出来ることで、見つかる可能性を減らすことも出来る。


 見張りに気付かれないように背後から近付き『軽速』を解除して飛びかかる、口を押えると同時に切り裂きの短剣を背中から一気に突き刺す。


「ぐう」


 完全に動きが止まった死体を適当な木に立てかけて遠目には座って見えるようにし、次の見張りへと近づく。


 野営地の外周を時計回りに一周して、一人ずつ見張りを殺していく。


(全員背後から心臓へ一撃か躊躇いがないの)


 当たり前だ、俺がしくじればユニコーン達の命に係わるんだ。


 見張りは全員片付いたな。


(ラクナ、他は全員寝ている、で間違いないな)


(『鑑定』でそう出ている以上間違いはあるまい、異常状態としての『睡眠』でない以上、何かあればすぐに目を覚ますじゃろうがの)


 それなら、目を覚ます前に出来るだけ数を減らすか、一人で相手をするには数が多いし、指輪も昼間に大分使ったせいでMPは半分くらいしかない。


 ゆっくりと近づいて、外れで寝ている冒険者の横に静かにしゃがみこみ、口を塞ぎながら胸元へ短剣を刺し込む。


 目を見開いて暴れようとするのを足を使って押さえつけると、すぐに力が抜ける。


 音をたてないように立ち上がって、次へと向かっていく。


 ゆっくりと確実に敵の数を減らしていく俺を照らす焚き火の中で、薪が弾けて小さな音を響かせる。


「ん、なんだこの匂い」


 クソ、今の音で目を覚ましたのか、気付かれる前に仕留めれるか。


「あ、ああ、死んでる、し、死んでる」


 叫ばれたか、所々で声に反応したように冒険者たちが体を起こしだす、完全に起きる前に出来るだけ戦力を奪ってやる。


 手当たり次第に切り裂きの短剣を振り、急所狙いよりも速度を優先して周りの敵に切り付けていく。


 ありがたい事に、大人数で見張りを立てて休んでいたせいか半数以上は装備を外している、これなら。


「テメエはあの時の」


 囲まれたか、残った敵は42人、こっちは1人、指輪はどれも本調子じゃないし出来るなら強い相手用にとっておきたい。


 となればそれ以外は出し惜しみなしで行くしかないか、まずは。


 周囲を見回す俺を囲むように散らばった冒険者たちを、無数の焚き火の明りが照らしだす。


「テメエがこれをやったのか、ひでえ事しやがって」


 これだけ有るならちょうどいい、MPを使って魔力を広げていく。


「一人じゃねえんだろ、他の連中はどうした、全員なぶり殺しにしてやる」


 周囲を警戒しながら、意識の一部を向けると、不規則に揺らいでいた火がそのままの形で固まる。


「黙ってねえで何か言ったらどうだ」


 捕まえた、これならいける。


「もういい、やっちまえ」


 冒険者たちの足が動き出すより先に、その背後を無数の火の玉が襲う。


 上手くいったか、以前『蝙蝠の館』でハルに話を聞いてから、思っていたことだ、『魔力回路』や『魔道具』で火や水等の現象を作れさえすれば『魔力操作』で自由にできるなら、自然にあるそれらを『魔力操作』で操れないのか。


 ハルに非常識と言われ、他の娘たちの不評を買いながらも、肉を焼く際にさんざん練習してきた成果がこれだ。


 今では焚き火さえあれば、多少離れていてもバラバラに置いた肉をそれぞれ最適な火加減で焼けるようになっている、これだけ火のある今なら火力を集中させて数人は焼ける。


(ハルではないが、本当に非常識じゃのう)


 発想の違いだと思うが。


(よほどの魔力制御力が無ければ無理じゃ、これは今までにない新しいスキルじゃぞ、相応しい名を考えて置くがよい)



 急に背後からの火炎攻撃で相手が動揺した隙を見逃さず、一気に距離を詰める。



『切り裂きの短剣』なら急所狙いでなくても、当てれば骨ごと切り裂ける、防具を装備してない連中なら余裕で行ける。



「食らえ『強斬』」



 体を少しずらすだけで、動きの決まっているスキルは簡単に避けられる、途中で止める事の出来ない腕の軌道上に短剣の刃を向ける。



「ああああ」



 両手首を失った剣士を無視して次の敵に向かう。



 防具のない敵から倒していけば、数を減らせる。



「よくも『三連刺突』」



 槍の突きを飛び上がって避け、頭の上を越えて背後に回る、すぐに振り返り二突き目を終え三突き目の為に引き戻そうとしていた槍兵の頚骨を断ち切る。



 足を止めずに密集しているところに突っ込み、こまめに『軽速』を解除しながら短剣を振るう。



 腕が、手首が、足が、そして首が、俺が剣を振るうたびに地面へと落ちていく。



「クソ『斬突進』」



 俺の近くにいた剣士が突進系のスキルを発動させて急加速し、俺から距離を取る。



 そういう使い方もあるのか、だが。



「うわああ」



『魔力操作』で移動させた火で作った壁に、そのままの勢いで突っ込んでいく。



 次だ、武器を構えてくる一団に向かい間をすり抜ける時に切り付けていく。



「ぎゃあああ」

「俺の腕がああ」

「血が、誰か血を止めてくれ」

「た、たす、『治療士』を傷薬を」



 後ろにいる敵にははもう戦闘能力が無い、次はどこを潰す。



「誤魔化されるな、奴のスピードはまやかしだ、攻撃の前後は速度が落ちる」



(ばれた様じゃの、重量が無ければ攻撃の威力が無くなる以上、『軽速』を使い続けるわけにはいかぬ、どうする)



(俺だってゴブリン戦で気付いたんだ、これだけ戦ってれば気付かれるのは当然だろう)



(手はあるのか)



(当然だ)



 とはいえ、すぐには出さないがな。『魔道具』の効果任せだったゴブリンとは違う、『軽速』を切るタイミングも、剣や格闘の技術も、駆け引きもだ。



 突き出された長槍の上に飛び乗り、柄の上を駆けて、『槍騎士』の首筋を薙ぎ斬る。



『槍騎士』が倒れるよりも先に槍の柄から降りる。



 これで22人、問題は残り20人の大半が防具をつけてる事か。

  


(分かっているとは思うが、防具に当たれば『切り裂きの短剣』を損なうぞ)



「魔法士『照明』の魔法を使ってから火を消せ、どんな仕組みか知らないが奴に利用される」



 消される前に使い切る、残っている火を面倒な全身鎧に集中させる。



「ぐうう」



 鎧の中で蒸し焼きにされる二人の騎士を一瞬照らし出して火が消える。



 明かりが灯る前にもっと減らす、暗闇の中を直前の記憶と『鑑定』で浮かび上がる文字を頼りに、装備の薄い相手を切り倒す、残り16。



『『照明』』


 魔法士の声と共に二つの明りが野営地を照らす。



 集団に突っ込み鎧の隙間を狙って、短剣を振るう。



「くたばれ『横斬波』」



 離れたところから水平に放たれた斬撃を、上空に飛び上がって躱すが、俺の周りにいた5人が巻き込まれ腰のあたりで斬り飛ばされる、残りは11。



(味方ごとか、だいぶ余裕がなくなってきたようじゃの)



「上空なら身動きできない、狙い打て」



 さっきから指示を出してるのは前もいたLV27の『剣士』か、さっきの『横斬波』もこいつか。



 下から三本の『飛斬』が俺を狙って放たれる。



(どうするつもりじゃ、このままではあのゴブリンと同じじゃぞ)



 心配したような声を上げるラクナを無視して、ポケットから小石を取り出して放る。



『軽速』の効果対象は使用者と身に着けた装備やアイテム類だ、なら俺の手を離れた石はどうなるか。



 ゆっくりと落ちる石に足をかけ踏み込むと、重量が戻り『軽速』中の俺よりも重くなった石は確かな手ごたえを返してくる、そのまま俺は石を蹴り方向転換する。



 一か八かだったが、予想通りか。



「空中で方向転換だと、どんな魔法だ」



 魔法じゃねえよ、もう一つ石を使い急降下と同時に装備の薄い『魔法士』を切る、後10。



 一気に距離を詰めて、近くの『盗賊』に切りかかる、避けられた、くっ。



 連携して俺の攻撃の直後を狙ってきやがった。



「思った通りだ、攻撃の前後の速度なら当てられる、スキルや大振りの攻撃は避けろ、隙の出来ない小刻みな攻撃で削って行け」



 それは無駄だ、速度を維持したまま一人に近寄り顔の前に左手を当てる。



『火』



「がああ目が目が」



(考えたの物理攻撃でなければ、『軽速』を解除する必要はないしの)



 俺の出せる火はせいぜい野球ボールより少し大きい程度だが、顔面に手を当てて発動させれば両目を焼き潰すくらいはできる、視力さえ潰せば戦力にはならない、後は9。



「魔法だと」



 ここまで減らせば指輪のMPも持つか。



 一度に氷水と風砂の二つの指輪を発動させ、こぶし大のサイズの氷塊と岩石を大量に作り出す。



(指輪のMPをすべて使ったという事は)



 魔力操作を使って、すべてを操り狙いに向けて放つ。



 先を尖らせた弾丸を避けきれず全身に浴びた6人が崩れ落ちる、生き残りは3人。



「ば、化け物が」



「あれは『魔道具』だ、ならMP切れでもう撃てないはずだ」



(なかなか物知りがいるようじゃな、じゃが)



 まだ『雷炎の指輪』が残ってる。



 俺の手に炎を作りだし放つ。



「避けろ」



 正面から放った6発の火弾は素早く動く男たちに躱される、さすがは最後まで残ってた連中だ、だが。



 どんどん小さくなっていく火弾に意識を向けてMPを使う。



「があああ、なんで」



 魔力操作で強引に引き戻した火弾を男たちの背中に当て、動きが止まったところを切り捨てる、0。



 周囲を見回しても、戦える敵は残っていない、生きている者はかなりいるが、誰も彼もまともに戦えるような状態ではない。



「ヤッカ、そっちに行ってないか」


「あ、ああ、お前が全部倒したからこっちは大丈夫だった」


 顔色が悪いな、いや当然かこんな場所じゃな。


「里の連中を助けたら手伝わせろ」


 端の方にまとめて縛られていたユニコーン達の方へ行くヤッカに声をかけながら短剣をしまい、足元に落ちていた斧を拾う。


(どうするつもりじゃ)


(別々な武器を使って止めを刺す)


 俺が使った武器は『切り裂きの短剣』だけだ、魔法や同士討ちで倒した敵を除けば死体につく傷の種類は全部同じになる、これだけの数の死体をすべて隠すのは無理だ、誰かがここを調べれば俺一人とは思わなくても少数の襲撃で倒したことに気付くかもしれない。


 そうなれば腕に自信のある相手ならすぐにでも次の敵が来るだろう。


 ヤッカの話ではハルみたいに空から見る事が出来なければ、こんなに早く新しい道を見つけられないはずらしい。


 だが、ここには鳥人はいなかった、それならここに居た連中以外にもまだ敵がいる可能性がある。


 いろいろな種類の武器で別々な傷をつけておけば、大人数で襲撃したと思わせれるかもしれない。


 そうすれば、向こうも人数を集めるのに時間をかけるだろう、その間に対策を立てれば。


 里の者達にも手伝わせて、冒険者全員に止めを刺し、無数の傷をつけ終わったのは、朝になってからだった。



総合評価が250になりました、ついこの間200になったと思ったらもう50も、これからもよろしくお願いします。


H26年9月5日句読点、誤字修正、一部文章追加しました。

H27年1月26日誤字修正しました。

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