32 襲撃
久々の三日連続投稿成功~~
今回は、前回より血が多め(R15)です。
「あれは、里が、貴様ーー」
里から上がる煙と火の粉を確認した瞬間、ヤッカの槍が俺に向けられる、おいおい何考えてるんだよ。
「どういうつもりだ」
「リョー様」
ミーシアが俺の前に出ようとするのを、手で制して、ヤッカに向き直る。
「黙れ、今ボクらの里が襲われてるのは、お前等が手引きしたんだろ」
なんでそうなっちゃうかな、それよりも早く里の方をどうにかした方が良いと思うんだけど。
「外と里を繋ぐ道はボク達ですらまだ見つけてないんだ、空を飛べるそいつ以外に誰が人攫い共が通れる道を見つけられるっていうんだ」
「そんな、わたくしはそんな事いたしませんわ」
ああ、そう言う事かハルを疑ってるってわけだな、だけど。
「向こうにも鳥人族が居るだけの事だろう、それにハルはずっと俺達と一緒にいて常時ユニコーン族の誰かが付き添っていた」
「くっ、それなら」
「崖崩れのあった日にしても別行動をとっていたのは半日やそこら、しかも大半は夜だ、それで予想外の崖崩れの迂回路を見つけて外に伝え、同時に俺達の探索もか」
ヤッカが言いたかったであろう疑惑を先に否定すると、すぐに黙り込む。
ハルが一度にそれだけできるほど優秀だったらどんなに助かることか。
「だけど、お前らの他に誰が里を」
「それに、ユニコーンの角が目的ならそんな面倒な事をしなくても、里に招かれた時点で襲っている、人数が増えれば取り分が減るだろう、俺達だけでも十分に圧倒できるからな」
「それは……」
「それよりも急いだ方が良いだろう、助けるにしろ、敵を迎撃するにしろ早い方が良い」
「ヤッカさん、思う所は有るでしょうが、ここはご主人様の言うとおりにした方が良いかと」
「クソ」
『獣態』に変身して一気に里に駆けていくヤッカを追って俺達も進む。
「これが角目当ての襲撃なら戦闘になる可能性もある、いつも通りミーシアが先頭で後ろにハル、サミューが指示を出しながらアラと一緒に左右を守れ、最大の目的はユニコーンの保護及び避難の支援だ」
俺の言葉に全員が頷き、走りながらそれぞれの位置へと移動しだす。
「それと、交渉や脅迫の余地があるかもしれない、戦闘は最低限にして人死には避けるように」
こないだみたいに威圧だけで何とかなれば良いんだけどな。
「え、えっと……」
「まだ言ってますの」
ん、なんだ何か言いたい事でもあるのかな。
「ご主人様のお言葉ですが、人さらいを助けるのはやはり問題が有るのではないでしょうか」
「そうかもしれんが」
それでも殺人はちょっとな。
「リョ、リョー様、前から里の人たちの匂いがいっぱい来ます」
ミーシアの言葉通りに前方からユニコーン達が逃げてきてるけど、あれ足りなくないか。
「おお、リョー殿、戻られたのか」
「長老何が有ったんだ、これは一体」
誰も彼も服が汚れてるし怪我人も少なくない、何より子供の数が明らかに足りないって事は。
「いきなり襲撃を受けた、数が多かったせいでここに居る者達を避難させるので精一杯だった」
「村に様子を見てくる、ミーシアは怪我人の手当てを、サミューはアラとミーシアを連れて、山小屋までの避難を護衛しろ、ハルは俺と来い」
「解りました、アラちゃんミーシアちゃん行くわよ」
「リョー殿、気を付けてくれ、本隊は引き上げたようだが、まだ何人かは残っているはずだ」
三人を残して進む俺に、ハルだけが付いて来る。
「解ってらっしゃるの、弱いとはいえ里の戦力を圧倒できるような相手に手加減なんてしたら、こっちもただでは済みませんわよ」
それは解ってるけど、解ってるけどさ。
里の入り口が見えてくると、そこは戦闘中だった。
「ヤッカとあれは」
槍を振り回すヤッカの相手をしている冒険者達の中に、見覚えのある顔が有った、あれは先日俺が追い返した連中の一人だ。
彼らの戦ってるすぐ横には、角のない死体がいくつか。
「どうなさるおつもりかしら、放っておけばヤッカが危ないと思うけれど」
「ヤッカの相手の撃退を優先する、ハルはこの場で支援しろ」
ゴブリンズソードを抜き、ヤッカの背後に迫った長剣を弾く。
「やっぱり来たかあんちゃん、他の女達はどうしたんだ、お前らのおかげで頭数が増えて取り分が減っちまったんだ、その分は体で払って貰わねえと割に合わねえからな」
「まあ俺等はお蔭で、ユニコーンの情報を貰えて分け前を頂けるんだがな」
俺のせいか、俺がこんな奴らに情けをかけたから、里が襲われたってわけか。
「クソ、お前らよくも里を、殺してやる絶対に殺してやる」
組み伏せられたヤッカに見せつけるように、冒険者が切り取った角を掲げる。
あの時サミューやラクナの言うとおりにしておけばこんな事にはならなかったって事か。
(気持ちは解るがの、落ち着かぬか、冷静に戦わねば勝てるものも勝てなくなるぞ)
「ああ、解ってる、冷静に確実に倒す、ハル」
俺の叫び声と同時に、後方から魔法が放たれる。
『落雷陣』
連続で落とされた無数の雷に男達が怯んだ隙に一気に駆け寄る。
人型がどうした、多少ガタイがデカいだけでゴブリンと一緒だ、防具を避けて正確に急所へ打ち込めばそれで済む。
真横に振った剣先で、正面の一人の両目を潰し、仰け反るすぐ横を抜け、ヤッカを押さえていた相手に駆け寄る。
「食らいやがれ」
大きく振りかぶった相手の剣が振り下ろされると同時に『軽速』を使って体を横にずらす。
スキル狙いなのが見え見えだ。
足を止めずに進む俺の横を、縦に放たれた『飛斬』が通り過ぎる。
「あ、ああ来るな」
目の前には剣を振りぬいたまま硬直し無防備な敵がいる。
「た、たす……」
防具に覆われてない首筋を一撃で切ると同時に、次の相手に突き進む。
「ヤッカ里の外まで下がって、ハルと合流しろ」
「だけど、いや、解った」
さすがにさっきのフロアボス戦で自分が足手纏いだって解ってくれたか。
前衛職のヤッカが守ってくれればハルも安全だしな。
さてと、返り血を浴びたまま振り返ると、冒険者たちが怯えたように剣を構える。
一人でも逃がせば、また同じことになる、それなら、全員倒す。
こみ上げる吐き気を無理やり押さえ込んで、『軽速』を発動させる。
「やれー」
奥にいた男の合図とともに無数の矢が飛んでくる。
「くっ」
全身に十本以上の矢が刺さる。
「どうだ手前のために用意した、弓狙撃兵五人の三段撃だ効くだろ、ほかの女も楽しんだ後ですぐにそっちに送ってやるよ、え……」
偉そうに話していた男の表情が凍りつく、ハリネズミのように全身に矢を突き立てた俺が、数秒立ち止まっただけでまた走り出せばそうなるよな、だが。
戦闘中に放心するのは命取りだ。
距離を詰めると同時に『軽速』をこまめに解除しながら剣を振るう。
正面の盗賊女の脇腹を抉る。
大斧を振る戦士の『振下』スキルをかわし、そのまま硬直した手首の血管と腱を切る。
集団の間を抜けて、矢の飛んで来た方向へ進み、隠れていた二人の弓兵を見つける。
「逃がすか」
背を向けて逃げ出す二人に追いつき頸動脈を順番に切り裂く。
崩れ落ちる二人を意識から外して次の敵へ向かおうとする俺に数本の矢が向かってくる。
さっきは油断したが、来ると解ってればこんな攻撃は。
「なんだよそりゃあ」
目の前に迫った九本の矢を隙間を縫うようにしてかわし、目の前にいた剣士を切り捨てる。
その間もハルの放つ魔法が逃げようとする相手を吹き飛ばしていく。
剣士の集まっている所に、駆けて行くと、四発の『飛斬』が放たれるが、体を前方に倒し、地面すれすれを這うように突き進む。
低い姿勢のままスキルを放った男たちの背後に回り、振り返りざまに剣を振って両足のふくらはぎを切り裂く。
『二連刺突』『強斬撃』『速斬』『二連切』
後ろと左右から放たれた近接攻撃スキルを避けると、目標を失った刃はそのまま進み、味方を傷付けあう。
「がああ」
傷の浅かった一人に止めを刺してあたりを見回すと、すでに立っている敵はいなかった。
残っていたはずの弓兵などはハルの魔法で焼き払われている。
「た、助けてくれ」
(ラクナ、こいつらを捕えておく必要性はあるか)
(何もないじゃろう、牢もなく見張れる人材もいない、里の者では冒険者を捕えておけぬだろう、そして逃げられればまた同じ事になるじゃろうし)
(解った)
剣を持ったまま一人一人確認し止めを刺していく。
「た、頼む助けてくれ」
前回もいた冒険者が命乞いをしてくる。
「聞きたい事が有る、ユニコーンの死体が少ないのは何故だ」
「ほ、本隊が連れて行ったんだ、角は切り取ってすぐ加工した方が効果が有るから生かしたまま……」
まだ続けようとする、男の胸元にゴブリンズソードを突き刺して止めを刺す。
「ハル、上空から人攫いの本隊を探せ、それが終わったらサミュー達と合流してユニコーン達を守れ」
「あなたはどうなさるつもりですの」
近寄ってきたハルがそう尋ねるが、日暮れまでの時間がない。
「夜襲をかけて、連れていかれた連中を助ける」
「それならボクも行く」
ハルを守ったのだろう所々に傷のあるヤッカがそう言ってくるが。
「必要ない、それよりも別働隊に備えて里の連中を守れ」
「いやだ、ボクも行く」
これは、説得するにしても時間がかかるか。
「解った、ただし俺の指示には必ず従え、それと俺は先に行っているから獣態で山小屋まで行って何人か連れてこい、生存者を探して救護させるんだ」
多分次回もバトルで赤色多めです、ホントはもっとピンク色がいいんですけど。
何かご意見ご要望があればぜひ感想をお願いします。
H26年9月2日誤字、三点リーダー、句読点訂正。
H27年1月20日 誤字修正。




