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314 女騎士

く、気が付けば、前回の更新から一週間たっていた、年度末って忙しいしイベントも有ったし……

他にも書きたいものがあるのに書けない。

このままだと、予定していたタイミングが間に合わない……


 クソ、まさか自爆するつもりだったなんて。


 とっさに、『斬鬼短剣』を振って女騎士の腕をむき出しだった肘の辺りで切り落としながら後方に跳び適度な間合いを取り、同時に右足を思いっきり蹴り上げて目の前の腕を上空へ弾き飛ばし、更に後方へ跳んで距離を取る。


『魔骨弾』に込められる魔法はそこまで強力じゃない筈だから、ある程度距離を取れば大丈夫なはずだ。


「あ、ああ、う、うで、わたしの、うで……」


 呆然とする女騎士の上空で、斬り飛ばされた手に握られたままの『魔骨弾』が炸裂し肉片と血がその本来の持ち主の上に降り注いでいく。


「そ、そんな、腕が、騎士の、剣が」


 唖然とした表情で、血の雨を浴びながら腕が最後に有ったはずの場所を見つめてるけど、これはちょっと罪悪感が、考えてみると戦闘職にとって武器を握る利き腕って商売道具そのものだよね、それが目の前であんなことになったんじゃそりゃまあこうなるか。


 しかし、まさか自爆するなんて、いや俺だってこの間ヤスエイと相打ちになるつもりで自爆同然の魔法を使おうとしたけどさ、あの時はみんなが助かるにはそれしかないと思ったからだったけどさ。こいつが自爆しようとしたときに叫んだあの言葉を考えると、そうしろって事前に言われてたとしか思えないんだよな。


 ホントにどこのバカ『勇者』だよ、こんな世界に戦陣訓なんて物騒な物を伝えたのはよ、死にたがりの騎士なんかがゴロゴロしてるこの世界じゃシャレにならないだろうが。


 しかも、特徴的なあの言葉ぐらいしか伝えてないんだろうしさ。もしかすると一人一殺なんかもそうなのか。


(久々に聞いたのう、生き延びて捕虜と成るような恥ずべき行いはするな、あえて死ぬ事で罪人としての汚名を残さないようにせよと言う意味で、かつての『勇者』クニオが持ち込んだ言葉らしいが。まったく、このような人材を使い捨てにするような言葉を伝えられても、死人が増えるだけゆえ、神殿などが使わぬよう通達しておるというのに、なかなか無くならぬ物よの)


 やっぱり原因は『勇者』なんだ、ん、あれ今『らしい』って言ってたけど、もしかしてラクナはその『勇者』と面識が無かったりするのか。


(ラクナ、その『勇者』はどんな奴なんだ)


(儂も直接会った事が無いゆえ伝聞になるが、お主らの世界でいう所のミリオタというものじゃったらしいの、戦術などには詳しかったらしいが、お主らの世界の人同士の戦いと、この世界での戦い方には違いが多いためあまり役に立つ事はなかったらしいがの)


 ああ、まあ、銃火器や車両を始めとした機械が有る現代の地球での戦闘方法と、剣と魔法の世界で魔物を相手にするのじゃ勝手が違うか。しかしミリオタか、だからってあんな言葉を持ち込むんじゃねえよ。


 しかしやっぱり……


(ラクナ、お前はその『勇者』に会った事が無いっていうのはどういう事だ)


 こいつは全ての『勇者』の道案内をしてた訳じゃないのか。


(そう言えば言っておらんかったの、『勇者』を導くための魔宝石は儂の他にもいくつかあっての、一定年数で交代して役割を果たしておるのじゃ。先日神官長殿からも聞かされたようじゃが、長年『勇者』と共に行動すれば知る事の出来る範囲はどうしても『勇者』の旅した範囲のみとなる。そうなれば必然的に知らぬことが増え、後世の『勇者』を導くという役割に支障をきたすからのう)


 ああ、それはそうか、時折神殿によって情報のアップデートが出来ればいいけど、それも、この間の話だと更新には結構日数がかかりそうだったよね。


(そのため一定の年数を『勇者』と過ごした石は『勇者』が交代する際に神殿に返還されると、他の石と交代し各地の主だった情勢の変化や『迷宮』の現状などの情報を時間をかけて更新するのじゃ。またこうする事によって、何らかの理由で『勇者』が魔宝石を紛失したり返納できなかった場合も、空白を開けずに次代の『勇者』の案内が可能じゃし、その間に回収する事も可能じゃ。もちろん、『勇者』と共にある石だからこそ知る事の出来る事もあるゆえ、魔宝石同士はそれぞれの経験を共有するがのう)


 なるほどね、それならラクナが直接知らない『勇者』が居てもおかしくはないのか。


 さてと、ラクナとの話はこのくらいにしておくか、幾ら敵を無力化できたって言っても戦闘直後なんだから油断はできないし。


「いやあ、旦那やってくれやしたねえ、これだけの数を無事に生け捕りに出来りゃあ、情報収集も取引もやりたい放題って奴でさあ」


 いつの間にか俺の横にいたテトビが呑気そうに言ってるけどさ、これを無事にっていうのかな、生き残ってる殆どが半死半生みたいな感じだし、サミューが倒した分を除けば一番命の危険がなさそうな女騎士にしたってあの状況なんだし。


「死なねえ程度に、なおかつ相手が何かする余力を残さねえように、きっちり倒してくださったんで、自爆したのはこの騎士様だけでしたし。いえね、旦那んとこのお嬢さんたちが倒した連中の持ちモンを軽ーく見やしたら、結構な人数が『魔骨弾』をもってやして、どうやらヤバくなったら自爆しろって感じで、命令した方はそれが本命みたいですね」


 つまりは、大昔のバンザイ突撃みたいなものって事かよ、本気で使い捨てにされてたんだなこいつら。


「まあ、ラッテル領まではもう少しですし、車列本隊もまもなく追いつきやす。そうすりゃ回復職も何人かいやすから、ある程度は死なさずに済むでしょうね。それにある程度の怪我をさせて精神面で追い込まれてて平常心でいられない方が色々と情報を吐き出してくれそうですし」


 なんか言い方がな、これは拷問してでも情報を絞り出すって事だろうか。


「その表情を見てやすと旦那が何を心配なさってるのか想像がつきやすが、安心してくだせえ旦那、痛めつけて情報を絞り出すなんて言う無粋な真似は致しやせんって。まあ、そう言った事が有効な場合も有りやすから、絶対にって事じゃありやせんが、返す可能性のある捕虜にあんまり手荒な事をしやすと、後々の交渉の時に相手に付け入られる理由になりかねやせんしね。下手に部位欠損みたいな傷物にして戦力として役立たずになってると、跡目相続にも影響したりするんで受け取り拒否されるって事も有りやすし、場合によっちゃ切り落とした部位を質に取られて、密偵を強要してるんじゃなんて、いらねえ疑いを持たれたりしやすから」


 それって、返すつもりじゃなかったら何をしても良いって言ってるような物じゃないのかな。いや、まあ俺だって盗賊とか襲撃者相手にはかなり非道な尋問をしたりしたけど、こう客観的に考えてみるとさ、色々とね人道的にどうかなと。俺が言えたセリフじゃないってのは重々解ってるんだけど、どうしてもね。


「それにねえ、こういった思い込みが強そうな手合いの場合、痛めつけてもそれが試練だと思い込んで自己陶酔しちまったり、あるいは痛みから逃れるためにこっちが喜びそうな話を好き勝手に自分で作った上に、それを本当の事だと自分自身が信じ込んじまって、正確な情報が取れなくなっちまうなんて事も有るんでさあ」


 うーん、拷問が必ずしもいいって訳じゃないって事か、確かに苦痛から逃げる為なら何でもやるつもりなのに伝えるべき情報がないなら嘘でも言いたくなるのかも。


 しかも、自分で自分の嘘を信じ込むって、いや、聞いた話だと洗脳って極限状態の方が上手く行きやすいらしいから、拷問されて同じ言葉を繰り返し口にしてればセルフマインドコントロールって感じになるのかな。


「それにねえ、こういったふうに、敵に捕まるくらいなら自害しろなんて教わってるような連中ってのはね、簡単に情報を吐いてくれるんで、拷問なんてする必要が無いんでさあ」


 え、そう言う物なのか、なんか感じ的には何をされてもだんまりを決め込んで、口を割らなそうな気がするんだけどな。


「捕虜になれば実家や主家が間違いなく身代金の支払いや解放交渉をしてくれるようなお家の場合ですと、どうしようも無くなった時は無理をせず投降するよう指示してやすんで、捕まった時には相手に知られても構わねえ情報と、知られちゃやべえ情報を区別して、問題のない情報だけを言って相手を満足させ、重要な秘密を守る話術ですとか、待遇改善を交渉する方法なんてのを教わりやすし。本職の密偵や暗殺者なら、もっと確実に死ぬ方法や万が一捕まった時にゃあ、ホントの情報に致命的な嘘を混ぜ込んで相手を混乱させて味方を有利にさせ、ついでに怒り狂った相手に殺して貰って情報漏洩を防ぐなんてことを仕込まれやすが。こういった単純に死ぬのが美徳なんて教え方をされてるような、使い捨ての連中ってのは、命令する方としては、捕まる前に死ぬ事になってやすから捕まった時の対応なんて教える必要はない、それどころか下手に教えりゃあ命を惜しみかねねえってんでね。こいつらは捕まった時に何を言っちまうとまずいのかってのを知らねえんでさあ」


 うーん、そう言う物なのか。


「なもんで、こういった死にたがりの騎士様ってのは、ちょーっと煽ててみて自尊心を刺激したり、かるーくカマをかけて誘導尋問したりすると、ポロポロと情報を零してくれるんでさあ」


 あー、言われてみると無駄にプライドが高い相手とかって、こっちの知らない事を自分が知っているっていう事に気が付くと、自分が知っているって事を自慢したくて、それを言いたくてたまらなくなるからな。


 俺も営業時代はそう言う所を利用して相手を煽てていい気分にさせて契約を取ったり、場合によっては営業先で競合してる相手の出したプランの情報を聞き出したりしたけど、まさか軍事なんて言うめちゃくちゃ情報に厳しい分野でもそれが上手く行くなんてね。


 まあ、これに関してはこの騎士連中の受けて来た教育の問題なんだろうけど、どうせヤバくなったら勝手に死ぬから馬鹿のままの方が丁度いいって方針が間違ってる気がするな。組織としてどうなんだよそれって。


「ついでにいや、旦那んとこの色っぽい姉さんにやられた連中なんてのは、姉さんが鞭持って尋ねりゃなんでも答えてくれそうですしね」


 ああ、サミューにやられた連中はあの短時間で調教されちゃって癖になってたりするのかな。あれ、でもさ。


「テトビ、この連中が意識を取り戻したらまた自爆したり自殺しようとする危険性があるんじゃないか」


 死なせたくないって訳じゃないけどさ、必要な情報を聞き出したり交渉の駒にするなら死なれたら困るし、だからってこれだけの人数を監視するっていうのはなかなか大変だよね。


「それなら心配はねえでしょうね。もうどうしようもない現状になっちまって死ぬしかねえ、楽になるための自殺と違いやして、やらざるを得ないって状況での自害ってのは本人が本心から死にたいって思ってる訳じゃねえんで、結構な覚悟が要るモンでさあ。さっきの女騎士みてえに戦闘中やその直後なんかで気が高ぶってたりするならともかく、そのタイミングを逃しちまって一旦落ち着いちまうとなかなか覚悟が決まらねえんですよ、そんな状況でこっちが手荒な真似をしねえでちょっといい待遇を用意してやりゃあ尚更死にづらくなりやす。特にこんな風に一回死にぞこなっちまいやすと、死のうと考える度にその時の恐怖が戻って来てさらに躊躇しちまいやすし」


 そんな物なのか。


「まあ、とりあえずはせっかく生け捕りにした捕虜でも部位欠損のままじゃ手札としての価値が下がっちまいやすんで」


 そう言ってテトビがポケットから出したのは薬の小瓶か。


「テトビ、それはもしかして魔法薬か」


 言い方からすると、さっき吹き飛んだ女騎士の腕を治すつもりなんだろうから結構強力な奴だよな。


「へい、実は以前に魔法薬が必要と成るような怪我をするような場合で薬を切らしてるって事が有りやしたんで、それからは常に切らさないようにしてるんでさあ。まあ、伯爵さまんとこの薬と比べりゃ効果も弱いですし、副作用も有りやすがね」


 副作用って、まあ考えてみればあってもおかしくはないのか。魔法薬の副作用って聞くととんでもないのが有りそうだけど。


「ちなみに聞くがどんな副作用があるんだ」


「こいつを使うとしばらくの間、治った部位がとんでもなく痛むんでさあ、それこそ痛みの余り気絶して、三日三晩うなされてたまに痛みで目が覚めてすぐ気絶するって程度ですが、多少でも痛みに慣れてりゃ耐えれるんで、あっしなんぞには丁度いいんですがね。何しろ副作用の分他の薬より安いんで仕入れやすいですから」


 おいおい、こいつさっき言ってた事と矛盾してないか。


「痛みで苦しむって、それは拷問と一緒じゃないのか」


「本人は気絶してやすから、目が覚めた時にはたいして覚えてねえでしょうよ、せいぜいとんでもなく悪い夢を見た程度ですって。それよりも正気になった時に腕がないままの方がヤバいですぜ、騎士にとっちゃ剣を持てねえってのは自分の存在意義がなくなるのと一緒ですからねえ。それだけで気が触れちまいかねやせんぜ、そうなっちまえば情報を取るのも交渉のネタにするのも出来なくなりやすから」


 ああ、アイデンティティの喪失って奴か、まあ確かに今まで何かの技術一本でやってきた職人さんとかが事故や病気で、それまで通りの仕事が出来なくなると、すごい大変だっていうもんな。


「さてと、よっと」


「ぐああああああ」


 テトビが傷口に薬を掛けた瞬間、年頃の女の子とは思えないようなすっごい悲鳴を上げて気絶したんだけど、ホントに大丈夫なんだよね。


「さてと、もうすぐラッテル領ですし、後続が到着次第こいつらを荷車に載せて、とっとと進みましょうや」


すっかり書くのが遅くなっていましたが、ツイッターの方でお願いして絵を描いて頂きました。(https://twitter.com/tohruhannpa/status/831068932899352576)


H29年3月28日 誤字修正しました。

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