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27 分散

ふう、ぎりぎり今日中にアップできました、今回はちょっと痛いシーンが、流血とか怪我とか苦手な方はご注意を。

 洞穴の中で頭から毛布を被っても、震えは全く収まるようすがない『寒暑の岩山』とはよく言ったもんだ、この寒さ昼間と大違いじゃねーか。


 火を焚いても全然温かくならないし、それ以上に。


「腹がへったな」


 ミーシアは食べ物を探しに行くと出て行ったきりだし、他の皆はここにはいない。


 ほんとなら今頃は馬車の中でサミューのお茶でも飲んでるはずだったんだけどな。


(地崩れに巻き込まれて崖から落ちるとは、お主もついておらぬのう)


 俺だけだったらなんとかなったかな。


 いや、あの状態じゃ仕方なかったよな。


 痛っ、仕方ないとはいえ『魔法』を使ったからな、暴走のダメージが有る上にMPの残りもほとんどない、これは回復まで時間がかかるな。






 ユニコーンの少年たちと別れた後、俺達はすぐに下山することにした。


 まあ俺はみんなが山道を進んでる間に『軽速』を使って飛び回りながら何か変わったものや、魔物の接近がないか探してたんだけど。


「落ち着きなく飛び回って、まるで子供のようですわ」


「ご主人様には何か目的が有るのでしょう、ユニコーン狩りが無くなったので他の稼ぎ方を考えているかも」


「暑いです……」


「ねむいよお……」


 ミーシアとアラは辛そうだな、休憩させたいけど崖の中腹を切り出したような道じゃあな、狭いし危ないから早く降りれるといいんだけど、ん。


 今なにか実が生ってたような気がしたな。


 崖の下の方か、ちょっと降りてみるかな、なんか今の気になるんだよな見覚えがあるような気が、ん、落石か危ないな。


 あれ、なんか嫌な音がしたような、なんだろどんどん大きく近くなってきてるような。


 上を見上げるとそこには。


「崖崩れだ、逃げろ」


 大量の土砂と一緒に落ちてくる幾つかの大岩。


「くっ『岩壁結界』早くここまでいらっしゃい」


 ハルの目の前に岩壁が盛り上がっていき、彼女を囲むように安全地帯を作っていく、あそこまで行ければ。


「アラちゃん、しっかり掴まってて」


 アラを抱きかかえたサミューが全力で安全地帯に飛び込む、俺もすぐにハルの近くにたどり着くが。


「ミーシア、お急ぎなさい」


「もうちょっと」


 もともと遅れ気味だったために俺たちから離れていたミーシアが必死に走っているが、疲れているうえに重量が有るためにスピードが出ていない。


「ミーシア、武器と盾を捨てろそのままじゃ間に合わないぞ」


 俺の言葉にミーシアは一瞬自分の両手を見るが、そのまま走り出す、ちょっと言う事を聞いてくれよ。


「せっかくリョー様から、貰った武器なのに……」


 だめだ間に合わない、このままだとミーシアが。


「ミーシア!」


 目前まで岩が迫っているのに、ミーシアと俺たちの距離はそれよりも遠い。


「こ、こうなったら」


 おいミーシア、そんな土砂に向かって盾を構えてどうするつもりなんだ、無理だろそんなの、抑えられるわけないって。


「くうう」


 てっ耐えてるよ、すごい勢いで落ちてくる大小無数の岩を盾で弾いてるし、足元を押し流そうとする土砂の中でもしっかりと立ってるし。


 いやあの岩、大きいので机くらいはあるんですけどさ、腕は大丈夫なのミーシア。


「ミーシアも非常識ですわ」


「いえまだです、あの岩が」


 サミューが指さす先では、特大のトラックくらいありそうな大岩が……


 一直線にミーシアに向かってる、あれはさすがに無理だろ。


「ハル、魔法であの岩を砕けないか、このままだとミーシアに直撃する」


「無理をおっしゃらないで、この岩壁が壊れないように強化し続けるだけで精一杯ですわ」


 くそ、こうなったら。


 左手を構えて、呪文を思い浮かべる。


「砕け散れ我に刃向う敵共、砕け散れ我を阻む障壁、その尽く砕け散り、我が道を……」


「お待ちなさい、何の呪文を使おうとしているか解っていらっしゃるの、『大破砕』なんて、そんな呪文を使えば反動が」


 俺の呪文の内容から、何を使うつもりか解ったらしいハルが慌てたように振り向いて止めようとするがもう遅い、『詠唱短縮』スキルを使って組み上げた魔法は。


 発動しなかった、だが俺の腕が以前と同じように血まみれとなる。


「魔法の規模に『魔力回路』が耐えられずに発動しなかったみたいですわね、もし発動していればその程度の怪我ではすみませんわ」


 くそ、このままじゃ。


 俺たちの見つめる先では、無傷の大岩がミーシアにせまる。


「うわああああ」


 岩に気付いたミーシアが盾を構え直し裏側を両手で支える。


 無理だ幾らなんでもあんな大きいのは、てええええ。


「なんて非常識なのかしら、こんな事って」

「ミーシアちゃん、すごいわ」

「大丈夫か、ミーシア」

「みーしあ、おもいー」


 まさか盾で受け止めるなんて、何トンあるんだろあの岩、完全に止まってるよな。


「だ、大丈夫です、このまま耐えれば何とか」


 ひょっとして、崖崩れが収まるまであのまま耐えるつもりじゃ、いや支え続けてるけど、どんだけ腕力あるんだろ。


(お主の『成長補正』が有るとはいえ驚くべき膂力じゃの、さすが白熊族というべきかの)


 ラクナまで驚いてるってどんだけだよ、うんやっぱりミーシアは怒らせないようにしよ。


「く、もうちょっと」


 ミーシアの姿勢が崩れた、やっぱりあの重量は無理が有ったのか、一か八かもう一度呪文を試して。


(そうではない足元じゃ)


 足元がどうした、あ、道が崩れかけている、衝撃と重量に耐えられないのか、このままだと崩れるんじゃ。


「ミーシアその岩をどうにかして崖下に落とせないか」


「や、やってみ、きゃああ」


 なんとか岩を持ち上げようとしたミーシアの足元が完全に崩れ、岩もろとも彼女が崖を転がり落ちていく。


「ミーシア、くっ、サミュー、アラの事は任せた、ハルは二人を安全な所まで守れ」


 二人に指示を出すと同時に安全地帯を飛び出す。



「ちょっとお待ちなさい」

「ご主人様なにを」

「りゃー、アラも」



 三人の声を聴きながら崖をかけくだる。



 崩れ続ける土砂も不安定な岩も『軽速』が有れば立派な足場だ。



 僅かに残った枯れ木の枝に立ってミーシアを探す。



「ラクナ、『鑑定』スキルでミーシアを探せるか」



(僅かでも地上に出ている部分が有れば可能じゃが)



 まだ、土砂は止まってない、どこだ。



 土砂が枯れ木に当たり大きく揺れる。



 枝を蹴って、飛び上がり、土砂の表面を流される岩を足場にして駆け回る。



「ミーシア、どこだ」



(居ったぞ、あそこじゃ)



 ラクナが視界に文字を浮かべさせるが、俺の視力ではまだ彼女の姿が見えない、もっと下か。



「ミーシア」



「リョ、リョー様、危ないです、戻って」



 いた、下半身が土に埋まってるけど何とか流れに耐えている。



「リョー様、どうして」



「待ってろ今助ける」



 だいぶ流れも収まってきた、これなら。



(止めぬか愚か者が)



 へ、うわっつ。



 ミーシアを引き上げる為に両足を踏ん張ろうとするがすぐに土砂に流される。



(『軽速』中ではこの程度の流れでも立ち止まるのは無理じゃ、何度やれば解るのじゃ愚か者が)



「リョー様」



 流されかけた俺の腕がミーシアの伸ばした手に掴まれる、これじゃあどっちが助けられたんだろ。



「な、流れが落ち着くまで、私の上に乗っててくださ……」



 肩の上に担がれちゃった、うーん情けないな、しかし『軽速』中とは言え、ためらいなく担ぐって、頼もしいと言うかなんというか、見た目はかわいい女の子なのになー




 しばらくして流れが収まってからミーシアの下半身を掘り出す。


「大丈夫かミーシア」


「は、はい何ともないです」


 たしかに、『鑑定』してみても、ほとんどHPが減ってないし、岩を受け止めた腕も何ともなってない、盾はボロボロなのに、うーん打たれ強いと言うかなんというか。


(どうやら今ので新しいスキル『鉄壁防御』を覚えたようじゃな)


 なんですかその、どっかの帝国艦隊の提督が持ってそうなスキルは……


(衝撃や圧力を盾で防ぎきるスキルじゃな、突進系のスキルなどにとっては天敵じゃ、いくら切羽詰った状態であったとはいえ複数職がこうも早くスキルを増やしていくとは、お主等といると驚かされてばかりじゃ)


 なんかすごいスキルみたいだな、まあ、あの岩を防いだってだけでも十分すごいか、でもこれからどうしようかな。


 崖の斜面を見上げると俺たちの居た道まではかなりの高さが有る、俺だけなら戻れなくもないけどミーシアじゃ。


(『軽速』なしで昇るのは無理じゃろうな、このあたりの土は崩れやすそうじゃ、下手に重量をかけて崩れれば下まで流されかねんぞ)


(俺が担げばどうだ)


(無理じゃ、『軽速』の効果は使用者とその所持品までじゃ、担がれた者の重量は変わらぬ、そもそもお主ではミーシアを担げまい)


 う、確かに、鎧だけでも結構な重量になるだろうし、ミーシアの体格がいいから……いやいや女の子の体重を考えちゃダメだよな、あれでも。


(前に、アラを背負った時は大丈夫だったぞ)


(アラが軽かっただけじゃ、それにあの頃はそれほど無理な動きはしておらぬしの)


 だめか、俺だけ昇ってロープとかをたらそうにも、見る範囲で結び付けられそうなとこは無いし、40メートルのロープじゃ足りないよな。


「仕方ない、一度下まで下って道を探そう」


「は、はい、ごめんなさいわたしのせいで、あ、リョー様、け、怪我を」


「大丈夫だ、大したことはない、それより暗くなる前に休めるところを探すぞ」


 ここじゃいつまた崩れるかわからないし、気温が下がって来るのに風が防げないんじゃ朝まで持たないかも知れないもんな。


「そ、その前に治療を……」


「必要ない、俺はこんな状態だから、しばらくの間はミーシアだけが頼りだ、MPと体力は温存しておけ」


 前みたいに回復と食事を繰り返させるとかは負担が大きいだろうし。


「は、はい、わかりました」





 寒っ、ん、少し寝てたのか。


 しかし、崖を降りてすぐのとこにこの洞穴があって助かったな。

 

 ミーシアはまだ帰ってきてないか、食料を探しに行くと言ってたけど、無茶してないかな。


 魔物はいるだろうけど食べられそうな植物が簡単に見つかるとは思えないんだよな。


 とりあえず、ミーシアが帰って来る前に済まさないとな。


 左の袖を巻くって包帯を確認すると血でぐっしょりと濡れている。


(やはり『魔力回路』の暴走による怪我はそう簡単には出血が止まらぬのう)


 だよな、だからってこのまま出血し続ける訳にはいかないよな、仕方ないやるか。


 アイテムボックスから戦利品の短剣と鎮痛の薬草を取り出す。


 薬草をかじりながら、短剣の刃を焚き火の中に放り込む。


(本当にやるつもりかのう)


(仕方ないだろ、ミーシアに負担をかけられない以上はこれしかないだろ)


(鎮痛薬を使ったとはいえ覚悟がいる事じゃぞ)


(分かってる、『迷宮』から出たら休み休み回復をかけてもらうさ)


 熱で赤く染まった短剣を掴みあげて深呼吸をする。


「行くぞ」


 傷口に熱く焼けた短剣を押し当てると同時に湯気が上がり、なんとも言えない臭いが辺りに広がる。


「ぐううう」


 歯を食い縛りながら、一つずつ傷口を焼いて止血していく。


 痛てえええええ、無茶苦茶痛い、鎮痛の薬草って嘘だろこれ。


 悲鳴を抑えて、腕に新しい包帯を巻き直す。


 ミーシアが帰って来る前に済まさないと、また心配させるからな。


 そうなると、また自分のせいだと言い出すだろうしな。


 包帯を完全に巻き終わり、もう一度、鎮痛の薬草を飲み込んだ時に足音が聞こえだした。


「リョー様、ご、ごめんなさい、なにも食べ物が見つかりませんでした」


 だろうな、あーまた落ち込んじゃってる。


「気にするな、魔物は居たか」


「はい、何頭か倒して採集部位を取って来ました」


 これって結構でかい魔物の爪だよな、一人で倒したんだ、さすがと言うかなんと言うか。


「肉はどうした」


「リョー様の食事にはできないからそのままに」


 俺の事を一番に考えてくれるのは嬉しいけどさ。


「ミーシアの分はどうした」


「そ、そんな、リョー様の食べ物がないのに、わたしなんて」


 本当にこの子は、サミューやハルもこのいじらしさがあればなーじゃなくて。


「俺の事は気にせず食べろ、ミーシアまで倒れたら大変だろう、アイテムボックスに干し肉があっただろう」


「で、でも」


「食べなさい」


 第一、俺の飯が無いのは俺が自分の判断でユニコーン達にやったせいだから、ミーシアが気にする必要ないしな。


「わかりました、あれ、こ、この臭い」


 干し肉を取り出そうとしたミーシアの手が止まり可愛らしく鼻をひくつかせる。


 気付かれたか、いやまさかな、香りの強い香草を燃やした上で『微風』の魔法を使って空気を入れ換えたんだし、おかげで僅かに残ってたMPがすっからかん……


(気付かれたやも知れぬの、獣人の鼻は人とは比べ物にならぬでの)


「リョー様、ごめんなさい」


 ミーシアが俺の左手を取ると袖をまくり包帯の上に小さな鼻を押し当てる、あちゃー、でもこのシーンはちょっとそそる、じゃなくて。


「リ、リョー様まさか」


 ああ、ばれたなこれは。


「血止めをしただけだ気にするな」


 ちょっとどころじゃなく痛いけど、男は我慢。


「ご、ごめんなさい、わたしがもっと『回復魔法』が使えてたら、リョー様の言う通り剣と盾を捨ててたら」


 ミーシアがしがみ付いている俺の腕に数滴の涙が落ちていく。


 本来なら傷口を押さえられて痛いはずなのに、なぜか痛みが治まっていく気がするな、やっと薬が効いてきたのかな、いやこれはたぶん、気持ちの問題かな。


「気にするな、それだけその武器を大切に思ってくれてるんだろ、それに捨てても間に合わなかったかもしれないし盾がなければあの岩は防げなかった、持っていた方が良いというミーシアの判断が正しかったんだろ」


「そ、そんな、あ、『回復魔法』を」


「大丈夫だ、鎮痛の薬草を使ったから痛みは治まってるし、少しずつだが『魔道具』の回復効果もある」


「あの薬草を、あ、寒くないですか、あの薬草は体温を下げる副作用が……」


 そういえばさっきよりも寒いかも。


(出血もしておったしの、かなり体温は下がっておるじゃろ)


 意識したら急に辛くなってきた、毛布被って火に当たってるのに震えが。


「リ、リョー様大丈夫ですか」


「だ、大丈夫だ、薪も足したししばらくすれば」


 ヤバい震えが止まらない。


 これ以上ミーシアに心配をかけるわけには。


 今も心配そうにこっちを見てるし、あれ、ミーシアの顔が赤いな、焚き火を強くしたから暑いのかな、暑がりだもんな仕方ないか、でもホント寒い。


「だ、大丈夫、リ、リョー様のためだもん、恥ずかしくない、恥ずかしくない」


 何か言ってるけどよく聞こえないな、うつむいて呟いてるけどどうしたんだろ。


 あ、顔を上げた、珍しいなミーシアが真っ直ぐに俺の目を見てる、あっそらした、やっぱり顔が赤いな、ひょっとして熱でも有るのかな。


「リ、リョー様、わ、わたしが温めます」


「ミーシアの毛布を貸してくれるのか、自分で使いなさい」


「そうじゃなくて、わたしの体を使って温まってください」


 え、それってまさか。

こんなところで切ってしまってすみません、次もできるだけ早めにできるよう頑張りますので……


H26年4月16日 句読点、誤字、一部表現を修正しました。

H26年12月31日 誤字、修正しました。

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