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263 薬師の動向

「『鑑定』で見つけにくいっていうのはどういう事ですか、あれが有れば大抵の事は解るんじゃないですか」


 というか『鑑定』系の能力で、隠された秘密に気付くなんて言うのは、最近の異世界転移物じゃお約束な気がするんだけど。


「本来はそうなんだがな、混ざり物だったり不純物が多いと『鑑定』結果にムラが出やすい。解りやすいのは料理だな、『鑑定』して出て来る結果は料理名だが、その材料は解らないし、毒が入ってたり小虫が入っていたりしても解らないだろ」


 そう言われてみれば、だからこそトーウの『料理解析』が役に立ってるんだもんね。


「まあ、その分野に特化した『解析』スキルが有れば物によっては調べる事も可能だが、魔法薬や魔物の素材などのある程度以上力の有る物を『調合』スキル等を使わずに混ぜると『汚染された〇〇』とか『混合された○○』といったふうに、何と何を混ぜたのか良く解らないような『鑑定』結果になるんだよ、そういった不良品にはなぜか解析も通じにくいしな。もちろんその手の物は純正品と比べて効果も落ちたりするし、元が何かわからない以上売り買いでも安く見られたりするが、何らかの手違いで混ざるなんてのはよくある事だから珍しくなくてな、そういったのを一々チェックするような事をしてたら町の検問がまともに機能しなくなる。だからこそ後ろ暗い物はわざと混ぜ物をして名前をごまかしたりする」


「そんなにいっぱいあるんですか」


 なんだろうな、これは多分日本人の感覚なんだろうけど、どうしても品質が悪いっていうのは気になっちゃうよね。


「慣れてない冒険者が、採取物に血を掛けてしまうなんて事もよくある話だし、まだスキルを取れてない見習いが作った薬だとか、制作過程でミスの出た薬なんかもある、そもそも管理栽培された物ではなく迷宮内に自生している物を採集する以上は材料にもムラが有るし、加工の過程にしても日本みたいにクリーンルーム等の環境が整備されているわけではないからな、加工過程で埃やゴミなどの不純物が混じる事が珍しくないし、道具の洗浄が不十分で前に作った薬や使った素材なんかが鍋の底にこびりついてて混ざるなんて事もある。そういった訳で一定の頻度でこういった規格外品が出るし、値段を安くしてそれらを専門に扱う商人もいるし、そういった物しか買えない人間もいる以上、規格外品の流通を禁止する訳にもいかず、そしてそれをヤスエイは上手く使っているって訳だ」


 ああ、法の目をすり抜けるのがうまいって訳か、日本でもそう言った事をやってたのかな。


「ヤスエイ自体もなかなか姿を現さなくてな、たまに情報が入っても神殿が討伐隊を派遣する頃には姿をくらましてる。まあ、日本であんな目に有ったんだ、警戒心は人一倍なんだろうがな」


 まあ、一回殺されかけたんじゃ慎重にもなるのかな。


「だが今回は、かなり長期間ムルズ王国に居るようだ、まあ今の現状じゃ神殿も討伐隊を送れないからってのも有るんだろうが、奴の今回の目的を予想すれば、裏に隠れて居る訳にもいかないってところもあるんだろ」


 神殿の手が届かないから隠れてるんじゃなくて、何か狙いが有ってムルズ王国に居るって訳か、その狙いと俺の依頼が被ったりすると確かに戦闘になる恐れがあるのかな。


「おそらく奴の狙いは、この地域一帯での神殿勢力の影響力を弱めて、自分への追跡や組織への攻勢を防ぎたいってのが狙いだろうな」


「神殿の影響力ですか」


 あれか、神殿が舐められるように成れば、各地で今回みたいな事が起こりかねないって奴かな。


「ああ、蜂起した貴族達の兵士たちに薬物を投与すれば、恐怖も疲労も感じずに戦い続けるだろうし、降伏する事も無い、いや民間人にまで使えば一気に戦力を増やせるだろう。もちろんスキルやステータスでいえば無いに等しいが、それでも数は数だ、一般的な兵士や冒険者が短時間の間に使えるスキルの回数は限られている、民兵を肉壁として使えば、相手を魔力枯渇や疲労困憊にさせれるかもしれないし、スキル直後の隙を突けるかもしれない、そうする事で神殿の兵力をより多く削る、可能なら長期化させて泥沼にする」


 ああ、それは確かに嫌だな、そう言えば地球でもあったっけそんな話、兵士に薬物を投与して戦わせるって。


「兵力を長期的に保持するのでなく、その場で使い潰すのなら有効なのだろうな、生き残った兵士は薬物のせいでまともには生きていけなくなるだろうが、死ぬ事が前提なら気にする必要はないだろうから、いや負けた後の事も考えればそれでいいのかもしれないが」


 え、いいの。


「薬物中毒者が市中に溢れれば、占領後の統治は難しくなるだろう、重症の中毒者は無気力になるから労働力としては役に立たなくなり生産性は低下する。薬を買うためにその他の出費を削るせいで本来市場を循環するはずの金が裏社会に流れ経済も停滞する。更に金のない連中は窃盗や強盗などの犯罪行動に走ったり、薬の幻覚や判断力の低下から問題行動や暴力事件などを起こし治安が悪化する」


 うわあ、ロクな事がないんだけど。


「そんな状況になった土地を統治しようとするなら、かなりの人員と兵力を投入する必要が有る、そうなれば他が手薄になるだろ、地方に依っちゃ自力で治安維持が出来ず神殿に任せて居る所もあるからな、そういった所が手薄になったところで薬の密売をして自分の勢力圏を広げようって訳だ、問題地域が広がればなおさら神殿はそっちの対処に手を取られて、ヤスエイを捜査する余裕がなくなるだろうしな」


 うん、それって、この地域一帯が無法地帯になっちゃうんじゃ。


「これだけでも、ヤスエイに利用されてるムルズ王国の貴族連中がどんだけ馬鹿か解るって物だがな。兵士をドーピングすれば確かにその場の戦闘では有利になれるだろうが、結局は兵力を使い潰してるだけで、たとえ勝てたとしても兵力が低下した上に領内の治安やその他もろもろが悪化するせいで、苦労する事になるのは目に見えてるってのに、目先の勝利に目がくらむってのはな」


 うん、でも薬に手を出しちゃう人の心理なんてみんな後の事は考えてないんだろうから、いっしょなのかも。


「まあ、それだけのデカイ事をする以上、奴はムルズ王国内に滞在し貴族達と頻繁に交渉しているようだ、だからこそ俺も神官長も可能ならここで『薬師の創薬刀』だけでも排除したい、組織の取り扱っている薬物の殆どはヤスエイが武具の効果を使って生み出している物だからな、創薬刀が無くなればそれだけで組織は空中分解するだろう。そして組織と薬が無くなれば奴は何も出来なくなる。たとえ逃げたとしても、匿う場所が無くなれば捕えるのは容易くなる」


 えっと、こっちの話もすごく重要な気がするんですけど、王女様の護衛のついででするような話じゃないと思うんだけどな。それに俺は捜査の専門家じゃないんだけど。


「もちろんこれについては、俺や神殿を始めとした幾つかの勢力があの国に潜入して調査をしている。だが王女の護衛に奴が絡んでくる可能性は否定できないし、それ以外でも冒険者として名の売れてきたお前に何らかの接触が有るかもしれないからな、それで話しているが、お前が積極的に捜査をする必要はない、もちろん何か手掛かりが有れば知らせてもらいたいし、案内役も兼ねて密偵の代わりも出来るフリーの情報屋も確保してある。無条件で信用できるような相手ではないが、金額分の仕事はしっかりとするし、情報収集に関しての腕は確かだし各国の事情にも通じているからな」


 フリーの情報屋ね、まあ確かに俺はムルズ王国の事情や地理は解んないし、トーウの知識だとなんか偏ってそうで不安が有るもんね。カミヤさんが手配してくれたんなら、安心できるか。あ、でもその情報屋が男だとみんなと一緒に行動するのはアレなのかな、でも逆に女性だと俺が気を使って困る事になるかも。


 うーん、コミュ障って訳じゃないけど、ある程度人間関係が出来上がった集団に一人追加されるっていうのはちょっと緊張するな。


 まあ、何とかなるんだろうけどさ、その手の事は職場の人事異動なんかで経験が有るし、それにみんないい子だからね。


 後の問題は、俺のやる仕事内容が、ちょっとアレなだけだけど……


「確認させてください、ラッテル領の安全を確保するには、戦争が起きた方が良いのでしょうか」


「確証が持てる訳ではないが、今現在ラッテル領に出張ってるうちの連中の情報と分析を考えれば、王国の連中がラッテル家を諦めるとは思えない、現状ではうちの戦力が出張ってるのと、借金だらけでそれどころじゃないってので、すぐに手出しは出来ないだろうが、財政に余裕のある家も残ってるだろうし、ライワ伯爵軍の駐屯はあくまでも商館の警備っていう名目で有る以上、あまり派手に動き回るのも難しいからな。ラッテル家に手出ししそうな貴族や王族の力を弱め、俺達と友好的なライフェル神殿の影響力を高めて抑止力とするのは、有効な手だろうな」



H28年6月3日 誤字修正しました。

H28年6月22日 誤字修正。

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