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262 創薬

おかしい、この間投稿した時はもう終わると思ってたのに、何でオッサン同士の会話がどんどん長くなっていくんだ……

「さてと、今の俺の奥の手を教えたうえで聞くが、もしもお前が俺に敵対するならどうする」


 何を無茶苦茶言ってるんだこのオッサンは。


「いや、奥の手が無くても無理ですよ、さっきの模擬戦で実力差はハッキリわかったでしょ、普通に正面からぶった切られて終わりですよ」


「そうだな、想定を追加しよう、お前には十分な権力と財力、兵力があり、俺に対して策略などをめぐらせる余地が有る。それこそ俺の近くの『迷宮』を『活性化』させて俺にぶつけるとかな」


 いや、そのネタありなんですか、それをやられたのがトラウマだと思ってたんですけど。


「敵対者が、俺に対してどんな手を取って来るかっていうのを考えてみたくてな、お前なら色々思い付きそうだから、対策を考える上でのヒントになりそうだろ」


 うーん、自由に使える戦力が十分に有って魔物をぶつけるのもアリでか。その上でさっき聞いたカミヤさんの能力を考えると。


「想定をさらに追加するなら、お前は冷酷な支配者で、どれだけ犠牲が出ても俺を倒せればそれでいいと考えているとしたら」


 それなら、被害を考えると実際にやろうとは思わないだろうけど、もしゲームとかでやるならって前提で、思いつくことはあるか。


「そうですね……もし、戦う事になるなら、カミヤさんに攻め込まれるのを待つよりは、こちらからこの伯爵領に仕掛けた方が良いかもしれないですね。戦力は質と量ともにあった方が良いでしょうが、どちらかというのならある程度の質が有るなら量を優先ですかね、魔物をぶつけれるならまず真っ先にぶつけるでしょうね」


「ほう、その心はなんだ、自分の縄張りで罠を仕掛け俺を待ち構えた方が良いと思うが、実際俺と敵対した貴族等なんかはそうしていたぞ」


「カミヤさんを倒すのに自分の勢力圏、ましてや本拠地なんかで迎え撃つのはリスクが大きすぎますよ、こちらが優勢になって、命の危険を感じるほどにカミヤさんを追い込めば、爆発するのを覚悟で『質量無限増加』で一気に質量を上げるでしょう。そうなればたとえ此方が勝ったとしても、カミヤさんを倒すと同時に結界が解ける、あるいはカミヤさんが自爆目的で自分で結界を解くなんて事になれば、自分の勢力圏が吹き飛ぶことになるんですよ。文字通り核弾頭を抱え込むような危なっかしいマネが出来る訳ないじゃないですか」


「なるほどな、たしかにそうだ」


「それに対して戦場がこの領地の中なら、カミヤさんは家族や仲間を爆発に巻き込むことを恐れて『質量無限増加』の使用を制限するかもしれませんし、爆発の欠点は範囲内の無差別攻撃ですからね、近くに居れば敵も味方も関係なく全滅するなら、おいそれとは使えないでしょう」


「なるほどな、その場に居る者を人質にするために攻め込むって事か」


「もしもカミヤさんが、追い込まれて一気に質量を上げる事になってしまっても、最後には爆発させて中身を開放するしかないでしょうから、たとえ勝てなくて兵力を失う事になってもカミヤさんの本拠地を破壊する事は出来ます。まあ、カミヤさんが長期間結界と質量を保ったままこちらの本拠地まで旅をしてきてから爆発させるって事が可能ならこの手は使えませんが」


「残念ながら、『質量無限増加』を使っている間は、この剣自体のMPを消費し、それが空になった後は俺の体力を消費する。現状では半月程度が連続使用の限界だ」


 それなら十分な戦闘時間を稼げば、報復される恐れはないか。それに、追加の手も打てるな。


「だが、事前に俺が家族や領民を避難させていれば、たとえ爆発しても困りはしないだろう」


「そちらの方が大変だと思いますけど、人と一緒にある程度の財産や物資は持ち運べるでしょうけど、不動産と言うのは文字通り動かせない財産ですからね。家や農場、水場などの生活インフラが破壊されれば復興には時間がかかるでしょうし、避難の時に持ち運べる食糧なども限られるでしょうから、カミヤさんの負担も大きくなるでしょう。それにそんな事になる前に勝負を決めますよ」


「ほう、それは俺を倒せる自信が有るって事か」


「カミヤさんが爆発を厭わないのなら戦力を二段階に分けてしかけます。第一陣でカミヤさんが爆発を起こすまで頑張らせて、第二陣は安全圏で待機させて、爆発の後で一気に仕掛けます。『守護騎士の延命札』が爆発から守ってくれるでしょうが、貴重な一回を使ったんですから、クールタイムが終わる前に倒せるように精鋭を一気に投入って感じでしょうか、まあ、倒しきれる前にクールタイムが終わればアウトですし、それがどのくらいの時間か解らないのがネックですが、それでも勝算はあると思いますよ。さっき聞いた『守護騎士の延命札』の効果は致命的な一撃を、一回だけ防ぐことであって、回復などの効果はないでしょうから、それまでの戦闘で蓄積された疲労や命に関わらない程度の傷は残っているでしょうから、第一陣よりは有利でしょうし、何より爆発の直後なら、カミヤさんの味方は近くに居ないでしょうから」


「なるほどな、確かにそれなら、俺を倒せるかもしれないな、参考になった、確かにお前なら勇者を倒せるかもしれないな」


 あ、そうだった、カミヤさんの依頼は元勇者と戦うかもしれないんだっけ。


「やっと、本題に入ってくれるって事ですか」


「まだ確定したわけではないが、とある元勇者がムルズ王国内に潜伏しているという未確認情報が有り、これが事実なら今回の事態に干渉してくる恐れが高い。もし戦闘になった場合は勝算が無ければ無理をせず逃げて貰いたいが、勝算が有るならば、奴を抹殺してもらいたい、いや無理にそこまでする必要はないな、可能ならば、奴の持つ武具『薬師の創薬刀』の奪取をして貰いたい、それで十分だ」


 抹殺とかってあんまりにも物騒すぎるんですけど。それに……


「武具の奪取ですか、でも確か『勇者の武具』は本来の持ち主である『勇者』が死ぬか日本に帰らない限り、他者は使えない筈じゃ無かったですか」


「別に、奴の武具の能力が欲しい訳じゃない、それを封じる事が出来れば十分だ。武具さえ奪えば奴に出来る事は殆どない、とは言えそれが最も難しいんだがな、何せ神殿からこの世界に現存する元勇者に回状がまわされて過半数が有罪と判断して処断が決定されてから7年、未だに逃げ続けてるような相手だからな、無力化出来るだけでも御の字だ」


 回状ってあれか、勇者がつまらない理由で国を滅ぼしたとか大虐殺なんかをして、このままにしておけない時に、この世界に残ってる元勇者全員に意見を聞いて過半数がアウトって判断したら、元勇者数人で袋叩きにするって奴だっけ。そこまでになるって何やったんだろ。


「いったい何者なんですか、その『勇者』は」


「そうだな、お前が相手をするかもしれない元勇者の名前はヤスエイ、苗字は名乗った事は無いらしいし、これも本名かはわからないが、この世界に来てからはそう名乗っているらしい。日本にいた頃は不良の取りまとめとか、あまりタチの良くないクラブなんかでDJの真似事なんぞをやってたらしい」


 うーん、何だろ、俺のイメージだとそう言う連中はリア充のような気がするんだけど。


「そんな人物がよくこの世界に残る選択をしましたね、日本の都会でしか生きられないような人種だと思うんですけど」


「こっちに呼ばれるときは、必ず死にかけた時だってのは知ってるだろ。ヤスエイは向こうにいた頃に脱法ハーブや、その他の違法薬剤で稼いでたらしくてな、それでやりすぎたらしく、鎖でがんじがらめに縛られてヤーさんの持ってる漁船から夜の東京湾に沈められた直後に召喚されたらしい」


 うわあ、それじゃあ、たとえチート能力の一部を持って日本に帰っても生き延びるのは難しいのかも。


「向こうに帰れば、たとえ生き延びられても、ヤクザに追い回されて命を狙われるうえに、他にもいろいろやってたらしく警察にも指名手配されてるようでな。塀の中に閉じ込められるかコンクリの中に閉じ込められるかの未来しか残ってないんじゃ、日本に帰る気にはならないだろ」


「なんで、そんな犯罪者を召喚しちゃったんでしょうね」


 そんな相手にチートを与えるなんて、文字通り何とかに刃物でしょ。


「仕方ないだろ、召喚の条件は『避けえない死を明確に意識した』人間ってだけだ。そこに人格や知識、人間性なんかは影響しないからな、そもそもそう言った事でふるいに掛けれるならアキエみたいな変態が呼ばれるわけないだろ」


 ああ、たしかに腐れ勇者はベクトルが違うけどヤスエイと同じくらいの問題児だろうからな。


「召喚されたばかりの頃は、自分を装っていたらしく真面目に勇者をしていたらしい。最初の武具は『騎士の消撃盾』といって、その小型盾で防げば、どんなスキルや魔法、効果、たとえば俺の爆発だろうと範囲攻撃だろうと触れた瞬間に全体がキャンセルされて消えてしまう。『質量無限増加』を使って大重量になった剣を俺のフルパワーで切り付けても、盾に触れた瞬間元の重さに戻り、斬撃の勢いも殺されて簡単に受け止められてしまう。まあ盾を避けて攻撃すればいいだけなんだがな」


 うわあ、こっちもチートだよ、なんだよそれ完全防御って奴か、反則だろそれ。


「その後奴は、自分の行動によって二つ目以降の職や武具の傾向が決まると知り、一定の行動を取り続け二つ目の職で目的の物を取ったらしい」


 え、そんなのアリ、いや普通に考えれば可能だろうけど、かなり難しいんじゃないのか、まあ勇者なら戦闘力に余裕が有るんだろうから、どんな変な戦い方でも勝てるんだろうし、そうやって行けば無理な話じゃないのか。


「奴の二つ目の職は『薬師』、武具の名前は『薬師の創薬刀』、刃渡り30センチほどの小刀で効果は、武器のレベル×10種類の薬や毒物を記録する『薬剤記録』、記録した物と全く同じ薬や毒を液体状で作り出す『薬剤複製』、作り出した数種類の薬品を任意の比率で混ぜ合わせる『薬剤調合』、使用者にとって最適な調合比率を武器レベル×5まで記録する『調合記録』これらを使う事で奴は思い通りの薬を作る事が出来るようになっている」


 ん、ちょっと待てよ、さっき聞いたヤスエイの日本での前歴とこの武具の効果を考えると、シャレにならないんじゃ。


「記録されている薬には強力な回復薬や、難病にも効く希少な治療薬などもあるが、大麻や阿片、更には奴がこの世界に来るときにポケットに入っていた数種類の薬品もある。後は魔物由来の幻覚や混乱、麻痺やバーサク効果のある毒なんかだな」


 うわあ、そんなの混ぜちゃったら、とんでもない薬が出来ちゃうんじゃないか。


「二つ目の職を取った直後に奴は引退し、武具のレベルを上げながら一つの組織を作った『森の老人』なんて言うふざけた名前だがな」


 えっと、それってもしかしてヨーロッパなんかの『山の老人』伝説にかけてるのかな。


「主な活動内容は、想像が付くだろうが『薬師の創薬刀』で作った麻薬などの密売、それと薬物を利用した情報収集や暗殺などの謀略だな」


「それってアレですか、薬漬けにして、薬が欲しければ誰々を殺して来いとか、何々を調べて来いなんて命じるって訳ですか、薬物中毒者に薬をチラつかせれば裏切られる恐れは少ないでしょうし、普通ならできないような事でもやってしまうでしょうから」


「まあ、そういう事だ、だがこの場合、それまでは全く善良だった民間人がある日突然、暗殺者に成ったり、信用していた部下が裏切ったりするからな。その場合はまあ今のところは娼館に出入りしている人間が狙われやすいからある程度目星を立てやすいんだが」


「娼館ですか」


 まあ、裏社会と結びつきやすい分野なのかもしれないけど。


「ああ、奴は各地の娼館に配下を置いて、そこで営業をしている場合が多いらしい、そういったところだと客も気が緩んでしまい、娼婦に勧められるままに手を出す場合が多く、薬を使って感覚が鋭敏になっている状態で行為をすると癖になるらしいぞ、娼婦にしてもそうする事で客を虜に出来れば売り上げが増えるし、店としても娼婦が疲れにくくなり働ける時間が増えて儲けが増える。短期的な目的ならいいことずくめに見えるんだろうさ、長期的に見れば全員が不幸になるだけだがな」


 うわあ、まあ、あり得ない話ではないんだろうけど……


「ついでに言えば、密輸される薬ってのは『鑑定』で見つけにくいんだよな」




H28年5月23日 誤字修正しました。

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