26 ユニコーン
ユニークアクセスの、総合が五千を超えました、わーい。
俺達が見る先では、十数人の冒険者パーティーが獣人の少年グループを囲んでいる、うーんなんか小説とかでよく見るシーンだな。
冒険者は全員が前衛職だが装備も種族も性別もバラバラだ。
人族もいれば獣人もいるしエルフらしき男も交じっている、装備は剣がほとんどだけど槍や斧、短剣を装備した盗賊なんかも交じってるか、統一感がないな。
一方、囲まれている方の少年たちは皆同じ種族なんだろうな。
丸めた笹の葉のような細長い耳が頭頂部から垂直に立っており、お尻からは細長い毛を一たばねにしたようなしっぽが垂れさがっている、そして両眉の間あたりから螺旋状の細長い角が生えてて……
あの耳、あの尻尾、でもってあの角、あれー、なんかとっても嫌な予感がするんだけど。
十代前半に見える子たちが一か所に密集し、外に向けて槍を並べて守りを固めて、最年長らしい一人が槍を振り回して冒険者たちを追い払おうとしているけど、ほとんど効果がでてないな。
うーんあの子も強そうなんだけど、多勢に無勢じゃなあ、正面の敵は逃げ回って後ろに回った奴から攻撃されてちゃどうしようもないよな。うわ、奴ら笑ってやがる、いやな感じだな。
「ご主人様、どうしますか」
「助けるしかないだろ、あの状態を見捨てられるか」
「あら、わたくし達はユニコーンを狩りに来たのじゃなかったかしら」
う、嫌味だなーハル、解ってるんだろうに、てかやっぱりそうなんだ。
「獣人だとは知らなかった、魔物だと思っていたんだ」
「そう言う事だったんですか、安心しました。ご主人様の命令では仕方ないとはいえ、やはり人を狩るのは抵抗が有ったので」
そういう大事なことはきちんと言ってほしかったなー、まあ奴隷が意見するって訳には行かなかったんだろうけど、うーんこれも今度話し合うべきかな。
「まったく、あなたが非常識なのは今に始まったことではありませんけれど、一般常識すらご存じなかったんですのね」
う、いつも以上に毒が……
「と、ともかく行くぞ、出来れば人死には出さないようにしたい、俺が指示するまでは威嚇に留めろ」
ゴブリンみたいな人型の魔物を殺しまくっててなんだけど、やっぱり人はねー、いざとなったら仕方ないんだろうけどさ。
全員武器を手に持って速足で現場へと向かう、俺もゴブリンズソードを抜いて先頭に立つ、『切り裂きの短剣』だと殺傷能力が高すぎだもんな。
「あん、なんだおめえらは」
おう、なんかテンプレなセリフ頂きました。
「あれか、娼館の『迷宮』出張ってか、なかなかの上玉を揃えてるじゃねえか、あんちゃん一人当たり幾らだ、後払いでいいなら高くてもいいぞ、角を持ってきゃあひと財産だ、それとも角のかけらで物納するか」
なかなか個性的なセリフだけど、とりあえず角はお前らのじゃないだろ、ついでに言うと娼婦呼ばわりされたうちのお嬢様がお怒りで『魔力回路』に無茶苦茶MPを籠めだしてるんですけど、これは大技撃つ気満々だな。
「悪いが引き上げてくれないか、お互い怪我はしたくないだろ」
「横取りってか、あんちゃん、そりゃ虫がいいんじゃねえか、十日も『迷宮』にこもってやっと見つけたユニコーンだってのによ」
「邪魔くせえし痛めつけてやりゃいいじゃねえか、そうすりゃただで奴隷をよこすだろ」
(ふむ、ユニコーンが獣人と知りながら狩りをするような冒険者では、ロクなものではなかろうが、こやつの物言いは盗賊同然じゃのう)
やっぱり話し合いで解決は無理か、『聖職のメダル』を見せても死人に口無しとかってパターンだろうな。
コイツらのレベルは大体10後半、一番強いのが真ん中にいる剣士の27か、こいつがリーダーみたいだな。
「あまり人を斬りたくはないんだがな」
下げていたゴブリンズソードの切っ先をあげると、冒険者達もそれに合わせて武器を構える。
「なんだやるのか、人数差分かってるのか、こっちは18人いるんだぞ」
先頭の男が言い終わると同時に『軽速』を発動させる。
目の前の男のすぐ脇を通り抜け、ゴブリンズソードの刃で男の脇腹を軽く撫でる。
後ろにいた二人の間を通り抜ける時も、右側の男の首筋を剣で撫で、左の女盗賊の顔に左手を一瞬当てる。
次にいた男の目の前に剣先を突きだし、怯んだ隙に頭上を飛び越える。
空中で剣を振りかぶる。
着地と同時に降り下ろし『軽速』を解除する。
俺の目の前にはリーダーの剣士がいて、その右肩にはゴブリンズソードが当てられている。
さて、これでどうなるかな、軽く当てただけだから怪我人はゼロだけど。
(なにも知らなければお主に手加減されたと思うのじゃろうな、四人を斬り捨て、一人の目を潰せるところを、あえて寸止めしたと)
そう思って欲しいんだけどな。
(非力なお主では到底無理な話じゃがの)
まあそうなんだけどさ、肋骨で囲まれた胸部を革の鎧ごと斬るなんて芸当は出来ないし。
そもそも『軽速』中に攻撃なんてしたらこっちが弾き飛ばされるもんね。
目の前の剣士に意識を戻すと、うーん顔が引きつってるな。
まあ、これだけ速く動けるレベルなりスキルなりが有るなら攻撃力も高いと思うよな。
「あ、兄貴」
「こうなったら……」
「言っておくが、俺は四人の中で最弱、だぞ」
俺の言葉にミーシア達に向かおうとしていた数人の足が止まる。
うん、嘘は吐いてないな、サミューはメイドさんだから数に入れないし、他のミーシア、ハル、アラを考えれば俺の攻撃が一番弱い……
まあ普通は俺がやられてからハルあたりが言うセリフなんだろうけど。
(お主、自分で言って悲しくはならんのかの)
だって事実だもん仕方がないじゃん、な、泣いてなんかいないもん。
「はったりだ、女を人質にすりゃこんな若造」
「そう思うならやってみろ、ただ、その前に何人か減ることになるぞ」
やるのは俺じゃないけどね。
ちなみにうちのお嬢さん方はというと。
ハルは呪文を途中で抑えて杖の先に炎を灯し、後は放つだけの状態だし。
ミーシアはついさっき変身を終えて威嚇してるし。
アラは、寝てる……あれ。
ちなみに戦力外扱いしたエロメイドはと言えば、一番先頭でムチを振ってらっしゃる。
何でだろう、一番威圧感があるんですけど、その微笑みが怖いです。
「ま、魔法使い」
うん、みんな普通の金属や革の装備だし魔法防御力は低いもんね、ハルの魔法攻撃食らったらひとたまりもないよね。
「あんな、デカイ熊人をだと」
ああ、地球で言えば白熊は地上最大の肉食獣だもんね、迫力が違うわ、実際薄い金属鎧なんてミーシアなら紙みたいなもんだし。
「何なんだあの女は、こんなすげえのばかり連れて、手懐けてやがる」
いやあの、ご主人様は俺なんだけどなー、なんでサミューがボスみたいになってるの。
(お主が自分で最弱と言ってしまったからのう)
「有り金と装備、持ち物を全部置いて行けば見逃してあげますよ」
ちょっとブラックメイドさんそれは欲張り過ぎじゃないか、『迷宮』の中で装備もアイテムも無くしたら魔物のエサだろう。
獣人なんかもいるから素手でもある程度は戦えるだろうけどさ、ほとんどは装備が無くなれば攻撃力も防御力もがた落ちだしスキルも使えなくなるよ。
まさか、間接的に抹殺するつもりじゃないよね。
「いや装備は良い、有り金とアイテム類、予備の装備だけを全部置いて行け」
俺の言葉に冒険者たちは戸惑った表情を浮かべた後で、リュックやアイテムボックスを置いて行く。
(よいのか、こ奴らが逃げ延びれば報復されるやもしれぬぞ)
(いや、これだけ戦力差を見せればそうはならないだろ、というかサミューと同じ方針なのか)
(盗賊や人さらいは捕縛しだい縛り首か奴隷落ちじゃ、本来ならここで全員切り捨ててもおかしくはない、こちらにその能力がない以上、武器を奪っておくのが正解じゃろうて)
うーん、そういう物なのか、でもなさすがに人死にはな、ちょっといやだよ後味が悪そうだし。
男たちが立ち去ると槍で善戦していた獣人がこちらに穂先を向けたまま近付いてくる。
「ボク達をどうするつもりだ」
来ましたボクっ子、うん見た目はまんまだね、長身で凹凸の少ない細身、無造作に短く切った緑色の髪、他の子達よりも立派な角、中性的な感じの美形だし。
お約束的には「大丈夫だったか坊主」とか言うと「僕は女だ」とかって返されて初期友好度ガタ落ちってところなんだろうけどな。
しかし『鑑定』スキルの有るラクナがいればそうはならない、まあ信用されてないみたいだし友好度は最初から低そうだけどさ。
この状況下でお互いに敵対するのは得策じゃないだろうから、出来るだけ相手を刺激しないようにしないとね。
ヤッカ・ラーン
ユニコーン LV14
技能スキル 槍術 棒術 格闘術 幻術魔法
戦闘スキル 強刺突 槍突撃 幻身 幻隠蔽 蹴撃(獣態時)
身体スキル 聴力上昇 視野拡大 無毒化 毒耐性 強化濃縮調合 疾走(獣態時)
「大丈夫か嬢ちゃん」
「ボクを女扱いするな、この子たちには指一本触れさせないぞ」
あれ、おかしいな……友好度が下がってそうな気がする、普通に坊主でよかったのかな。
「特に何もするつもりはない、女子供が襲われていたから助けた、それだけだ」
「信じられるか、この時期にこんなとこにいるってことはお前も僕たちの角が目当てなんだろ」
う、否定はできないんだよな、でもこの状況じゃさ。
「そのつもりだったんだが、人さらいのまねごとをする気はない」
「何を企んでいる、これからどうするつもりだ」
「いやなにも、とりあえずは戦利品の確認かな」
冒険者たちの置いて行ったアイテム類、金になるかな。
うーん予備の武器類はどれも安物っぽいな、アイテムは薬類や道具が少々、現金も少ない、採取品もあんまりないし、食料は肉ばっかだ、野菜や果物は少しだけか、しけてるなってこれじゃあ盗賊の思考じゃねえか大丈夫かよ俺。
悩みそうになった俺の背後から可愛らしい音がかけられる、またミーシアかな少し前に食べたばっかだけど変身したからお腹が空いちゃったかな。
あれ、でもミーシアは目の前にいるし、今の音は複数だったよな。
振り返ると、おなかを押さえた子供たちの姿が。
「腹がすいているのか」
俺の言葉に数人が頷く。
「昨日からもう……」
「この食料なら好きにしろ、多すぎて持ち運べないしな」
(せっかく決めたところで悪いがのう、ユニコーンは草食じゃぞ、これでは全く足りんじゃろ)
なぬ、この量じゃ育ちざかりが十数人、足りないよな……俺の手持ちの野菜類を出すか。
「アイテムボックスにまだ食料が有る、食べるか」
ああ、みんないい顔してるな、なんかいいことした気になってくるよ。
「ご主人様いいんですか」
「この『迷宮』でもうやることは無いんだ、今から下山すれば夜には馬車に戻れるだろ」
ちょっと飯が遅れても他の子達は肉が有れば大丈夫だし、ああ、でも岩山だけあって足場が結構悪いからな、焦ってこけたりしないように気を付けないとな。
うーん、でもせっかくここまで来て手ぶらで帰るってのもなー、なにか素材がないか少し探してみるかな。
「毒が入っていても、ユニコーンには無駄だぞ」
なんだずいぶん疑って来るねこのボクっ子は、ツンデレはハルだけで十分なんだけどな、いやどっちもツンだけか……
「なにも仕込んでいない、それよりこれからどうするんだ、安全な所が有るなら送るが」
近距離なら大丈夫だよな、ちょっと我慢すれば一食や二食抜いても問題ない、はず……
「そうやって、ボク達の里をみつけるつもりだな」
どんだけ、俺どんだけ悪党なの。
「大丈夫だよ、夕方には里に帰れるから」
うーん子供は素直だね、それなら大丈夫かな、それじゃあ引き上げるか途中で何か見つかるといいな。
カミヤさんから頼まれてるのは薬師の他にも細工師や鍛冶師なんか、多ければ多いほどいいらしいけど、ここら辺はツテがないからすぐには無理だもんな。そうなるとせめて何か新種の食材を見つけて届けたいとこだけど。
うん、野菜や果物類が充実すると俺としてもありがたいし。
次は明後日か、明々後日になるかと……
お待たせしてごめんなさい(誰も待ってないかも……)ちょっと月末にかけて予定が入ってまして。
H26年4月16日句読点、語尾、誤字、盗賊の末路を修正しました。
H26年12月31日誤字、語尾、改行を修正しました。ラクナの一部台詞追加しました。




