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248 魔道具

「ふう、今回も無事に『鎮静化』できたな」


 少し痛みの残る右手を『迷宮核』から離して見下ろすけど、特に異常はないよね。


「『迷宮踏破』おめでとうございます御主人様、心よりお喜び申し上げます」


 奴隷たちが一斉に頭を下げて、代表するようにサミューが話してくるけど、なんかこれってちょっとこそばゆいな。


「そんな他人行儀な挨拶じゃなくいつも通りでいい、堅苦しいのは苦手だからな」


 多分、主と奴隷って立場が有るから締める所は締めてるんだろうけどさ、ちょっとね、よそよそしいし、もう少しフレンドリーに言ってほしいな。


 まあ、彼女達を奴隷としてこういう危険な所に無理やり連れてきてる俺の言える事じゃないかもしれないけど。


「リャー、おめでと」


 うん、こういうのが良いよね。満面の笑みで寄ってくるアラの頭を思わず撫でちゃうけど、これは仕方ないよね。


「師叔、お見事でございましたぞ、このコンナ良い経験をさせていただきました」


 うーん、まあこれはコンナらしいと言えば堅苦しくはないのかな。


「それで、リョー、『迷宮核』の周りに幾つか物が出てきましたけれど、今回はどんなものが出ましたの」


 ハルが、いつも通りお宝に興奮した様子で聞いてくるけど、そりゃ気になるよね。何しろここはカミヤさんが長期間籠って『重砕』の効果が登録された『迷宮』だもんね。


 あの人なら他にも『魔道具』を持ってただろうし、魔物も結構スキルを持ってたから、色んな種類の『魔道具』が期待できそうだもんね。


「そうだな、みんなの装備にも使える物が有るかもしれないし確認していこう」


 まずは効果の付いてない、宝石や硬貨をより分けていくけどこれはそれほどの量はないな。そう言えばハルに『目利き』のスキルが有るから、これをチェックしてもらうか。


 とりあえずより分けたから、『魔道具』を見て行くか。


「まずは、これは耳飾りか」


 うん、ピアスみたいな感じだな。輪っかからちっちゃい宝石が垂れてる、よくあるタイプだよね。


 さてと、効果はどうかな。


操作の耳飾り LV1

付加効果 精密操作 


(ふむ、手先での細かい操作が必要な装備品などを扱う際に補正がかかる効果じゃのう、お主らの装備品でいえばサミューの鞭やアラの弓かのう。もっともアラの場合はこのような物が無くとも十分弓を扱えるじゃろうが)


 という事は、サミュー一択って事か。


「サミュー、この耳飾りは、鞭の操作を手助けする働きが有るらしいから、サミューが付けておいてくれ」


「ですが、よろしいのですか、わたしがまたこのような『魔道具』を頂いても」


 ん、ああそうか、前にレネル達に取られた『魔道具』も耳飾りだったからな。気にしちゃったのかな。


「サミュー、これはサミューが使うのが一番いいと判断したから、サミューに預けるんだ。前の耳飾りの事は気にしなくてもいい」


「はい、ありがとうございます、御主人様。このピアスは決して無くしません。大事に使わせていただきます」


「そうだな、ピアスなら落とす事も無いだろうしな」


 イヤリングとは違って、外れにくいからね。


 両手で受け取ろうとするサミューに手渡すと、サミューが少し濡れた目で口元に笑みを浮かべて見つめて来る。


 ん、このパターンは何か嫌な予感が、サミューって結構こういうタイミングで照れ隠しみたいにからかってくることが、だが、今は特にネタがないはずだ、手も掴まれてないし、服装も……


「そうですね、更に念を入れて敵方に見つかりにくく、落ちにくく、またもしも落ちたとしても無くさないような場所に付ければいいですし」


 ん、どういう事だ、耳たぶでも落ちにくい箇所と落ちやすい箇所が有るって事か、いや、そんな話聞いたことないけど、まあ、俺はピアスを開けたことが無いから知らないだけかもしれないけど。


 それに見つかりにくい場所ってそんなところないだろ。もしかして髪で耳を隠すとかかな。


「例えば、ここでしたら外からは見えませんから、賊に捕まっても奪われる恐れは少ないでしょうし」


 そう言ってサミューが手を当てたのは、両胸の先端だと、それはまさか、まさか乳首にピアスってことですか。ど、どんな、マニアックなプレイをするつもりだこのエロメイドは。


 更に、手を下げていくけど何のつもりだ、右手を留めたのは多分ヘソのあたりか、そして左手は……


「他にも、ここですとか、もしくはここでしたら何個か付けられるかもしれませんし、何より万が一外れても下着の中ですから……」


 サミューさん、ヘソピアスは百歩譲ってOKとしても、もう片方の手が当たってる所はダメだからね。


 スカートの根元付近のそこはどう考えても、シャレにならない場所だよね。うん18禁でもかなりコアなSMとかの世界だよそこのピアスは。


「あの、だ、旦那様」


 ん、トーウか、どうしたんだ、いやこのタイミングで彼女が来るって事はひょっとして。


「独占心の強い殿方などでは、このような形で愛妾等に自らの証を刻み付けられると聞いた事がございます。わたくしも、旦那様から刻まれるものであればたとえそれがどのような物どのような場所でありましても、喜んで証をお受けいたしたく……」


 うん、赤い顔して俯いてるのは凄くかわいいけど、なんでその表情で針を手渡して来ようとするかな。


「そ、そうだ、ハル、宝石のチェックを頼めるか」


 ここは無理にでも話をそらさないと。


「盲点でしたわ、そうすれば魔法石を一度に装着できる量が飛躍的に、い、いえでもはしたなさすぎますわ、そのような場所に付けるだなんて、不潔ですわ非常識ですわ卑猥ですわ破廉恥ですわ、何から何まで非常識すぎますわ」


 おーい、ハルさーん、あなたまでサミューに影響されてどうするんですかー


 ま、まあ、見なかったことにして、装備の確認を続けようか。


「次は、なんだこれ、柱かなんでこんなものが出て来るんだ」


『迷宮核』の真下に転がってるのは十メートル近い太い棒、太さは電柱よりも太いな、感じ的に古い日本家屋の大黒柱みたいだな。


 だけど、一定間隔で取っ手が付いてるって事はこれを持って使うんだろうな、材質は木製かな、それでもしっかりと中身が詰まっているのか、かなり重くて堅そうだな。


 あと特徴と言えそうなのは片方の先端部分が金属で補強されて金槌みたいになってるって事か。


重砕の破城鎚 LV1×2

付加効果 重量任意倍化 重量威力化 硬質化 先端障壁化


 うん、きちゃったよ『重砕』の装備、でもさこれってわざわざ『付加効果』で重量を増やさなくても、元から十分な重量があるよね。『重砕』の効果は必要なくね。それにさ……


「ミーシアちょっといいか」


「あ、穴をあけるんですか」


 ミーシアお前もか、そんな怯えた目で見つめながら両胸を腕で隠すとかさ。ちょっとクル物が、じゃなかった。


「そうじゃないから安心してくれ、こいつを武器として使えそうか」


 多分うちのパーティーでこんな大型武器が使えそうなのはミーシア位だろうな、それでも使える場所は遮蔽物の無い広い場所に限られるんだろうけど。


「は、はい」


 うん、予想通り軽々と持っちゃったよ。多分数百キロはありそうな気がするんだけどな。


「えっと、こ、これなら、も、もてますけど、す、すごく太くて長いから、えっと、あの」


 うん、言い方はアレだけどさ、多分サイズがデカすぎて取り回しにくいって事かな。多分俺に勧められた装備にケチをつけるようで、言いにくいんだろうな。


「そうだな、使いづらいか」


 まあ、そうだよな、流石にデカすぎるから振り回すにしても周りを巻き込まないか注意しなきゃダメだろうし、相手に避けられたり懐に入られた時の切り返しなんかも大変そうだもんね。


「あ、で、でも、集団に囲まれた時、な、薙ぎ払うのは、い、いいかも」


 あー確かに、ミーシアを中心にしてぐるっと振り回せば半径10メートルを蹂躙できそうだな。重量と堅さが有るから威力は十分だろうし。


 とは言え使い道はあんまりないだろうな、さっき考えた通り狭い場所とか障害物が有ると振り回せないし、スキルが使えたりそんなに速く振れる訳でもなさそうだから、一定以上の素早さのある相手なら避けるのも簡単そうだしね。


 しかも、ミーシアですら両手でないと使えないっていうのに二本も出てきちゃったって、どうしろってんだよこんなの。


 まあ、仕方ないかとりあえず俺とミーシアの『アイテムボックス』に一本づつ入れておくかな。こんなんじゃ幾らなんでもテトビは買ってくれないだろうし、レベルを上げなきゃ他の武器に作り替えるのも難しいだろうけど、こんな使いにくい装備品どうやってレベルを上げたらいいんだか。


 まったく、これと言いあの戦車と言い、今回は使いどころの限られる微妙な物ばかり出て来るな。


 結局あの戦車も装備品じゃなくて『迷宮採集物』の扱いになるそうで、みんなの『アイテムボックス』には入りきらず俺が持つことになっちゃったし。


「それはミーシアが持っていてくれ、何かあった時に役に立つかもしれないからな」


「は、はい、ありがとうございます」


 ミーシアが『アイテムボックス』にしまうのを見ながらもう一本をしまおうとするけど、重っ、なにこれ、無茶苦茶重すぎるんですけど。普通は持ち上げるどころか、少し浮かせるのも十数人がかりじゃないと難しいだろ。『軽速』が持ち物の重量まで軽くしてくれるんじゃなかったら収納することすらできなかっただろうな。


 ま、まあ、他に落ちてる物を確認するか。


「これは虫眼鏡、いや片眼鏡か」


 コインくらいの大きさで紐が付いたまん丸のレンズ、これって片目だけに付ける眼鏡だよね。執事とか怪盗とかが付けてるようなやつ。なんでこんなものが出たんだ。


看破の片眼鏡 LV1

付加効果 鑑定 看破(強)

回数制限 1


 これはアレか、形と言い効果と言い『ス〇ウター』ですか、これで相手をチェックして『戦闘力~かゴミめ』とか呟いたり、強敵だと測りきれずに爆発したりするんですね。


 いや、そんなはずは無いけどね。もともと俺はラクナのおかげで高精度の『鑑定』が使えるから、あんまり使う意味はないかな、それに回数制限が1ってことは、一回使ったら終わりの使い捨てアイテムって事だろうしね。


(これはなかなか良い物が出たのう。おそらくはガネーシャのスキルなのじゃろうが、部屋を奪われたとはいえさすがは『迷宮ボス』じゃのう)


 ん、何を言ってるんだこの首飾りさんは。


(これを使わなくても『鑑定』ならお前でも出来る事だろう。お前の『鑑定』スキルの熟練度はかなりの物だって自分で言ってただろう)


 だから格が高くて普通なら『鑑定』できない『勇者の武具』なんかも『鑑定』できるって話だったし。


(それはそうじゃが、よく見てみよこの『魔道具』には『看破』が付いておるのじゃぞ、『鑑定』のみでは調べられぬ『隠蔽』や『鑑定阻害』のかかった対象であっても『鑑定』する事が可能じゃ)


 なるほどね。確かに今までも、スキルや職が隠蔽されてそうな相手と何度か会った事が有るもんな。戦闘なんかで相手がやってる事と『鑑定結果』が合ってなかったりとかあったもんね。いや、まてよ……


(これが有れば、アラの急激な成長の理由も解るって事か)


 過去2回アラは『迷宮核』に触れて急に成長した。ゲームでいうような能力値の上昇だけじゃなく、実際の肉体年齢が目に見えて上がって、それに合わせてスキルやステータスも急上昇してた。


 ラクナはそれを何かのスキルや『魔道具』の効果だって言ってたけど、『隠蔽』がされてるせいか正確な事は解らないってことだったもんね。


(可能じゃろうな、あのような効果のあるスキルは儂も知らぬが、あのようなハッキリとした結果をもたらし、しかもお主らしかいない状況下で事態が発生している以上、何らかのスキルをアラ本人が隠し持っているのは間違いないじゃろうが……)


 ん、なんだ、ラクナが言いよどむなんて珍しいな。


(良いのかのう、あのような珍しい効果のスキルか『魔道具』を隠し持っているという事は、アラがただの娘という事はあるまい。いずれか名の有る家柄か流派、あるいは組織との繋がりが有るじゃろうて。何が原因なのかはっきりしない今ならばまだ『かもしれない』で済むが、ソレが明確なものとなれば知らなかったでは済まされぬ。お主が望む望まぬにかかわらずアラに関わる問題にお主が巻き込まれる可能性が高まる事となろうぞ)


 確かにレアなスキルは血筋とか国とかで隠し持って門外不出らしいから、それを持ってるってだけでもアラには何らかの事情が有るって事か。だけどさ。


(『看破』の使いどころなど他に幾らでもあろうて、例えば決闘などの場合でも相手の奥の手を探る等も出来るのじゃぞ、あえて自ら騒動の種を抱え込むことはあるまい)


(ラクナ、俺が知らなくても、アラが何か秘密や問題を抱えているなら、彼女自身は何時かそれに関わる事になるんだろう)


(それはそうじゃろうが、その時にまだお主がアラと共に行動しておるかはわからぬ、じゃが知ってしまえばたとえアラと別れた後でもお主は狙われるやもしれぬのじゃぞ)


 そうか、それなら、尚更だよね。


(ラクナ、俺はアラの保護者だ、保護者ってのは子供を危険から守る者だろう)


 もし、アラが何かトラブルを抱えてるなら俺はそれを解決したいし、俺達と一緒に居る時に何かリスクが有るなら事前に予測を立てられるよう情報はより多く有った方が良い。


 それに俺が日本に帰った後でアラに何かあったら悲しいしね。


 だからこれは決してやましいつもりじゃないんだ、アラが隠してるであろうことを俺が勝手に見るのはちょっと気が咎めるけど、これは必要な事なんだから。


 右目に片眼鏡をはめる、さっきアラは俺の左手後方にいたはずだからこのまま振り返ればそのまま『鑑定』できるはずだ。


 行くぞ、行くぞ、やっぱり少しだけ悪い気がするけど、仕方ない、やってやる。よし、いくぞ……え。


「ご主人様、少しよろしいですか」


 振り向いた先に、見慣れた金髪のメイドの姿が。


「ここに来てから大分経ちますし、野営の事も考えると、そろそろ引き上げの用意をした方が良いかと。『鎮静化』直後の『迷宮核』の近くに何時までもいるのも危険ですし」


 微笑みを浮かべるサミューの前に、見覚えのない文字が次々と浮かんでいく、なんだ、これは、どうなってる。


「ご主人様、どうかされましたか」


 不思議そうに首をかしげるサミューの前に、大量の文字が並んだ後で、視界にヒビが入り徐々に広がっていく。


「あっ、ご主人様、お怪我は有りませんか」


 心配そうなサミューの表情が映る視界に、更にヒビが広がり、片眼鏡のガラスが一気に砕けちった。


次回の投稿は21日ごろを予定しています。


H28年3月23日 誤字修正しました。

H28年4月9日 誤字追加修正しました。

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