24 値崩れ
今回はちょっと短めになります。
「一樽、銀貨6枚でなら買い取りましょう」
ここもか、八件目の薬屋の主人からの言葉に今日何度目かわからないため息がこぼれる、これは嫌な予感しかしないな。
(なにがどうなっておるのじゃ)
おお、ラクナが慌ててるよ珍しいな、とはいえ仕方ないか、今までソウラム草は安くても一樽で銀貨20枚、交渉次第では30枚くらいまでは普通に吊り上げられてたのが今日になってどこの店も同じように6枚としか言わないんだから、そりゃびっくりするよな。
(やられた)
(どういうことじゃ)
(多分仕入れ値の上昇を防ぐために店同士で話し合って統一したんだ、どの店も在庫はある、店同士で無理に競って値を吊り上げながら大量購入する必要がないから利益幅を上げに来たんだろ)
こういうふうになる直前に売り捌きたかったんだけどな、タイミングを間違ったか。
「まいったな、市内の店はどこも同じだろうしな、どうするか」
暴れ大熊とその他の薬草や毛皮で金貨4枚ぐらいにはなるし、月が変わったから近くの神殿に行けば3枚貰える、ここ最近の稼ぎで金貨20枚くらいは貯まってる、あとは今日のソウラム草だけでもう30~40枚くらいになると思ったんだけど、このままじゃ10枚にもならないか、どうするかな。
「とりあえず食事にするか」
昼も営業している酒場に適当に入ると、ざわめきが一瞬止まり周囲から敵意ある視線が俺に集中する。
まあ、かわいい女の子を4人も連れてて、そのうち3人が奴隷とくればなあ、どんな想像されてるかはな……
これもハーレム物のお約束かな、まあそれよりも気になるのはあれだよな。
酒場の掲示板に張られている依頼案内のチラシ、『ソウラム草一樽分につき銀貨6枚、数量制限なし 薬種組合』たぶん他の酒場や斡旋所にも同じのが出てるんだろうな。
まいったな、銀貨6枚じゃ普通の冒険者は動かないだろうけど、駆け出しなんかにとっては1日の生活費にはなるから他の採集のついでに集めるだろうし、外縁部でも手に入るからホワイトウルフにさえ気を付ければ戦闘職じゃなくても取ってこれる、となれば貧困層なんかがこぞって取りに行きそうだもんな。
ソウラム草での荒稼ぎはもう無理か、在庫どうするかな、面倒だから捨て値で処分するか、それとも試しに他の町に持って行ってみるか、まだまだもつしな。
別な稼ぎも考えないと他の『迷宮』に行くかな、みんなもレベルが少し上がったし、でもな、下手に行ってまた危ない事に成らないか心配だし、『蝙蝠の館』はまだ早い気がするし。
考えている間に料理が届く、茸スパゲッティか、たまにはラーメンでも食いたいよな、油のたっぷり浮いたスープに太麺、もやしをたっぷりと乗っけて分厚いチャーシューを……と、まずいまずいこのパターンはサミューのセクハラフラグだ。
視線を上げるとちょうどこちらに顔を寄せていた金髪美女と目が合う、やっぱりかこのエロメイド、何をするつもりだったんだ。
「ご主人様、もしお金が足りないのでしたら私が稼いできますか」
稼ぐ、サミューが、どういう事だろう一人で『迷宮』に行けるわけじゃないし、侍女として働くにも時間がかかるだろうしそんな額にはならないだろ、あ。
サミューが胸元のボタンを一つ外して周囲を見回すだけで酒場にいた男たちから歓声が上がる、そう言う事か。
「却下だ、お前たちに体を売らせるつもりはない」
別にそういう職種を否定するつもりはないし、日本ではお世話になったこともある、女性にもいろいろ事情があるんだろうとは思うし。
だからと言ってうちの娘達にさせるつもりはないけどね、女の子に稼がせて養ってもらうってのはねちょっとプライド的に、まあ戦闘力の低い俺がミーシア達を戦わせてる今の状態がどう違うのかと言われると困るけど。
「ご本人は不能でも、他の人の痴態を見て楽しむのもなかなかいい物らしいですよ」
狙いはそっちか、そんな趣味もない。
「あら、寝取られにも興味がないんですか」
おい、どこでそんな言葉を知ったんだよこのエロメイド。
まあいい、そもそも金がないわけじゃないよな、今の蓄えでも1年くらいなら働かずに暮らせるくらいはある、ただいい武器が買えないだけなんだから。
「食事が終わったら試しにあそこに行ってみるか」
「申し訳ありません、組合が厳しくて仕入れ値を上げられないんですよ」
ここもか、組合に属していないモグリの店だからもしかしたらと思ったんだけどな。
「その代わりと言ってはなんですが、ひとつ情報を」
おお、なんかこの展開、イベントかイベントなのか。
「とある王家の方が『万能薬』を探しているようでして、一定以上の効能のあるものをレイドの街まで持っていけば一回分で金貨1枚、上物なら10枚、上手くいけば恩賞は思いのままらしいですよ」
そりゃまたずいぶんと気前のいい話で、だけど。
「儲け話には違いないが、よほどの高級品を持っていかないとダメなんだろ、ソウラム草くらいしかあてがないが」
「さすがにそれはダメですよ、ですが良い素材が有るんですよ」
そりゃそうだよな、そうでなきゃ情報の意味がないよな、これはクエストが来たのか。
「隣国との国境付近の迷宮『寒暑の岩山』に住んでいるユニコーンの角なら『万能薬』の素材として十分でしょう、一本あれば20回分金貨200枚は固いですよ、上手くいけば更に恩賞も取れます」
金貨200枚か、本当ならボロイ話だけど他でそんな話聞かないんだよな。
「そっちの儲けはなんだ、俺だけが得をするように聞こえるが」
「角を薬に加工する際にうちを使ってほしいんですよ、手数料は一回分で金貨1枚、後は誰が加工したのかを広めてもらえればいいです、扱いの難しいユニコーンの角を加工できると知れば薬種組合もわたしを無視できなくなるでしょう」
うーん、ほんとなら悪くない話だよな、それだけの金が有れば必要な装備も買えるし『魔法石』や『魔道具』も増やせるんじゃないかな。
(ラクナ、この話におかしな所はあるか)
(聞いている分では無いの、過去にユニコーンの角を取って『万能薬』を作ろうとした『勇者』もおる、使ったところを見たことがないのでどの程度の効果かは解らぬがの、金貨一枚で作れるのなら高くはないじゃろ)
(悪い話ではないか)
(じゃがのう、お主にユニコーンの角が狩れるとは思えんのじゃが)
ん、どういう事だ、そんなに強いのか、でも獣形モンスターだよな、なら多少のレベル差があっても切り裂きと軽速が有れば何とかなりそうな気がするけど。
(そんなに高レベルなのか)
(そうでは無くてじゃの、まあ良い行けばわかるじゃろ、儂も気になる事が有るでの)
ずいぶん煮え切らない話だな、なんだってんだ、まあいいかとりあえずはユニコーンの角で稼いで戦力アップだ。
「急いだ方がいいですよ、この噂は他の街では結構広まっているようでして、実際にユニコーンも何頭か狩られているみたいですし」
H26年4月14日 句読点、誤字、一部台詞修正しました。
H26年12月22日 誤字、鉤括弧、ソウラム草の値段修正しました。




