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22 魔力回路

 目が覚めると俺の視界には。


「『見知らぬ天井だ』ってのが、お約束なんだけどな」


 今俺の目の前には、大きな二つのふくらみが……


「何時の間に俺はサミューに膝枕されてたんだ」


 というか貞操は無事だよな無事なんだよな、迷宮の中で力を失ったら命に係わるんですけど、大丈夫かな気持ちよさそうに寝てるし、でもわざわざスカートをまくって薄い革の服越しってのが狙ってる気がするんだよな~~


「さっきまで心配そうにしていたのですけれど、休憩にならないので魔法で三人とも眠ってもらいましたわ」


 かけられた声に視線を転じると焚き火の近くでお茶を飲んでいるハルが居た、なんだろ体を起こそうにも動かないな。


「交代で見張っていたのか、悪いことをしたな交代しよう」


「当然ですわ、と言いたいところですけれど怪我人にはおとなしく寝ていてほしいですわね、それにあなたが動けばみんな起きてしまうでしょうし」


 みんな、その言葉にやっと気づいたんだけど俺のそばで寝てるのはサミューだけでなく、胸元にしがみつくようにアラが、更に左腕にしがみつくようにミーシアが寝ており、左手には包帯が巻かれ僅かに血がにじんでいる。


「ミーシアに感謝する事ね、食事で若干のMP回復が出来ると言っても限界まで回復魔法を使い、魔物を食べてからまた回復魔法を使うなんてことを繰り返して体に負担がかからない訳がないでしょうに」


 テーブルの上には大量の蝙蝠の翼とオオカミの毛皮が積んである、俺が寝た時には手付かずだったよな、ひょっとしてその他の部分は全部ミーシアが……


「あんなに食べてしまって、年頃の婦女子が太ってしまいましたらどうするつもりなのかしら」


 そこ、心配する所はそこなの。


 思わず突っ込みそうになって痛みが引いているのに気付く。


「回復魔法が効きにくいはずの『魔力暴走』の傷をここまで癒したのですから、よほど無理をしたのでしょうね、まあその分熟練度も上がって新しいスキルが使えるようになったみたいですけれど」


 そういえば神官長の姉ちゃんも言ってたよな~


『『魔力暴走』で傷ついた体は自然回復以外では治りにくいので、『超再生』も効きにくいでしょう』


 確かに俺が寝るまでは全然治る雰囲気がなかったし、痛みも凄かったよな。


「『魔力暴走』による怪我ですと小さな傷でも血が止まらずに命に係わる事も有るのですけれど」


 おいおい、そんなやばい事だったのかよ。


(ついでに言わせてもらうがの、先ほど気付いたのじゃが魔力暴走の傷がある場合、そちらに『超再生』の効果が集中してしまい他の傷の治りも遅くなるようじゃな)


 腹の傷がなかなか治らなかったのはそのせいかよ、いや、てことはあれか、一度魔力暴走を起こすとその傷が治るまで俺の数少ないチート能力の不死身がパーって事かよ。


『超再生』のない俺なんて、ちょっと攻撃力ある奴の一撃で即死しかねないぞ。


「ミーシアが起きたらきちんと誉めてあげることね、あなたの怪我の責任をまだ感じているようでしたし」


 カップにお茶を注ぎなおして飲む横顔からは疲れの色は大分抜けている。


「そうさせてもらおう、それと見張りをありがとう、他の連中の疲労を考えて交代したのだろう」


「わ、解っていらっしゃるようね、感謝いたしなさい」


 ん、今一瞬ツンデレッたか、いや気のせいか、それよりもチャンスだよな。ミーシア達を起こさないようにゆっくりと体を起こしハルの隣に座りなおす。


「聞きたい事が有る、魔法の事を詳しく教えてくれ、どういった現象なのかを事細かく」


 俺が勇者を続けるには何らかの力を手にしなきゃならない、考えられるのは今のままでもなんとかなれるような技術や戦法の確立、または『切り裂きの短剣』のような攻撃力が無くても十分な威力が期待できる魔道具の入手、後は魔法士としてやっていく事、その位しか思い浮かばないんだよな。


 一つ目は少し期待が持てると思う、今日の戦闘みたいに役割分担を明確にして俺が脆い多数の雑魚を担当したり、囮や足止めを担当してる間にミーシア達が止めを刺す。そう言った形で行けれるのが理想だけどこれから先は魔物がどんどん強くなればただの的になるかもしれないし。


 二つ目はそれこそ夢みたいな話だろうな、今の俺の装備だけでもかなり貴重な物らしいのに、それと同じような物を集めるってどんだけ運が要るんだろ。


 あとは三つ目か、少なくとも俺は若干魔法が使える、そしてステータスやスキルでいえば誰にも負けないチートのはずだ、もしかすれば何か活路が有るかもしれない、与えられたチートだけに頼るだけじゃ多分間に合わないだろうから知識と応用を積み重ねてなんとか切り抜けられないかを試していかないとな。


「何を今更、いくらあなたでも魔法の基礎くらいは知ってらっしゃるでしょうに」


「すまないが、ほとんど知らないんだ」


 そんな呆れた顔はやめてほしいなーー


「仕方ありませんわね、一度しか説明いたしませんのでよくお聞きなさい」


 お茶で口を湿らせてから話し出してるけどそのカップ俺のなんだけどなー まあ俺が使えって言ったんだけどね。


「魔法の基本は必要な魔法を明確に思い浮かべながら、求められるだけのMPを魔力回路に流すだけですわ、後は魔力回路が思った通りの魔法へMPを変換してくれますもの」


「それだけなのか」


「ええ、それだけですわ、これで魔法が発生しないのでしたらスキルが無いか必要な熟練度が足りないか、後は魔力回路の容量が足りないかですわ」


「それなら呪文は何のために有るんだ」


「呪文を唱えたり魔法石を使う事で魔力回路の負担を軽減できますの」


 なるほどそれなら魔導書だけで魔法を習得できるわけだ、あれ。


「なら、あんな練習をする理由はなんだ、魔力操作をする意味はどこにある」


「魔力回路の負担を減らすためですわ、初心者の魔力回路では多少威力のある魔法ですら完成させられませんから、例えば『火矢』でしたらMPを火に替えてMPを使って矢の形に整えて狙った方向へ放つ、これらの作業を魔力回路で行うのですけれど、回路が十分でなければ暴走を避けるために生成の途中で放たなければなりません」


「魔力操作ができれば火さえ出来ていれば残りの作業ができるって事か、それなら魔力回路の限界まで火を作って後は自分で操作すれば、威力を高めることができるのか」


 これなら俺でもなんとかなるんじゃね。


「可能ですわ、同じ威力の魔法を普通に放つよりも倍近くMPを使いますけれど」


 それは問題ないな、『超再生』がアホみたいに魔力を食うが、それさえなきゃ俺の最大MPはチート級だ。


「ですけれど、貴方の『魔力回路』ではこのくらいの火を作るのが限界でしょうけれど」


 そういってハルが手で示した大きさはせいぜいコンビニおにぎり程度、なに俺ってそこまで弱いの……


(気にすることはそこでは無いじゃろうが、なぜハルがお主の『魔力回路』の容量を把握しておるのかじゃ)


「それでわたくしも聞きたい事が有るのですけれど、貴方は何者なんですの」


 ラクナの言った事を吟味する暇もなくハルからかけられた質問に首をひねる。


「何者と言っても、お前たちの主の冒険者だ」


「そうではありませんわ、あなたの非常識な『魔力回路』の事を聞いているのですわ」


 え、それってひょっとして、俺のことバレテル。


「あなたがなぜ魔法を使えるのか教えて下さらないかしら」


「それは、お前が教えてくれたからだろう」


 ちょちょちょっと、なんでそんな核心につっこんできてんですか。


「いい直しますわね、『闘士』であるあなたの『魔力回路』でなぜ魔法が発動するのでしょうか」


 おおおお、なんでばれてるんですか、おちつけーおちつけー


「何を言っているのか解らないな」


 大丈夫だ、動揺しても表情や態度には出てない、小娘が営業職を舐めるなよ、その程度のカマ掛けで顔に出すようじゃ海千山千のビジネスマン達を相手に交渉事など出来ないんだよ。


「わたくしの『魔力視認』スキルを甘く見ないで頂けるかしら、あなたが戦ったり魔法を使っている時に魔力があなたの体の中をどのように巡っていたのか、しっかりと見ていましてよ」


 うわああああ、バレバレですか、いや何とかしないと、まあでもいきなり自分の切り札を出してくるあたり甘いな。


「特殊体質なんだ、それだけの事だが珍しいらしくてな、周りから変な目で見られるかもしれないので隠していた」


 よし嘘はついてない、『勇者』ってのもそれなのに『魔法士』ってのもかなりの特殊ケースみたいだしな、うん、これなら追跡のしようもないだろうし。


「わ、わかりましたわ、そういうことにしておきましょう」


 所詮は世間知らずのお嬢様、この程度で誤魔化されるなら最初からカマ掛けなんぞするんじゃない。

 




「はあーー」


「りゃー、はーは、めーよ」


 いつも通りアラが叱って来るが、ため息を止める気になれない。


「赤字だ」


「そうなんですか」

「あかひー」

「な、なにがあったんですか」

「どうしたのかしら」


 落ち込む俺と比べて娘さん達の反応は薄い、そうだよな、ミーシアやサミューは昔っからの奴隷でちょっとした買い物程度ならともかく帳簿なんかでの収支計算とは無縁だったろうし、ハルは売られるまでは金に困ったことのない元お嬢様、アラに至ってはお子様だし。


 しかし、ここまでとはな、あのあと休息を取ってから、仕切りなおすために一旦『蝙蝠の館』から退却して近くの町に来たんだけど。


『迷宮』での採集物を売却しようとしたらネズミは金にならないし、オオカミの毛皮はミーシアの爪と牙でボロボロになっており半値以下で買い叩かれ、蝙蝠の羽は売れたけどこんなに沢山要らないと言われて二百匹分程度しか売れなかった。


 使った食料に壊れた食器、ボロボロになった俺の服を買いなおして今日の宿代でトントン、奴隷たちを買った街からここに来るまでの旅費を入れれば完全な赤字……


 売れ残った蝙蝠の羽は放っておけばすぐに腐るので乾燥させたけど、価値は半分以下になるらしいし、採取物じゃなくアイテム扱いになるからアイテムボックスには少ししか入らないんで盗難の危険がある馬車に置きっぱなし……


 唯一の救いは鎧からとれた金属屑だけど、鍛冶屋が居る町じゃないと引き取り手がないって……


 ああどうしよう、このまま赤字覚悟で『蝙蝠の館』でレベル上げするか、それとも『薬師の森』あたりを狩場にして生活費を稼ぐか。


 ふむ、俺の相性的には獣しかいない『薬師の森』がいい、経験値的には大差はないが若干『蝙蝠の館』の方がましで稼ぎは比べ物にならない、熟練度で考えれば『薬師の森』では戦闘しか上がらないだろうけど『蝙蝠の館』ならミーシアの盗賊系を上げられる。


 悩みどころだな。


「あ、あのリョー様、どうしたんですか」


 考え込んでいた俺を心配してくれたのかミーシアが近寄っておれの顔を覗き込んでいる。


「ひょ、ひょっとして私が失敗したせいですか」


 心配そうなミーシアの頭を撫でてやる。


 うーん、しばらくはこのまま『蝙蝠の館』の方がいいのかな、ミーシアは自分の失敗を気にして苦手意識が出そうだし、しっかりと成功を体験させてやりたいし。


 でも他の所で気分転換とレベル上げしてから余裕をもっての方がいいのかな、うーん悩みどころだな。


 しかし、洋館、蝙蝠、ネズミ、オオカミでもってアンデッドか、ここまで来ると嫌な予感しかしないな。


(なあラクナ『蝙蝠の館』のボスってひょっとして)


(お主の聞きたいことは解るぞヴァンパイアではない)


 ああ、それが聞きたかったんだよ、よかった。


(ここに来る勇者は皆同じようなことを聞くが何を心配しておるのじゃ)


 いやそりゃさこれだけ色々パーツがそろってるとさ、やっぱり連想しちゃうじゃん。


(そもそも『蝙蝠の館』のような下級迷宮にヴァンパイアのような上位者が来るなどという事が有るわけがなかろう)


 おい。


(安心せい、絶対にヴァンパイアが出ることはない)


 それ以上言うな。


(まったくお主の杞憂じゃヴァンパイアに出会うなどあり得ん)


 なあこれ、変なフラグじゃないよな……


ふう、お嬢様言葉が難しいです。


26年1月10日 誤字脱字修正、接続詞追加、句読点修正、段落一時開け等を修正しました。

26年4月13日 句読点再修正しました。

26年12月15日 誤字修正しました。

26年12月21日 段落修正

27年4月14日 誤字修正しました。

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