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21 激戦

総合評価が100を超えましたありがとうございます。

後半はまた説明だったり……

話に詰まると説明に行っちゃう癖があるなー

 鎧達の隙間を縫って背後に回る。


 剣を振るい無防備な背中を連続で叩くと鎧達が一斉に振り向く。


 よし、奴らの狙いを俺に絞れた、これで時間が稼げる。


 俺のパワーじゃこいつらは倒せないが、こいつらのスピードじゃ『軽速』を使った俺には当たりっこない。


 まあ狭い廊下ってのが不安だけど何とかなるだろ。


「ミーシア、盾を使って蝙蝠を突っ切れ、みんなはそれに従え、魔法も蝙蝠に使うんだ」


「は、はい『盾突撃』」


 盾を構えたミーシアが一瞬で十メートル近く進み蝙蝠たちを弾き飛ばす、その後をサミュー達が続くが、すぐに蝙蝠たちが回り込む。


 逃げ切れないのか、いや俺が鎧を引き付ければ、あの子たちで蝙蝠を殲滅できるんじゃ。


「まりゃくが、まうないよー」


「焔よ、我が風に乗りて燃え上がれ、敵をその……きゃっ」


 蝙蝠が近すぎて呪文を唱えきれないのか、アラはMP切れみたいだしこれはまずいかも。


「どいてください、アラちゃんに近づかないで」


 近距離戦闘の為か乗馬鞭に持ち替えたサミューが蝙蝠を叩き落としていく。


「がんばりゅ」

「道をお開けなさい、呪文さえ唱えられたのなら」


 アラも弓から剣に持ち替え、ハルも仕込み杖を抜いて対応している。


 持ちこたえてるけれど、本職の前衛はミーシアだけだし疲労もある、このままだと持たないんじゃ。


 くっそ、退却のタイミングもみんなの疲労も全部が俺の判断ミスじゃないか。


 このままだとみんなが、何か方法がないか、これを乗り切る何かが。


(足を止めるでない囲まれたぞ)


 同時に四本の剣が迫る、周りの鎧が邪魔で身動きが、全部は防げないか。


 頭を狙った一撃を弾き、左胸への突きをギリギリかわす。


「ご主人様」


「痛うう」


 肩と脇腹に剣が食い込むがこの程度なら大丈夫だすぐに回復する、とっても痛いけど、やっぱり防具は必要なのかな。


 わずかに開いた鎧の隙間を抜けて剣を構える俺の横を白い影が通り過ぎる。


「ミーシア、どうした」


「わ、私が鎧と戦います、あ、あああ、ガアアア」


 大柄なミーシアの体が小さくなったように見える、いや前かがみになってそう見えただけで実際にはその体が見る見る大きくなって行く。


 胴回りを始めとして手足が太くなってゆき、髪の毛と同じ白い毛が全身を覆う、完全な四つん這いになった手足には鋭い爪が生え、叫び声を上げる、口元からは大きな犬歯が覗く。


 これが『獣態』か、ほんとに熊になるんだな。


 ミーシアの纏っていた青い鎧と盾などもいつの間にか灰色の胴体鎧と前足のデカい金属爪に代わってるんだけど、あれは凶悪すぎるだろ、恐竜みたいに背中にトゲが並んでるぞ。


『人態』のミーシアとの共通点は毛の色と『隷属の首輪』くらいだな。


「ガアア」


 ミーシアの体当たりで二体の鎧が吹き飛ぶ、これなら任せても大丈夫か、なら俺が後ろの蝙蝠を潰せば。


 鎧に背を向けてサミュー達の前に出る、狭い廊下に密集されてるから『軽速』は使えないか。


 大型魔法なら逃げようがないんだけど。


「ハル、魔法が使えないか」


「非常識な事を言わないでちょうだい、きゃ、この状況では、うっ、呪文なんて唱えてられませんわ」


 アラもダメだろうな、指輪もまだ回復してない。


 なら、一か八かになるがやるしかないか、大丈夫だ魔法は使えるようになってる。


 俺には『詠唱省略』や『無詠唱発動』のスキルがある、なら、やってやる。


『火炎旋風』


 左手から吹き出した炎の渦が目の前にいたすべての蝙蝠を焼き尽くす。


「ぐうう」


 手の血管が所々で弾けて血が噴き出す、肘から先が真っ赤だよ、とりあえず動くみたいだけど結構痛いなこれ。


「無詠唱でこんな魔法、本当に非常識ですわ」


 呆れたようにつぶやくハルの周りに駆け寄り残った蝙蝠たちを切り落としていく、くっ傷口が痛む、腹の傷もまだ治りきってないのか。


「ご主人様、大丈夫ですか」

 

「こいつらを倒してからだ」


 ミーシアのほうは大丈夫なのか、って鎧が全滅してる。


 ミーシアの周りにはいつの間にか現れていた四頭のオオカミと数匹の蝙蝠が囲んでいる、その足元には原形を留めていない無数の金属片が……


 大きめの破片に四本平行に傷が走ってるってのはたぶん爪痕なんだろうな、うん、ミーシアは怒らせないようにしよ。


 て、そうじゃないミーシアを援護しないと、休みなく動き回って飛びかかるオオカミの素早さにミーシアはついていけてない、体が大きい分ああいうスピードタイプには弱いのか、だけど。


 蝙蝠がほとんど残ってないなら、俺の方が速い。


ブラックウルフ LV11

身体スキル 速度上昇


 俺の力では一撃で倒すのは無理だけど、動きを止めるだけでミーシアが止めを刺してくれる、ものの数分でオオカミ達は片付いた。




 数匹残っていた蝙蝠を片付けると、熊のままのミーシアが近付いてくる。


 うーん、迫力あるなー白カブトとか呼びたくなっちゃうね、さっき犬と闘ってたし、いやあれは狼か。


「ご、ごめんなさい、リョー様の命令を勝手に……」


 おお、この姿でも話せるのか、少しこもった感じがするけど間違いなくミーシアの声だ、いつもと同じ様なこと言ってるし。


 ん、首輪がずいぶん食い込んでるような、まさか命令違反で『懲罰』が発動してるのかよ。


「ミーシアありがとう、おかげで助かった、よくやった」


 寄せられた頭を撫でると首輪が目に見えて緩んでいく、ハルの時は命令無視でもこんな事無かったのにやっぱり性格の差かな。


 でもまだキツそうだな。


「だ、だけどリョー様が怪我……」


「たとえ鎧が居なくても、あの状況では他に方法は無かった、ミーシアのせいじゃない」


「その通りですわ、自分の『魔力回路』の容量を超えた術を使えば暴走して当然ですもの、その男の自業自得ですわ」


 う、正論なんだけど何か悔しいな、いや反論はやめとこう、それよりも。


 仲間達を見回すと疲労の色が濃い、アラなんてサミューに抱かれて船漕いでるし。


「これだけ倒せば近くに魔物はいないだろ、休憩し直そう」


 下手にこのまま移動して魔物とエンカウントしたら今度こそキツいもんな。


「あ」


 可愛らしい悲鳴とともに小さな音が背後からかかる、振り返るといつの間にか人態に戻っていたミーシアがお腹を押さえて恥ずかしそうにしている。


 お腹の虫がなったのか。


 羞恥で真っ赤になった顔でお腹を押さえる美少女、うーん萌えるなー


「サミュー食事は」


「申し訳ありません、ひっくり返してしまいまして、これから作り直さないと」


「わたくしは遠慮させていただきますわ、疲れて食欲が有りませんの」


 うーんサミューもあんまり食欲が無さそうだな、アラは寝てるし俺もリンゴ一個くらいで十分なんだよな。


 疲れてるのに一人分だけ作れってのも。


「だ、大丈夫です」


 どうするか悩んでいた俺にミーシアがそう言ってきた。




 強靭な歯が規則的に上下しリズミカルな咀嚼音が俺の耳をたたく。


 口角から赤い液体と共にこぼれる白い欠片が転がり落ちていくが、そんなものに目を向ける余裕は今の俺にはまったくない。


 見ちゃダメだ見ちゃダメだ。


 部屋の中でリンゴをかじりながら俺はそれだけを心の中で唱える、他の連中はすでに仮眠を取っており音に気付いていない。


 俺の背後では今、野生の王国が広がっているはずだ。


 さっき振り向いてしまった時に目に映ったのは、オオカミの死骸に顔を突っ込んで食らいつく白熊の姿。


 返り血で真っ赤になった顔で腹に食らいつく猛獣、うーんビビるなー


「リョ、リョー様、わたしが見張りますから休んでください、怪我もしてるし」


 何かをかみ砕くバリボリという音と共にミーシアがそんなことを言ってくるが、そんなに疲れてないんだよな、まあ確かに怪我は痛いけど、そう言えば腹もなかなか治らないな、どうしたんだろ。


「あ、わたしだけじゃ頼りないですよね……」


「いや、そんなことはない、休ませてもらおう、何かあれば起こしてくれ」


 うん、ここはミーシアに任せよう、俺が起きてると信用されてないと思っちゃうかもしれないし。




「あれ、ここは」


 何もない薄暗い空間に俺は立っていた、ここはラクナの修行空間か、おかしいな『迷宮』にいたり魔物の危険がある時はしない約束のはずだが。


 安全な時はよく剣の修行や語学の勉強に使ってるけど、なんでこのタイミングでここに来たんだ。


「すまぬな、お主に伝えたい事が有っての、ここに呼ばせて貰ったのじゃ、起きているときに話して他の者が不審に思っても面倒なのでのう」


 おいおい、なんだよその嫌なふりは、周りに不審に思われるくらい俺がリアクションするネタってことですか。


「単刀直入に言わせてもらうがの、お主は弱い、弱すぎるのじゃ」


「何を今更、さんざん言われてきたことだろう」


 もう、そんなセリフは聞き飽きてますって。


「そうではない、儂やお主の予想以上に弱すぎたのじゃ」


 グサッと来る一言を言いやがって。


「いや、正確に言えば実戦においてはとなるのう。歴代の『勇者』たちとは違い武具を取った後もお主はこの空間で儂の指導を受け、起きているときも時間を見つけて鍛錬を続けておる、お主の剣技はなかなかの物になっておる」


 そりゃあその位しないとさ、命に係わる話だからな~


「ただ一本当てるだけの試合形式ならば、お主はよほどの相手でない限り負けはせぬじゃろ」


 おお、こいつが俺を褒めるって、『迷宮』の外では雪降ってるんじゃないのか。


「じゃが、実戦で使うにはお主の一撃は軽すぎるのじゃ」


 軽い、はて、どういう事だ。


「先ほど戦った鎧と戦える戦士のレベルを覚えておるか」


「確か7以上だったな」


「そうじゃ、その程度のレベルが有れば製錬も強化もされておらぬ脆い金属板程度ならば、問題なく破壊できる攻撃力があるはずなのじゃ」


 レベル7か、『薬師の森』にいた雑魚連中でもそのくらいは結構いたよな。


「これはまだ新米と呼ばれる程度の冒険者でもなんとか倒せるという事じゃ、実際の所ミーシアの攻撃力ならば変身などせずとも何とかなった程度の相手じゃろう」


 ラクナの言いたいことは解る、その程度でしかない相手に俺はほんの少しの凹みしか与えられなかった。


「だが、俺は暴れ大熊や一つ目猪とも何とか戦えたぞ」


 いや、答えは解りきってるよな。


「それらは『軽速の足環』と『切り裂きの短剣』の効果のためじゃ、圧倒的な速度と生物に対しての切断能力、じゃが」


「だが、それが効かなければ俺の攻撃力は無いに等しいってことか」


「そうじゃ、お主が『切り裂きの短剣』を全く使う事無く倒した敵はゴブリンとその上位種、後はここで倒した吸血蝙蝠と黒大ねずみのみじゃ、キングやナイトなどの上位種を除けばこれらは一対一ならばただの村人でも倒せる相手じゃし、上位種も防御力ならば村人と大差はない」


 それ以上の相手には素の俺の攻撃は効果ないって事か。


「確かに俺の戦闘系のステータスは低いが、それは『闘気術』でどうにかなるはずじゃなかったのか」


「儂もそう思っておった、じゃがそうではなかったのじゃ」


 マジかよ、それだけが強くなる期待だったのに。


「かつての『勇者』達は元々の強靭なステータス故に『闘気術』を使う事はほとんど無く、『闘士』にならぬ為の手段でしかなかったのでな、儂は失念しておったのじゃ」


 なにがだろ、聞きたくないなー


「『闘気術』は初期ならば使用者の能力を四割程度上昇させ、熟練度に応じてその割合を上昇させてゆくのじゃ、お主の熟練度ならば二倍程度にはなるじゃろう、じゃが」


「そもそもの基礎になる俺の能力が低いって事か」


 簡単な算数だな、100が倍になれば200だが、3が倍になっても6でしかないって事だろ。


「そうじゃ、そしてお主がこれ以上の攻撃力を手にする可能性は低い」


「なんだと」


 おいおいマジですか、それって。


「『闘気術』は本来MPのほとんどない戦士達がここぞという時に短時間使う為の技じゃ、それでもそれなりに熟練度が上がる、じゃがお主は『魔法士』としての高いMPゆえに通常では考えられないほどの時間『闘気術』を発動させて、限界近くまで熟練度を上げておる、これ以上はよほどの事が無ければ上がらぬじゃろ」


 だがまだ上がる可能性はあるってことだな、それに。


「俺の基礎ステータス自体が上がる可能性があるだろう」


「難しいの、お主のステータス上昇をこれまで見てきたが素早さや耐久力などに比べて攻撃力の上昇が少なすぎるのじゃ、この傾向はこれからも変わらぬじゃろう」


「『魔法士』としてはそうだろう、だが『勇者』としてのレベルはまだ3だろう、これからどうなるか」


「ふむ、そういえばお主には言っておらなんだの」


 あー、このパターンはろくでもない新事実が出てくるんだろうなー


「『勇者』のレベルが上がっても本人のステータスに変化はないのじゃ」


 なんだと、おい、どういう事ですか。


「当然じゃろう、『勇者』は武具を手にした瞬間その職で最強と呼べるだけのステータスを手にするのじゃ、ステータスを上げる必要はあるまい」


 確かにそうだな、俺だって『闘気術』さえなければ最強クラスの『魔法士』になったんだろうし、でもそれなら『勇者』にレベルなんて必要ないだろ。


「『勇者』がレベルアップしたときにステータスが上がるのは、本人ではなくその周囲にいる仲間じゃ」


「はあ」


「『勇者』がレベルアップするとその周りにいる者たちの全ステータスが一律で上がるのじゃ、また『勇者』の近くでレベルアップすると通常よりもステータスの上昇がよくなる、これが『勇者』のみが持つ特殊スキル『成長補正』じゃ」


「んな」


 聞いてねえぞ『勇者』にそんな能力があるなんて、てか名前がありきたりだな。


「こんな能力でもなければ各国が一流の使い手を『勇者』の付き添いなどという危険な役目に出す訳があるまい、ステータスやスキルで大きな差が出るこの世界の戦では、たった一人の使い手が千の雑兵を圧倒するのじゃからの」


 なんだそれは、ん、そう言う事か。


「『勇者』と共に数年戦えば、一騎当千の猛者が一人で一軍を圧倒する英雄に化けるやもしれぬ、戦力増強を狙う国からすれば夢のような話じゃろうな、更に親のステータスが高ければ高いほど生まれてくる子の初期ステータスも高くなる、貴族の中にはそうした者の子孫も少なくないのじゃ、ハルの実家であるシルマ家もそういった貴族の一つじゃな」


 なんともまあ、『勇者』ってのは俺が思ってる以上の影響力が有るんだな、それなら命を狙われるわけだ、『勇者の従者』を出せなかった国にとっては他国が強化されるだけだもんな。


「話がそれたの、今説明したとおりお主がこれ以上強くなることは難しいじゃろう、そのうえで問おう、お主は『勇者』を続けるかの」


 ちょっといきなり何を聞いてるんですか。


「お主ならば、あと数か月もあれば必要な会話や読み書きは出来るようになるじゃろう、ミーシア達と『薬師の森』あたりを狩場にすれば生活に困ることもなかろう」


 いや、それはそうかもしれないけれど。


「お主がこのまま『勇者』を続けるのなら奴隷たちの足手纏いになるじゃろう、それを嫌うのなら何らかの手段を手にせねばなるまい、お主にそれができるかの」


「少し考えさせてくれ」


「焦ることはない、『子鬼の穴』を鎮静化したのじゃ、お主にはまだ時間が十分あるでな」


次は、明後日か明々後日を目標にします、頑張るぞー


H26年4月13日 誤字、句読点、若干の表現を修正しました。

H26年12月14日 誤字、鉤括弧修正しました。

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