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2 お約束な召喚

投稿して数時間でユニークが43人って、もうこれだけでかなりうれしくなっちゃいました。ホントありがとうございます。

今回はありきたりな紹介と、後半は世界観の説明です。

 渋滞の道路で身動きの取れない俺の軽は、エアコンが故障していることもあり、とんでもなく蒸し暑い、窓を開けると排ガスがすごいだろうしな、目の前の大型トラックの黒い煙だけは絶対に吸いたくない。


「いいか、俺が行くまで、絶対に引き伸ばせ、ここで契約が取れなきゃ四ヶ月の苦労がパーだ、ともかくあと30分それだけ持たせろ」


 頼むよ~ほんと、これがダメになったらマジで泣くよもう。


「やべ、……いやなんでもない、こっちの話だ」

 

 あぶねー運転しながら携帯使ってたの、対向車線の白バイに見られてないよな、ここで捕まったらまた時間かかるし、せっかくのゴールドもおじゃんだもんな、保険の特約もあるし。


「とにかく、時間を稼げ、いいな切るぞ」


 携帯を切った直後、渋滞情報を流していたラジオが全く違う情報を知らせてくる。


『緊急地震速報、震度4、20秒前19、18、……』


 地震か、ここだったら崩れるような建物もないし、大丈夫かな……


 あたりを見回した俺の目が正面に戻った瞬間固まる。


「崩れないよなあれ、固定はちゃんとしてるだろうし」 

 

 目の前には大量の鉄骨を積んだ大型トラックがあるけど、大丈夫だよね。そんな事を考える間にも、カウントダウンは続き数字がゼロに近づいてくる。


「きたっ」


 

 強い揺れに軽の車体が大きく揺れるが、それよりも目の前の鉄骨のほうが、俺の恐怖心をあおる。



「ちょっ、むちゃくちゃ揺れてるんだけど、鉄骨が浮き上がってるんだけど大丈夫かよこれ」


 しばらくすると、だんだんと揺れが弱くなりやがて完全に収まる。


「よかった、なんともなくて」



 気が抜けてハンドルにもたれかかった俺の視界に影が差し、巨大な鉄柱がゆっくりと滑り落ちてくる。



「ウソだろ」


 少なくとも1tはありそうなあれが直撃したら……



 あわてて身をかわそうとしても、シートベルトのせいで身動きが取れない、ベルトを外そうとしても指がうまく動かない。


 

 その間にも鉄骨は徐々に迫り、だんだんと加速していく。

 


 ガラスにひびが入り砕けていくのが、スローモーションのようにゆっくりと見える。



「ああああ」



 すぐ目の前まで鉄骨が迫ったところで、目をつぶり両手で顔をかばう、こんなことをしても無駄なのはわかってるけど、確実な死を眺めていられるような根性は、俺にはない。





「あれ……」


 しばらく待っていても、予想したような衝撃や痛みがない、どうなってるんだ。


 恐る恐る手をどけて目を開けると、見たことのない場所だった。


 簡単に言えばファンタジーなんかで出てくる地下室、足元にはお約束のような魔法陣、それを囲むように数人のフードをかぶった人影が。


 落ち着け、まずは現状確認だ、よし自己確認からしよう。俺は坂木良、37才、○○建設(株)営業二課主任、彼女募集中、お見合い12連敗中、××大卒、夜に缶ビール片手で見るネット小説やラノベ、アニメが生きがい。

 週に一度の焼き鳥屋での酎ハイと、月二回の焼き肉食べ放題、二月に一度行く風○店を楽しみに日々の業務をこなすサラリーマン。学生時代はラグビー部で、体力は同年代よりはある、よし間違いなく俺のことだ。


 じゃあ次は周りの状況だよな、感じ的にはよく有るパターンの異世界召喚プロローグだけど、その目的は何かと、俺がそれに向いているかとか俺の扱いだよな。

 

 ブラックな作品だと生贄に殺すために呼んだとか、役立たずは即処分とか、目的達成後に必要が無くなったから殺すとかあったよな、そんなのはいやだ~~


 落ち着け、まだそうと決まったわけじゃないし、とりあえず意思疎通からだな。目的と後は帰る手段があるか、戻れるとしたら何時に戻れるかだな。

 帰ったところで、何年もたってて浦島太郎じゃ話にならないし、近い時間に戻れても、今回の契約に間に合わなきゃ俺の立場が……


 ふう、とりあえずは話しかけてみよう。


「こんにちは、ここはどこですか」


 話しかけても反応がないな、声出てるよな。


「tbfしぇあよ、う」


 言葉が通じてないのか、お約束としては翻訳アイテムか魔法、もしくは一人くらい話せるキャラが居るんだけど……


 ローブをまとった一人が近づいてきて、お盆に乗ったネックレスを差し出す。これはアイテムのパターンか、ネックレスを指さし俺の首を差すと、目の前の女はうなずく。


 ネックレスをとり身に着けると、頭に中性的な声が響く。


(フム、今代の勇者はずいぶんと年輩じゃのう、まあ若返ればよいだけの事か)


 周りの連中は何も話していないってことは、ひょっとしてこのネックレスか、おお『知性ある魔法道具インテリジェンス・アイテム』てやつか、貴重品じゃないのかこれ、てか今さらっととんでもないこと言わなかったか、勇者とか若返りとか。


(ほう、儂のことがわかるか、物分りはよいようじゃのう儂はラクナ、歴代の勇者たちを導いてきた魔宝石じゃ)


 てことはネックレスじゃなくて先っぽの石が本体ってわけか。


(ずいぶん落ち着いておるの、大抵の勇者は驚き戸惑う物なのだが)


 まあ、お約束通りのワンパターンだし、これから話し合いになる時に備えて虚勢でも張っておかないと、交渉で弱みを見せちゃうとね、そこに付け込まれそうだし。


(ふむ、ではとりあえず神官長殿に説明を受けてもらおうかの)


 周囲の女達が先導するように扉を開けてこちらを向いているのに頷くと、俺はその部屋を後にした。






「毒などは入っていませんよ」


 出されたお茶を珍しそうに眺めていると、正面から声をかけられてしまった。


「いや疑ったわけじゃないが、高そうだなと思って」


 一口飲むと芳醇な香りとわずかな苦みが口中に広がる、うん、職場の来客用よりはるかにうまい。


「ふう、それで勇者ってのはいったい何のことなんですか」


 一応は敬語を使わないとね、まあこの世界に敬語とかがなければ、どんな言葉づかいでも同じく翻訳されそうだけど。


 目の前にいるのは妙齢の美女、メリハリのしっかりした豊満な体に、鮮やかな金髪、どこかの聖母子像にありそうな整った清楚顔に、微笑が似合う事似合う事、こんな美人と二人っきりで冒険とかだったらな~~


「はい、歴代の勇者殿には迷宮の鎮静化にご協力いただいております。先代の勇者殿が引退を決断されたため、新たにあなたを召喚させていただきました、えっと」


「坂木良です」


「サクァキャ、リョー殿ですか、毎回ですが勇者殿のお名前は呼びにくいですね」


 まあ翻訳してるだけで、言語は全く違うんだろうから、日本語風の発音は難しいんだろうな、呼びにくそうだし。


「呼びやすいように読んでください」


「それではお言葉に甘えてリョー殿、さっそく説明させていただきますが、この世界には数百の、『迷宮』と呼ばれる魔物の巣が存在しております。迷宮は地脈から霊力を吸い上げて様々な魔物や魔道具を生み出し、各都市や国々は冒険者などを雇ってそれらを収集し、日々の生活に役立てています」


 なるほどダンジョン攻略物か、だけど聞いてる分だとそんなに問題が無さそうだけど。


「これらの『迷宮』は大変有用な物ですが、数年から数百年周期で活性化し、大量の魔物を生み出し周辺に被害をもたらします。勇者殿には活性化した、もしくは活性化の近づいた『迷宮』を、鎮静化する役目を手伝ってもらっています」


 ふむふむ、魔王とかの討伐じゃなくひたすらダンジョン攻略か、数百のダンジョンか選択肢が多そうだな、まあここですぐ乗ると好きに使われそうだし、少しはごねて有利な条件を……


「何の承諾もなくいきなり呼び出して、いうことを聞けとはかなり無理があるのでは。こちらにも向こうの世界での生活や、予定というのがあるのですが、今まで何人の勇者がここに来たのかはわかりませんが、皆が皆したがったとは思えません」


 頼むよ、言うこと聞かないなら問答無用で処刑とかはやめてよ。


「はい、大抵の方はそうおっしゃいます。なので召喚するときに条件を付けています」


「条件ですか」


「ええ、避けえない死を明確に意識された方、そのまま召喚せずにいれば、確実に亡くなる方を召喚するようにしています」


 なるほどね、元の世界じゃどうせ死ぬんだから、こっちで勇者したほうがましだろってことか。まあ確かにあのままじゃ、頭をつぶされて終わりだったろうしな~~


「元の世界に戻ることはできるんですか」


「いつでも可能ですけれど、今すぐはお勧めできません、勇者が元の世界に戻る時は召喚された時と同じ場所、同じ時間に戻ります。今戻られても……」


 まあ、そのままお陀仏ですよね。もうこの世界で頑張るしかないってことですか、今まで築いてきた上司やお得意様の評価、経歴、資格、預金、全部パーか……


「ですので、元の世界に戻られても、問題なく危機を回避できるだけの力を付けてからのほうが、いいかと思います」


 え、どういうこと。


「この世界で上げたレベルや、取得したスキルの一割程度なら、元の世界でも数日は保つことができます。その力で危機を乗り越えられる自信がつかれたなら、元の世界にお返ししましょう」


 そりゃまた、ちょうどいい人参ですよね。とりあえず、この世界はレベル&スキル制なんだな。



「最近の勇者殿はこの世界で大成されて、引退しても帰られずに天寿を全うされる方が多いですが、そのためにはラクナ無しでも言葉が通じるようになる必要があります」


 そういう選択肢もありか、確かにレベルが上がって、こっちで十分な財産ができれば戻らなくてもいいのかな。そこはおいおいでいいか、後はチート能力があるかどうかだよな。無いなら効率のいいレベル上げの方法を考えないと。


「しかし勇者といわれましても、私には戦闘の経験も能力もありませんが」


 さて、なんて答えが返ってくるかな。


「ええ、最近の勇者殿はそういう方が多いですね。以前は剣術などの出来る方がそれなりにいらしたんですが、最近は徒手格闘の出来る方が居るかどうか程度ですね」


 てことは戦い方を知らなくても、まあ何とかなってるってことかな、やっぱりチートがあるのかな。


 まさかとは思うけど、弱い人は低レベルで早々に退場して新しい勇者召喚とかじゃ、いやそれじゃ効率悪いか、格闘家とか自衛隊員みたいな、使える勇者が来るまで何回も呼ぶんじゃ賭けみたいなものだし。


「ですので、この世界に来た勇者には、まず『武具の社』に行っていただきます」


「『武具の社』ですか」


 なんですかそのそそる名前は。


「この神殿から十日ほどいった所にある『迷宮』で、地脈の霊気を使って、勇者専用の武具を生み出すことができます。どのような武具が生み出されるかは人それぞれですが、生み出された武具と共に武具に合ったステータスが強化され、数多くのスキルを入手できます」


 待ってましたチート能力、その迷宮に行くだけで最強になれるんですね、これで一安心だ。


 残りの交渉ごとは……


「解りましたお受けして勇者になりましょう、ですが私はこの世界に来たばかりで、何の財産も知識もありません、力だけがあっても十分な働きができるか」


「ご懸念はもっともです、この世界の案内はラクナがいたします。そう見えても歴代の勇者と共に何百年も世界中を回っており、各国の事情にも詳しい最適な案内人です。お金に関しましては、月に一度一定額をお渡しします、ここライフェル本神殿か各国にあるライフェル神殿、その関連施設にラクナを持って来ていただければどこでもお渡しできます。また歴代勇者の使用してきた魔道具も何点かお渡しします」


 それはまた至れり尽くせりで、なんか裏がありそうで怖いな。


「その代り勇者殿には、何点か制約をかけさせていただきます」


 ほらきた~


「まず、勇者殿はわがライフェル神殿に所属し、その他の国家や組織に所属することはできません。期間限定での傭兵契約や大規模討伐契約、強制力のない各迷宮や斡旋所などでの冒険者登録、十数名程度の小規模なパーティーなどは構いませんが。軍隊、騎士団、傭兵団、大規模パーティー、その他の戦闘集団などには入らないでください。例外は神殿側からそれらへの所属を依頼した場合のみです」


 てことは、勇者は神殿が独占するのね。



「次に、半年に一件は迷宮を鎮静化してください。どの迷宮に入られるかは、基本的に勇者の自由ですが、神殿が迷宮を指定した場合は必ずその迷宮に入り、鎮静化するまでは他の迷宮には向かわないでください。例外は鎮静化に必要な準備を、他の迷宮でしなければならない時などですが、それも神殿に確認をとってからです」


 そりゃそうですよね、危険の迫った迷宮を放置して、他の迷宮に行かれたんじゃ勇者の意味ないもんな。


「また、迷宮以外での魔物討伐など、冒険者向けの依頼を受けるのは構いませんが、神殿からなにか依頼を受けた場合はそれを優先してください。依頼内容によってはその間に限り、他の制限を解除する場合もあります」


 戦闘能力のある勇者ってのは、いろいろと便利なんだろうな。


 クエストなんかもあるってことか、ダンジョン攻略とどっちがいいのかな、経験値や儲けをきちんと考えていかないとな。



「最後に、勇者であることは極力周囲に知られないようにしてください。必要があるなら名乗ってかまいませんが、常時勇者だと吹聴して回ることはしないでください、これは勇者を守る為でもあります。世の中には勇者をよく思わず排除しようとする者もいますので」


 いやそんなの聞いてないんですけど……




説明長くて済みません、三話も結構できてるので早めに投稿できそうです。


H26年1月23日句読点、三点リーダー、リョーのモノローグを若干、ラクナのセリフ、ひらがなを漢字に変換、『』の追加、改行、誤字脱字を修正しました

1月8日追加で誤字脱字修正

4月5日句読点、モノローグ修正

9月25日再度誤字訂正

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