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194 獣人重機

「い、行きます」


「ああ、頼む」


 ユニコーン族のおじさんに言われて、目の前に有ったお家の前で立ち上がって前足を屋根にかけたけど、ホントに良いのかな。


「ミーシア、何を躊躇していますの、他にも崩す家は有りますのよ、遠慮なくやっておしまいなさい」


「は、はい」


 後ろで見てたハル様に言われて前足に力を籠めたら、少しだけミシミシいってから一気に屋根が崩れて、そのまま壁もガラガラって崩れちゃった。


 でも、ほんとにいいのかな、まだ住めそうなお家だったのに壊しちゃって……


「イヤー、助かったよ、この廃村を伯爵閣下に頂いたはいいが、色々とガタが来てた家が多いから一から建て直す事にしたんだが、一軒一軒解体していくとなるとかなり手間がかかるからな。かと言って俺らの戦闘スキルを使うにしても威力が弱いせいで手間がかかるうえ、下手をすりゃ武器を傷めかねない。魔法を使っても俺らユニコーンが得意なのは『幻術』なんかばかりで直接攻撃には向かないからな」


「確かにそうですわね。それに下手に威力のある魔法やスキルを使いますと破片が飛んだりして、周りにも被害が出かねませんし、再利用可能な廃材などもダメにしてしまいますしね。その点この子なら力と体重で崩すだけですから、あ、ミーシアその柱は殆ど傷みが有りませんから、折らないで頂戴、そちらの石壁は崩しても構わないらしいですわ」


「は、はい」


 ハル様に言われた柱に、片手をかけて何回か揺すったら柱が倒れたし。次はあの壁か、あんまり思いっきりやっちゃったらさっきハル様が言ってたみたいに壊しすぎちゃったり、破片が飛んじゃうかな。それなら。


「よいしょ」


 四足のままで壁の横に立って右の肩を壁に当てて少しずつ力を込めて行ったら、あれ、思ったより簡単に崩れちゃった。軽石だったのかな。


「まったく凄いものだな、我々であの壁をどうにかするとなると一苦労だというのに、一つ一つのブロックでどれだけの重さが有る事か」


「作業が早くなるのでしたら良い事ではありませんの、ところでこの一帯の廃屋はすべて崩して構いませんのね」


 あれ、ユニコーンの人たちが変な顔してるけどどうしたのかな。


「あ、ああ、それはそうだがいいのか、いや、クマの嬢ちゃんなら大した事じゃないのか」


「そうですわね、ミーシアこの調子でやっておしまいなさい」


「わ、解りました」


 ハル様に言われた通り、どんどんお家を壊していくけど、壊しすぎないように気を付けなきゃ。


「それで、もうすぐ崩し終わりますけれど、これをどうなさるおつもりかしら」


「そ、そうだな廃材の中から使える物を選んで荷車に乗せて、一か所にまとめる予定だ、それに伯爵様から頂いた資材を足して新しく家を建てる予定なんだが」


「そうですの、ミーシア聞いての通りですわ、大きな木材や石材を荷車に乗せてしまいなさいな。余り小さい物はその姿だと運びにくいでしょうから、ユニコーンたちに任せて構いませんわ」


「は、はい、解りました」


 丸太とかは手じゃ持ちにくいから口で咥えて、あっ、でも強く噛みすぎて食い千切っちゃったり歯形が付いたりしないように気を付けないと。


 そーっと、そーっと、うん、上手く出来た、噛み跡はついてないよね、うん大丈夫、この調子でどんどんもっていこ。乗せたらハル様やユニコーンの人たちが縄で縛ってくれてるから落ちたりしないだろうし。


 次は、石材かな、これは咥えられないから持つしかないかな。


「よいしょっと、とと」


 両手で石材を挟んで持ち上げるけど、クマの手だと、掴みにくいんだよね、石はそんなに重たくないけど、落っことしちゃわないようにしっかり持たなきゃ。


 それに後ろ足だけで、いっぱい歩くのって難しいんだけど、転んじゃって壊しちゃわないように気を付けないと、ダメだよね。


「うんしょ、うんしょ、よいしょ」


「なあ、爪があっさりと石材の中に食い込んでいるように見えるんだが」


 え、あ、爪で穴開けちゃった、どうしよう、怒られちゃうかな。


「細かい事を気にしてはいけませんわ。それに人手だけであれを運ぶのは一苦労でしょうし、多少の傷位大したことではないでしょう」


「ま、まあ、後で形を整える時に削ればいいのだが、普通は爪の方がボロボロになるところだぞ」


「気にしてはいけないと言いましたわよ、効率よく作業が進むのでしたらそれでいいじゃありませんの」


 あ、あれ、怒ってないのかな、ちょっとだけだけど壊しちゃったのに。


「ミーシア、その程度の傷など気にする事はありませんわ。遠慮なく運んでしまいなさい」


 いいのかな、じゃあがんばって運ばないと。


「よいしょ、よいしょ」


 軽いし、爪を引っ掛けていいなら持ちやすいけど、やっぱりこの姿で前足が使えないと歩きにくいな。転ばないように気を付けて歩かなきゃ。


「うんしょ、うんしょ、どっこいしょ」


「ちょっと待ってくれ、そんなに石材を乗せられたら」


 あ、あれ、ダメだったのかな、落ちてたおっきい石を全部のせちゃったけど、もしかして、乗せすぎちゃったかな。


「ああ、乗せすぎですと荷車が壊れてしまいますわね、忘れてましたわ」


 え、えっと、そんなに重たくないと思うけど……


「いや、それは大丈夫だろう、伯爵様から借りた軍用の大型輸送馬車だ、しっかり強化もされてるし素材も良い物を使ってるらしいから、大型魔獣の突撃が直撃してもビクともしないらしいし、壊れる事だけはないだろうが」


 そんなに丈夫なんだ、そ、それなら間違ってぶつかっちゃっても大丈夫かな。


「でしたら何も、問題はありませんわね。それで何を御騒ぎになってますの」


「いやいや、こんな重くなっちまったら運べないじゃないか、もともとは俺達ユニコーンが『獣態』になって引くつもりだったが、これだけの大荷物、何頭で引けば動くか分かったものじゃないぞ」


 あれ、そ、そんなに重たいかな。


「なんだ、そんな事でしたの、でしたら問題ありませんわミーシア、やっておしまいなさい」


「は、はい」


 ハル様に言われて荷馬車の前に回って引いてみるけど、うん、全然重たくないよね。


 ユニコーンさん達は体の調子が悪いのかな。どうにかしてあげたいけど、わたしの回復魔法じゃ疲労とかは治せないから。


 やっぱりわたしって役立たずだな、こんなんじゃリョー様だって……


 と、とりあえず運ばないと、ただでさえ何も出来ないのに、言われたこともできなきゃ。


「な、なあ、馬車の通った後にとんでもない深さの轍が出来てるんだが、ここの地盤はかなり固いと聞いていたはずなんだが」


「今更細かい事を気にしてはダメですわよ、作業が効率よく進んでいるんですもの良いではありませんの、本来でしたらこの作業だけで何日かける予定でしたの」


「いや、それはそうなのだが、あまりにも理不尽というか、以前に同じような廃村を改築した時の苦労を考えるとな」


 ハル様とユニコーンさんが何か話してるけど、車輪の音が凄くて聞こえないな、どうしたんだろ。


「ミーシア、そこで十分ですわ」


「は、はい、わかりました」


 荷馬車を止めて振り向いたら、道に車輪の跡がついちゃってる、これ気付かないで横切ったら転んじゃいそうだな。どうしよう、わたしのせいで。


「さてと、乗り掛かった舟ですし、わたくしも少しは役に立って見せないといけませんわね」

 

 そういってハル様が呪文を唱えだすけど、あれ、この魔法ってたしか。


「行きますわよ、『岩壁結界』」


 やっぱり、でも変な使い方だけどどうしたんだろ。いつもならハル様を囲むように何枚も岩の壁が出て来るのに、今は三列に真っ直ぐ並んでる。しかも二十枚より多いし。


「ふう、やはり『土』属性は威力が上がってますわね。一枚当たりの大きさも量も思っていた物を上回りましたわ」


「いったいこれをどうするつもりなんだ」


「簡単ですわ、ミーシア、あの岩を一枚づつ向こう側に倒してもらえないかしら」


 えっと、倒しちゃっていいの、それじゃあ。


「え、えい、わっわっ」


 び、びっくりした、ちょっと体重掛けたら、すごい音がしてたおれちゃった。


「こうして岩壁を並べて行けば、道の舗装には十分でしょう。それなりの重量と強度のある岩ですから、簡単には砕けませんし、今の衝撃で土と接する面もならされたでしょうし」


 あ、これ、石畳だったんだ。


「そ、そうだな隙間は砂利や土を詰めればいいだろうしな。助かる、道がしっかりしていればさまざまな作業がはかどるだろう」


「少し多めに岩壁を出しておきますから、余った分は石材にでもしたらどうかしら」


 やっぱりすごいなハル様は、こうやって魔法を応用していろんな事が出来ちゃうし、それなのにわたしなんてこうやって荷物を運ぶ事しかできないし。


 この間の『迷宮』だって、ボスを倒したのはアラ様だし、襲ってきた冒険者を倒せたのもリョー様のおかげだったから。


 わたしなんて、何も出来なくて。


 もっと、もっと頑張んなきゃ、いっぱい強くなって、いっぱい役に立てるようにならなきゃ。


こんなこと言ってますが、ミーシアちゃんのやってる事はパワーショベルとかブルドーザーでもなきゃ無理です。

それだけの力が有るのにまだ気づいてないんですよね。


H28年8月22日 誤字修正しました。

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