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187 オーダーメイド 5 トーウ

連続投稿5日目。

 さ、さてと、サミューの装備案も決まったことだし、次に行こう次に。誰かを連れて俺が戻る頃には試着も終わってるはずだし。


 てか、あのお姉さん、俺がいる時にサミューに下着を試着させようとするとか何考えてるんだよ一体。


「あ、リャーおかえりー」


「あら、御一人ですのね、サミューはどうなさったのかしら」


 店の方に戻ると、アラとハルが直ぐに反応してくれたか、他の二人はさっきと変わらずだな。


「サミューは試着中だ、もうすぐ戻ってくるはずだが、それよりも次は……」


 俺の言葉に気付いたのか、『獣態』のままで大きな肉の塊に齧り付いていたミーシアが、食べかけの肉と俺の顔との間で視線をうろつかせるが、いつの間に持ち込まれてたんだろ小羊の丸焼きなんて。よくこの短時間で用意できたな、しかも半分近く食べられてるし……


「え、えっと、わ、わたしが行きます」


 いや、そんな悲しそうな顔で言われてもさ、まあ久々に魔物以外の肉を使った本格料理を大量に食べれてるんだから気持ちはわかるけどさ。


 移動中は色々事情があったから『迷宮』で奪ってた保存食でほとんど済ましてたし、カミヤさんのとこでも急な話だったのと盗賊騒ぎなんかで、昨日は量を用意できなかったみたいだし。


「いい、ミーシアはもう少し食べて居ろ、トーウ行くぞ」


「ああ、素晴らしいお肉でございました、完全に火を通さずにおくことで中は生で野性味あふれる味わいがあり、表面付近は強火で焼かれているために、肉汁が外に逃げることなく閉じ込められて旨みにあふれ、噛んだ瞬間にジワリと溢れだした肉汁が舌の上に広がってまいります。また上にかけられたソースも、様々な具材を丁寧に煮込んでいるのか、無数の味わいが調和よくまじりあい、舌の上で食材が踊っているようでございます。更に隠し味としてほんの少量垂らされた果汁が、さわやかな清涼感とともに、舌に残った油を洗い流してまいります。まさにまさに……」


「トーウ、トーウーーー、おーい」


 ああ、いつも以上にトリップしてる気がする。ずっと何かつぶやいてるし。


「まさに、味の『大・迷・宮』、あ、あら、旦那様どうなされましたか」


「トーウ、落ち着いたか、お前の番になったから呼びに来たんだが」


 俺の言葉で、自分がどういう状態だったのか気付いたのか、トーウが真っ赤になって頭を下げて来る。


「も、申し訳ございません、奴隷の身でありながら、旦那様に気付かずこのような無様な真似を……」


 うーん、トーウはな、サミュー以上に重たい子だから、この状況でも洒落にならないかもしれないな。


「やはり、わたくし如きでは、旦那様の奴隷にはふさわしくなく……」


「トーウ、気にすることはない。お前は毒見役としても、パーティーの戦力としても十分に役立っている。この町はカミヤ伯爵が治めてて治安がいいんだ、多少気が緩むのも仕方ないだろう。この程度の事でいちいちお前を疎んじたりはしない。それよりも行くぞ」


「ああ、なんとありがたいお言葉、勿体のうございます。承知いたしました、旦那様にご用意していただく武具を十全に活用してみせ、見事武勲を立てて旦那様に奉ずる事をお誓いいたします」


 うーん、やっぱり重たい感じで反応してきたけどとりあえずは大丈夫かな、戦闘に向けて士気を高めてくれるっていうのはありがたい事だしね。


「よし、行くか」






「次はこの子か、どんな装備がいいのかな」


 サミューは、もういないな、ちょうど入れ違いになったみたいだな。良かった、よかった、ランジェリー&ガーターベルトのサミューなんて見ちゃったら、もうどうなってたことか。


「あ、坊や坊やこれ見てみて、あ、ついでに手を貸して」


 お姉さんが呼んでるけどどうしたんだろ、てっおいいいい。


「侍女さんの脱ぎたての下着、ちょっと形は違うけどこんな感じのを作るから、それと普段着やほかの子の分も作りたいけど、飛膜は他にも使うだろうから、彼女の一組以外はうちに残ってる強化布で作るせいで布地自体の強度は低いけど、留め金や飾りなんかに、魔物素材や溶かした魔道具の余りを使って『簡易魔道具』にもなる下着にはするから、防具としても安心感が増すはずよ」


 俺の手を取ったお姉さんが、触らせてきたのは、まだぬくもりの残る黒の下着と網タイツじゃねえかよ。


 あ、温かい、これはサミューの体温の、じゃなくて。あれ、ほのかにいい香りが立ち上って、そうでもなくて。この黒くてちょっと透けててレース付きの下着をついさっきまでサミューが着けてて、うわああ、俺はどこのむっつりスケベだよ、下着だけでこんな興奮するとか、やばすぎるだろ。


「イヤー、お姉さんもこの仕事それなりにやってるけど、坊や達くらいの若さのお客さんから仕事を受ける事がなかったから、今まで気づかなかったけど下着で防御力を上げるってのは良い発想よね。まあ、そのせいで見本がなかったから、わたしの私物で試着してもらったんだけど、よかったわよ侍女さんの下着姿、他の子達もみんな綺麗で可愛い子ばかりだから、こんな感じの下着をおそろいでつけたら、うーん、この果報者」


 おい、お姉さん、てことはこれはサミューだけじゃなくてあんたの使用済みでもあると、それをわざわざ俺に握らせるとか何考えてるんですか。というかお姉さん、最初と態度が違うじゃないかよ、カミヤさんの手紙を見せた時のあの態度は何だったの、いや俺も普通に接してくれた方がありがたいけどさ、これは砕けすぎじゃないか。


 いや、今はそんなこと考えてても仕方ないよな。みんながこんな下着着けるのはあれだけど、装備としての価値を考えるなら、それもありだと思って話を進めよう。


 それにしてもサミューだけじゃなく、皆もこれを着けるのか、ハルやトーウ、ミーシアまでだと、やべイメージしちゃった。考えちゃだめだ、皆をそんな目で見ちゃったら。ん、でもさすがにアラは違うよな、うん、俺は許さんぞアラにはこんなセクシーな格好はまだ早いはずだ。


 うん、許さんぞ俺は。


(何か葛藤しておる様じゃが、下着を握りしめたままで黙っておるのは、色々と不味いと思うがのう)


 う、あ、そういえば。


「旦那様は、そういった感じの下着がお好みでございましたか、わたくしの貧相な体でサミュー様のように似合うかは疑問でございますが、旦那様の御嗜好に沿えるよう努力いたします」


 どぅわー、トーウがおかしな方向に暴走しかけてる。


「トーウ、そういう事は考えなくていいからな、どちらにしろ俺はアレなんだから」


 とりあえず、平静なふりをして下着をテーブルの上に置いてお姉さんに向き直る。


「それじゃあ武器を決めてくれ、彼女は毒爪を主に使ってるんだが、これを素材に使えるか」


 お姉さんに見えるように『薬殺長針』を数本取り出す。これは二十六本も有るからな。『投擲』スキルのあるミーシアにメインで十数本持たせて、俺も接近戦で刺せるように二本位は持っておいたとしても、まだ少し余るからトーウの装備の補強に使ってもいいよね。というか毒がメインのトーウなら『薬殺長針』についてる効果との相性は抜群だからね。


「そうねえ、面白い『魔道具』だけど、これで指全部っていうのは難しいかな。とは言え爪は一本一本独立してるから、それぞれ別な素材で作ればいいんじゃないかな。使い分けにコツがいるけど、レベルが上がったら素材に戻してから混ぜて作り直せばいいし」


 そっか、そういう使い方もありなんだ。それならレベルの低い武器を素材にしても、混ぜて効果が低下する恐れはないもんな。


「この針が六本なら、ギリギリ爪が二本作れるかな、引っ掻くのに使いやすそうな両手の人差し指に着けて、あまり使わない小指を『感知の大鬼鎧』で作れば、忍び寄るのにいいだろうし、残りは『鬼人刀』を使えば『魔力斬』で対魔法防御もできるし」


 攻撃魔法を爪で迎撃するって事か、スピード重視であんまり防具をつけられないトーウにはちょうどいいのかも。


(お主、気付いておるかの)


 気づいてるかって、小説とかのお約束だとこの手のセリフだと、誰かが付けてきてるとか、罠が有るとかなイメージだけどこのタイミングでこの場所だと違うよね。


(何がだ)


 ぜんぜん心当たりがないんだけど。


(お主らの装備の強化に使った素材の割合じゃ。お主の剣二本、アラの『吸血の細剣』、そしてトーウの爪のそれぞれの強化に『鬼人刀』が使われ、まだ余りが有る事を考えればミーシアの剣にも使うじゃろう。そしてお主の防具とトーウの爪に『感知の大鬼鎧』を、ハルの羽の飾りと、アラの胸当て、サミューの靴にそれぞれ『オーガ・ジェネラル』の骨や革が使われるのじゃぞ)


 そんなのはさっきからずっと説明を聞いてたからわかりきってる事だけど、一々確認するようなことなのかな。


(解っておらぬようじゃの。『鬼族の祝福』の付いた装備をしたものが三人おり、さらに全員が『鬼』の因子を持った装備をするのじゃぞ)


 おお、という事はパーティーメンバー全員のステータスがアップするって事か、いやそれ以上に俺も強くなれるって事だよね。確か二割アップだっけ。


(まあ、分割したうえ、混ぜ合わせたりしておる故、効果は下がるじゃろうから武器のレベルが上がるまでは効果は微々たるものじゃろうし、同じ祝福の重複は出来ぬので最もレベルの高い一つの分しか期待できぬがの)


 まあ、世の中そんなには甘くないか、まあそれでもパワーアップ出来るかもしれないきっかけが手に入ったの良い事だよね。


「防具はトンボの殻を中心に胸当てと手足の防具を作ろうかな、空を飛ぶ魔物の殻だから丈夫でも軽く出来てるし、速度重視の戦い方をするならちょうどいいと思うよ」


 うん、いい感じだな、軽くて丈夫なんて『暗殺者』向けの装備だしね。


「武器と防具はこんな感じでいいかな、それじゃああとは下着の試着を……」


 さて、ミーシアを呼びに行くかな。


「あれ、坊やどこに行くの、見て行かないの」


 見てられるか、サミューに続いてトーウまでなんてなったら、自制心が持たんわ。


作者は、味音痴なのでトーウのコメントの矛盾点はスルーしてくださると助かります。

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