18 『蝙蝠の館』
久々のバトル、苦手だけど書いててたのしいなー
「あれが、『蝙蝠の館』か、こうして見るとただの洋館だな」
結構でかいけど三階建てだし、『迷宮』と言うより幽霊屋敷って感じだなー、今のうちに念仏でも唱えとくかな、いやこっちじゃ通じないよな。
(見た目に誤魔化されるでない、『迷宮化』している以上、あの中はひとつの異界じゃ、中の広さは外からは解らぬぞ)
ああ、そういえばそうだっけ、でもなーどうしても感覚的にそう思っちゃうよね。
「りゃーあ、おなかすいたー」
アラがいつも通りのセリフをサミューの膝の上から吐いてくる、柔らかそうだなーじゃない、そうだな『迷宮』に入る前に食事にしとくか。
(食事をとるのなら、アイテムボックスや手荷物に入りきらない生鮮食品を食べきっておくのじゃな、出てくる頃には腐ってしまうぞ)
(分かった、そういえば馬車はどうするんだ、中には入れないだろ)
(ふ、当然じゃ、預かり所があるならば金を払って預けるが、ここのような場合は車輪に鎖を絡めて錠をしておくのじゃ、車内は荒らされる恐れがある故、貴重品は残して置くでないぞ)
このやろ鼻で笑いやがった、あれ鼻が有るのかな。
(馬は綱を外して放っておれば、草を食べながら待っておるじゃろ、神殿の馬は賢いゆえお主が呼べばすぐに来るし、お主ら以外には懐かぬ)
そりゃありがたい、『迷宮』から出てきたら馬車も馬もいなくて身動き取れないってのは考えたくないもんな、お、ここでいいか。
「『迷宮』に入る前にここで食事にする、サミュー、ミーシアたのむ」
馬車を止めると全員が降り、ミーシアが焚き火の準備をし、サミューが食材を用意しだす。
「リョー様お願いします」
「ああ、それとサミュー、迷宮に入る前に取る最後の食事だ、悪くなりそうな物は使い切ってくれ、いくぞ、舞い上がれ火の粉、かの場へ降り立ちその火を宿せ、『着火』」
よし、火が付いた、こう言った事でも続ければ少しずつ熟練度が上がるらしいし、ラクナ曰く『魔力回路』の強化にもつながるらしい、どの位かはわからないけど、いやいや塵も積もれば山となるはず……
「まだまだですわね、魔法の発動から火が燃え移るまで時間がかかりすぎですわ」
このお嬢様、四日前に俺が初めて魔法を成功させた時には「こ、こんなことあり得ません、非常識すぎますわ」とか驚いて丸一日呆然としてたくせに、今じゃどんな魔法でもケチ付けてくるんだよな。
まあ、こいつのおかげで魔法が使えるようになったし、いろいろアドバイスしてもらってるんだから文句は言えないけど。
でもな、一つ魔法が使えるようになってから他の初歩的な魔法も一気に使えるようになったんだよな、これってチート効果なのかな、まあいいや飯ができるまで時間ありそうだし素振りでもするか。
ゴブリンズソードを構えてラクナの言うとおりに型をなぞる、俺の隣ではアラが小型剣を同じ様に振っている、『剣術』スキルはもう諦めてるけどこうやってるだけでもほんのちょっとは経験値が入るし、トレーニングすれば関連ステータスが上がるらしい。
いくつか型を試した後は、『雷炎の指輪』で小さな火を呼び出し空中で静止させて色々な形を取らせていく、球体、立方体、円錐、細長くして渦を巻かせたり、簡単な字を書いたり、ハルの話ではこうやって魔法のコントロールを覚えるらしいんだが。
魔法系のステータスが高いせいで直ぐに上手くいってハルに呆れられたんだよな、とはいえこういった基礎でもやっぱり経験値や『魔力回路』のたしになるらしいし続けないとな。
「ご主人様、アラちゃん、食事の用意が出来ました」
うーん、こうしていれば立派なメイドさんなんだけどな、しかしホントにメイド服で『迷宮』に入るつもりとは、よっぽど度胸があるのか解ってないのか、まあ洋館にはぴったりと言えばぴったりだけどね。
「早くしてくれないかしら、みんな待っているのですけれど」
このお嬢様は何もしてないはずなのに、なんでこんなに偉そうなんだろ、でも様になってるんだよなー、小っちゃい癖に。
「ど、どうぞ」
ミーシアの差し出したスープカップとサラダサンドを受け取る、他の連中のパンには焼いた肉がガッツリはさんであるんだよな、いいなー肉汁が垂れてるよ、アラもおいしそうにかぶり付いてるし。
そういや最近はアラも肉を食べるようになったんだよね、ひょっとして今まで俺に気を使ってたのかな、いやそりゃ無いか見たまんまの三歳児だし。
でもなー最近俺が寝てるとアラが忍び込んでくるんだよな、一緒に寝てた時は万が一寝ぼけて舐められたらと思って、全身衣類で覆って寝てたけど、これからもそうした方がいいのかな、サミューも色々仕掛けてきそうだし。
ん、まてよ直接粘膜に触れなきゃセーフなんだよな、まさかこんな異世界に有ると思わないけど、もしあればいろいろ解決するんじゃね。
(な、なあラクナ試しに聞いてみたいんだが)
(なんじゃ、儂の答えられる事ならばよいが)
(ふ、深い意味はないんだが念のためにな)
(ええい、早く言わぬかお主らしくもない)
(この世界にコン〇ー〇ってあるか)
(なんじゃそれは)
ですよねー、そもそもゴムが有るかどうかすら怪しいってのに、これが生産系のチートとかあれば自前で作るんだろうけど、ただの営業じゃ無理だよ、大学は文系だし理系は高卒程度にアニメやクイズなんかの知識だけじゃなー
いや、そもそもコンドウさんが有ったとして、いつ誰に使うつもりだよ俺は、サミューか、いや幾らエロメイドと言っても奴隷相手じゃなんか立場使って無理やり感があるしなー、うーん、最初の頃はノクターン路線のつもりだったけど情が移っちゃうとね。まあそもそも欲情しても手を出せないんだから考えるだけ無駄か。
「……じんさま」
なんか有る度にこんな事を考えるってのは、やっぱり欲求不満なのかな。
「ご主人様」
おおう、びっくりした、サミューの顔が目の前に、あれ、サミューの胸元に当てられてる手はなんだ、視線で先を辿っていくと手首のあたりをサミューの両手がつかんでいて、更に前腕、上腕と続いて肩にって俺の手じゃねえか。
「何をしているサミュー」
「ご主人様がぼーっと考え込まれていましたので心配しました、こうすれば気付けの代わりになるかと思いまして」
それは、まあびっくりしたけどさ、他に方法あったんじゃね。
「次からはもっと別なやり方で頼む」
「そんな、ご主人様ったら、もっと過激な方法を取れとおっしゃるんですか、アラちゃんやミーシアちゃんもいるっていうのに」
なんでこのエロメイドはそういう考えで動くかな、もういいや『迷宮』だ『迷宮』。
「全員食べ終わってるなら『迷宮』に行くのに必要な準備を始めよう」
馬車の固定はできたし、全員装備も荷物も十分、よし行くか。
「全員武器をすぐ使えるようにしておけ、この扉を開けた先はもう『迷宮』だ、何時魔物が襲ってくるかわからない、気を付けて進め」
俺の言葉を聞いた仲間たちが緊張した面持ちで頷く。
「行くぞ」
俺の手が正面扉のノブを掴んで回す、あれ、これは。
「……ミーシア、カギを開けてくれ」
「は、はい」
鍵がかかってました。
「まったく締らない話ですわ」
よし、開いたなそれじゃあ気を取り直して。
(気をつけるのじゃぞ、ここの鍵がかかっているという事は、しばらく誰も訪れておらぬのじゃろう、となれば魔獣はもちろんフロアボスもそろって居るだろうでな)
ん、何か聞き慣れない単語が有ったな。
(フロアボスってのはなんだ)
(言っておらなんだかの、奥に進むのに必ず通らねばならぬ階段手前の部屋などに居る強めの魔物の事じゃ、ひとつの『迷宮』に数体はおるがこういった魔物は一度倒されると数か月から数年は元に戻らん、じゃが何年も冒険者の訪れが無ければ)
フルメンバーでお出迎えしてくれるってわけですか、遠慮したいなー、しかたない、それじゃあ気を取り直していきますか。
扉を開けると広いホールが、おお、いかにも洋館って感じだな、しかし、いかにも何か出てきそうな雰囲気が。
「陣形を確認する、通常は俺が先頭で戦う、ミーシアは一歩下がって後衛を守る、サミューはアラと一緒にミーシアの後ろで待機、ハルも後方で魔法支援だ、狭い場所では俺が最後尾で後方を警戒する」
(せっかくの機会じゃ、お主はゴブリンズソードで戦うがよい)
いやなに言ってんの、ここは普通に考えて『切り裂きの短剣』だろう。
(ここの敵が蝙蝠なら『生物切断』があるほうが有利だし、小回りする相手なら振り回しにくい長剣よりも軽い短剣の方がいいだろ)
(この先、生物以外の敵も増えてくるじゃろ、主武器になる長剣にここで慣れておくのじゃ、小さく素早い蝙蝠に確実に当てられるようになれば大物の急所も狙いやすかろう、まあ一撃で獣を叩き切れるような膂力がお主に有れば別じゃがの)
ほんと嫌味な首飾りだなこいつは。
「それで、どちらに進むつもりなのかしら」
そうだな取りあえずはこの近辺のマッピングと魔物の傾向把握かな、さて魔物はどこにいるかな、ん、これは羽音かな探すまでもなかったか、って数がかなり多くないか。
「ま、魔物ですか、頑張ります」
「『迷宮』の中で生きているのは、初めて見ますね」
「がんばうー」
「わたくしの魔法を見せて差し上げますわ」
うーん皆やる気だなーよしよし、それじゃあ俺もって、多っなんだよこの数。
そこら中から湧いてきてるよ、どうするんだよこれ。
「壁を背にしろ後ろを取らせるな、俺とミーシアで壁になる」
吸血蝙蝠 LV(4~9)×247
戦闘スキル ライフドレイン
身体スキル 飛行
スキルは予想通りだけど数が二百以上って多すぎるだろ。
くそ、スキルが有れば接近される前に削れるのに、とりあえず指輪で行くか、ああっ、火の玉が小回りで避けられてる。
「先手必勝ですわ『火風』」
ハルの手から帯状に流れた火が数体の蝙蝠を焼く、おお複数攻撃呪文か、昨日教えといてよかった。
「この距離でしたら、届きます」
俺たちの間から飛び出したムチが正確に蝙蝠を叩く、鞭の長さ8mだっけ、射程は俺やミーシアよりあるんだよな、やっぱり後衛にしてよかったよな。
「えっと『ひきょうぼうぎゃい』」
数十体の蝙蝠が地面に落ちた、アラの『飛行妨害』だよな、確か空気の流れをいじって羽ばたきの効果を打ち消すんだっけ、でも、それだとダメージは落下のみか。
「俺が前に出て落ちた奴を叩く、ミーシアは三人を守れ」
『軽速』を発動させて飛び出す、地面に落ちてるのは踏み潰すか。
まずは一匹目、右足で、くらえ、ってあれ。
蝙蝠がぴんぴんしてる、あれ俺が飛び上がってる。
(『軽速』を解除せずに思いっきり踏み込むからじゃ愚か者が)
し、しまった、このままだと自由に飛び回れる蝙蝠の的じゃねえか、こんな状態で、もし魔法でも打たれたら。
(まったく、以前から阿呆だと思っておったが、まさかゴブリンですら注意しておったような事が出来ぬとは)
く、反論できない、とりあえず迎撃しないと。
目の前の一匹に上段から切りつける。
よし当たった、え。
剣の当たった部分を支点に俺の体が天井方向へ持ち上がる。
(だ、か、ら、攻撃の時は『軽速』を解除せぬか阿呆が)
最近戦闘してなかったから忘れてたんだよ。
くそこうなったら、やってやる。
空中で反転し天井を蹴って加速する。
「食らえ」
『軽速』を解除し、体重をかけた攻撃で数匹を落とす。
よし、上手くいった。
『軽速』を発動し落下しかける残骸を蹴る。
よっしゃ予想通り。
『軽速』をフルに使えば俺の重量はほぼゼロまで行ける、羽毛よりも軽ければなんだって足場になるし、ほぼ無重力だから三次元戦闘だってできる。
アイテム効果とは言えこれって立派なチートじゃね、その証拠に仲間たちも……
「なんですのあの非常識な動きは、ありえませんわ」
「す、すごいです、私なんて……」
「りゃー、アラもアラもー」
「あんな動きで攻められたらどうなるんでしょう」
驚いてるんだよな……
いや今は戦闘だ。
切る、残骸を蹴る。
壁を左手で押し返した直後に数匹を連続で切り捨てる。
『熱蒸弾』『ひゅううが』
続けざまに放たれる二人の魔法が数匹ずつ蝙蝠を削る。
広い吹き抜けのなかで蝙蝠は空中に散開してるからな、一発あたりの効率が悪いんだよな。
『小火陣』
スキルが有る分ハルの方が魔法の発動が速いな。
「えーい」
まあアラは弓も使ってるから撃墜数は同じくらいかな。
「い、いきます、えい」
うーんミーシア、盾は振り回して叩くものじゃないと思うな。
しかも一撃で数匹を叩き殺すって、怖いよ、剣も盾も軽々と振り回してるけど、あれ重たくないのかな。
「アラちゃんに近づかないでください」
サミューもムチがヒュンヒュン唸ってどんどん叩き落としてるけど、あんな使いにくい武器でよく当たるな、ミーシア達には掠ってすらいないのに。
これが初戦なんだよな、なんであんなに使い慣れてるんだろ。
よし、これで最後だ、しかし入って最初の部屋なのにずいぶん時間かかったな。
床の上は蝙蝠の死体だらけか、ちょっとこれはなー
「あ、あの蝙蝠はどうするんですか」
「そうだな、羽は素材として売れる、回収しておこう」
たしか一匹分で銅貨二枚になったよな、これだけあれば多少の稼ぎにはなるか。
「冗談でしょう、こんなにいますのよ」
「かしこまりました」
「アラもやるー」
あれ、ミーシアが動かない、どうしたんだ何か言いたそうにしてるけど。
「あ、あの、残った部分を食材に持っていっちゃ……」
え、食えるのあれ。
(お主には関係ないことなので説明してこなかったが『迷宮』での魔物食は普通に行われておる、傷みやすいので他ではあまり食されぬが携行食を節約でき、微量とは言え経験値にもなるでの)
そうか、ミーシアは結構食べるもんな、ハルは冒険者の基礎が有るなら抵抗は少ないだろうし、アラは好き嫌いがないようだしな、サミューはまあ食が細いからダメなら俺と一緒に保存食を食べればいいか。
「解った、好きにしろ、持ち運ぶなら俺のアイテムボックスに入れろ」
「あ、ありがとうございます」
いい笑顔で離れていくミーシアを見ていると選択肢が間違ってなかったのがよく解るな、だけど……
「これなんてもう焼けてるから、食べながら歩けますね」
蝙蝠の丸焼きをかじる美少女か、ちょっとなー
すいません次は、前回書いた通り来週になります。
H26年4月13日 誤字脱字、句読点、語尾修正しました。
H26年12月14日 誤字、一部モノローグ修正しました。




