表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/694

17 奴隷娘の三者三様とぷらす1

今回は娘さんたちの視点に挑戦してみました、キャラごとの長さの違いは愛の差ではなくて、書きやすさと出せるネタの差ですたぶん。

~サミュー~


「それで誰か志望者はいないのか、詳しくは解らんが相手は上級僧侶、身元はしっかりしているぞ」


 店長さんの言葉に手を上げる人は誰もいません、それはそうでしょう、上級僧侶を名乗っていても相手は冒険者、女奴隷の身請け先としては最悪ではなくてもいい方ではありません。


 傭兵や冒険者と言ったいわゆる戦闘職の人は気の荒い方が多くて、戦闘の後などはその高ぶりのままに女を求めるそうです。そんな時の扱いが手荒になるのは簡単に想像できますし、ましてタダで貰った奴隷などに気は使わないでしょう。他に仲間が居なければ歯止めも利かないでしょうし。


 完全に壊れる前に転売されればいい方、逃亡防止で『迷宮』に同行なんてことになれば一週間後に生きているかもわかりません。


 そんな実例を嫌と言うほど聞かされている奴隷達から志望者が出るはずありません、ましてここに集められているのは容姿の良い子たちばかりですし、上手くすれば貴族様や商人のお妾に成れるかもしれないと夢見ている娘達なのに、冒険者の捌け口になんて成りたくないでしょう、でも。


「わたしでもいいですか」


「サミューか」


 他に誰かいないか再度確認して店長さんがため息をつきます、私の事を知って相手が機嫌を損ねないか心配なのでしょう。


 他の子と違って私がお妾に成れる望みはまずありません、小間使いと言うのも難しいでしょう『多人数使用済み』の『傷物』、性奴隷としてはそこまで若くはない私がこのままここにいれば売春宿に払い下げられて使い潰されるしかないでしょう。それなら冒険者の方がましかもしれません。それに……


「仕方ないお前にしよう、決して失礼の無いようにな、ハルやミーシアを買おうとする上客だ奴隷にはうるさいかもしれん、もし先方を怒らせるようなことになれば解っているな」


「解っています」


 ハルさんやミーシアちゃん、あの子達はまだ男の人を知らないでしょう、そんな子達がいきなり冒険者の奴隷として扱われるのは可哀そうすぎます、せめて少しの間だけでも私が代わりに成れれば。





 目の前には冒険者さんがいます。これが私の五人目のご主人様ですか、背が高くてそれなりに筋肉のある腕はちょっと怖いです、ボサボサの髪も無精ひげもいかにも冒険者といった感じですが目は意外と優しげです、とはいえ私に人を見る目がないのは身に染みていますので実際は解らないですけど。


「そんな金は必要ない」


 あら、意外と無欲なんでしょうか、冒険者らしくない気がします、でも権力を笠にきてミーシアちゃん達を値切ったらしいですし。


 あ、土下座を始めました、一体この二人に何が有ったんでしょうか、僧侶様をそこまで怒らせるなんて普通はしないでしょうし、ここでしかたなくお金を受け取られるという事は意外と人がいいんでしょうか。


 あら、お金だけとって行ってしまいました、私はどうしたらいいんでしょうか、あ、店長さんが手を振ってます、あれはついて行けってことですね、わかりました。




「あ」


 宿の入り口で新しいご主人様が驚いたように私を見てます、ひょっとして今まで気付かなかったんでしょうか、冒険者なのに注意力が足りなくないですか。


 悩んでいるみたいですね、ひょっとしてこのまま奴隷店に返されてしまうんでしょうか、いけませんこのままでは売春宿行になってしまいます、仕方ありませんね。


「ご、五人分で頼む」


 上手くいきました、やはり涙は女の武器ですね、スキルには成っていませんがウソ泣きは得意なんです。やっぱり押しに弱いご主人様みたいですね。




「えっ」「嘘でしょ」「そんな……」


 部屋の中に私たち三人の悲愴な声が響きましたね。


 先ほどまでは豆のスープやサラダだけでも、食べられるだけましと思っていましたが、まさか一人で六人前の全てを食べるつもりとは思いませんでした、アラちゃんが居るとはいえ、彼女の年を考えれば食べるのはほとんどご主人様でしょう。


 しかも、わざわざ私たちを目の前に座らせて見せつけながらなんて、この方なかなかいい趣味をしています。


「豆スープやサラダも、ですの……」


 プライドの高いハルさんまでがこんな事を言うなんて、食べ物の恨みはとっても怖いんですよ。


「早く食べないと冷めるぞ」


 この状況で何を食べろと言うんでしょうか、見かけによらず嫌味な方なんですね。


 ここは初日からご主人様を怒らせることになっても育ち盛りの二人の分だけは確保しないといけませんね。


「ご主人様の後で残りを頂きます。ですので、出来ればこの子たちの分だけでも残していただけないでしょうか」


 あれ、何を考え込んでいるんでしょうか、奴隷が口答えしたのがそんなに意外だったんでしょうかね、それは奴隷に夢を見過ぎだと思います。


 でも怒っているようには見えません、どちらかというと意外そうな顔をしてらっしゃいます、私の言葉の意味が解っていないんでしょうか。


「俺は理由があってなまぐさと酒類は食べられないんだ、アラも野菜や果物が好きだしな」


 これはどういう事でしょうか、ご主人様もアラちゃんもお肉を食べないのにテーブルの半分はお肉が入ってます。


「ご、ご主人様、それでは、まさか」


 そ、そんなはずは無いですよね、私達は奴隷ですし。


「早くしないとシチューも肉も冷めてしまうぞ」


 これはかなり予想外でした、まさか奴隷に主人よりいいものを食べさせるなんて、それとも肉付きの良い女性が好みなんでしょうか、私達を太らせてから……


 でもそれなら別な子を買うでしょうし、一体どういうことでしょう、ミーシアちゃんは懐柔されたみたいですが私は騙されませんよ。




 今日は驚きの連続でした、まさか奴隷に自分の物を選ばせるだけではなくて金貨を持たせる主人が居るなんて思いませんでした、まあ大貴族の殿様などではあるらしいですけど、そんなのは例外すぎます。


 しかも、ハルさんをかばって代わりに殴られてさらに謝るなんて、ありえなすぎます、夕食もお肉でしたしひょっとしてとても良い人なんでしょうか、いえいえ、男の人の本質は下半身を確認しないとわかりません、これだけは私の経験が証明してます。


 あら、ドアの前で立ち止まってどうしたんでしょうか、背が高くて中が見えませんね、ちょっと横から覗いてみましょう、変わったことと言えばダブルベッドが入ったことでしょうか、ちょうどいい機会ですし試してみましょう、これが藪蛇にならない事を祈りながら。


「どうしました入り口に立ち尽くして、何か気になることでもおありですか」


 わざと耳元の近くで話しかけて胸も背中に当ててみます、さあこれでどう反応するでしょう、わたしだけに欲情してもらえるとミーシアちゃん達は助かるんですけど。

 

「~教育上どうかと思うぞ」


 あらあら、かなり動揺してますね、ひょっとして初心なんでしょうか童貞さんでしょうか、私の体も見ようとしませんし、でもそれなら美少女を二人も買うなんて変ですよね。


「いや、とても魅力的だが、俺はそう言った事をするつもりはない」


 もしかすると二人目のご主人様、思い出すのも嫌なあの方と同じような趣味なのでしょうか、それだと二人が可哀そう過ぎます。


「わたしを抱かれないのですか」


「ああ」


 これは確認しておきましょう、私なら慣れてるからたぶん大丈夫です、冒険者の力でされるとどうなるか分かりませんが。


 大丈夫、覚悟は出来てます、あんな可愛い子たちの代わりになるのなら本望です、だめですね手が少し震えてます、ご主人様には見られていませんよね。


「叩きますか」


 荷物に鞭を入れておくなんて、あの店もいい趣味をしています。


「いや、人を痛めつけて喜ぶ趣味は俺にはない」


 少しホッとしました、でもまだ安心はできないですね。


「それでしたら」


 四人目のご主人様の下に居た時のお客様のように私が相手をした男性には虐めてほしいという方もいましたし、私はどちらも嫌ですけれど。

 

「叩きますか」


「いや、人に痛めつけられて喜ぶ趣味も俺にはない」


 違いましたか、男の方はどちらかだと思っていたのですが、例外もいるみたいです。


「ひょっとして」


 ひょっとすると少女嗜好の方なんでしょうか、そうなると私では身代わりが難しくなります。


「若くないとダメなんですか、年上もいい物ですよ」


 違うと言ってくださいお願いします、あら逃げてしまいました、どうやらへタレだったみたいです。




 昨日はどうしたんでしょう主を待っている間に寝てしまうなんて奴隷失格です、まして主が床で奴隷がベッドで寝るなんて、どうなっているんでしょう。


「先に起きる事が出来たのがせめてもの救いでしょうか」


 起き上がってご主人様の顔を覗き込みます、こうして見ると意外と整った顔立ちをしていますね、無精髭を剃って髪を整えればそれなりに好みの顔になるかもしれません。


「ご主人様が起きたら試してみましょう、それにしても」


 もしかするとこの人はとてもいい人なのかもしれません、私だけでなく誰にも手を出した様子がありませんし、チンピラからかばったり女の子にベッドを譲ったり、奴隷を相手にしてるとは思えないほど紳士的です。


 いつの間にかベッドを抜け出したアラちゃんが彼の隣で気持ちよさそうに寝ているのも証拠になるでしょう。


 ひょっとして、売春宿よりはまし程度のつもりで来たのですけど、この方は理想的なご主人様だったようです。


「そうなると見限られないようにしないとダメですね」


 もし、このご主人様から売られる事になれば今度こそ売春宿でしょう、私を手放したくないと思って頂かないと、与えられた役目をこなすのはもちろんですがやっぱり必要なのは。


「誘惑でしょうね」


 女の武器を最大限に使っていきましょう、まずは丁寧に起こす事から始めます。


 アラちゃんをベッドに戻し、ご主人様に覆いかぶさってまだ若いその顔を見つめて私は宣言します。


「絶対に逃がしませんよ、私のご主人様」





~ミーシア~


 まえにお肉食べたのは何時だったかな、迷宮探索の時に倒した魔物の死体をかじった時だから半年くらい。


 きちんと料理されたお肉なんて食べた事ない、それなのにそれなのに。


 私の前に有るのはパンと温かいシチューとお皿いっぱいのお肉、どれも余り物じゃなくて出来立てなのに。


「早くしないとシチューも肉も冷めてしまうぞ」


「ほ、ほんとにいいんですか……」


「ああ、果物と肉をアラの分だけすこし分けてくれればいい」


 夢じゃないかな、食べようとしたら目が覚めてまた怖い人に怒られるんじゃ、それなら寝てるうちに食べちゃわないと。


 フォークを伸ばしてすくったお肉を口に入れる。


 お、おいしい、焼いたお肉ってこんなにおいしいんだ、生肉とは全然違う、こんなおいしい物があるなんて、もう一口良いかな、みんな自分のお皿で食べてるからこれは私が食べていいんだよね。


 もう一度お肉を口に入れる、おいしい、こんな幸せなことほんとに夢じゃないよね、こんなおいしい夢なんて見たことないもん。


 他の人が食べ終わったら取られちゃうかな、早く食べないと。


 もう無くなっちゃった、もっと味わって食べたほうがいいのに、きっとこんな美味しいのもう食べれないのに、馬鹿、馬鹿、みんなまだ食べてる、おいしそうだけど、だめ取っちゃダメ、そんなことしたら怒られる、殴られる、蹴られるかも。


 あれ、ハル様もサミューさんもスープを飲んでる、私のも有ったよね、なんだろこれ、お肉といろんなお野菜、それにミルクの匂い、どろっとして変なの、でも美味しそうな匂い、どんな味がするのかな。


 美味しい、なにこれこんな美味しいスープがあったんだ、あ、また慌てて全部食べちゃった、みんなまだ食べてるのに、あれ、私のお皿にお肉が乗ってる、私のお皿だよね。


「私はそんなに食べれないから、ミーシアちゃん食べて」


 サミューさんが笑ってる、貰ってもいいの、恐る恐る手を伸ばすと頷いてくれた。


「あ、ありがとうございます」


「リンゴもあるわよ」


 私のお皿に乗せてくれた果物、匂いは昔食べたリンゴと同じだけどこんなに白かったかな、まえのはもっと黒っぽかったよね。


 これも食べれるんだよね、噛んでみたらシャリってすごい音、それに甘い、すっごく甘い、もっともっと。


 しあわせ、こんな美味しい物がいっぱい食べれるなんて、この人、リョー様はとってもいい人なんだろうな。


 リョー様を見たら食器を片づけてる、だめ、ご主人様にそんな事させちゃ、私がやらないと怒られる。


「あ、わたしが、か、片づけます」


 手の届くところに有った食器は重ねたし、すぐに外に出さないと、っきゃ。


 食器が落ちちゃう、ダメ、リョー様に当たっちゃう。


 あ、ああ、リョー様にぶつけちゃった、怒られる、怒られる、謝らないと、ち、血が……


「あ、あ、ご、ごめんなさい」


 首輪が締まって、でもしかたないよね、こんなことしちゃったし。


「かはっ、けっふ」


 このまま死んじゃうのかな、お肉美味しかったな……


「ミーシア、俺は大丈夫だ、何も問題ない、気にする必要はない」


 お、怒らないの、殴らないの。


 首輪は緩んだけど、何時もならこの後ですごく怒られるのに。





「それなら、この店にあるもので必要そうなものを三人分用意してくれ」


 そういって私の手に乗せられたのはすごく綺麗なコインが三枚、これって、これってもしかして金貨じゃ。


「こ、こ、こんなに……」

「いいのですか私たちにこんな大金を」


「この中で『迷宮』の経験が一番多いのはミーシアだろうし、子守りのスキルはサミューだけで家事系統のスキルも一番多い、俺は女物の道具は分からないし、子守りも家事も素人だ、できる相手に任せるのは当然だろう」


 そんな私に任せるなんて、そんなの無理だよ、だって信じられない。


「こ、これ、き、金貨だよね」

「この額は多すぎませんか」


 絶対に落とさないようにしないと、うんしっかり握った、支払いまで絶対この手は開かない。


「安い粗悪品を買ってすぐ壊れても困る、多少値が張っても構わないから、長持ちする良いものを選んでくれ」


 本当に任せてくれてるの、奴隷の私を信じて買い物させてくれるなんて絶対失敗しないようにしないと、怒られないようにしっかり選ばないと、リョー様のお金を無駄になんてしちゃダメ。


「~迷宮で困る事になっても俺は知らんぞ」


「わ、分かっていますわ」


 ハル様と一緒に選んだけど、どっちも同じものなのにどうして高いほうを買おうとするのかな、あ、そんなの『迷宮』じゃいらないです、でも、ハル様の目が怖くて言えない。


 必要なものは全部買えたけど、もっと安く出来たのに怒られないかな。





「金貨百枚程度の予算でこの子等に装備を見繕ってくれ、獣人用アイテムボックスもあるから獣態のも頼む」


 リョー様が武器屋に連れてきてくれたけど私達の武器を買うのかな、昨日アイテムボックス買ってたのは見たけど私たち用だったなんて、間違って壊したり失くしたりしたらどうしよう、そうしたら怒られるかな。


 獣人用のアイテムボックスなんて無くても変身の前に服を全部脱げばいいのに、今まではそうだったしずっとこんな高い物を持ってるなんて怖い。


「こちらへどうぞ、先に獣態用の武器を選んでください」


 私だけで行ってもいいのかな、リョー様は動かなそうだし、行くしかないのかな。


「熊用の鎧はこれだけになります、武器は色々ありますが一般的には爪か牙ですね、ご予算ですとどちらか一つになりますがどうしますか」


「え、えっと、爪でお願いします」


 私一人で決めちゃってほんとにいいのかな、後で怒られたらどうしよう。


「それでは、次は人態の装備にしましょう、防御重視という事ですけど、この鎧はどうですか、少し重くて動きにくいですけどこれなら女性でも着れるでしょう」


 店員さんが持ってきた鎧を片手で持ってみる、軽いけど大丈夫かな壊れちゃわないかな、壊れたら怒られるかな。


「も、もう少し丈夫な方が……いいです」


 いくつか試してみたけどやっぱり軽いし壊れそう、シルマ様のとこで着せてもらったフルプレートアーマーとかなら安心できるんだけど。


「これがうちで一番重い鎧です、その分防御力は保証しますよ」


 まだ軽いけどこういう鎧の方が安心できる、殴られる場所もへるし。


「剣や盾も重いほうがいいでしょうか」


「は、はい」


 持って来てくれた剣と盾はやっぱり軽めだったけどリョー様が買ってくれた物だもん、文句なんて言っちゃだめだよね。壊さないように大事に使わないと。





 目の前ではハル様が寝てる、私も寝なきゃだめだけどふかふかのベッドが慣れなくてぜんぜん寝付けない。


 今日もごはん美味しかったな、お肉もいっぱいだし、明日から馬車で移動するってリョー様が言ってたけど『蝙蝠の館』ってどこだろう。


 明日もごはんが美味しいといいな。


 明日もリョー様に怒られないといいな。



~ハル~


 奴隷に身を落とした時に覚悟は出来てましたわ。


 家の者たちはわたくしに隠していましたけれど、お父様やお兄様達が女奴隷をどんなふうに『使って』いたかは知ってましたわ。


 ミーシアが無事だったのはただ運がいいだけ、我が家に来る前は幼すぎたから、来てからは急激に成長したために小柄な鴉族からは見向きもされなかった、ただそれだけの事ですわ。


 だから、わたくしがこれからどうなるかも想像できましたし覚悟も決めておりました、でもきっと何時かお兄様達が家を復興してわたくしを買い戻してくださる。


 必要な装備や家宝、後は公邸などを残して、それ以外の殆どの私財を売り、残っていた奴隷も大半をお金に代えて、それでもわたくしを売らなければならなかった時に約束してくださいました。


 シルマ家は百数十年前の勇者様に仕えた魔導師が興した家、一族は皆その才を受け継いでおります。『迷宮』に入りさえすればお金なんてすぐにでも用意できるはずですわ。


 そうして自由を取り戻した暁には、わたくしを汚した男たちを一人残らず。


「そう思っていたのですけれど、これでは拍子抜けですわ」

 

 いまわたくしの目の前には必死に魔力制御を行っている冒険者がおります。


 わたくし達を買って二日目の夜だというのに、わたくしはおろかミーシアやサミューにも手を出さず、それどころかサミューの誘惑を露骨に避けるだなんて。


 結局払わなかったとはいえ、あれだけの金貨を積んでまで手に入れようとした女奴隷を放って置くなんて、この男は不能なのかしら、いやだわ、わたくしとした事がはしたない。


 でも、おかしな男ですわ、お金が無いと言うくせに吝嗇ではないみたいですし、昨日今日の買い物も満足こそ出来ませんでしたけれど、この男なりに気を使っていたのか、ちょっと言えば追加の予算を出しましたし。


 まあ、あれでは全然足りませんけど、せめてもう三個くらい魔法石が有れば違ったのですけれど。


 まったく本当に変な男ですわ、魔法の鍛練には『魔道具』が必要なのと言ったら3つも持っているなんて、非常識ですわ、『魔道具』がどれ程貴重か分かっているのかしら、おかげで基礎を教えやすいのは助かりましたけれど。


 普通ただの剣士が『魔道具』を持っていれば、わざわざ魔法に手を出すことなんてしないはずですのに。


 しかも二日でまがりなりにも炎を操って見せるなんて、一族の者でも動かせるようになるには一年はかかるはずですのに、一体どんな魔法制御力をしているのかしら、非常識ですわ。


 非常識と言えば、先ほど下郎に言いがかりを付けられたときに殴られていましたけれど、あの後の魔力の流れがおかしかったですわ、まるで回復魔法を使ったような。


 でも、有り得ませんわ、この男が魔法を使えるはずはないのですから、隠しているつもりなのでしょうけど魔力の見えるわたくしの目は誤魔化せませんわ。


 まったく、闘士の癖に使えない魔法の修練をしてどうするつもりなのかしら、『闘気術』があると『魔法』を使えなくなると知らないのかしら。


 言われるまで教えてなんてやるものですか、そんな命令はされておりませんし、この男に危険も無いのですから、懲罰も発動しませんでしょう。


 それにそんな事を知ったら、この男から呪文を聞き出すことが出来なくなるかも知れませんし。


 まさか本当に呪文を暗記しているなんて意外でしたわ、始めに聞いたときにはわたくしの耳を疑いましたけれど。


 昨日の『照明』や『入眠』のような初歩的な魔法ならともかく、試しに頼んでみた『溶岩密封』みたいな上級魔法の呪文をすらすらと読み上げるなんて、非常識すぎますわ。


 発動しなかったとはいえ魔力が動いたので呪文は間違ってないでしょうし、この呪文は毎日練習しないといけませんわね、レベルが低くても練習を続ければ、わたくしなら上級魔法を習得できるはずですし。


 この男となら一族では教わらないような呪文も覚えられるのかしら。


 お金は無いけれど、わたくし達に手を出す気はないみたいですし、粗末とは言えそれなりに食事はさせてくれるみたいですし、『迷宮』でレベルを上げたり新しい呪文を覚えらえるのでしたら、お兄様達に買い戻されるまでの繋ぎにはちょうど良いのかもしれませんわね。


 家に帰ったらすぐにお兄様達の役に立てるようになって見せますわ、炎の制御に集中してこちらが見えてない背中に呟きましたわ。


「覚悟なさい、貴方の覚えている呪文全て、わたくしの物にして見せますわ」


 


~アラ~


 ふかふか、あったかい、ぎゅー、でもちがうー、いつももっと


「ほえ、さみゅ」


 さみゅ、ねてう、やわやわーおっぱい、いいにおい、でも


「りゃーあ、いない」


 いっしょにねるの、べっどに、いないなー


「となり、みーちあと、はりゅかー、りゃーいなーい」


 りゃーは、ゆかかなー


「りゃーいたー、すすしそー」


 ふくすこしだけだー、アラといっしょにねると、りゃーおようふくいっぱい、あついあつい、いって、へんなのー


「あついけど、りゃーとねるー」


 べっどのうえ、たかいなー、おちちゃう、こわいなー


「でも、りゃーがいー」


 こわいけど、こわくない、りゃーなら、おおかみさんも、くまさんも、おにさんも、こわくないもん、えい


「いたい、なかない、なかない」


 りゃー、ごつごつー、でもぎゅー、あったかー


 りゃーといっしょ、こわくないよ、まもってくりぇる、アラのゆうちゃさま、だけど、だから


「りゃー、ごめんなしゃい」



こんな子たちですが、傍から見るとちゃんとかわいく映ってるといいなー


次の更新ですが、お盆休みのからみで今週は多分あと一度くらい、その次は来週になるかと思います。



H26年4月13日 誤字、句読点、語尾修正しました。

H26年11月18日 誤字修正しました。

H26年12月14日 誤字修正しました。

H30年1月21日 サミューの過去について外伝との相違点の修正をしました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ