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162 暗金の髪

「えへへ、リャーといっしょ」


 ボス部屋の奥に有る通路を進みながら、アラが俺の手にぶら下がってくる。


「アラ、疲れてないのか」


 この『迷宮』に入ってからそこそこの日数が経ってるし、その前の『鬼族の街』でも大変だったし、更にここまで移動して来る時の強行軍も含めるとね。


 人間の子供で言えば、まだ八歳位の体格しかないアラじゃ、かなりきついはずだよね。


 体調を崩しててもおかしくない気がするんだけど。


「だいじょぶだよ、だってリャーと一緒なんだもん。アラはね、リャーと一緒ならなんだってできるんだからね。だから、だから、アラを置いてどっかいっちゃったりしちゃめーなんだからね」


 こ、この子は、なんてうれしい事を言ってくれるんだ。


(まあ、アラの職やレベル、ステータスを考えれば、並みの大人よりも体力があるからのう)


 いや、まあ、それはそうなんだけどね。でもやっぱりアラ自身は小さな子供だからさ。


(お主らは子ども扱いしておるがのう、今のアラならばそこらの冒険者のパーティー程度なら一人で蹴散らせるのじゃぞ。まあ、使えるスキルや魔法での消費量に比べて、MPや体力の総量が微妙じゃがの)


 ステータスが高いって言っても、アンバランスなくらいに威力の高い大技がいくつか有るからねアラは。


(まあ、それも、お主の『成長補正』のおかげでだいぶ追いついたようじゃが)


 確かに、アラが急成長した直後は、魔法やスキルを使った後で『魔力枯渇』と『疲労困憊』なんて異常状態を起こしてたけど、最近はそんな事ないからね。まあアラも自分のスキルを把握して、使いどころが分かってきたのかもしれないけど。


(さて、そろそろ着くのではないかの、痛みに耐える覚悟は出来たかのう)


 あ、そうか、そう言えば『迷宮核』の『鎮静化』って結構痛いんだよね、電撃を全身に流されたみたいな感じでさ。


(まあ、お主の場合は通常よりも痛みが強いのじゃがのう)


 な、なんだと。


(ほれ、『勇者』は『鎮静化』の際に『若返り』を行うじゃろう、あれは全身に『迷宮核』の『霊気』を流すからの、必然的に体に若干の負担がのう。もっともお主は『魔力回路』の書き直しが有る分、他の『勇者』とは比べ物にならぬほど痛みが強いじゃろうが、あれは体の中に新しい器官を無理やり刻み込むような物じゃからのう)


 お、おいおいおいおい、聞いてないぞそんな事。しかも結局は他の『勇者』と比べて俺だけがキツイって話かよ。


(なんで今まで言わなかったんだ)


 またいつものど忘れか、この大ボケ首飾りが。


(言うても仕方がなかろう、痛かろうと痛く無かろうとお主は『鎮静化』を行うしかないのじゃからな。そう思っておったのじゃが、思いの外お主が痛みを気にしてそうだからの、説明した方が良いかと思ったのじゃが)


 ああ、そうかいそうかい、でも出来る事なら『鎮静化』の直前に言うのはやめてほしかったなー


「はあ、やるか」


 ラクナの言うとおり、たとえ痛くてもやるしかないんだから、腹を決めてやるしかないか。


「よし、行くぞ」


 目の前で浮いている『迷宮核』へ歩み寄り片手を伸ばす。


「えーい」


 え、これはまさかまたアラが。


「ぐぐうううう」


 掌から全身に広がった痛みのせいで、直前によぎった不安や考えが一気に吹き飛ぶ。


「があああああ」


 全身を流れる痛みが弱まっていく中で、唯一の心配事が意識の上に浮かんでくる。


「はあ、はあ、アラ、アラ」


「なあに、リャー」


 痛みで思わず息が上がってしまった俺に、何か細長い物を抱えたアラが振り返る。


 痛みでダメージを受けている感じはなさそうだな、それに以前みたいな変化もなさそう、いや……


(ほんの少しじゃが、背が伸びておるのう、それに毛髪も)


 確かに少しだけ背が伸びたな、年齢で言うなら一つぐらい増えたような感じか、それにラクナの言うとおり髪が大きく変わってる。


 今までは、かなり癖が強いフワフワモコモコの羊みたいに可愛い感じの髪だったけど、大分癖が抜けて、サミューみたいに波打つような感じで、暗めの金髪とあいまってちょっと大人っぽくなったかも。


「アラ、どこか痛くは無いか、気持ち悪いとかないか」


 ラクナの話だと、『魔力回路』の書き換えをしてる俺みたいな激痛はなさそうだけど、それでも何かあるかもしれないし。


(少しは落ち着かぬか、この親馬鹿めが)


(いや、そうは言うが、こんな小さな子供なんだから、ちょっとした事でも大きな負担になるかもしれないだろう)


(よく見てみよ、ピンピンしていつも通りに笑っておろうが、それよりも『鑑定』結果を見てみよ、前回の事もある、また何か変化しておるやもしれぬぞ)


アラ・フォティ

魔術剣士 LV31 弓師 LV28 速斬剣師 LV3


技能スキル 剣道 細剣術『片手剣術』短剣法『速斬剣法』弓術 長弓 弾弓 曲射 軌道予測 風魔道 闇魔術 植物魔法 雷 氷 高速詠唱 無詠唱 待ち伏せ 幻魔法 雷撃操作『スキル二連続発動』


身体スキル 聴力上昇 視力上昇 魔力上昇 速度上昇 快速 風耐性 暗算 MP回復


戦闘スキル 風牙 闇牙 雷牙 氷牙 風弾 闇弾 雷弾 氷弾 闇刀 氷刀 風刃 闇矢 氷矢 雷矢 風槍 風陣 雷陣 氷陣 裂風陣 闇幕 闇毒風 闇痺風 闇痺雷 闇痺氷 涼風 吹雪 風雷 強風 突風 飛行妨害 葬風 旋風 竜巻 乗風 草操 草剣 木操 強斬 速斬 断斬 瞬斬 斬突進 扇圏斬 飛斬 横斬波 二連続切 三連続切 六連斬 連斬撃 強刺突 三連刺突 精密射撃 長距離狙撃 二段撃 三段撃 連射 制圧射撃 影縫 幻影 闇幻 視野暗幕 偽痛覚 幻聴 暗中狙撃 急所突『三連速飛斬』『八連瞬斬』『十連瞬刺』『縮地斬撃』


生活スキル お手伝い


特殊スキル『軽装時高速化(五分)』


装備品制限 重装防具不可 硬衣類不可


 レベル自体は少ししか変化してないけど、スキルと職業が増えてるな。なんかどれもスピード重視っぽい感じだけど『二連続発動』ってこれ結構凶悪なんじゃ、たしかスキルって一つ使うと数秒から数十秒はスキルが使えなかったり、場合によってはちょっと硬直が有ったりするんだよね。

 

 まあ、俺は戦闘スキルが使えないから、今一解らないんだけどさ。でもこれは結構すごい事なんじゃないのかな。


(『速斬剣師』か、またもや上位の職が増えておるとは、驚くのも馬鹿らしくなってくるのう)


 普通に考えれば『速斬剣』てのは『剣』の派生職とかスキルなんだろうし、『士』じゃなくて『師』って事はその分だけ上級な職って事なんだろうし。


(これは素早さに特化した職業じゃが、通常はよほどの才と修練が無くば就く事が難しい職のはずなんじゃがのう)


 え、じゃあかなり上級の職って事なのかな。


(ただのう、素早さに特化しすぎたための欠点もあるのじゃ『装備品制限』と言うのが有るじゃろう)


 ん、これかええっと『重装防具不可』に『硬衣類不可』って奴か、え、不可、これって装備できないって事だよな。


(重量の有る装備品や、動き難くなる様な硬い衣類を装備できなくなる。具体的には金属を多量に使った鎧や厚手の革服等じゃな。とは言え絶対に装備できない訳では無く、装備すれば速さに関連するスキルやステータスが大幅に制限されるだけじゃが)


 うーん安全を取って戦力をダウンさせるかって事になるんだろうけど。でも逆に動きが悪くなったら相手の直撃を受けたりして危険なのかも。


(まあ、レベルが上がれば、こういった制限は無くなる上に、ほれ見てみよ軽装時の利点も存在するのじゃ)


『軽装時高速化』って奴の事か。


(動きを制限しない軽装をしていれば、速度が上がるスキルじゃがこれもレベルや熟練度で割合が増える)


 今は五分って事だから5%上昇って事か。こう考えると、一撃離脱みたいな感じで回避専門にした方がアラとしては安全なのかな。


(ちなみに、どのくらいの装備品なら大丈夫なんだ)


(金属類ならば小さめの盾や装飾品、薄手の胸当て程度じゃろうな、革や木製品ならば鎧なども可能じゃろうが、関節の動きを阻害するようなものはダメじゃ、服類は先ほど言ったように厚手の物は無理じゃからのう。ハルのように魔法で強化した生地で服を作るというのが無難じゃろうて)


 うーん、そうか、何か丁度いい防具が手に入ればいいんだけどな。ん、あれ、これは。


「アラ、その剣はどうしたんだ」


「えっとね、あれに触ったら出てきたの」


(おそらくはアラのスキルと、この『迷宮』の『型』の両方から影響を受けておるのじゃろうな)


吸血の細剣 LV1

付加効果 ライフドレイン MPドレイン


 お、これは。


(攻撃した相手のHPやMP、体力などを吸い取って装備者を回復させる効果じゃのう)


 てことは、ダメージを受けても自力で回復出来るって事か、いやそれだとアラがダメージを受ける事が前提になっちゃうけど。でも体力やMPが回復できるなら、安心して大技を連打できるようになるって事か、今までアラが自分で制限してた可能性もあるし、また大技が増えたっぽいし。いや、まてよ……


(吸い取るって言うのは、相手に与えたダメージをMPや体力なんかに変換するって事なのか)


(そうではない、切り付けた際に相手へ与える傷とは別に、これらを相手から直接吸い取るのじゃ、吸い取れる量は武具のレベルと与えた傷の度合い、刃が食い込んでいた時間の長さに比例するのじゃ)


 お、予想通りだ、という事は。


(何度も切り付ければ相手を『魔力枯渇』や『疲労困憊』に追い込む事が出来るのか)


(理論上は可能じゃがのう、魔法に特化した敵などではその前に倒せるのではないかのう)


 とは言え、上手く使えば相手のスキルや魔法を抑えられるし、HPも吸い取れるって事は相手に与えるダメージが増えるって事だしね。


「アラ、この剣はどうだ」


「んーとね、軽いし振りやすいよ」


 今まで使ってた『出血の細剣』と形状はほとんど同じだから、感覚は変わらないのかな。


「それじゃあ、これからはこの剣を使ってみるか」


「いいの、アラが貰っちゃっていいの」


 両手で剣を握り締めて、見上げてくるけど、表情がうれしさいっぱいって感じだな。


「ああ、この剣はアラにちょうどいいみたいだし、それにアラは今までいっぱい頑張ってくれたからな」


「ありがとうリャー、えへへ、新しい剣、リャーに貰っちゃった」


 ああ、もうやっぱりうちの子は世界一可愛いわ。


「あ、でもこの剣、どうしよう、これもリャーに貰った剣なのに」


 アラが腰に吊ってる『出血の細剣』を見てるけど、アイテムボックスに入れればって、そう言えばアラのアイテムボックスは装備品が少ししか入んないんだっけ。あの剣を入れちゃうと街とかで装備品を外した時に全部入らなくなるかも。


「それじゃあ、そっちの剣は俺が持っておこう、こっちが必要だったらすぐに渡すからな」


「うん、わーった、リャーとアラはいっつも一緒だから、何時でも貰えるもんね。あっ」


 俺に『出血の細剣』を渡したアラが、慌てたように小さなお腹を押さえると可愛らしい音がそこから響く。


「お腹が空いたのか」


「うん、ちょっとだけ」


 もしかしたら成長した分、カロリーを使ったとかあるのかな、いや考えてみれば朝食を食べてからもう結構時間が経ってるよね。


「アラ、先に戻ってるか、そろそろサミューが食事の用意をしてるだろうから、帰ったらご飯が食べれるぞ」


 ボス部屋から『迷宮核』までは一本道だし魔物は湧かないらしいから、両端を押さえてる以上は、一人で帰っても危険は無いからね。


「リャーはどうするの」


「他にも『迷宮核』から出て来たものが有るから、それを確認しておく、大丈夫だそんなにかからないから俺もすぐに行く、その事をサミュー達に教えてきて貰えないか」


「うん、わーった、リャーも早く来なくちゃめーなんだからね」


 俺の言葉に大きく頷いたアラが、部屋の出口の所で立ち止まってふり返って来たけどどうしたんだろう。


「そうだ、ねえリャー、アラ変じゃないかな」


 ん、変って、何がだろ。


「だって、髪の毛こんなふうになっちゃって、リャーがかわいいって言ってくれなくなっちゃったら」


 今までと比べて、天パ度が下がった金髪を一房摘まみ上げて、アラが不安そうに聞いて来るけど。何を馬鹿な事を言ってるんだこの子は。


「どんな髪型でも、アラがかわいいのは当然だろう。それに大きくなったアラは今まで以上に可愛くなってるから」


「ありがとう、リャー大好き」


 笑顔でアラが戻って行った事だし、さてと、他に何が出たのか確認するか。


ええと、次話とその次は番外編の予定です。

次回はハルかサミューの視点。

その次の話は『鬼族の街』の現状になる予定です。


H27年3月6日 誤字修正しました。

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