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16 お買いもの、その2

今回もお買いものです。

 ん、朝かな、日差しがまぶしい、目を開けないとな。


 でももうちょっと寝てたい、この布団温かいしフカフカで気持ちいいな、二度寝の誘惑が……あれ、俺は毛布かけて床で寝てたはずじゃ。


 おかしいな、両手を少し動かしてみる、布団にしては幅がない、それに弾力が。


「あんっ」


 あれ、なんか嫌な予感がしてきたな、は、早く目を開けないと取り返しのつかない事になりそうな気がするんだけど。


 目を開けると、至近距離に青い目をした金髪さんの顔が。


「何をしているんだサミュー」


 床の上に寝ている俺の上にはメイド服のサミューがのしかかっている、この姿勢はやばすぎるだろー


「ご主人様を起こそうとしていました、おはようございますご主人様、それでは朝の挨拶を」


 だんだんと近づいてくる唇、うーん、ノクターンのハーレム物だとよくあるシーンだよね、おはようのチュウ。


 これはもうある意味男の夢かもしれない、じゃない、マズイこのままはマズイ、掌を使って防がないと、いや万が一にも舌とか粘膜に触れたら。


 両手でサミューの頬を押さえて距離をとる、危なかった。


「そんな挨拶はしなくていい」


「口はお嫌ですか、それならこちらに」


 ズボンのベルトに手をかけるな、どこにどんな挨拶をするつもりなんだこのエロメイドは、そんなふうに朝っぱらからドタバタしている俺たちに向かって。


「ん、りゃー、さみゅ、おあよ、あしょんでるの」


 寝起きのアラが目をこすりながら、純真な目を向けてきていた。そんな目に真実は言えないよね、ねっ。


「おはようアラ、これは遊んでるんじゃなく近接戦闘の訓練だ」


 全力で誤魔化すことにしました。


「いったいどんな戦いを想定しての訓練なのか、ぜひご説明して頂きたいものですわね」


「あ、あの、おはようございます、ごめんなさい」


 ハルさん、なんだいその冷たい目は、ミーシアちゃん、そんな泣きそうな目で赤い顔して、誤解だよ、誤解なんだからね。




 朝食を取った俺たちは武具屋に来ていた。しかし、サミューが洗顔から髭剃り、寝癖直しまでしてくれたのはびっくりだった。これがリアルメイドさんか、至れり尽くせり、これで頭の中がピンク色じゃなきゃなー


「金貨百枚程度の予算でこの子等に装備を見繕ってくれ、獣人用アイテムボックスもあるから獣態のも頼む」


 予算は十分ある、何しろ奴隷店に行って逆に金が増えちゃったもんね。昨日の買い物の後でもまだまだ黒字って、あ、店長のお姉さん驚いてるよ、まあそうだよな、日本で言えばいきなりやってきた大学生が札束を積み上げたようなもんだし。


「熊人の子には防御力重視の前衛向きの防具に長剣と盾、獣態の装備は本人と相談してくれ、鳥人の子は魔法士向けの装備一式と接近された時の対策に小さ目の護身武器、金髪の子には動きやすくてそれなりに防御力のある装備とムチを頼む、それと……」


「アラはー」


 うーん、いくらなんでもね、アラの装備って……


「この子が、装備できそうなものはあるか」


 馬鹿にしてるのかって、怒られたらどうしよう。


「子供用装備ですね、ありますよ」


 有るのかよおい、普通に答えてきたよ。


「貴族の御子息向けに、儀式用の物や練習用のものがあります。それほど性能はよく有りませんが、実戦でもある程度は使えます」


「そうかそれなら頼もう」


 あれ、なんか店長さんの目が変わったような。


「そうですね、お嬢ちゃんなら重い鎧より強化付与した布製の方がいいよね、動きやすいし仕立て直せば多少大きくなっても大丈夫だし、色は青、いいえ白がいいかも淡い色の方がきれいな肌が引き立つわよね、リボンも付けちゃおうか、魔法石とセットにすれば……」


 おーい、店長さんうちの子は着せ替え人形じゃないですよー、確かにうちのアラは超絶かわいいですけど。



「ご主人様、この装備はどうでしょうか」


 ん、サミューの装備が決まったのか、て、その格好は。


 簡単に言えば黒のライダースーツ、鈍く光りを放つ黒の革が同じ色のブーツから胸元、手首のあたりまでを完全に覆っている。腰のベルトの右側には、猛獣使いが使うような何メートルもある長いムチが丸められており、逆側には昨夜取り出したような乗馬鞭が吊るされている。


「こちらは『ワニ喰い水牛』の革で作った服になります、動きやすさはもとより丈夫さも保証付きで『槍牙ワニ』に噛まれても傷一つ付きません」


 うん、いい装備なのは解った、解ったが、ピッチリし過ぎじゃないかこれ、体のラインが丸わかりの上に、ファスナーがキツイのか胸元が思いっきり開いてるし。


 ゴクリと思わず唾を飲み込んじゃった。


「どうですかご主人様、そそりますか」


 確信犯かよこのエロメイド、髪をかき上げてどこの不〇子ちゃんだお前は、そんな格好しても俺はトランクスで飛び付いたりしないぞ、絶対しないぞ。


「これ自体は薄めですので、上に別な装備をしたり普段着を纏うお客様もいます、侍女服で迷宮攻略とかカッコいいですよお客様」


 ねえ、この店の判断基準は大丈夫なのかな、とはいえメイド服の方が視覚的にはまだ安全かもしれない、一応、軽装鎧も用意しとくか、さすがにこの服だけでボス戦はさせられないよね。



「りゃー、にあうー」


 呼びかけにふり返ると、真っ白なワンピースに水色のリボンをしたアラが居た、店長さんの仕込みなのかその場でくるりと一回転すると、金色の髪と一緒にスカートがふわりと浮いてとっても可愛らしい、可愛らしいのだけれど。


「なあ、店長」


「はい、かわいいですよね、お客様」


「この服には防御力があるのか」


 手や足が露出してるんじゃないか、これじゃあうちのアラがモンスターの攻撃で怪我しちゃうだろ。


「大丈夫です、これだけ可愛ければ、魔物だって攻撃できません」


 気持ちは解る、その気持ちはよーくわかるが、残念なことに君の考えは間違っているんだよ、店長さん。


「もっと露出のない服にしてくれ、防御力のあるやつだ」


「お嬢さんに変な男が寄ってこないか心配なんですね、解りました」


 いや、そういう理由じゃないんだけどさあ、まあいいか。



「こんな物しかないのかしら、仕方ないですわね、これで我慢いたしますわ」


 お嬢様も出来たか、さてさてどんな感じかな。


 武器は杖か結構長いな、先端に宝石が付いてるのは多分何か魔法の補助効果があるんだろうけど。


「武器はこの杖だけか」


 ハルに付いていた店員に尋ねてみると、よどみのない答えが返ってきた。


「はい、この杖は仕込杖になっておりまして、取っ手部分に短めの細剣がしまってあります、魔法補助は先端の魔法石ですので剣を抜いていても同じ効果があります」


「熟練度こそ高くありませんけれど、護身程度ならばわたくしも『短剣』スキルがありますわ」


 言い方が少し腹立つけど武器は大丈夫か、服の方は濃い青色の上着に黒のズボン、青紫色のマントか、どれも細かく刺繍が施されてるな、ちゃんとした鳥人用の服は背中のスリットがついてるんだな、普通に羽が出てるし。


 なんか冒険用の服と言うより、貴族の坊ちゃんの服といった感じかな、さすがお嬢様、見た目も気にしてるみたいだな。


「この服の防御力はどうなんだ」


「見た感じは薄めですが、強化の付与魔法をかけているので安物の革鎧等よりは丈夫です、後衛の装備としては十分かと」


「ふふ、わたくしの目利きの確かさがわかったかしら」


 これでただの服だったらどうしようかと思ったけど、そのくらいの常識はあったみたいだな、でもまあ、これは問題ありだよな。


「それで、あの所々についてる宝石類はなんだ」


 ハルの指や手足、首元、髪、服に付けられたピンバッジやカフスボタンなど、所々に高価そうな宝石が……


「あちらですか、すべて魔法石ですね、それぞれ効果も被らないですし、お値段の割に性能のいいものを選ばれてますね」


「それで全部で幾らになるんだ」


 これ、どう考えても予算オーバーですよね、このお嬢さん解ってるのかな。


「全部で金貨140枚になります、人態の服と杖で十二枚、鳥態の装備が六枚、後は全て魔法石ですね一つ当たり7枚から40枚はしますから」


 その数字に思わずため息が、ん、アラは見てないよな、よしよし。ほんっとこのお嬢様はお約束通りの事をしてくれるなあ。


「装備類はそれでいい、宝石だけで金貨二十枚以下になるように徹底的に削ってくれ」


 それでも予算オーバーだけどこのくらいは仕方ないかな、うーん俺は甘いかな。


「ちょっとお待ちなさい、どれもこれも必要な魔法石ですのよ、減らすなんてありえませんわ」


「金がないんだ、迷宮で稼いだら考えてやる、お前の働き次第だがな」


 まだぶーぶー言っているハルお嬢様は、少し残念そうな顔をした店員に引きずられていきました。



「お客様これでどうでしょうか」


 アラの着替えが終わったか、さて今回はどんな可愛い衣服が……じゃない。


「りゃー、かわいーい」


 うーん可愛い、全身を覆うローブか、魔法使いっポイよね、ピンク色ってのも子供らしいかも、ハロウィンの仮装みたいで微笑ましいなー


「そそうー」


 若い子が胸元を開けて露出するんじゃありません、しかも、中が水着ってどんな趣味ですか、仕込みはエロメイドか、それともここの店長か、この世界には情操教育という言葉がないのだろうか。


「店長、真面目に選んでくれないか」


「申し訳ありません、あまりに可愛らしかったのでつい、ですがローブ自体はかなりいいものですよ、物理攻撃はもちろん魔法攻撃にも十分耐えられます、下の方は魔法士のお嬢さんと同じような服にしてはいかがでしょう」


 あ、ネタだけじゃなかったのか、でもなあアラのスキルだとな。


「もう少し動きやすい格好にしてくれ、魔法だけでなく、剣や弓を使う事もあるからな」


「解りました」


 さて次はどんな感じかなー



「あ、あのリョー様、ど、どうでしょうか」


 ミーシアも出来たか、おお、これは。


 青みがかった金属製の鎧か、上半身全体と籠手、兜はなしか、下半身は革のズボンに鎧とセットのブーツねー、サミューみたいにピッチリしてないのがとってもありがたい。


 剣も結構大きいな、ゴブリンズソード程じゃないけど厚さも長さもかなりだよ、俺はなんとか両手で使ってるけど盾があるから片手で振り回して戦うんだよね、てか盾もデカ、ゴツ、日本の機動隊みたいな盾だよ、でもミーシアが持ってるとそんなに大きく見えないのはなんでだろ不思議だな、これって総重量で幾らになるんだろ。


「なあミーシア、重たくないのかそれ」


「えっと、だ、大丈夫です、全身鎧を着たこともあるし、か、軽いほうです」


 いや、それが軽いって、14歳の女の子だよね、ミーシアちゃん。


「ミーシアはその装備でいいのか」


「は、はい、これが一番丈夫そうですし、着ているって感じがして、安心します」


 そこが、判断ポイントなんだ、まあいいけど。


 

 後はアラか、そろそろできたかな。


「りゃー、つおそおー」


 おおー今回もかわいいな、ハルのと同じような作りの白い上下に軽そうな金属製の胸当て、腰と背中にはミニサイズの細剣と弓矢、ミニチュア戦士って感じだな。いいねーいいねー


「アラ、とっても強そうでカッコいいぞ」


 うん見た目は良いね、でも実際の性能はどうなんだろ。


「強度はどうなっている」


「はい、下に着ている服は魔法士向けの強化付与されたものですし、鎧も同様です、剣は小型ですが切れ味は十分、弓は風の魔法を付与してありますので力がないお子様でも十分な飛距離と威力が出せます」


 なるほどそれならいいか。


「ご主人様の装備は買われないのでしょうか」


 うーん、サミューの言葉も解るけど武器はゴブリンズソードと切り裂きの短剣があるし、防具はなー、俺の場合は避けれるように軽い装備の方がいいし、『超再生』があるから多少食らっても問題ないんだよな。


 着ててもすぐに壊れちゃうし、実際、神殿で貰った防具は『子鬼の穴』で全滅したしなー


「いや俺の分は大丈夫だ」


 ここだけで、金貨140枚使っちゃったもんな、しばらくは節制しないとね、それよりも問題は。


(ラクナ、俺たちみたいな初心者パーティーのレベル上げにちょうどいい迷宮はあるか)


(そうじゃのう、幾つか心当たりは有るが、他に希望はあるかの)


(希望を言えばミーシアの罠関係や開錠スキルの熟練度が上げられて、サミューのレベル上げの為にムチでも倒せそうな敵がいる所だな、ハルやアラは魔法が有れば大抵の所は大丈夫だろう)


(ふむ、それならば『蝙蝠の館』がちょうどよかろう、ここからなら馬車で七日程度じゃ)


 よし、明日出発するかな。


ああ、サミューが好き勝手やっている……


H26年4月12日 誤字脱字、句読点、語尾修正しました。

H26年11月21日 誤字修正しました。

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