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154 状況評価

お久しぶりです。

パソコンの不調が有ったためにお待たせしました。

「う、うう」


(やっと、目覚めたかの)


 あれ、寝てたのか、たしか俺は、ん、いつの間に服を着てラクナまで着けてるんだ。


「旦那様、御目覚めになられましたか」


 いち早く気付いたトーウが、コップに入った飲み物を差し出してきたのを受け取る。トーウのお茶か、まさか虫エキスとかじゃないよね。


 いやいや、俺が生臭ダメなのはトーウも知ってるから大丈夫か。ありがたく飲ませてもらおう。


 うーん、よく冷えてて、一気に目が覚めたわ。魔法で冷やしたんだろうけど、冷蔵庫がないこの世界でこれは凄いな。俺がそろそろ起きるってのを予想して冷やしたって事だろうから。しかも、飲み慣れたこの味は。


「まったく、お風呂で寝込んでしまうだなんて非常識ですわ。サミューに感謝なさる事ね、あのまま寝ていたら風邪を引いていたかもしれませんわ」


「お、おはようございます」


 いつも通りの口調で嫌味を言ってくるハルと、寝ているアラに抱き着かれた『獣態』のミーシアに手を振って応えてから、いつも通り微笑んでいるブラックメイドに向き直る。


「サミューあれは何だったんだ」


 あ、聞き方間違ったかも、下手すれば、トーウやミーシアの前でセクハラトークになるんじゃ。


「なにと言いましても、垢すりと、マッサージですが」


 よかった、流石のサミューもTPOを考えてくれたか。


「もちろん御主人様の御指示が有れば、特別なマッサージもしましたが必要ないという事でしたから」


「ぶはあ」


 む、咽ちゃったよ、こ、このピンクメイドに良識を期待した俺がバカだった。


「まあ、特別なマッサージでございますかサミュー様、ぜひわたくしにも御教授願えないでしょうか。少しでも旦那様の御役に立ちたいと思いますので」


「そうですね、機会が有ったらそのうちにでも」


 マズイ、これはマズイぞ、トーウも変な所で積極的な所があるから、それがサミューと混じったらどんな化学変化を起こすか解ったものじゃない。


(念のために確認するが、間違いは起こしてないじゃろうな)


(それは大丈夫だ、とおもう)


(何とも頼りない話じゃて)


 色欲がアウトになる条件は、誰かの粘膜に触ったり、俺の粘膜に触られたりする事だから、裸で抱き着かれる分にはまだセーフだよね、うん、それ以上の事はしてないはずだし。


 いや、それにしても油断したわ、まさかサミューのマッサージがあんなに気持ちいいなんて。あれ、でも変じゃないか。


(なあ、ラクナ。サミューは『マッサージ』みたいなスキルを持っていないが、スキル無しとは思えないほど高い技術だったんだが)


 まあ、俺の剣みたいにスキルが無いからって、それが出来ないとか下手って訳じゃないけど。やっぱりスキルが有った方が、あの手つきの説明が付くよね。


(おそらくは『身支度』や『性奉仕』あたりが補正になったのじゃろう。スキルは近しい行動に対してもある程度の補正が働くからのう。例えば『棒術』のスキルが高ければ他の長柄武器、槍等もある程度は使えるものじゃし、『菓子作成』や『魚料理』等のスキルが有れば、その他の料理でも、何も料理系スキルがない者より旨く作れる物じゃ)


 なるほどね、それならああいうことも出来るのかな、サミューのしてくれたのは、そう言ったお店でもやってくれたりするものだし。


 まあ今はそれよりも、何が有ったのかを皆から聞かないとね。こんな襲撃がまだあるかもしれないから、状況を考えて対策を練らないと。


「悪いがサミュー、俺達と別行動を取ってから何が有ったのかを教えてくれ」


 とりあえず、何か襲われる事になったきっかけでも解ればいいんだけど。






「という訳でして、ハルさんの魔法で、襲撃してきた騎鳥や騎馬を振り切った後は、この『迷宮』に隠れていました。それ以降はひたすら逃げ回っていましたので、特にこれと言ったことは無いと思いますが」


 今聞く分だと、そんな変な感じは無いよな。


「街でハルが買った、掘り出し物の中に怪しい物は無いのか」


 もしかしたら、どこかの貴族のいわく付きとか、犯罪がらみの物とか。


「そんな事はありませんわ。買ったのは『魔法石』や『簡易魔道具』、『魔法薬』、後は宝石類ですけれど、それなりに値が張るとは言え、そう言った品々の中では比較的安物で、極端に貴重な物ではありませんわ。お金さえ有れば幾らでも手に入りますし、冒険者を雇って襲うようなお金が有るのでしたら、掘り出し物が大量に出ているあの街で買い物をすれば一日でもっと良い品がそろいますわ」


 うーん、『鑑定』じゃ価値については解らないし、うちのパーティーで一番、高級品を見る目が有るハルがこういうんじゃ違うか。


「ハルさん、あれはどうですか、確か『魔道具』だと店主さんが言っていたはずですけど」


「ああ、あの指輪の詰め合わせが有りましたわね」


 そう言ってハルが荷物から小箱を取り出して開けると、指輪が十個まとめてある。


「これがどうしたんだ」


「ええ、これを買った店主の話では『装備品鑑定』で確かめられなかったそうでして、まあそのおかげで格安で買えたのですけれど」


『鑑定』系のスキルで確かめられないってそんな事が有るのか。


(ラクナ、『隠蔽』か何かが掛かっているのか)


(そうではないの、おそらくはその店主とやらのスキル熟練度が、この指輪を計るには低いのじゃろう。スキルにしろ『魔道具』にしろ格というものがある。スキルの熟練度だけでなく上級スキルであるか否かで見れる物が変わり。『魔道具』も強力な『付加効果』のある物や、威力やレベルの高い物は『鑑定』され難くなる。もちろん最上位は『勇者の武具』でこれを見れる者は限られるのう)


 なるほど、てことはこの指輪はそれなりに格の高い『魔道具』って事なのかな。


(もちろんこれは『鑑定』のみでは無く、相反するスキルや効果がぶつかった時や、他のスキルや効果等に影響を及ぼす『魔道具』等を使われた場合などでは、多少効果が落ちるが格上の方が勝る)


 なるほど、攻撃魔法と防御魔法がぶつかったりしたら、強力な方が勝つって事か。


(それで、お前はこの指輪を『鑑定』出来るのか)


(儂をなんだと思っておるのじゃ、何百年も歴代の『勇者』と共にあり『鑑定』し続けてきたのじゃ、『鑑定』スキルの熟練度の高さは相当の物じゃぞ。『隠蔽』等が掛かっておらぬ限り、大概の物は『鑑定』できよう)


 そこまで自信満々なら問題ないんだろうな。


「さあ、リョー、早くこの指輪を『鑑定』してくださらないかしら」


「ああ、言われなくても……」


 あれ。


「ハル、なんで俺が『鑑定』を使えると思ったんだ」


「使えるのでしょう。早くおやりなさい」


 いやそうじゃなくてさ。


「それとも貴方、まさか今までばれていないと思っていたのかしら。あんなにあからさまな行動をして置いて、そんな訳は有りませんよね」


 え、いや、あからさまな行動なんてしたっけ。


「わたくし達がレベルアップしたり新しいスキルを覚えた可能性がある時、アラがあんなふうに変化した時ですら。『鑑定屋』に確認すらせずに、それに対応した作戦を立ててましたし。『迷宮核』から出た『魔道具』も、どんな『付加効果』があるか解らないといいますのに、当たり前のようにアラに渡してましたでしょう。無駄に考えたがる性質の貴方が、何の根拠も無くそんな行動をするとは思いにくいですもの、となれば『鑑定』スキルを持っていると考えれば説明が付きますでしょう」


 うわあ、そんな事でバレたのか、てことは他の連中からも疑われてる可能性が有るんじゃないか。『鑑定』の事は隠してたつもりだけど、『鑑定結果』を利用した行動って俺の基本だし。


 いやそれよりも聞き覚えの無い単語が有ったな。


(ラクナ『鑑定屋』てのはなんだ)


 初めて聞いたような気がするんだけど。


(ふむ、大した物では無いのう。『鑑定』系統のスキルを持った冒険者や商人などの行う副業じゃ、ハルの言葉からも分かる通り、普通の冒険者は自分達のステータスや入手した『魔道具』の効果を調べる事が出来ぬからの、スキルを持った者に金を払って『鑑定』してもらうのじゃ。やる方は金になる上、熟練度も稼げるのでなり手は多いが、未熟者が多いため『鑑定』するために半日をかけたり、特殊な儀式や薬を使うようじゃが)


 そうだよな、考えてみれば『迷宮』で見つけたアイテムとか魔物なんかを普通に『鑑定』してたけど、それが無ければ、何がなんだか解らないもんね。ゲームじゃないんだから見ただけで解るわけないんだし。


(まあ、お主ら『勇者』は現役の間は儂がおるし、その間に儂の『付加効果』が元となって『鑑定』の出来る『魔道具』を入手していることが多いからのう。まず縁がない相手じゃな)


 そうなんだ、それでも教えておいてほしかったな、この世界では常識な知識や行動を取ってないってだけで、『勇者』だって疑われるリスクになりかねないんだからさ。


(それよりも良いのか、先ほどよりハルが待っておるが)


 あ、そうだった。


「何時までだんまりをして、待たせるおつもりですの、使えるのでしょう『鑑定』」


「ああ、使える、これからこの指輪を確認するから少し待ってくれ」


 さてと、早いところ確認して教えないと、カラスお嬢様がへそを曲げそうだな。


術送の指輪 LV14×10

付加効果 魔法拡散送信 魔法受信放出


(ふむ、珍しい効果じゃのう)


(どんな効果なんだ)


 なんか電子機器みたいな感じだけどさ。


(簡単に言えば、ひとつの指輪に掛けられた魔法を他の指輪に送る『効果』じゃ。例えばハルにこの指輪を一つ嵌めさせて『火弾』を使い指輪に込めれば、九等分された同じ魔法がそれぞれの指輪から放たれるのじゃ。まあ、送る指輪を選べぬ上、このレベルでは威力の低い魔法しか送れぬがのう)


 うーん、『効果』は面白いけど、使い道はあんまりないかもな。


「それで、どうですの。値打ち物なのかしら」


 うわ、ハルが目を輝かせてるよ、ちょっと言いにくいけど言わない訳には行かないよね。


「『術送の指輪』と言う『魔道具』だが、あまり使える『効果』ではないな」


「そうですの、『魔道具』ですからお金になると思いましたのに」


 ああ、やっぱり落ち込んじゃったよ、そ、そうだこういう時はプレゼントだ、幸いそのつもりで持って来た物が有るし。


「忘れていた、土産が有ったんだ」


『アイテムボックス』から、百足の装備品と『魔法石』、オーガの角を取り出してテーブルの上に置いて行く。


「まあ、『魔法石』が十五個も、本当にいいんですの、これを全てわたくしが貰ってしまいますわよ」


 ハルが一気に顔色を紅く変えて、『魔法石』を手元に引き寄せ一つ一つ摘みながら嬉しそうに眺めてるな。うん、上手く行ったみたいだ。


「ああ、前から『魔法石』を欲しがっていただろう、好きに使え」


「こ、こんなきれいな、な、投げナイフ、使ってもいいんですか、もしも壊しちゃったら……」


 あ、ミーシアが不安そうにしてるよ、ここはフォローしないと。


「それは、フロアボスの爪を使った装備品だ、俺も防具に同じ魔物の殻を使っているが、頑丈さは保証する『迷宮ボス』の攻撃にも耐えたからな」


「フ、フロアボスの爪を使ったナイフ、そんな貴重品を失くしたり盗まれたりしちゃったら」


 ああ、逆効果だったかーー


「ミーシア、気にすることは無い、投擲する以上幾つか回収できなくなるのは織り込み済みだ、ここぞという時は遠慮なく使え」


「は、はい」


 うーん、まだ考え込んでるけど、とりあえずは大丈夫かな。


「サミュ、アラとお揃いだね」


「あら、そうですね。アラちゃんお揃いですね」


 サミューが丸い小型盾を左手に付けると、いつの間にか起きてきていたアラが嬉しそうに同じ形の盾を示してる。


 あのサイズなら武器を使うのに邪魔にならないから二人用に買ったんだけど、そっか考えてみればお揃いだよね。うーん、アラとお揃いか、俺の分も作ればよかったかな。


「あら、それは何ですの、骨の加工品かしら、骨董品にしては色が白いですし、美術品にしても作りが粗いですわね」


 ハルがつまらなそうにオーガの角を見てるけど、ずいぶんな評価だな。


「それは『鬼族の街』で見つかった変異種オーガの角を加工したものだ。魔法石の代わりになるらしい、特に『土』と『火』の補正が強いらしいが。サミューの分も有るし、ミーシアには回復に補正のある角を持って来た」


 聞いた話だと基本的な属性には多少補正が付くらしいけど、オーガ・メイジの使ってた二つの属性の効果がやっぱり高いそうだから。


「そうですの」


 あれ、ハルの反応が薄いな、魔法好きで『魔法石』にあれだけ拘ってたからもっと反応するかと思ったのに。


 ん、ハルがまた『魔法石』を摘み上げてる。心なしかいつも以上に目つきがギラついてるような。ひょっとして宝石だからあんなに拘ってたのか。


 そういえばハルはカラスだもんな、光り物が好きなのかも……


「それにしても、こういったお土産を持ち帰れるという事は、それなりに稼いだみたいですわね。まあ、新しい奴隷まで買うくらいですものね」


 う、ハルの顔が急にきつくなったような。


「ですけれど、わたくし達も負けてはいませんわよ。ごらんなさい、愚か者たちに絡まれるまでの間にわたくし達が稼いだお金ですわ」


 ハルが『アイテムボックス』から金貨を取り出して並べていくけど、結構な量だな。


「これの他にも、わたくしやサミューの装備した『魔法石』に、ミーシアの盾や剣に付けた『付与』や『簡易魔道具』等を合わせれば金貨で七十枚は超えますわ。それにこれを買った時は安く売られていましたから、もしも他で売る事に成ればさらに価値が上がっているはずですわ。この短い月日でこれだけの額を稼ぐのはそうそう出来る事ではありませんわよ」


 よく見たら、サミューやハルの服に小さな魔法石が付いてるけど、これがそうなのかな。


「貴方もそれなりに頑張ったのでしょうけれど現金は残ってないんじゃありませんの。『青毒百足』の殻の加工賃もかかったでしょうし、これだけの大きさの『魔法石』を、こんなにも『迷宮』で見つけられるほど運がいいとは思えませんもの。わたくしの為に無理をして買ってくださったのでしょう」


「いや、そんな……」


「隠さなくてもよろしくってよ。リョーの御気持はとても嬉しいですもの、ですからご安心なさって頂戴。貴方が素寒貧でも、わたくし達がこれだけの現金を取って置きましたから。それに馬車に置いてきた『六足羆』の採集品を取りかえせば金貨十枚は固いですわ」


 な、なんか、大量に金貨を稼いできたことを言い出しにくくなってきたな。ハルの自慢げな顔を見てると、申し訳なくて。


(普通の冒険者ならば、金貨数十枚ともなれば命がけで稼ぐような額じゃからのう。お主無しで、しかも『薬師の森』程度の『迷宮』でこれだけ稼ぐとは、狩りだけでなく、売却時の交渉等も上手くやったのじゃろうな)


 うわー、どうしよう。


「これだけ有れば、しばらくは問題なくやって行けますわよ、誉めてもいいんですのよ」


 うーん、ハルのドヤ顔を見てるのが辛い。


「アラもお金もってるんだよー」


 え、どういう事だ、アラがテーブルの上に金貨を十数枚投げ出して来たけどこれって、いったい。


「な、なんですのこのお金は、まさかリョー、まだ十分な分別も付かない子供にこんな非常識な額のお小遣いを」


「いや、そんな事はしてないぞ、アラ、この金貨はどうしたんだ」


 一瞬、茫然としたハルが責めるように言ってくるのを否定してから、アラに向き直るけど、ほんとにいつの間にこれだけの額を用意したんだ。


「えっとね、くさってた鬼さんに、『葬風』をかけてたら、よろい着たオジサンがくれたの、ほうしょうきんっていうんだって」


 え、報奨金、どういう事だ。


「申し訳ございません旦那様、危険がない限りは細かい報告の必要はないとの御言葉でしたので、申し上げなかったのですが。不死者が騒ぎになっていた時分に旦那様が別行動を取られていた際、アラ様の魔法が大量の不死者を浄化いたしましたので、その働きに対して一時金が出たのです。また不死化した冒険者の所持金も浄化したアラ様に優先権があるとの事でしたので」


 そう言えば、俺が鬼の死骸を回収してた時、アラとトーウは冒険者や騎士に交じってアンデッド狩りをしてたんだっけ。その時か。


「こ、こ、こんなお子様が、こんな額を、ひ、非常識ですわ」


「でもね、でもね、リャーはもっとすっごいんだよ。お金のいっぱい入ったぬのの袋を、こーんなに持ってるの」


 アラが両手を大きく回して説明してるけど、だんだんハルの表情が無くなって来てないか。


「お金の入った布袋、まさか金貨袋ですの、それも幾つもですって、リョー、正直におっしゃって頂戴。いったい貴方はいくら稼いだのかしら」


 これは、ごまかしようがないな。


「今、手元に有る現ナマが九千八百枚くらいか」


「きゅ、きゅ、きゅ、きゅうせんはっぴゃく、ひ、非常識ですわ。こ、これだけでシルマ家の残りの負債が返せて、更にいくらかの財物を買い戻せてしまいますわ」


 あ、ハルの表情が完全に消えちゃった、これは同じくらいの額の貸しが有るなんて言ったら、とんでもない事になるんじゃ。


一部設定の変更と過去の分の改正を行っています。

四話に出てきたステータスカードの設定を失くしました。それ以降出てこない死に設定でしたし、今回のネタと被りますので。

もう一つ、『出血の細剣』と『超再生』の効果がバッテイングした際の設定について41話の鑑定した後のラクナとの会話の部分を変更しています。


H27年8月27日 誤字修正しました。

H28年2月14日 誤字修正しました。

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