15 お買いもの
「さてと、食事も済んだし、買い物に行くか」
「買い物ですか、一体何を」
「三人の生活用品も必要だろうし、迷宮に行くための装備も整えたいしな」
せっかく金があるんだ、奴隷商の渡してきた武具、神殿の武具よりいいものがあればそっちの方がいいだろ。
「りゃー、アラも」
うーんアラにも防具くらい必要か、剣術スキルが有るんだし短剣とかナイフを持たせてもいいのかな。
「ちょっと待ちなさい、わたくし達にこの格好で市場へ行けとおっしゃるの」
ハルが自分の服を摘まみながら、睨んでくる、そうだったみんな奴隷店の服のままだもんな、店自体は郊外だしこの宿は近所だから我慢してたのか。
三人の格好を見直してみると三人とも膝下程度の半ズボンにボロボロの半袖シャツ、確かにこれは恥ずかしいよな、これじゃあデリカシーが足りないと言われちゃうな。
「奴隷商の用意した服が有ったはずだな、下で待っているからそれに着替えてから降りて来い」
アラの手を引いて降りようとした俺を甲高い声が引き止める。
「ちょっと待ちなさい」
「ん、どうした」
振り向いた俺にハルがかけた言葉は予想外の物だった。
「わたくし一人で着替えた事がないのよ」
ちょっと、どんだけのお嬢様ですか、貴族令嬢とは聞いてたけどそんなお姫様だったの。こっちの偉い人はみんなこうなのか、ていっても俺が手伝うわけにはいかないよな、もし口にしたらハルが切れるかな。
ん、ハルの視線が、サミューをみてる、そうかサミューは侍女なんだよな、それなら。
「サミューすまないが、ハルの着替えも手伝ってやってくれ」
「わかりましたご主人様」
さてそれじゃあ下に行くか。
アラを抱っこして頭を撫でていると、足音と共に三人が階段を下りてくる。
最初に降りてきたハルは水色のワンピースをまとい、髪と腰にピンクのリボンをまいている、うーん黙ってれば美少女だよな。
その後ろにいるミーシアは、薄い緑のシャツに、それよりやや色の濃いスカート、こっちもかわいいな、おっきいけど、ハルが近くに居ると遠近感がなー
最後に降りてきたサミューはっと、メイド服キター、いやこれは良い、すんごく良い、コスプレなどで多く見るようなミニではなく、踝近くまであるロングスカート、邪魔にならない程度に刺繍やフリルがつけられたエプロンとしっかりと留められたコルセット、袖も長くて、色合いも紺色の落ち着いた感じ、ヘッドドレスもちゃんとしてるし。
なんかこのままお茶入れてもらいたい。ビバ、リアルメイドさん。
(ええい、最近落ち着いたと思っておればまた呆けおって)
「お、おお、よし買い物に行くか」
(武具を買うのであれば、獣人向けのアイテムボックスも買った方がよいぞ)
(なんだそれは)
(変身時の装備変換を自動で行う物じゃ、口が二つあっての、片方にあらかじめ決めた武具のみを入れておけば変身と同時に着ているものと入れ替わるのじゃ、これが無ければ変身するたびに衣類が破れてしまうでの)
てことはそれの無い今の状態でミーシア達が変身して元に戻ったら、ビリビリの服と裸の美少女が、ってええい消えろ煩悩。
まずは日用品と衣類かな、まずは雑貨屋に行くか。
「ミーシア、迷宮で過ごしたり馬車で旅をするのにはどんな物が必要になるか分かるか」
「え、えっと、はい、多分わかります」
うーん自信無さそうだなー、まあ大丈夫だと思うけど。
「それなら、この店にあるもので必要そうなものを三人分用意してくれ、サミューはアラの分を頼む、子供の旅に入り用な物を揃えてくれ、それと宿なんかで使う日用品も人数分頼む」
ミーシアに三枚、サミューに二枚、金貨を渡すと二人とも顔色が変わる。
「こ、こ、こんなに……」
「いいのですか私たちにこんな大金を」
「この中で迷宮の経験が一番多いのはミーシアだろうし、子守りのスキルはサミューだけで家事系統のスキルも一番多い、俺は女物の道具は分からないし、子守りも家事も素人だ、できる相手に任せるのは当然だろう」
まあ簡単な家事ならできるけど、家電や便利グッズに頼る日本人じゃこっちでは何もできないのと一緒だもんな。
「こ、これ、き、金貨だよね」
「この額は多すぎませんか」
そんなに緊張しなくても良いのになー二人ともガチガチになっちゃってるよ。
(仕方あるまい、奴隷にとって金貨などは自分が売り買いされる時に見かけるだけで、使うことはおろか触れる事すらあるまい、奴隷に金を持たせる主人などあまりおらぬだろうて)
「安い粗悪品を買ってすぐ壊れても困る、多少値が張っても構わないから、長持ちする良いものを選んでくれ」
「ちょっとお待ちなさい、わたくしの分は無いのかしら」
何を聞いてたんだこのお嬢様は。
「さっき言っただろう、ミーシアに三人分選ばせる、ハルの分もそこに含まれてる」
「たった三枚なの、一人金貨一枚で何が買えるというのかしら」
十万円分だよ、十分そうな気がするんだけどな、他の二人に目を向けると、そんなこと無いと首を振ってるし。
でも、このままずっと騒がれてるのもキツそうだなー
溜め息を吐きながら金貨を取り出す。
「りゃー、はーは、めーなの」
頬を膨らますアラの頭を撫でながら、金貨を一枚ハルに渡す。
「ミーシアに渡した内の一枚はお前の分だ、相談して選べ、ミーシアの選んだ物の他に迷宮で必要になると思う物があれば銀貨五十枚までの範囲で買え、ただし見た目が良いだけで作りの脆い高級品や、迷宮で役に立たない贅沢品は駄目だ、もしそういったものを買って迷宮で困る事になっても俺は知らんぞ」
「わ、分かっていますわ」
さて、女の子の買い物だし時間かかりそうだよな、店内で商品を選んでいるミーシア達を横目に店員を捕まえる。
「アイテムボックスが欲しいんだが、獣人用が二つと冒険者用のを一つもらえるか」
「はい、冒険者用は最下級のがありまして金貨五枚、獣人用は金貨八枚で着替え以外の性能は冒険者用と同じです」
高っ、そんなにするの、ぼったくられてるわけじゃないよな。
(ふむ、ずいぶん良心的な価格じゃな)
そうなんだ、そんなにするんだ、そういえば持って無い冒険者も結構いたよな。
「どの位、物が入るんだ」
「はい、武具は同じ名称だと各一個づつ、アイテムは三個づつ、道具類は全部で二十個、食料は保存食と調味料が五日分、採集品は樽五個分です」
こうやって聞くと神殿で貰ったアイテムボックスは結構いいやつなんだな、買えば幾らぐらいしたんだろ。
「解ったそれを貰おう」
即答した俺に店員が一瞬驚き、その後で満面の笑みを浮かべる、これは上客認定されたかな。
「りゃー、アラのは」
「持ちにくいから、アラがもうちょっと大きく成ってからな、それまでは俺とサミューがアラの荷物を持つからな」
「えー、アラだけめーは、やーあー、めーなの」
いや、泣きそうな顔は止めようね、買ってあげたいけどサイズがね。
「ありますよ、お嬢さんでも持てそうなの」
お兄さん、目が笑ってないよ、客商売でそんなギラギラした目は怖いって。
「お客様だけに話すのですが、実は交易商人用のボックスを誤って入荷してしまいまして、今ならひとつだけお譲りできます」
何でこんな小さい声なんだ、すこし怪しい感じがするけど。
(交易用のアイテムボックスは、規制がかなり厳しく入手が困難じゃ、本来このような店に置いてあるはずはないのじゃがのう)
あんまりまっとうな商品じゃないのか。
「商用ですので採取品は入りませんし、武具も一定重量しか入りませんが、食料は保存食で三日、衣類はタンス二つ分入ります。代金は金貨十三枚と高めですが、小型ですのでお嬢さんでも持てます」
意外と高いな、正規品じゃないみたいだしやめといた方が……うっ。
「りゃー、アラの」
そ、そんなキラキラした笑顔で見上げてこないでー、さっきまで溜まってた涙のせいで、目が輝いてる。
「りゃーあ」
「そ、それも一つ貰おう」
「ありがとうございます」
(やれやれ、泣く子には勝てぬか)
女の子の買い物は時間がかかるとは思ってたけど、まさかこれほどとは、雑貨屋の後で服屋に行って、何着か衣類を買ったんだけど、それだけで日が暮れた。俺としては武器とかも全部揃えるつもりだったんだけどな。
それにしても、やっぱり三人はこっちの目で見ても美人なんだな、周りの視線を感じるし一回からまれたし、チンピラが冒険者に絡んでくる事はほとんどないらしいけど、武装してなかったからただのボンボンと思われたかな。
まあ実戦経験のある冒険者に絡めば普通なら返り討ちにされるよな、俺だって『軽速』と『闘気術』使えば素手でもなんとかなりそうだったし。
とはいえ街中で問題起こす訳には行かないから、謝って終わらせたけど、余計な事を言ったハルをかばって数発殴られたのはご愛嬌だろうな、いやー誰も怪我しなくてよかった。
トラブルを回避し無事に食堂で夕飯を済ませて部屋に戻ったら、目の前にダブルベッドがあった。
そ、そうだった追加で頼んでたよな、うん深い意味はなにもない、みんなベッドの方がよく寝れるだろうし、男の俺が床で寝ればいいだけだ。
ダブルベッドだってそれをするためだけじゃないしな、下手に意識したら変な誤解されかねないし。
あれ、ひょっとして、部屋を取るときにミーシア達が反応してたのって、すでに誤解されてたのか俺は。
いや、三人とも美人だし意識してない訳じゃないけど、そもそも俺には制限があるから出来ないし、迷宮で命を預ける仲間同士で変な関係はまずいしね。
「どうしました入り口に立ち尽くして、何か気になることでもおありですか」
ちょ、サミューさん、後ろからいきなり声かけるとかびっくりするから、何か背中に当たってるし、や、柔らかい、じゃなくて。
「明日は早めに買い物を済ませて、移動するからな、もう休もう」
「はい、ベッドで休みましょう」
み、み、耳に息がー、とりあえず距離を取らないと、『軽速』を発動させ一気に壁際まで移動してから振り向く。
「三人とも疲れてるだろ、ハルとミーシアは広い方のベッドでサミューはアラともう一つの方で休んでくれ」
「ご主人様はどうするのですか」
ゆっくりと、近づいてくるサミュー、それは良いんだが、なぜ一歩ごとに服をはだけていくんだ、し、白い胸元がまぶしい、じゃなくて、これピンチじゃね。
「ベッドが足りないからな、俺は床で休む」
「ご主人様を床に寝せて奴隷がベッドには居られません。シングルも十分な広さがありますので、私と一緒に休みませんか」
「アラが居るだろう、子供の前でそういったことは教育上どうかと思うぞ」
うん、立派な理由だ、これなら逃げれる。
「もう眠ってますので大丈夫ですよ」
視線を向けると、シングルベッドの上で気持ちよさそうに寝息を立てるダークエルフの姿が、ああ、そうだよな、もう夜だし夕飯食べてお腹もいっぱいだもんな、よだれ垂らしてるのもかわいいな、じゃなくて、ピンチだよピンチ。
「それとも、私はそんなに魅力がありませんか」
そんなうるんだ瞳は反則だ、どうしろってんだよ。
「いや、とても魅力的だが、俺はそう言った事をするつもりはない」
こう言えば解ってくれるだろう。
「わたしを抱かれないのですか」
「ああ」
「それでしたら」
あれ、サミューの表情がちょっと陰ったような、ちょっとそこのメイドさんや、奴隷店から持ってきた荷物を開けてどうしたんですか、てっなんでそんなとこから乗馬鞭が出てくるんですか、でもってどうしてその取っ手をこっちに向けるかな。
「叩きますか」
ひょっとして特殊な趣味の人だと思われてる、やめよう、ほらミーシアとか怖がってるよ、そこのお嬢さんがた、そんな目で俺を見ないで誤解だから、誤解なんだから。
「いや、人を痛めつけて喜ぶ趣味は俺にはない」
「それでしたら」
ん、両端を持ってしならせるって、どこの女王様ですか、メイドさんじゃなかったんですか。
「叩きますか」
なあ、いま同じ言葉でまったく正反対の意味にして見せたよね、いやエムっ気もないよ。
「いや、人に痛めつけられて喜ぶ趣味も俺にはない」
「ひょっとして」
ん、なんで見回してるかな、アラ、ミーシア、ハルを順番に見てどうしたんだろ。
「若くないとダメなんですか、年上もいい物ですよ」
まさか、このメイドさんの頭はピンク一色なのか、このままだとまずい。
「ハ、ハル」
「な、なにかしら、何をするつもりですの」
お前も何を怯えてるんだ、胸元を押えるんじゃない、俺が誤解されるだろう。
「呪文を教える約束だったな、ここだとアラが起きる、裏庭に行くぞ」
「わ、解っりましたわ、覚悟はできていますわ」
なんで悲愴な顔で、距離をとるかなー
「それと頼みがあるんだが、俺に魔法の手ほどきを付けてくれ、初歩の魔法から頼む」
そのあと、俺はハルに俺が教わる用に最も初歩的な魔法の一つ『照明』ともう一つの魔法の呪文を伝えた後、簡単な練習法を教わったんだが、いくら初級魔法といっても一時間ちょっとで二つとも使えるようになるって、これはハルに教える才能があるせいなのかな。
ちなみにもう一つの魔法は『入眠』、睡眠効果のある魔法の中で、一番効果が弱いんだが、サミューにはしっかり効いてました、これで安心して寝れる。
次の更新目標は明後日、まにあうといいな~
サミューさんが、暴走しちゃってつらい、こんな予定じゃ無かったんですけど。
櫻井真琴 さんにお願いして、サミューさんの絵を書いて頂きました。
とても素敵な絵を書いて頂き本当にありがとうございます。
下記のURLに行って頂き皆さんもぜひ見てください!
↓
http://12580.mitemin.net/i129200/
H26年11月21日 誤字修正しました。




