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141 『拠点』への帰路

「おお、リョー殿、戻られたという事は『迷宮鎮静化』、無事に終えられたのですな」


 赤くなったトーウと、眠そうに眼を擦っているアラを連れてボス部屋の闘技場に戻ったら、ラッド達がさわやかな笑顔で迎えてくれたけど、あれ、ミムズ達が居ないな。


「ああ、これでこの『迷宮』はしばらく大丈夫だろうし、まだ書き込まれてないなら『アンデッドの型』も防げただろう」


「それは重畳、ライフェル神もお喜びの事でありましょうな」


 そう言えば僧兵も殆どいないな。


「ところでミムズ達はどうしたんだ」


 ディフィーさんの介抱をしてたはずなんだけど、何処に行ったんだろう。


「ラースト卿でしたら、侍女殿が回復なされてすぐに従者殿や兵達を連れられて、シルマ家御一同の支援に向かわれましたが」


 そっか、エル・シルマ達は後方で鬼やアンデッドを防いでいるんだもんな。もしかしたら今も大軍相手に戦闘中かもしれないんだから、こっちで手が空いた分、支援も必要だよね。


「拙僧等は、負傷した僧兵や騎士の方々の治療をしておりました」


 そう言えば、トンボの尻尾に弾かれたりして何人か怪我してたから、ラッドに『癒しの短剣』を貸してたんだっけ。


「そうだ、負傷者は大丈夫だったのか、これを使って治療したんだろう」


 ラッドが『癒しの短剣』を差し出してきてから思い出したけど、トーウに『眠毒』使わせるのを忘れてたわ。という事は、麻酔無しでメッタ刺しにされたんだよな。悪い事しちゃったな。


「なに、気になさる事はありません。たとえ多少痛もうともこの場で殉教するより、生きて修行を続けた方が、はるかにライフェル神の御心に適うでしょうし。あの状況で反撃される恐れの高い背後へ安易に廻る未熟者には良い教訓、良い苦行となりましょうぞ」


 ああ、そう言う考え方なんだ、痛みも修行の内ってか……


「さて、リョー殿も戻られた事ですし、拙僧等も支援に向かいましょうぞ」


 そうだね、それが終わったらそのまま『拠点』に戻らないとね。薬と『魔骨弾』は残ってないし、食料もギリギリだからさ。







「おお、『拠点』が見えて来たぞ、皆の者、あとわずかだが気を抜かぬように注意されよ」


『鎮静化』を終わらして四日、やっとここまで戻って来れたよ。うーん、みんな疲れてるな、何しろ食料は昨日の昼で尽きたから、今も満腹っぽいメンバーは半分以下だもんな。


 さっきまでゴブリンゾンビを食べてたディフィーさんはもちろんお腹いっぱいだろうし、トーウが取った虫やネズミのゲテモノ料理を、ミムズ達は、野戦料理のいい経験だとか言って食べてたから。

 

 アラはとっくに平気になってたからお腹いっぱい食べたしね。でもなこれは、ちょっと教育的に不味いかも、下手すればサミューに怒られちゃうかな。


「いやはや、これで、やっとまともな食事にありつけるな」


 騎士の一人の言葉に、シルマ家の連中が頷く。連中はゲテモノ料理を出されても手を付けれなかったから、腹が減ってるんだろうな。


「『百足殺し』殿、我らは先触れと領軍司令部へ報告の為、先に向かわせていただく」


 エル・シルマが騎士連中と一緒に俺に向かって言ってくるけど、本音は早く帰って飯が食いたいだけなんじゃないかな。あれ、でもなんで俺に言うんだろう。普通に考えたら騎士のミムズかラッドあたりに言うんじゃ。


「此度の『ボス討伐』の成功は貴殿有っての物、あれほど無数のアンデッドを排除できたのは貴殿のパーティーの武勇によるもの、そうで無くばたとえ『鎮静化』が出来ても無事に帰ることは出来なかっただろう」


 いや、あれは『ゴブリンズソード』に付いた『聖水(笑)』の浄化効果なんだけどな。掠っただけで倒せる上にレベル上げにちょうどいいから無双のマネをしただけなんだけど……


 まあ確かに帰り道は、大量にアンデッドが湧いてたから、シルマ家連中のMPが切れたら、後はディフィーさんが食べるくらいしか、俺とアラ以外は対処法が無かっただろうけどさ。


「また、多くの鬼の半数以上を機転で退けたその発想力と、貴殿が回復に使われた『魔道具』が無ければ、このように一人として欠けること無く帰還する事などできなかったであろう」


 な、なんだよこの無制限の持ち上げは、なんかちょっとこそばゆくなって来るんだけど。


「更に、ほとんどがリョー殿の機転で倒せていながら、あれほど多くの採集物を分けて頂き、感謝のしようもない」


 まあ、行き帰りでかなり鬼やアンデッドを倒したから、爪や角なんかの採集物がとんでもない量になってるもんね。一個当たりの単価はとんでもなく少ないけど数が半端ないからね。全部売り払えば金貨800枚くらいには成るはずだから、シルマ家と折半しても400枚か。


 いやー、初めに取り分の話をしておいてよかったわ。これ人数割りにしてたら一人当たり20枚ちょっとだったもんね。


「此度の武勲と頂いた資金を元手にすれば、シルマ家の再興にも弾みがつこう。この礼は何時か何らかの形で返したいとは思うが」


 うん、なんだろう、ちょっと雰囲気が変わったような気がするけど、どうしたんだろ。


「私がシルマ家の当主代理である以上は、家の為とあればたとえ恩知らずと誹られる事になろうとも、貴殿と対立する場合が有るやもしれない」


 これは、間違いなくハルの事を言ってるんだろうね。次期当主の妹が奴隷のままじゃいろいろ問題があるんだろうからさ。そもそもハルが奴隷として売られた原因がシルマ家の没落なんだし、何らかの形で取り戻さないと再興を果たした事にならないのかも。


「出来る事ならば、貴殿とはこれからも友好な関係を保っていきたいのだが。場合によっては……」


 まあ、エル・シルマも色々抱える物やしがらみがあるんだろうからな。ここで多少の貸しを作った程度で、ハルの件を見逃してはくれないか。俺が大人しくハルを売るなりするならいいけど、それでなければ場合によっては力尽くでって事か。


 とは言え、今ハルを手放すのはな。アラは使える魔法は属性に偏りが有るしMPも少ないから、うちのパーティーではハルが魔法戦の主力だもんな。


 それに俺の手の内、特に俺が『魔法』と『闘気術』の両方が使える事や、レアな魔法の知識が有る事を知られているから、下手にハルが人手に渡ると、俺が狙われる事になるかもしれないし、俺を倒す対策が立てられかねないもんね。


 やっぱり、ハルやエル・シルマには悪いけれど、手放すことは出来ないよな。自分勝手な話だから、ちょっと気が重いけどさ。


「このような時に言う言葉では無いとは分かっているが、それでも貴殿には伝えておかなければと思ったので」


 うーん、エル・シルマとしては一応俺に義理を立てて警告してるんだろうな。俺がこの領地からある程度離れたら、襲っても問題にならないみたいだから。向こうとしては俺が警戒するのはデメリットでしかないはずだし。


「悪いが俺にも譲れない物がある」


「それは解っています。では、我らはこれにて」


 シルマ家の連中と騎士連中が俺に一礼して『拠点』の方に走って行くけど、うーん、出来れば戦いたくはないよな。どう考えても面倒だし、ハルの兄弟を手に掛ける事になんてなったらさ。


「リョー殿、自分達も急ぎ殿下へご報告に上がる為、先に失礼させてもらう」


 エル・シルマ達を見送っている俺にミムズが声をかけてくるけど、そんなに急ぐ必要が何かあるのかな。まあいいや。


「解った、俺達は荷物が有るからな、自分達の速度で行くから気にするな」


 まあ、ここまでくれば別行動をとっても危険は少ないだろうから問題ないよね。それに今の俺達じゃあ、あんまり急ぐ事が出来ないからね。


 いや、もしかしたらミムズと別行動の方が安全かも、ボス戦でほとんど戦えなかった鬱憤があったのか、帰り道は鬼の群れを見つけるたびに突っ込んで行こうとしてたもんな。


 やっぱりミムズはバーサーカーなんだって改めて思ったわ。


「では、後程『拠点』にて会おう」


「リョー殿、失礼いたします」


「それじゃ」


 俺に頭を下げたミムズとディフィーさんが、『獣態』を取ったプテックの背中に乗って、あっという間にシルマ家の連中を追い越してくけど、何をそんなに急いでるんだろ。


「さて、拙僧等はゆっくりと向かうと致しますかな」


「ラッド達は急がなくてもいいのか」


 こいつ等だって、きちんとした組織なんだから、急いでどこかに報告しなきゃならないんじゃないかな。


「ラースト卿やシルマ家の御一党らは『迷宮鎮静化』の成功を速報し、この先の行動を判断して頂くおつもりなのでしょうが、拙僧等には必要ないゆえ」

 

 いやいや、そんなはずは無いだろう、そりゃ今回の神殿勢力の責任者はラッドだし、神官長は離れた所に居るとはいえ、それでも成功を早く報告する必要はあるんじゃないかな。


「この場にはリョー殿が居ますからな、『勇者』が参加される。その一点のみをもってこの『大規模討伐』の成功は最初から定められていたのです。結果が分かりきっているのならば成否の速報など無用でしょう」


 な、なんだよその過剰な『勇者』信仰は、いやそりゃ他の『チート勇者』ならそうなんだろうけど、俺だよ。ほとんどの能力が制限され、って、ラッド達は知らないんだっけ。


「我らが報告すべき事は、リョー殿がいかにして鬼の集団を退け、アンデッドの群れを浄化し、フロアボスを封じ、ボスを仕留めたか、その詳細のみ。しかもそれは全てが終わり、大神官猊下の御前に参上し直接述べる事、今急ぐ事は何もありませぬ」


 まあ、それなら確かに急がなくていいんだろうけどさ。なんか過剰な期待が重たい気がする。


 て、あれ今の話、トーウとアラに聞かれたんじゃ、うちのパーティーメンバーには俺が『勇者』だって言ってないもんな。驚いてるんじゃ……


「ほら、アラ様ネズミの穴でございます。この『迷宮』のネズミは丸々としておりますので、この穴にもきっとおいしい御馳走が潜んでおりますよ」


「うん、がんばろーね」


 よかった聞かれてなかったみたいだ。でもネズミを食べるのはやめてほしいな。『拠点』に帰れば真っ当な食料もあるんだしさ。


 あれ、そう言えば、ラッド達も戒律が有るから、トーウが現地調達した虫なんかを食べて無いけど大丈夫なのかな。


「ラッド、食事は大丈夫なのか、昨日から何も食べて無いだろう」


 ただでさえ、元々粗食なんだしさ、一食抜いても辛いだろ代謝の良さそうな体してるし。


「御心配は無用、我ら僧兵の修行には飲まず食わずで三日三晩山野を駆け回り魔物を狩り続けるようなものも有ります故、この程度の事ではまだまだ」


 こいつらは、何処の特殊部隊だよ。


「修行僧の拙僧等よりもリョー殿の方が大変でしょう。あれほど多くの冒険者が乱痴気騒ぎをしている時も御酒を飲まず、生臭を口にせず、ラースト卿やその御従者、御侍女、トーウ嬢のような見目麗しい乙女達に囲まれても、ふしだらな真似をされる事なく過ごされていた。あの様子を見れば、大神官猊下がリョー殿に『聖職のメダル』を下されたのもよく解るというもの、リョー殿の立ち振る舞いは、儀礼に沿わぬものが有れど、その心持ちは、高僧の位に相応しい。恥ずかしながら神殿に仕える高位の僧侶の中ですら、本神殿の許し無く淫蕩戒を犯す不心得者が少なくないと言うのに。このラッド感服いたしましたぞ」


 いや『禁欲』はね、好きでやってるわけじゃないんだよ。


 嫌々なんだからね、出来る事なら俺だってさ、やりたい様にやりたいんだからね。

 

 地方に行くたびに地酒を飲んで、お肉たっぷりの郷土料理を肴にしてさ、きれいな姉ちゃんをはべらしてウハウハとかやりたいんだよ。いろいろ理由が有って出来ないだけなんだからね。


「しかも今回の『大規模討伐』では、あえて『魔道具』の効果や剣技、奇策だけで乗り切られるとは。自身の戦闘技能をより高める為に『勇者』が持つ無数の強大なスキルを自ら封じて戦いに臨まれ、誰一人として犠牲にすることなく全うされるとは。その飽くなき『武』の求道心、僧兵共にも見習わせたいものです」


 何だよその『縛りプレイ』は。い、いやね、スキルを使いたくても使えないだけなんだからね。おーい、ラッドさーん、自分の世界に浸ってないで戻ってこーい。


「おっと、そうでした、これを忘れる所でしたな」


 ラッドの指示を受けて、僧兵が差し出してきたのは金貨袋が一つとバラの金貨、結構な額だよな。と言うかこいつらこんな重たい物を『アイテムボックス』に入れずに裸で持ち歩いてたのか。


 まあ、僧兵連中なら、重たい物を持ち歩くのも修行のうちとか言うんだろうな。


「リョー殿の戦闘内容を換算して額を決めるようご指示を受けていた故、後払いとなってしまいましたが、『迷宮討伐』の謝礼、金貨257枚、どうかお納めいただきたい」


 マジで、こんなに貰ってもいいの、いやー今回はホントに稼がせて貰ったわ。アンデッド騒ぎがある前に持ってた額がたしか現金で金貨1200枚、換金用宝石類が600枚分、後はラッテル領への債権が950枚分だったのに。


 バカ騎士との決闘騒ぎで確定してる分だけで、3200枚の債権とまだ額は決まってないけど『魔道具』代の分割払い。後は今貰った金貨に、『迷宮核』から出た宝石が多分200~300枚分くらい。シルマ家と分配した採集物の俺の取り分が400枚だもんね。


 しかも、ボス戦はシルマ家が居なかったから、死骸は俺の総取りだし、オーガ・ジェネラルの装備と死骸も貰えたから素材として売れそうだしね。


 ハンニャがディフィーさんに食べられて、それがトドメになったから『毒撃の太刀』を持って行かれたのはちょっと残念だけど、それ以上に……


「グルゥ」

「クワァ」


 後ろを振り返ると鎖につながれた変異種オーガが力なく呻く、でもまあディフィーさんが居なくなって少し歩調が速くなったような気がするな、やっぱりこいつ等もビビってたのかな。


 トーウのスキルを定期的に掛けて腕を麻痺させて、魔法職には猿轡を噛ませてるから、抵抗される恐れはほとんどないけど、このまま『拠点』に連れてっても大丈夫だよね。これだけでも魔物商に売ればそこそこの額、多分金貨300枚くらいなりそうだし。


 うーん、テトビが居れば高く買い取ってくれたんだろうけど、もう他の『迷宮』に行っちゃったしな。こないだの商人にでも交渉してみるか。


 しかもオーガの背中には、『迷宮』内で回収したゴブリンやオークの武器もロープで括り付けてある、これも二束三文とは言え売れるだろうからこれだけの量ならそこそこの額、4、50枚くらいには成るだろう。


 ここら辺は『魔骨弾』が無ければ、捕えるのも運ぶのも無理だったから俺の総取りにして貰えたもんね。


 現金とすぐ現金化できそうな現物が確定分で約3000枚くらい、値段が未確定な分や、後々金になる債権なんかを入れれば一万枚の大台を超えそうだな。


 いやー『拠点』や町に帰るのが楽しみになってきたな。





「そのような事、到底承服いたしかねます」


 な、なんだ、いきなり何を騒いでるんだ。


「声が高い、周りの耳を考えよ、このような衆目の有る場で騒ぐなど」


 やっと『拠点』に帰ったと思ったら、人だかりが出来てたから何かと思えば。先に帰ってた騎士三人が、領軍指揮官のカター・ナーシに食って掛かってるけど、一体どうしたんだ。


「いいえ黙りませぬ。戦場での論功行賞が公正に行われずば、一体どこの傭兵が我らの為に戦いましょうか。信賞必罰が明確だからこそ、怯懦を誹り武勇を貴ぶ気風が産まれるのではありませぬか」


 コウデとか言った騎士の言葉で、周りにいた冒険者連中がざわめき出す。そりゃそうだよな、今の言葉が正しいなら正当な報酬が支払われないって事っぽいし。


「他の者へは働きに応じた報奨の用意が整っておる、すでに『功績証書』もかなりが書きあがり、賞与の算定も行いだしておる」


 今のはワザと周りに聞かせるために言ったな。何割かの冒険者はこれで安心したっぽいし。


「ならば何故、此度の『大規模討伐』における武勲第一が誰であるかは明らかなはず。それを仕官させぬとは……」


「黙れ黙れい、この決定は侯爵閣下御自ら決められたこと、臣下の分際でそれに異を唱えるか、わきまえよ」


 おーい、こんな衆人環視の中で、そんな話をしてていいのか。


「黙りませぬ、主君の非を諌めるは家臣たる者の務めでございますれば、ここで道を間違えらば……」


「解らぬのならはっきりと言おう。上意である、控えよ」


 な、なんか時代劇みたいなやり取りだな。カター・ナーシが紋章の書かれた手紙を掲げたら、騎士連中がみんな跪いちゃったし。


(クレ侯爵の印章が押された書状か、あれが有るという事はクレ侯爵直々の命という事じゃのう。あれでは逆らえまいて)


「しかし……」


「控えよ、これ以上言うのならば、候の御怒りを受ける事を覚悟せよ」


「く、く、御免」


 カター・ナーシが恭しく書状をしまうと同時に、三人とも立ち上がってどっか行こうとしてるけど、やべ目が合っちゃった。


「リョー殿、く、失礼いたす」


 あれ、一礼だけして行っちゃった。


「『百足殺し』か、貴様がボスを倒し『迷宮』を『鎮静化』したと聞いたが、真であろうな」


 あれ、なんだ、カター・ナーシがずいぶん喧嘩腰だけどどうしたんだろ。


(ふむ、今のやり取りを考えるに、どうやらお主にあまり手柄を上げてほしくないのじゃろうな。証拠が無ければ難癖を付けて来るやもしれぬぞ)


 そりゃまあ、身分に煩そうなこの世界で作戦会議中に貴族を告発したり、場を引っ掻き回したけどさ。『迷宮攻略』前はここまでじゃなかったよね。この数日の間に何かあったのかな。


 まあいいや、とりあえずは証拠を出した方が良いよね、でないと『迷宮攻略』の第二陣を出すとかって事になるかもしれないし。


「死骸が残ってない魔物もいるが、とりあえずボスとフロアボス一体の死骸を持ち帰ってる」


『アイテムボックス』からトンボとジェネラルの死骸を取り出して並べると、慌てて場所を空けた冒険者連中が騒ぎ出す。まあサイズがサイズだもんね。


「なんだあのデカさ、こんな化け物がいたなんて」

「あのオーガを見ろ、並みの個体の倍はあるぞ、あの凶悪そうな面で吠えられたら、俺なら竦み上りそうだな」

「『青毒百足』と言い、このトンボと言い、どうやれば少数で倒せるんだよ」

「よせ、『百足殺し』と目を合わせるな、嬲り殺しにされるぞ」

「こんなデカブツを平然と倒す化け物に睨まれたら命は無いぞ」


 あれおかしいな、ボスだけじゃなく俺も怖がられているような。ま、まあこれで証拠は十分だよね。


「こ、これは、本当に貴様が倒したのか」


「俺だけじゃないがな、疑うなら僧兵でもリューン王国の連中にでも聞けばいいだろう」


 この状況で下手に出たら一気に来られそうだけど、敬語使わなくて無礼討ちとかにならないよね。


「く、後で報奨金を取らす。それを受け取ったならば何処へなりとも去るが良い」


 なんだ、金はきちんとくれるんじゃないか、じゃあ問題ないはずなのに、なんか周りがざわついてるな、どうしたんだろう。


(ラクナ、今のやり取りはなにか変だったのか)


(変と言えば変じゃな、普通ならばこれだけの事をすれば、仕官の誘いが有って普通じゃろうし、『武勲証書』が発行されるまで待てと言われるはずじゃ)


 まあ、神殿との契約が有るせいで仕官なんてもともと出来ないから、問題はないけど、異例なんだろうな。


(ところで『武勲証書』ってのはなんだ)


 今まで聞き覚えがないんだけどさ。


(戦や『大規模討伐』などで雇った冒険者や傭兵に対して、その働きを記した証明書じゃ。倒した敵の種類と数、参加した戦闘の内容などが書かれており、それを示せば、その者の実力が推し量れる故、依頼を受ける際などに有利になるじゃろう)


 なるほどね、履歴書なんかの代わりになるのか。この世界には冒険者のランク分けとかが無いってカミヤさんが言ってたから、こういうのが重要なんだろうね。


(民間の商人や斡旋屋等が発行する『冒険者紹介状』等もあるが、貴族が発行した物の方が広く信用が有るのう)


 まあ、別に依頼で稼ぐ必要は今のところ無さそうだし、貰えなくてもいいかな。


「解った、俺としては金を用意して貰えればそれで良い」


 向こうにも何か事情がありそうだし、嫌われてるのに長居しても仕方ないよね。この領土に来た目的はとっくに果してるし、神殿の依頼も終わってるもんね。早いところみんなのとこに戻らないと。


「あ、居ました居ました、探しましたよ、リョーさん、パルス様が後で会いたいらしいですから、来てくださいね」


「『百足殺し』さん、ここに居ましたか、ちょっと商談が有るんですが」


 アラ達を先に休ませてたテントに戻ろうとしたら、サーレンさんとこのあいだ取引をした商人が話しかけてきたけど、面倒事じゃないよね。


うーん、リョー君を持ち上げすぎたかも。


あ、そうだ、もしリョー君の次の職業を考えている方がいらしたら、活動報告の方をご覧下さい。


H26年11月11日 誤字訂正

H28年1月1日 誤字修正しました。

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