139 首飾りさんの異世界講座
すいません、説明会です。
「この階段を下りきれば『迷宮核』だろうな」
闘技場の先に有った階段を降りながらつぶやくと、俺の後に付いてきた二人の返事がすぐに返ってくる。
「リャー、がんばったもんねー」
「旦那様、『迷宮踏破』の御成功、大変喜ばしく存じます」
アラの元気な声と、トーウの堅苦しい言葉が対照的だなー、これにハルやミーシア、サミューなんかが居たら、またそれぞれ個性的な反応を返してくるのかもな。
みんな元気にしてるかな、ほんとなら『馬のふん』を渡してユニコーン狩りを止めさせるだけで、すぐみんなの所に戻るはずだったのに、もう少しで二か月近く別行動してる事になるもんな。
まあ、これでやっと一段落して、この地を離れる目途が立ったから、みんなと合流できるけど、『拠点』に戻るまでで4、5日はかかるだろうし『拠点』を撤収してレイドの街に戻って、ってなると更に日数が掛るだろうし、そこからサミューたちの居る『薬師の森』近郊まで行くとなると。
後、2、3週間はかかるかな、それに……
「どうかなさいましたか旦那様」
トーウをこのまま連れて行っていいのかも悩むよな、ラッテル領の借金が返って来てない以上は預かり続けるしかないんだろうけどさ、あんまりラッテル領から離れて他の国なんかに行くのも、かわいそうな気がするんだよね。
それにキッシュ達が金を用意しても、俺が何処にいるのか解らなくて捉まらなきゃ、返したくても返せないだろうし。
いやでも、その方がトーウを狙ってくる貴族連中なんかを撒くにはちょうどいいのかな、キッシュには何かあったらカミヤさんの所に連絡するように言っておけば良いかも。
薬代の分け前を貰う話が有るから、あの人の所には定期的に顔を出さないとダメだしさ。ラッテル領の蝗被害の件もお願いしてるからちょうどいいかも、どうせパルスにも同じこと言っちゃったんだしさ。
後の問題はトーウがみんなと仲良くやっていけるかどうかだけど。
「アラ様、疲れてませんか」
「うん、だいじょぶだよ」
まあ、アラとこれだけ仲良くやれてるんなら問題ないかな。
さてと、もうすぐ『迷宮核』だな、今回はどんな『魔道具』が出てくるのかな。
(そうだ、ラクナ、『迷宮核』が生み出す『魔道具』には何か法則性が有ったりはしないのか)
多分、この『迷宮の型』から選ばれるんだろうけどさ、なんとかうまく調節できれば便利だよね。
(一応は儂がお主らに合った方向性をある程度は定めておるが、あくまでも方向性でしかなく細かく選ぶ事は出来ぬ。出てくる可能性が有る物は『迷宮の型』に書き込まれている物が主じゃが、『鎮静化』を実際に行った者のスキルや装備品の影響も出るのじゃ。おそらく前回『出血の細剣』が出たのは、お主と共にアラも『迷宮核』に触れたせいじゃろう)
な、何、それは俺に合ったものが出やすいって事なのかな。
(実際に過去の事例では『勇者の武具』の劣化品が出た事もあれば、古い武門の家系に連なる者が『鎮静化』を行った為に、温存してきたスキルが『付加効果』となった事もあるのう。まあ、どちらも大きな問題となる事が少なくはないのじゃが)
ああ、『勇者の武具』が元になってる『魔道具』なら欲しがる人間は多いだろうし、隠してた奥の手が『魔道具』なんかになって万が一敵の手にでも渡ったら、自分の手の内を曝す事になりかねないもんね。
でもそれなら、色々期待できるかも、俺の装備品の『軽速』とか『切り裂き』とか『超再生』なんかの効果が付いた『魔道具』が他にも有れば便利だよね。トーウやミーシアみたいな前衛組に装備してもらえば、かなり戦力アップになるだろうし。
それに、腐女子勇者の宝物庫に有った装備品や、フロアボスが持ってた武器が出てもいい感じだし。
ミーシアなら『遠当』の付いた剣とかでパワーのある斬撃を飛ばしたり、『帰還』効果の武器と『投擲スキル』を組み合わせれば、遠近両方で戦えるようになるし。
『火撃』や『土砂』の効果が付いた小物でも有れば、俺の指輪がMP切れになっても代わりに使えるよね。
『癒し』とか『探知』とか『魔力斬』とかはパルスに売っても金になりそうだし、パーティーで使うのにもいいだろうから。
それに『勇者の武具』の『暗殺者の毒殺刀』とか『属性付与の弓兵弓』の効果が付けば、それだけでもプレミアム価格が付きそうだし、てかハンニャが持ってた『毒撃の太刀』が、もう『暗殺者の毒殺刀』のコピー品なのかな。あれ、『暗殺者』って。
(なあ、ラクナ、あの『宝物庫』を作った『勇者』の職種って……)
(なんじゃ、当然『弓兵』と『暗殺者』じゃが、それがどうかしたかのう。そんなもの武具の名称を見ればわかる事じゃろうて)
いやいや、どうかしたかじゃないだろう。話がおかしいだろうが。
(『勇者』の職種は、基礎的な職種しか出てこないんじゃなかったのか)
たしか、上級職への転職は出来るんだったかな、いやでもアイテム名に『暗殺者』が付いてるんだから、転職をしたのとは違いそうだよね。それとも転職をすると『勇者の武具』の名前も一緒に変わるのかな。
(それは一度目の話じゃのう)
おい、この大ボケ首飾りそんな話は初耳だぞコラ。
(二度目以降はのう、上級職や特殊職、称号職まで何が出るか解らぬのじゃ)
なんだと、つまりは当たり外れがあるってことか。
(そっちは何か法則性はないのか)
まあ、なんであれ『魔法士』以外が出てくれれば、とりあえずはそれでいいよね。なんの職であれチートなのは間違いないんだからさ。
物理系のステータスとスキルさえ手に入れば、こんないつ死ぬか解らない、危険と隣り合わせな『迷宮攻略』とはオサラバして、ハードモードからイージーモードに変更できるだろうし。
(幾つかあるのう、まず一度目と同じ形状や効果の武具は出ぬ、故に『腕輪』以外の形状で、『長命』では無い効果が付いた武具となるじゃろうな)
てことは、『長命の魔法輪』と新しい武具を一緒に装備し続ける事が出来そうだね。
やっぱり『超回復』は安全のためにも常時付けてたいしさ。あとは『切り裂きの短剣』や『軽速の足環』とも被らなきゃいいけど、新しい武具のせいでそこら辺と装備を替えなきゃならないとかだとな、面倒そうだし。
(次にじゃな保有スキルによる職種の制限は無くなるのじゃが、一つ目で出た職のみから派生する上級職は出てこぬ。お主の場合では『魔導師』や『風魔法士』などはありえぬが、『剣士』との複合職である『魔法剣士』などは可能性が有るのう)
つまりは、『魔法士』みたいなのがまた出てきて、『闘気術』のせいで役立たずってことは無いって訳か、『魔法剣士』なら半分は剣士なんだから今よりはましになるはず。
(更に、『勇者』のそれまでの行いや、戦い方などで職の傾向が決まるの)
うん、これまでの行いって、どういう事だろ。
(例えばアキエの場合では、最初に『弓兵』が出てから後は、敵に気付かれる前に遠距離から狙撃する戦いを好んでいた為、二つ目の職に『暗殺者』が出たのじゃが、その後はそれまで以上に狙撃を好んでいたのう。『暗殺者で狙撃が得意とかってゴ〇ゴ、ゴ〇ゴなの、うん、長身マッチョで角刈りとか良いかも、白のブリーフを穿かせて、あの剃刀みたいな目で見詰められたい……』などと叫びおって、『武具の社』から真っ直ぐ軍用奴隷商の居る町へ向かい、僧兵崩れの軍事奴隷を買っておったのう)
うわ、どんだけブレなかったんだ腐れ勇者、でもそんな事だから『暗殺者の毒殺刀』と『属性付与の弓兵弓』であんなにレベル差が有ったんだな。
(他にも、ドラゴンを何百頭も殺した者は『竜殺し』、多くの民を魔物から守った『英雄』、諸事情から一国の軍の指揮官として仕官する事となった者は『軍師』、複数の大型船を所有した『提督』など普通では手に入らぬ称号職も有れば、斧が武具として出ながら剣を使い続けた為に『剣術家』となった者や、騎馬での移動を好んだ『軽騎士』など、それほど珍しくはない職に就いた者もおる。もちろんその称号に似合う無数のスキルが付いたがのう)
ほんとに何が来るか解らなそうだな。でもちょっとかっこよさそうな職もあるよね。
(また、これらの職は人聞きの良い物ばかりでは無くての、『虐殺者』や『凶賊』、『破壊者』、『殺人狂』などと言う物が付いてしまった事もあるのう)
うわ、そんなの付いたら嫌だな、お、俺は大丈夫だよな。いやでも『寒暑の岩山』の時は、仕方なかったとはいえ何十人も冒険者を手に掛けちゃったもんな。
(なあ、もし俺が二つ目の職を取ったらどんなのが付くと思う)
だ、大丈夫だよね。変な職にはならないよね。でもまあ弱いままの『魔法士』だけで行くよりはいいのかな。
(そうじゃのう、お主の戦い方じゃと『軽業師』とか『ペテン師』などと付くやもしれぬのう。あるいはこれまでの行動で『奴隷使い』や『金貸し』もあり得るかもしれん、もしくはお主の二つ名である『百足殺し』がそのまま称号職になる可能性もある)
うわあ、『軽業師』位しかまともなのがないんだけど。
(まあ、こればかりは実際に『社核』へ触れてみなければわからぬ事じゃがの)
そりゃそうだよね、何が出るか解ってるなら、今の俺みたいな事態が発生する訳ないもんね。
まあ今はそれよりも、ここの『迷宮核』から何が取れるかのほうが重要だよね。
「さて、すぐに『鎮静化』して、早いところ上に戻らないとな」
やっと階段も終わりか、この先に『迷宮核』が有るんだろうな。
「そうでございますね、皆様がお待ちでしょうから」
凍えてるディフィーさんの介抱を任せて先に行けって言われちゃったもんね。何時アンデッドの『型』が出来るか解らないし、『拠点』での戦況次第じゃ、このまま『活性化』するリスクだってあるもんね。
「さてと、何が出て来るのか、楽しみだな」
目の前で輝く『迷宮核』に歩み寄り俺は手を伸ばした。
さて、どんな装備品が出て来るか。
H28年1月1日 誤字修正しました。




