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134 美味しい掛け声

「まさかオーガの群れが五倍近いオークを一方的に蹴散らすとは、この広場を通らねば奥には進めぬと言うのに」


 呻いているコウデの横に並んで、物陰から前方を覗うと、嫌になるほど大量のオーガが座り込んでいる。


 数体ずつ車座になって座っているオーガは、手に手に血まみれの肉を持ってかぶり付いてるけど、あれ全部オークの肉だよね。


 多少負傷している個体もいたけど、ヒーラーが肉を食べながら回復して回ってるから、そのうち全快するんだろうな。


 ボス部屋に向かう途上の広場にオーガが群れていたから、今まで通り俺がトレインしてオークの群れをぶつけたんだけど、一方的な戦闘でオークが全滅しちゃったから、俺達が仕掛けるタイミングが掴めなかったんだよな。


「今までならば、あの数の差でほぼ互角であったと言うのに、これはいったい……」


(ふむ、面倒な敵が居るのう)


(ああ、あれが原因か)


 唯でさえ大柄のオーガの中でも、二周りはデカい個体の『鑑定結果』を見てるけど、これどうなってるんだよ。


オーガ・ジェネラル LV48

技能スキル 戦闘指揮 格闘法

戦闘スキル 殴り付け 撲殺拳 掴み投げ 頭部握潰 戦意高揚の叫び

身体スキル 知力上昇 腕力上昇 握力上昇 硬四肢

特殊スキル 上位種召集 同族支配 


 あれが、ここのフロアボスなんだろうけどさ、個体としてのステータスやスキルもヤバいけど、それ以上にボスとしての能力がヤバすぎるだろ。


 多分、『上位種召集』のせいなんだろうけど、あそこの群れ、パワーやヒーラーなんかの変異種や、高レベルのオーガばっかりなんだよね。


 しかも『同族支配』と『戦闘指揮』、『知力上昇』が有るせいか、奴ら見た事の無いような連携を取るし。


 さっき、オークの群れをぶつけた時も、最初は投石で数を削って接触の直前にメイジが魔法斉射、相手が崩れかけたところで一気に突撃して前衛を蹂躙、その間にメイジが次の魔法を用意して、まだ無事だった後続へ斉射して突き崩してから手の空いた前衛が突撃。


 これの繰り返しでオークをあっさりと蹴散らしちゃったからな。


 しかも、近接攻撃の時もポイズンオーガは目の前で対峙した相手を倒すのに拘らないで、毒化させたら他のオーガに任せてすぐ次の敵に向かってったし、負傷した個体はすぐに下がってヒーラーの回復を受けてたもんな。


 なんて言うか、とっても効率的な集団戦闘をしてたよね。


「どういたしますかな、リョー殿。拙僧等だけではあの群れを抜けるのは難しいでしょうし、他の群れをぶつけても同じ結果でしょうな」


 そうだよな、下手をすればただオーガのレベルを上げただけって事になりかねないし。


 どうしようかな、あれを試してみるかな、でもオーガがこれだけいると、多分一回しか使えないんだよね。この先の事を考えると取っておいた方が良いのかな。


「ここさえ抜ければ、後はボス部屋だけだと言うのに」


 ん、それマジですか。


「エル・シルマ、今の話は本当か」


 もしそうなら、奥の手を取っておく必要は全くないよね。ここでオーガを倒したら後はボスだけって言うなら、無理に下手な事をして藪蛇になるよりも、パーっとやっちゃった方が良いかも。


 薬の残りももうないし、食料も少なくなってきたもんね。『アイテムボックス』に入らない分をリュックに入れて担いできたのに、もう結構ギリギリだからさ。


 例外なのは、鬼を食べ放題なディフィーさんと、虫や雑草だけで十分に満足できるトーウくらいだもんな。


「先に行った偵察ではこの辺りは遠目に見る事しかできませんでしたが、地形や構造物の配置は過去にボス攻略をした際に作られた地図と変わりがないうえ、『活性化』したという記録も有りませんので、であればこの先の状況も同じはず。それならば、この広場を受けた先に有る闘技場がボス部屋となるはずです」


 それならいいかな、後はボス戦だけって事ならパーっと使い切っちゃってもいいよね。


「上手く行くかは解らないが、一つ試したい事が有る」


 俺の言葉にその場にいた全員が無言で頷いてくれた。このあいだ『癒しの短剣』でコウデを助けてから、騎士連中もうるさい事を言わなくなってきたからやりやすいな。


 まああの後も、何回も回復させてるからね。あれ以降はトーウの『麻痺毒爪』と『眠毒爪』を麻酔代わりに使って、痛みを感じないようにしてからやる様にしてるけど。


 いくら回復の為って言っても、短剣で何回も切りつけられるのはキツイだろうから、この間のコウデのときも、その前のバカ騎士との決闘騒ぎの時もかなり痛がってたもんな。


 いやいや、今はそれよりも作戦の事を考えないと。


「まずは、オーガを見下ろせる高さのあるところを探そう」








「ここならちょうどいいな」


 オーガの集団から200メートルほど離れた塔の上から、連中を見下ろしながら『アイテムボックス』とリュックから必要な物を取り出していく、かさばる物じゃないけど数が多いから『アイテムボックス』に入り切らないんだよね。


 それにしてもいい場所が見つかったな。風下だから臭いで気付かれないし、南側で高さが有るおかげで日を背にしてるから向こうからは見えにくい。何より鬼の方に面した壁がちょうどいい広さで崩れてるからやりやすいうえに、いざとなったら隠れるスペースもある。


「リョー殿、それは『魔骨弾』ですな、それとこれは同じ大きさにした骨の玉、一体これをどうなさるのですかな」


 俺にこれをくれた張本人のラッドが不思議そうに首を傾げてるな、まあ普通は手榴弾みたいに投げて使うんだろうからこの距離じゃね。


「いきなり『魔骨弾』を使って外したら困るからな、先にこの骨の玉で感覚を掴んでから本番に行こうと思ってな」


 リハーサルは大事だよね、ぶっつけ本番で失敗しちゃ目も当てられないからさ。


「そうは言われてもリョー殿、この距離では『投擲道』のスキルが有っても届くかどうかわからぬぞ、アラ殿ならば『弾弓』が使えるのやもしれぬが、それでもこの距離では」


 ミムズ、俺には別な方法が有るんだよ。


「こいつを使う」


「リャー、それなーに」


 俺が『アイテムボックス』から取り出した棒にアラだけじゃなく、その場にいた全員が不思議そうな顔をしている。やっぱりこっちには無いんだな、『拠点』で特注した時も商人や職人連中は不思議そうな顔をしてたからそうかなと思ってたけど。


「これはな、ゴルフクラブって言うんだ」


 アラから少し離れて数回素振りをする、うん、いい感じだ。『拠点』にいた頃も何回か試したし、ラクナに頼んで夢の中でも練習したから上手く行くはずだ。


「それじゃあアラ、さっきお願いした魔法をこれにかけてくれないか」


 地面に並べた『魔骨弾』と同じ形に削った骨の玉、見た目だけはホントにゴルフボールだよね。


「行くよ『飛行妨害』」


 アラの魔法が全ての玉の空気抵抗を打ち消してくれる。これで風下も関係なくなるし、ディンプルなんかの工夫が無くてもそこそこ跳ぶはずだ。それに高低差もあるから、その分の飛距離も稼げるだろうし。


 後は『闘気術』で筋力なんかを上げれば日本にいた頃よりも普通に飛ぶだろうし。攻撃ステータス的にはほとんど上がってないってのに、こう言う所で役に立つってのは、なんかなー。まあ今回は役に立ってるからいいけどさ。


「行くぞ、アラ、何処に落ちたかよく見ててくれ」


 接待ゴルフ歴12年を舐めるなよ、飛距離はそこまでなかったけど、狙ったところに落とすのだけは得意なんだからな。


 相手のスコアに合わせて、不信感を抱かれないよう自然に池やバンカーに落とすのだけは上手くなったからね。


「チャー・シュー・メンッ」


 うん、いい当たりだ、でもやっぱり弾道が普通のゴルフとは違うな。


「リャー、鬼さん達の向こう側に飛んで行っちゃったよ」


 ちょっと跳び過ぎたか、『闘気術』を少し押さえて行ってみるか。


「もう一回行くぞ、チャー・シュー・メン」


「こんどはね、こっち側におっこっちゃったよ」


 なら一回目と、二回目の中間くらいか、よし、今回もいい当たりだ。


 ん、なんだいきなり向こうが騒がしくなったな、これはひょっとして。


「えっとね、鬼さんの頭に当たっちゃって、すっごい怒ってるよ」


 よしよし、この感覚だな。


「それじゃあ、本番に行くか」


 骨の玉を『魔骨弾』に変えて、ドライバーを構える。


「行くぞ『照明』、チャー・シュー・メン」


『魔骨弾』に込められた魔法を発動させるために『照明』の魔法をかけてから一気にスイングして飛ばす。


 さっきと同じような叫び声が上がった直後、落下地点の周囲に雷光が走り、そのあたりに居たオーガが崩れ落ちる。


 うん、いい感じで痺れさせられたみたいだね。よしよし。


「どんどん行くぞ、『魔骨弾』でオーガの集団を麻痺させて一気にフロアボスを仕留めるぞ」


 全部使い切ればオーガを全部麻痺させるぐらいは出来るはずだから。


「『魔骨弾』にこのような使い方が有ろうとは、敵に追い込まれた際に逃げる為の道具としか思っておらなかったが。リョー殿には驚かされてばかりだな」


 ミムズに褒められてもな、あんまり嬉しくないかも。


「いやはや拙僧らの予想外の使い方ですな、これならば安全に戦えますな、効果的な戦術案として僧兵団へ提案すべきかもしれませぬな」


「高価な『魔骨弾』を大量に使う戦法など、よほど資産に余裕のある軍隊しか使えないのではないですかな」


 俺の方を見ながら呟いてるラッドにコウデが答えてるけど、え、『魔骨弾』ってそんなに高いの。


 まあいいや、どうせ貰い物なんだから、思い切って使っちゃおう。


「チャー・シュー・メン。チャー・シュー・メン」


 一回づつ、きちんとタイミングを掴まないと、弾道がずれそうだもんね。


「なんでしょうか旦那様の御声を聴いていると、少しお腹が空いてまいりますね」


「トーウ様もですか、実はわたくしもそう感じていたのですが……」


 トーウはともかく、ディフィーさんは我慢しててください、背後で言われるとちょっと怖いんで。


「リャー、お腹すいたよー」


 うん、アラもか、ちょっと待っててね一段落したら、干し果物上げるからね。


「アラ、もう少し待っててくれ」


「うん、わーった」


 うん、素直でいい返事だ、どこかの肉食さんにも見習ってほしいな。


「ディフィーも少し待ってくれ、これが終わればフロアボス以外は麻痺してるから好きにできるだろう」


 うん、好きなだけ食べてください。


「踊り食いですか、いえこの場合では生け作りでしょうか」


 う、イメージしたらちょっと気持ち悪くなっちゃった。


題名に深い意味はありません。


それと作者はあまりゴルフに詳しくないので、何か間違いがあれば教えてください、致命的な場合は修正を考慮します。


H26年11月11日 誤字修正。

H27年12月16日 誤字修正しました。

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