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133 丸呑

「くわああああ」


 正面から振り下ろされた太刀の一撃をワザと肩で受け、多少姿勢を崩しながらもそのまま懐に入って『切り裂きの短剣』で相手の太腿を切りつける。


「ミムズ。エル・シルマ」


「う、うむ『氷結』」


「いきます『氷結』」


 俺が動きを止めた隙を狙って、ミムズとエルの放った魔法が目の前の敵の足を完全に凍り付かせる。


ハンニャ LV51

技能スキル 刀道 

戦闘スキル 二連刺突 斬殺圏 六連斬 

身体スキル 速度上昇 快速 再生 生命力強化


毒撃の太刀 LV36

付加効果 毒 猛毒 麻痺


 この『迷宮』二匹目のフロアボスだけど、ほとんどヤクシャの上位互換だし、今回は氷系の魔法が使えるメンバーが居るから、抱き着いてガチンコの切り合いまではしないですんだけど。


「ぐぐうううう」


 くう、やっぱり無茶苦茶いてえ、しかも毒が回ってきたせいか熱いし、あああああ、もう、くそ。


「リャー、だいじょうぶなの、いたいのめーよ」


「旦那様」


「だ、大丈夫だ、すぐに、回復する、それより、は、早く奴を」


『超再生』のおかげで傷がふさがると同時にだんだん痛みは治まってきたし、毒の熱も治まって来てる。よし、行ける。


「くう、行くぞ」


 多少残っている痛みを堪えて、奴の背後に回り『ゴブリンズソード』を水平に構え、『闘気術』で足を強化して一気に駆け寄る。


 せっかくのフロアボスなんだから、装備にも経験値を稼がせないとね。


 二人の魔法で両膝まで凍らされた上に、片方の太腿を負傷してるから振り向きにくいはずだ。後ろからならいける。


 鈍い手応えと共に剣先がハンニャの背中に深々と突き刺さる。


「グカアアアア」


 げ、腰だけで振り返って切り付けてきやがった、どんな関節してるんだこいつ。


 とっさに柄から手を放して『軽速』を使いながらバックステップしたけど、危なかった。いくら『超再生』が有るっていっても、回復に使うMPには限りがあるし、『闘気術』が使えなくなったら、俺の戦力はだいぶ下がっちゃうからね。


 まあ、とりあえずは。


「見ての通り奴はまともに身動きが取れない、背後や左右から畳み掛けろ。とは言え手は動かせるから油断はするな、中遠距離攻撃が出来る奴は刀の間合いの外から、近距離攻撃も一撃離脱を繰り返して削って行け」


「わーった、『三段撃』」


 アラの弓が三本とも胸に刺さるけど、ピンピンしてるな、『生命力強化』のスキルが効いてるのかな。


(あのスキルが有ると即死するような傷以外は大抵耐えるからのう、とはいえこうして出血を強いて行けばそのうち倒せるじゃろう)


「このような、相手の動きを止めて嬲り殺しにする戦い方は好まぬのだが、とはいえ事態が切迫しており、相手がフロアボスともなれば、そうも言っておれぬか」


 氷魔法で相手の足を一時的に止めるミムズの戦い方はセーフなのかな、あれをヒントに思いついたんだけど。まあ、あれは正面からの戦いでの駆け引きの一環だから良いのかな。


「行くぞ『刺突突撃』」


 ミムズの体重の乗った一撃が、ハンニャの喉を貫くけど、まだ生きてるのか、でも確かミムズの『出血の魔石槍』は回復阻害の効果が有ったはずだから、丁度いいか。いいぞミムズもっとやれ。


「まさかフロアボスを相手にこう言った戦い方が有るとは、いやはや勉強になりますな。これならば新兵共の訓練にもちょうど良さそうですな。ふむ、神官長猊下に言上すべきか」


 まあ、こいつみたいなスピード重視の敵ならいいだろうけど、オーガみたいなパワータイプならすぐに砕かれちゃうだろうけどさ。まあどうやって足を止めるかを考えれば、色々方法が有るんだろうけど。


 ラッドの指揮を受けて僧兵や、騎士連中まで斬りかかってるけど、流石はフロアボスだな、正面からの攻撃は刀を振って全部防いでるよ、あっ騎士が斬られた、何やってるんだよたっく。


「行く」


 プテックが複数の投げ斧を飛ばしながら、その後に続くように駆け寄って『重砕の斧』を振りかぶるけど、全部弾いてからしっかり刀で受け止めやがった。


 普通は折れるだろう、刀で斧を受け止めるなんてしたら、どう考えても耐えられないと思うんだけど、しかも怪力のプテックが『重砕』の装備を使ったって言うのに。


「ディフィー、今」


「解っていますプテック」


 プテックの陰に身をかがめて隠れていたディフィーさんが、ヘッドスライディングをするようにハンニャの足元に滑り込むけど、あの姿勢でどうやって攻撃するんだ。まあディフィーさんだったら何とかしそうだけど、でも打撃技だとそんな効かないんじゃないかな。あの姿勢だと頭を殴って砕くって訳にも行かないだろうし。


「お覚悟を、一撃で頂きます」


 地面を両手足で叩き、頭突きをするみたいに空中に飛び上がったディフィーさんが、一瞬で『獣態』を取り、そのまま大きく口を開けて。


 うわあ、一口で上半身噛み千切って丸呑みにしちゃったよ、ハンニャからしたら、いきなり地面から牙だらけの大口が飛び出して来たみたいに見えただろうな。


 なんかもうB級のモンスター・パニック映画だな、もしくは有料チャンネルなんかでやってたエア・シャークみたいな感じか。


 膝関節まで氷づけにされて、立った状態で太腿から千切れたままに残された両足がとってもホラーだな。


「コウデ卿、お気を確かに」


「ぐ、ぐうう」


 ん、どうしたんだ、騎士やシルマ家の連中が騒いでるけど、さっき切られてた奴がどうかしたのか。


「毒だけならばともかく、この傷では、もはや薬の残りが……」


 そう言えば、これまでの間に結構な頻度で戦闘をしてたから、ストックしてた回復用の魔法薬もほとんど使い切ってたんだよな。


 MMKが出来そうな時は俺がトレインしてたけど、近くに手頃な他の群れが居ない時なんかはガチンコで戦うしかなかったもんな。


 てか、あの騎士ほんとにヤバくないか、腹の所から大量の血と一緒に零れ落ちちゃいけない物がデロンと、デロンと出てるんだけど。


「せ、せめて、毒だけでも、そうすれば苦痛も幾らかは和らぐはず……」


 騎士の一人が、薬を取り出そうとするけど、怪我人が自分でそれを止めた、どういうつもりなんだ。


「よ、よい、この先、にも、ポイズンがいよう、その薬は取って、置け。もう、目が見えんのだ、助からぬ者に、使、っては、むだとなる」


「コウデ卿、く」


「も、もう、楽に、してはくれぬか、このままでは、醜態を、さらすやも、しれぬ」


 まあ、死にかけた時って、本音が出るのかもしれないし、聞いた話じゃ死亡の少し前に意識が混濁して暴れたり、叫んだりとかあるらしいから、気持ちは解るけど、楽にってまさか。


「承知しました、コウデ卿、御覚悟を」


 おいおい、なんかだんだん空気が重たくなってきたんだけど。


(ラクナ、これはどういうことだ)


(『迷宮』や『戦場』で助からぬ場合や動けなくなった場合、こうして止めを刺すのじゃ。そうせねば重傷のまま長時間苦しむ事になったり、魔物に生きたまま喰われる事になりかねんからのう、また……)


「わたし、を、楽にして、くださるのは、どなたか」


「シルマ家のエルにございます。『火炎魔法』にて一息に全てを焼き払いますので、苦しみも無く、アンデッド化の恐れも無いゆえご安心ください」


「おお、シルマ殿か、どうか、御家を復興させ、侯爵、閣下のお役に、我は死すとも、我が、力の一部は、御貴殿と、ともに御領、地のために」


(人を殺しても経験値が入るからのう、特に騎士や冒険者などの戦闘職では経験値が多いため、こう言った場合では相手に力を譲るという考え方をするのじゃ。古い武家の家などでは先代が病死や老衰間際となった際に、後継者があえて直接手を下すなどと言う風習も有るらしいしのう)


 うーん、合理的と言うべきか、野蛮と言うべきか、いやいや、それどころじゃなかった。


 あんまりに重たい話で、割り込むタイミングが掴めなかったけどこのままじゃ不味いよね。


「どけ」


「え、あ」


 魔法を放とうとしていたエル・シルマの肩を後ろから掴んで押しのけると同時に、倒れていた騎士の胸に短剣を突き刺す。


「ぐうあああ」


「き、貴様何をするか」


「『百足殺し』そこまでして経験値が欲しいのか、この外道が」


 興奮した騎士二人が、剣を抜いて俺に斬りかかろうとするけど、その前にアラとトーウがそれぞれの武器を構えて俺の背後を守ってくれてる。シルマ家の連中は唖然としてるから大丈夫そうだし、ミムズも何か言いたそうにしてるのを、プテックが抑えてる。僧兵団は静観してるか、よしこのまま続けれるな。


「ぐあ、ああ、がぐ」


 俺が短剣を突き刺すたびに、コウデと呼ばれた騎士が悲鳴を上げ続ける。


「貴様、コウデ卿を嬲り殺しにするつもりか、この卑怯者が」


「せめて一撃で楽にしようと言う情けすら貴様にはないのか」


 後ろで散々叫んでいる騎士を無視して、使い終わった『癒しの短剣』を『アイテムボックス』に戻して離れると、コウデが小さな切傷しか残っていない自分の腹を不思議そうに撫ではじめる。


「こ、これはいったい」


「コウデ卿、御身体は、御身体はご無事なのか」


「傷さえどうにかなれば、毒消しはあるんだろう、早く飲ませないとせっかくの回復が無駄になるぞ」


 慌てたように騎士二人が薬を飲ませている間に、ハンニャの死骸を片付けとかないとね。足だけとはいえフロアボスだから、アンデッドになったら強そうだし。まあその時は『ゴブリンズソード』で、って、あれ、そういえば。


 俺の視線の先には、凍りついたままの二本の足と、おっきなワニが一匹……


 ディフィーさん、俺の剣ごとハンニャを喰っちまったよー


「う、う、うぐう」


 ん、なんだディフィーさんの様子がおかしいな、まさか『ゴブリンズソード』と一緒に食べた『毒撃の太刀』のせいで食中毒を起こしたんじゃ。


「うっぷ」


 大きな声を出した後にディフィーさんが口を開けると、その中にヌラヌラと何らかの液体に濡れた二本の剣が……


「失礼いたしました。『水魔法』で洗浄してから、お返しいたしますので少々お待ちください」


「お、おう」


 錆びとかは大丈夫なのかな……


「冒険者殿、回復して頂きかたじけない、それと同僚たちの暴言をご容赦いただきたい」


「気にするな、下手に死なれて『活性化』されても困る。余裕がなかったとはいえ説明もせずに始めた俺にも問題が有ったからな」


 そ、それに今は、それどころじゃないし。


ああ、ディフィーさんがいると、どんどん脱線していく。

このネタで一話も使うはずじゃなかったのに。


H26年11月11日 誤字修正しました。

H27年2月11日 誤字修正しました。

H27年12月16日 誤字修正しました。

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