13 奴隷交渉
思ったより早く、書けました、今回はあまり中身が無いような……
てか題名に反しているような気も……
さて、どっちを買うかか、しかし迷うな、魔法で考えるならハルだがこうツンツンされるとな、気分的にはミーシアの方がいいかな、何かあればアラの事も頼めそうだし、回復魔法も使えるからある程度は基礎を教えてもらえるかもしれないし、うーん。
(それにしても対照的な二人よのう)
それは確かに、黒と白、鳥と獣、元お嬢様と昔からの奴隷、魔法特化ともしかしたら万能型、体格も……
再び仕様書に目を落としその項目を確認すると。
ハル、身長147センチ、ミーシア身長192センチ、うーんキャラ的には逆なんだけどな、自信満々でモデル体型のチビッ子と、引っ込み思案でやや肉付きのいい長身。
てか192、俺と同じくらいだと思ってたのに十センチも高いってか、猫背のせいで低めに見えてたのか。
「お決まりになられましたでしょうか、どちらも滅多にない奴隷ですのでお悩みなられるでしょうが、他のお客様もお待たせしておりますので」
うーん、どっちがいいのかな、買わないって選択肢もあるけど、この機会を逃したらしばらくアラと二人っきりになりそうだしな、そうなると迷宮攻略は難しいか。
ん、そういや何で選ばなきゃならないんだろ。
「両方と言うのは出来ないのか」
俺の言葉に、店員に笑みが浮かぶが、なんだこの嫌な笑いは。
「申し訳ありませんが二人ともかなり貴重ですので両方はもちろん、片方でもお客様の負担が大きいかと、どうしても一人欲しいという事であれば多少は勉強させていただきますし、他のもう少し手頃な戦闘奴隷も用意しております」
なるほど、この表情はあれか、貧乏人が高級店に入った時なんかで店員がするあれか。そういや昔あったな、取引先の奥さんに送るためのバックを買いに私服でブティックに行ったら……
てか、この店員最初から二人を俺に売るつもりじゃなかったんだな、これは取りあえず見せて気分を上げといて、他の奴隷を売ろうって狙いだったのね。
「そうか、ちなみに幾らだ」
お約束的には、手が出ないような無茶苦茶な高額だったりするんだよな、それで期間限定で取り置いてもらって何とか金を稼ぐとか、何かクエストをするってのがこういった場合の定番なんだけど。
「はい、ハルが金貨75枚、ミーシアが50枚になります」
高っ、金貨一枚10万と考えれば750万と500万て日本ならかなり良い車買えるんじゃね、でもな。
「解った両方貰おう」
神殿から貰った200枚があるから十分予算内、同じようなマネはもう出来ないだろうけど。
「は」
俺の言葉に、店員の顔が凍りつく、おーおー固まっちゃったよ。
「聞こえなかったか、二人とも買い取る、即金でいいか」
「しょ、少々お待ちください」
慌ててどこかへ走っていく店員の背中を眺めてから視線を転じると、二人とも驚いた顔してるな。
「お待たせいたしました」
ん、新しい店員がついてきた、大口取引だから上役を呼んだのかな、てことはやっぱり俺に買える訳ないと思っていたのか。
「申し訳ありませんお客様、この二名なのですが奴隷としての教育がまだ十分にできておりませんので、お譲りすることができないのです」
あー、ひょっとして最初から売るつもりなかったのかな、この二人を看板代わりに客引きしてたのか。
(ラクナ、二人の値段はお前から見てどうだ)
(そうじゃのう、正確な相場は解らぬが過去の勇者達の取引と比べれば安いほうかと思うの、儂に美醜は語れぬが店員があれだけほめておるのじゃ、それぞれスキルや職で問題があるとはいえ、希少種族や魔法が使えるという事を考えれば、これよりはるかに高いじゃろう)
てことは、ここで良心的な価格設定の店だと印象付ける狙いだったのか。
「それはおかしくないか、購入目的で来た客に対し売ることのできない奴隷を見せたというのか」
「大変申し訳ありません、こちらの手違いがあったようでして、お詫びと言ってはなんですが、他の奴隷でしたら相場よりもお安くさせていただきます」
と言われてもな、前衛の戦闘奴隷を出されても困るだけだし。
「俺は魔法の使える奴隷が欲しいと伝えて、この二人しかいないと聞いているが」
「そ、それはそうですが、スキルを見ていただければお気に召す奴隷が必ずいるかと」
「魔法が使えないのだろう、そもそも売る気がないのなら何のための価格設定だ、そちらが125枚を提示し、俺はそれを受け入れこうして現金を用意している、何の問題がある」
テーブルの上には既に金貨が山と積まれている、向こうとしてもこれだけの金をみすみす逃す気はないだろう、最悪他の魔法士を手に入れられりゃあまだなんとか、理想はこの二人だけど。
俺の視界の隅では何度も店員たちがドアを出入りしている、さて裏で何をしてるのかな、頼むよ、変な方向には行かないでくれよ、ごねすぎるのは危険かな、いやあっちが悪い。
「ええ、先ほども申しました通り、この二人は販売に出すのはまだ早いのです。教育の行き届いていない奴隷がお客様にご迷惑をかけては、私どもの評価に係わります」
「それに関しては気にしない、たとえ何があろうとそちらに文句は言わない、不安なら念書でも書こうか」
だんだん店員の数が増えてきたな、威圧感がプレッシャーがああ。
「で、では特例料金として金貨190枚を頂きたいと思います」
「いいだろう、それで買おう」
アイテムボックスから追加の金貨を取り出すと目の前の店員(区別がつきにくいし店員Bでいいか)の顔が青ざめていく。
おそらくは俺が払えないだろう金額を示して、こっちから断る形にしたかったんだろうね。
まあ今の俺は駆け出しの冒険者見習いにしか見えないだろうからな。それがポンと言い値で料金出したんだから驚くよな。
しかし、これが俺の予算の限界ギリギリなんだよな、もしこれ以上来たら。
もっと冷静にならないと、まだ余裕があるように見せて、これ以上下手を打てばそっちの信用にかかわると思わせないと。
「も、申し訳ありません、私の計算が間違っていたようでして、特例料金は……」
「そちらは二度値段を提示して更にそれを覆すのか、商道徳と言う言葉はないのか」
「で、ですが」
冷や汗をかき始めた店員Bに別な店員が耳打ちする、いきなり顔色がよくなってきたよ、なんだよ、いやな予感しかしないんだけど。
「お客様、余り無理を言われてはこちらとしてもそれなりの対策を取る必要があるのですが」
うわ、ぞろぞろと強面のお兄さんたちが、用心棒を呼び込んだのか、まいったな、こいつらに良心があれば取引中止で済むかもしれないけど、下手をすれば無理やり他の奴隷を190枚分買わされるとか、最悪は迷惑料とか言って奪われるんじゃ、やりすぎちゃったか。
落ち着け、弱みを見せたらやられる、落ち着いて、なんてことない態度で解決法を。こえええええよ。
「ここは正規の店かと思ったんだが、ぼったくり店だったのか」
「お客様、こちらとしても事を荒立てたくはありません、別室に他の奴隷を用意していますので」
どうする、金属装備が多いから、戦うなら切り裂きの短剣よりゴブリンズソードか、『超再生』を当てにすれば何とか、いやアラを狙われたら危険すぎる。
アラに風の結界を張らせて、雷炎の指輪を使えば、室内なら殺傷能力も上がるだろうし、いやいや、奴隷たちを巻き込むのはまずいから最後の手段だな。
「ご安心ください、金貨190枚に十分見合う奴隷を用意させていただきますよ」
やっぱり全部取る気だよ、何この勝ち誇った表情、店員Bのくせに。
(ええい、煩わしい、目にもの見せてくれようぞ)
(何か手があるか)
(もちろんじゃ、よいか儂の言うとおりにするのじゃぞ)
アイテムボックスから言われたものを取り出しテーブルの上に放り投げる、大きめの金貨といった感じのそれはテーブル上を転がり店員の前で倒れる。
「追加料金でしょうか、な、こ、これは、『聖職のメダル』金色だと、まさか、本物の訳が」
メダルの裏には俺の横顔がそっくりに彫られ、表には俺の名前などが記されているライフェル本神殿発行の上級僧侶資格証、ちなみに僧侶の地位によってメダルの色や大きさが微妙に変わるらしい。
(くく、『聖職のメダル』の偽造など出来るわけがあるまいに)
うわ、こんな楽しそうなラクナの声初めて聴いたんですけど。
(そうなのか)
(神職の騙りを防止するために、複数の教派が協力して開発した魔道具じゃ、偽造や盗難の対策は万全じゃよ)
震える指で店員がメダルを拾った直後、そこに刻まれた絵や文字が消えて行き、何もない平らな表面になる、スゲーどんな仕掛けだよこれ。
「ほ、本物だ」
おお、なんか全員動揺してるよ、声にならないざわめきってこういうのを言うのか。
(よいか、お主は何も言う必要はない、ただ黙って微笑んでおるがよい、いや儂の言った言葉をそのまま繰り返すほうがよいか……)
「このメダルを示してなお疑われるとはな、このような侮辱をうけるとは」
「そ、それは」
おいおい、とんでもなく顔色悪いんだけど、ちょっとこれ倒れるんじゃない、誰か救急車呼んでやれよ、って無いかここには。
「ど、どうか平に、平にご容赦を、ひゃ、190枚で結構でございます」
ちょっと声が震えてるよ。
「特例料金の計算が違っていたのではなかったか」
「間違っていたということが、間違いでございました。いえ特例料など必要ありませんでした、最初に提示した125枚が適正な価格でございました」
(黙っておればまだまだ下がるであろうな)
値切るつもりかよ、せこいなラクナ。
(いったいどうなっているんだ)
なんかもうね、見ててさ店員Bが可哀そうになってきたんだけど、他の店員さんも失神しそうだし、用心棒さん達とか顔を隠しだしてるよ、メダル一個でなんでこんな事態になってるの。
(くく、お主はただの身分証程度に思っているようじゃが、上級僧侶とは本来なら規模の大きな神殿の長等と同格かそれ以上の立場に居るものじゃ、その地位は爵位もちの宮廷貴族と並ぶ、領主に抗議してこの店の営業資格を剥奪した上で関係者全員を処断する事も、僧兵団を動員して焼打ちにすることも出来る、と思っておるのであろう)
おいおい、とんでもねえ物じゃねえかこのメダル黄○様の印籠並みか、俺が拾うと再び表面に模様が浮かび上がる、それを見ていた複数の店員が更に息を飲む。
「私どもの不手際でご不快をお与えして申し訳ありません、金貨100枚でいかがでしょうか」
ちょっと、黙ってるだけで値段が下がってきたよ、てかこれ癖になったらまずいよな、こんなの毎回やってたらこっちが馬鹿になっちまう。
「は、80枚では」
権力って怖いな、よっぽどのことがない限りこのメダルは出さないようにしないとな、下手すりゃとんでもないことになるわ、下手なチート能力より酷くねーかこれ。
「な、70枚」
これ、原価割れしてるんじゃないのか、ちらりとラクナに意識を向けるも、まだ黙っていろとの事。
「60枚」
(まだじゃ、まだ頷いてはならぬぞ、あそこまでコケにされたのじゃ、徹底するのじゃ)
こびへつらった表情で半額以下を提示してくる店員に、思わず頷きそうになるけど、ラクナに叱られた。
「ゴジュウマイでは、愛玩用の衣装数着と、戦闘用装備一式をお付けいたします」
もう、発音が苦しそうなんだけど。
「よ、よんじゅうごまい」
なんか言葉と一緒に血が出てきてもおかしくないんじゃ。
「よんじゅうで、どうかお許しください」
ちょっと土下座し始めてるし、完全にこっちが悪役じゃないこれ。
(まだじゃ、まだ行けようぞ)
「さ、んじゅう、ご」
もうやめてあげて、店員Bのライフはゼロだよ。
(まあ、この位でよかろう、欲をかいて客を蔑にすればどうなるかよくわかったじゃろ)
ラクナこえーーー
ほんとは普通に二人を買って終わるはずが、
店員いじめが面白くてこれだけで終わっちゃいました。
H26年4月12日 句読点、一部語尾修正しました。
H26年11月4日 句読点、段落ミス修正しました。
R2年2月2日 ラクナのセリフを一部修正しました。




