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11 仲間探し

ひょっとすると、今回も題名と中身が噛み合ってないかな~

 酒場の丸テーブルに突っ伏したまま吐いた、今日何度目か分からない溜め息にアラが反応する。


「りゃー、またはーって」


 うーん、この煩い中で聞き取れるんだからやっぱり耳がいいんだな。


 回りの席からの笑い声を聞いてると更に落ち込んでくるな、クッソ真っ昼間から出来上がってんじゃねー


 他のテーブルの上には皿に山盛りの肉料理と大量の酒瓶、俺の目の前はサラダの皿とホットミルクのカップ、あとは少しの果物だけ。


 視覚や聴覚は豊富に刺激されてるのに、実際の味覚の方は……


 ああ、一口だけでも口にできたらなあ。


「はあー」


「また、はー、ってした、めーよ」


 アラの言葉に周囲の笑い声が更に大きくなる。


 この酒場で最近一番の肴は俺達だったりする、子供連れの若造、毎日サラダとミルクしか頼まない貧乏冒険者、それが俺の評価だった。


(この店でもっとも高い酒と肴を買い占めてみてはどうじゃ、周りの目も変わろうて)


(それでどうする、アラも俺も食えないってのに捨てるのか)


 ラクナの声に心の中で返答するが、これが出来るまでは面倒だったよな~


 アラは呼ばれたと思っていちいち反応するし、他の人間からは一人で呟いてるように見えて引かれるし。


(お主の懐を目当てに、誰か寄って来るやも知れんぞ)


 ちょっと惹かれる提案だけど、この金はたまたま入ったものだしなー、ここぞって時にとっておきたいんだよな。


(いっそのこと傭兵でも雇ってはどうじゃ)


(それで魔法を教えてくれるか)


(難しいじゃろうな、そもそも魔法はそれぞれの流派や家門、修練所等で教わり、他者に漏らすのを嫌う傾向がある。よほど心を許すか、何か事情が無ければのう、ただの雇主と言うだけでは)


 やっぱり冒険者の仲間になって、友好度上げるくらいしか思いつかないよな。


(念のために言っておるが、お主がどこかの流派などに属するのは違反じゃぞ)


 またため息がこぼれると同時にアラがむっとする。


「はー、めーよ」


 うなだれる俺の肩をぺたぺた叩く姿に、周りの笑い声がまた大きくなる。


 別に笑いものになるのは良いんだけどな。


(お主の仲間になりたがるものがおらぬのは、この周りの評価のせいかもしれんの、神官長殿の迷惑料のおかげで、条件自体はかなり良いのじゃがな)


 そうなんだよな、二頭立ての幌馬車とかはファンタジーでよく有るけど、神殿発行の『上級僧侶資格証』に『通商許可書』、この二つがなあ、治外法権扱いで大抵の罪は許されるらしいし、各種税も免除、立ち入り禁止地区や貴族街にも入れるし、商売もし放題、普通の冒険者ならどれだけ望んでも絶対に手に入らないようなものらしいけど。

 

(これひけらかすと、俺が『勇者』だとばれないか)


(あり得なくはないのう、とはいえ『勇者』をこれほど厚遇したことは過去にないゆえ心配のし過ぎかと思うが)


 そんなものか、よっぽどの事態だったんだな俺の無力さってのは。しかし、それだけに仲間を何とかしないとダメなんだろーな。

 

 ここ数日で、どれだけの冒険者に声をかけたかわからないけど、色よい返事はゼロ。


 まあな、見た目は戦士なくせに、職業は魔法士(ちなみにラクナの能力で『鑑定』スキルとか使われても『勇者』のジョブは見えないらしい)なんて怪しすぎだよな。しかも魔法が使えなくてレベルも低いって、俺でも声かけられたら断るよな。


(そろそろ、時間じゃぞ、今日も採集にいくのであろう)


 お、もうそんな時間か、アラは食べ終わってるな。それじゃあ行くか。


 俺が立ち上がると同時にアラも椅子から飛び降り、とてとてと後についてくる、平地なら大人の足に普通について来れるってことは、やっぱりダークエルフはステータスが高いんだろうな。


 アラを保護してから、新しい村や町に立ち寄るたびに孤児院や修道院などに相談していたが、ダークエルフというだけで保護は断られた。たっくこんなに可愛いのに何が気に入らないんだよ。




 村を出て徒歩で三十分、俺たちは目的地の『薬師の森』につく。


(しっかし面白いよな、これも『迷宮』だってんだから)


(『迷宮』とは霊力によって異界と化した魔物の巣の事じゃからな、その形は問わぬ)


(異界か、面積がおかしいのはそのせいなのか)


 何せ、外から森の外周回ったら、三、四時間で回りきれたのに、中に入って同じことしたら三日かかるらしいから。


(もちろんじゃ、『迷宮』の広さは外からうかがうことはできぬ)


 そんなもんですか、まあいいや取りあえずは宿代と飯代を稼がないとね。鎧の上からフードつきの上着を羽織り、フードをかぶるとその場にしゃがむ。


「んしょ、んしょ」

 

 それだけで、アラはリュックに掴まりながら這い上がり、俺の背中にしがみつく。よし、それじゃあ行きますか。


 森の中に入ってしばらく行けば、ここらへんに、お、有った有った。


(ソウラム草、『貧民の万能薬』か、お主もそれが好きよの)


「外縁部で楽に手に入るんだからいいだろう、俺たちだけで奥に入るのは危険だしな」


 囲まれて袋叩きにあったら俺は何ともないけど、アラはね、かといって一人で街に置いてきたら何されるかわからないし。


 よし、周りに敵はいないな、採集、採集。


『薬師の森』はその名が示すように様々な薬草が取れるが、俺が今とっているソウラム草は風邪や擦り傷、解毒、鎮痛、鎮静と多用途に使えるが効果が弱すぎるために、かなり安い。


 小遣い稼ぎの冒険者すらめったに見向きもしない、まあそのおかげで俺の独占状態、稼がせていただいてます。たまにほかの薬草が紛れてたりするしね。


(フム、獣が寄ってきたようじゃな)


 ああ、さっきから視界の隅でちらちら浮かんでた文字はやっぱりそうなんですね。


「グルル」


ホワイトウルフ LV(5~7)×7

戦闘スキル 噛切り


 よし、毛皮ゲットだ。モンスターを見て倒し方より採集の事が浮かぶってのもなんか異世界物のお約束かな。


 唸り声を上げながら飛びかかってくる一頭をかわすと同時に『切り裂きの短剣』(仕立て直せました)を抜き首を切る。


 やっぱり獣系の魔物が多いこの森での相性は最高だね、でも金属系の装備をした敵には気を付けないと、これ以上折ったらもうね。


「えっと、かじぇのけもの、んと、しょのきばをもて、えーと、わがてきゅ、ありぇ、えーとえーと」


 背後でアラが考え込んでいるが、その間も俺は一頭づつ丁寧にオオカミを倒していく、多少動いてもアラはしっかりとしがみ付いて落ちない事はここ数日で確認済み、コアラみたいでかわいいな。


「あ、しょうだ、わがてきゅをかみしゃけ、ひゅううが」


 アラの放った『風牙』は、離れたところにいた二頭を取り囲みその全身に次々と穴を開けていく。うーんありがたいんだけどやっぱり納得がいかないな。


(これで、お主に教えることができれば文句なしじゃったのにのう)


 そうなんだよな、ためしに一度聞いてみたけど、アラ自身も魔法の使い方をよくわかってないみたいだしな。


「暑っつ」


 さすがにフードしてると熱がこもるよな、と言っても万が一アラが首筋を舐めたりしようものなら一発アウトだし、おっとまだ一頭残ってたんだ。


(ふむ、お主気付いておるかの)


(なにがだ)


(ここ最近戦い方が丁寧になっておる、以前は『超再生』を当てにし過ぎていたが、今の戦いでは一撃も貰わずに終わらせておった)


 まあそりゃな、アラを背負ってるのに食らっちゃったら、なあ。


(どうじゃレベルも上がったことでもあるし、もう少し奥に行ってみては)


 確かにレベルはな、俺も勇者LV2、魔法士LV6になったしアラなんてもうLV7だ、うーん子供は伸びるのが速いのかな。


 でもな、奥に行くと出てくる『暴れ大熊』とか、『一つ目猪』は毛深いし肉厚だから短剣だと急所に届きにくいんだよな、無理して近づきすぎると一撃もらっちゃうし、『ゴブリンズソード』だと俺の力じゃな。『闘気術』を使っても分厚い肉を切るのは大変で、倒すのにかなり時間がかかるし。


 奴ら攻撃力があるから万が一アラに当たったらと思うとな、死ぬことはないだろうけど女の子にけがさせるのはね、やっぱり、うーん。


(俺たちだけではやめておこう、仲間が出来てからでも遅くないだろう)


(やれやれ過保護なことじゃの)


 あ、ばればれですか。




 そのあと数回の戦闘と収穫を終えて、街に帰ると薬屋へと向かう。


(お主は毎回違う店へと行くのう、何か理由があるのかの)


(ソウラム草は、俺の独占状態だからな、店同士で買値をつり上げさせてるんだ)


 他の冒険者が見向きもしない安物と言っても需要がないわけじゃない、逆に安いために他の薬では買えないような顧客層を大量に確保できる。


 原価が極端に安いために多少値上げしても他の薬の半値以下、利益率が高く他の商品と競合せずに大量販売できる。これで仕入れ先が一つしかないとなれば、後の流れは誰でも予想ができるよな。俺は『アイテムボックス』のおかげで大量に取ってこれるしね。


「東通りの店は銀貨32枚出すって言っていたが」


「解りました、それでは34枚でどうですか」


「南口の方の店に行ってみるか」


「ちょっと待ってください、37枚37枚でどうですか」


 ふむ、ホワイトウルフの毛皮も結構とれたし、一日の稼ぎとしては良いほうかな。


「いいだろう、その額で手を打とう」




「パンとサラダ二人前、ホットミルクと豆のスープ、あと巡礼向けのチーズとりんごか」


 俺の注文に、周囲から笑い声が上がるが無視無視。


「ソウラム草なんて安物しか取れないんじゃ、肉も食えないのかね、しかもチーズは『巡礼向け』の安物ってか、実力が無いってのは悲しいねえ、まともな物も食べれないなんてな」


 新入りをからかって、自分が優位にいるって感じたい気持ちは分かるけどさ、人の食事の注文にまでいちいち反応するって。


「は、坊主なんかしか食わない、辛気臭い食い物をよく頼めるな」


「今のうちに葬式の準備でもしてるんじゃねえのか。御坊様、私は肉も酒も口にしないで信心深く過ごして来ました。だから魔物に殺されて、祈りを上げてくれる時はお布施をまけてください」 


 妙な口真似をした一人が言い終わると同時に、また周りから笑い声が上がる。


(ラクナ、俺の頼んだチーズはそんなに変なものなのか)


 チーズを食べる時は『巡礼用』を食べるように言われたからそうしてるんだけど、毎回こんな反応をされるんじゃたまらないよね。


(以前に神官長殿が説明した通り、通常のチーズは作る過程で家畜を潰す故にお主は食せぬ)


 それで家畜を殺して得た食品になっちゃうから、普通のチーズは頼むなって言われたんだよね。


(同じように、僧職にある者や、信仰心から各地の神殿などを巡る巡礼者、喪中の者なども、お主と同じように飲酒や生臭を避けるようにするのじゃ)


 そう言えば、護衛してくれてた僧兵の連中は肉類を食べてなかったよね。


(旅の僧や巡礼者などは一定数居るし、喪中の者も珍しくはない、また葬式などで使う場合もある故、こういった大きめの食堂などでは大抵は置いておるのじゃが)


 まあ、一定の需要が有るなら、商品として用意するのは普通だよね。


(これらは通常のチーズと違い、家畜を潰す必要が無いからの、通常の物よりも値が安いのじゃ。さらに『巡礼者』は資金を取り崩しながら旅を続ける故に、みすぼらしく見える事が多い。そのため『巡礼向け』というのは、安物の粗悪品と言う意識が有るのじゃ)


 ふーん、意外と美味しいんだけどなこのチーズ。


(また、こういった物は喪中や葬儀でも用いられる故に『死』を連想させ、冒険者などはゲンを担いで避ける者が多いのじゃ)


 なるほどね、そんなのをあえて頼むって事は、縁起が悪いのを気にする余裕すら無い位に金に困ってるように見えるって訳か。


「金が無いってのは辛いね、俺はクラモウの花を二つ見つけて今日だけで銀貨28枚になったけどな」


 ほー、ちなみに俺は、ソウラム草三樽分で37枚、ホワイトウルフ32頭で銀貨64枚、合わせて金貨一枚分ていうのは、この中でも稼いでる方なんだよね。


 貴重な薬草は高く売れるけど、見つかりにくいし、奥まで行かないと見つからないから、その分だけ……


「まあ、一つ目猪三頭に追い掛け回されて大変だったけどな」

 

 ほらな、奥に行けば行くほど強い魔物がエンカウントして命がけになるし採集も進まない、逃げるだけでも経験値は貯まるらしいけど倒したときに比べるとね、中には倒せる奴もいるだろうけどねえ。


「情けねえな、俺らは暴れ大熊狩って金貨一枚半稼いできたってのに」


 奥にいたパーティーの言葉に歓声が上がるが四人で金貨一枚半か、しかも、朝と比べて鎧は傷だらけで所々壊れてるし剣も折れたらしい、新しい傷跡を見るに回復薬も使ったんだろう、修理や買い直しを考えれば純利益はいくらになったことやら。


 実際のところ『薬師の森』は無理して大物狙うより、自分のレベルに合った小物を大量に採った方が儲けも経験値もいいんだよなー


 しかし、こんなことに誰も気づいてないってのもすごいけど。まあ誰かが気付いたらソウラム草の独占で買い取り価格引き上げなんて出来なくなるんだけどね。


(我らも稼いではおるがのう、日銭を蓄えることが目的ではないとわかっておろうな)


(と言っても、仲間が出来ないんじゃな、俺とアラだけでボスを相手にできないだろ)


(それもそうじゃが)


 かといってここに居る脳筋連中を無理に仲間にしても、対立しそうだしな。


(なんか方法はないか、魔法士を問答無用で仲間に出来て魔法も教えてもらえるような)


 そんな都合のいい話はないよな普通は、なんかないかなー


「おい、『地虫窟』で三百近い『大規模討伐パーティー』が全滅したらしいぞ」

 

 なんだそりゃ、って、急に静かになったな。


「悪いな俺らはもう休むな」


「うちもそうするか」


(ラクナ、どうなってるんだ急に、いつもならまだ騒いでる時間なのにどんどん部屋に戻っていくぞ)


(明日の朝一番で『地虫窟』近郊の町まで行くのじゃろう)


 さっきの話と関係あるのかな。


(何のためにだ、何百人も死人が出た『迷宮』なんて物騒だろ)


(大量に死者が出たからじゃ、お主もやったじゃろう、『迷宮』で死した者の持ち物の所有権は拾った者にあるからの、今なら拾い放題じゃろう。『大規模討伐』に参加するような冒険者なら装備もよいじゃろうしな)


 なるほどね、でもまあ、それだけ魔物も強いって事だろうに、暴れ大熊に苦労するような連中で大丈夫なのかな。


(『迷宮』に入らずとも、近くの店に掘り出し物が出るじゃろうしな、それだけの規模なら主催は近郊の貴族じゃろうし、む、まてよ)


 なんだ、なんか考え込んでるけど。


(儂らも明日一番で向かうとしよう、馬車があれば早くつけるしの)


 そうか、周辺から冒険者が集まるから勧誘もしやすいよな、でもそんな急ぐ必要あるのか。


(上手くすれば、戦闘奴隷が買えるかもしれぬぞ)


 それを早く言えそれを。


お待たせしました(誰も待ってないとかは言わないでくださいね)次回こそ、ハーレムメンバーが登場する予定です。

明後日更新できるように頑張ります。


H27年2月22日 『巡礼者向け』チーズに関する記述を追加しました。


H26年4月11日 語尾、句読点誤字、および一部モノローグを修正しました。

H26年10月29日 誤字修正しました。

H27年2月26日誤字修正。


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