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100 突入直前

「貴殿が、冒険者のリョー殿か」


『鬼族の街』に向かって進軍する、『大規模討伐』のパーティーの中でいきなり声かけられたけど、誰だろ。


 振り向いたら誰もいなかった、じゃなくて視界に入って無かっただけか。


 180近い俺と比べると、30センチ以上低い位置に頭が有ったせいで、視界に入ってなかった。


(この容姿はまさか……)


 見下した俺の視界に入るのは、黒い頭髪と見上げてくる黒い目、魔法職としか思えない服装で背中には黒い羽根。


 あ、これは俺も想像付いちゃった。


エル・シルマ 

魔道師 LV8


 おお、魔道師が来たよ、確か魔法職でもかなりの高位職だよな、幾つか派生職が有るらしいけど、ストレートで行けば魔導師まであと一回の転職で行けるんだよね。そうなればもう引く手あまたって話だし。


(考える事はそこでは無かろうが)


(解ってるって、こいつはハルの親戚って事だろう)


 うーん、これは面倒な予感しかしないな。


「人違いだろう」


 うん、とりあえず誤魔化そう。


「いや間違いない、今のレイドの街で『百足殺しのリョー』を知らぬ者はいないし、『薬師の森』でも確認した」


 やっぱりやだなーそのあだ名、まるで日本酒みたいだし。ああ日本酒か、飲みたいなー、おでんと一緒に熱燗をこうキュッと、最近は冷えてきたからちょうどいいだろうな。


 いやいやそうじゃないよな、こいつ今『薬師の森』って言ったよな。ひょっとしてサミュー達の事を知っているのか。


 どうする、こいつの狙いはハルだろうが、まさか遠まわしに脅しているのか、ハルをよこさないとサミュー達に何かするとか。


 いや、そんな訳ないか、テトビの話だと、シルマ家は金も力も立て直しの途中だから、そんな余力は無いか。テトビの情報じゃユニコーンで稼いだ金で戦力を集めて、今回の討伐につぎ込んだって事だしね。


「それにうちのガルとは会った事が有るのだろう」


 うわ、ガル・シルマもいるよ、ああ睨んでるし、やだなー


「それで、俺に何の用だ、俺が奴隷を売る気がないのは、そっちのガルから聞いているだろう」


「ガルとの間に行き違いが有ったのは、こちらの落ち度だ謝罪しよう。だが、その上で話を聞いてもらいたい」


「そっちの事情は想像がつくが、こちらも生活が懸かっているんでな、やっとの思いで成長させた戦力、それも貴重な魔法職を手放すつもりはない」


 これから先、どんな迷宮に行くことになるか解らないんだから、ほとんど全部の属性を使えるハルは手放せないし。回復手段もミーシアしかいないんだからね。


「貴様、黙って聞いていれば、立場をわきまえぬか冒険者風情が」


「よせガル」


 暴発しかけたガル・シルマを、ここで止めたって事は、まだましな性格してるって事なのかな。


「仕方ない今は諦めよう、だがハル達を手放す際は、どうか我がシルマ家に御一報願いたい」


「考えておこう」


 とりあえず考えるだけならタダだしね、言質は取らせませんよ、日本人ですから。


 さて、もうすぐ着くか。






「街の西側から突入し、まずは四か所の『拠点』を確保する、それぞれの『拠点』に領軍の分遣隊を置いて、拠点防衛及び補給支援に充てる。それぞれの主力は、第一拠点は我らクレ騎士団が務める。第二拠点はライフェル神殿へお願いする。第三拠点はリューン王国の皆様方。第四拠点はラマイ子爵家とシルマ家に務めていただく」


 リューン王国とマイラス達は別行動か、どうせなら同じ『拠点』でミムズの好感度を上げてくれればよかったものを。


「冒険者諸君には、これらの『拠点』の周囲や中間にて自由に行動し、魔物を狩り立ててもらいたい。また幾つかの大型パーティーには、拠点周囲の警戒を頼みたい」


 さてと俺はどう行動するべきかな、とりあえず第四拠点には近付きたくないよな。ん、誰か近付いてきたな、ミムズかこんな時に何の用だろ。


「リョー殿、もしよければ『迷宮』内で共に行動してはいただけないか。その、自分もプテックも、リョー殿に教わりたい事がまだまだあるゆえ」

 

 何でいきなりミムズが誘ってくるんだよ。俺が近くに居ちゃマイラスとくっつけ難いじゃねえか、いやそれ以上に、こいつと一緒だとトラブルの匂いしかしないんだが。


「ああ、『迷宮』で『魔道具』を見つけたら売ってやるから、それで我慢してくれ」


 パルスの依頼も有るからそれくらいはしないとね。うん大丈夫、ディフィーさんがいれば、いくらこいつでも危険は無いはずだし。


「それは、確かにありがたいが、できればリョー殿の戦い方も参考にしたいのだが」


「解った、解った、まあ第三拠点に寄った時は考えておこう、だがこっちも金のために狩をしてるんだ、いい狩場が有ればそっちを優先するからな」


「それは当然だな。自分達は殿下から自由行動の許可を頂いているゆえ、より強い敵の居る場所を中心に回る予定なので、『迷宮』内であった時はよろしく頼む」


 ああ、やっと離れて行ったよ、さてとどうするかな。ん、また誰か来たよ。


「ああ、旦那ここに居やしたか、あっしは第一拠点でのんびり雑魚を狩ってやすんで、変異種を捕まえたときはぜひあっしに伝えて下せえ。なんでしたら狼煙でも構いやせんし、発見の情報だけでも買いやすんで。もちろん他から入ってきた情報もお売りしやすぜ」


 ミムズの次はテトビかよ、まあこいつも金がかかってるからしっかり念を押したいんだろうな。


「解ってる、解ってる、見つけて捕えたときは連絡するから」


「頼みましたぜ旦那、旦那だけが頼りなんですから」


 こいつ絶対他の連中にも同じこと言ってるよな。


「おお、ゆう……いや『百足殺し』殿、こちらに居られたか」


 なんだこのマッチョなスキンヘッドは、どっかで見た事が有るような、そういえばコイツ今なんて言いかけた。もしかしなくても『勇者』って……


(まさか忘れた訳ではあるまいの、ライフェル教僧兵のラッドであろう)


 おお、居たねそう言えばそんな人、こっちの世界に来たばかりの俺を『武具の社』まで護衛してくれた人だ。


「リョーで良い、それでどうしたんだ」


「うむ、リョー殿は今回の『大規模討伐』について、神殿より調査依頼を受けていると報告を受けているのですが」


(おい、こんなとこで言ってもいいのか)


 下手すると俺が『勇者』だって周りにばれちゃうんじゃないのかな。


(まあ僧兵や聖騎士が、土地勘のある冒険者を現地で雇う事は珍しくないうえ。期間契約をしておる、神殿子飼いの冒険者などもおるでの、他者に聞かれてもお主がそういった物だと思われるだけじゃろうの)


 そっか、それなら大丈夫かな。


「ああ、確かに神殿から調査の依頼を受けている」


「その件なのですが、本日は拠点確保の為に戦うしかないが、明日以降は調査の協力の為、我ら十名が必要に応じ同行することになりますがよろしいか」


 ああ、そっか『勇者の武具』の隠し場所の詳しい位置は、彼らしか知らないからそこまで案内してもらわないとダメなんだよね。


「解った、よろしく頼む」


「出来る事ならリョー殿には、我らの管轄である第二拠点を中心に動いてもらいたいのですが」


 うーん、それもな、テトビの依頼も有るし、他にも狩をしたいから一つの『拠点』にこだわるのはね。それに、周りから結構注目されてるのに、必要以上に神殿側とべったりして、下手に疑われるのも怖いかも。


「悪いが、依頼に関係ない部分は自由に行動させてもらいたいんだが、他にもやる事が有るからな」


「そうですか、こちらとしては、依頼が達成されれば構わないので強制はしません。いつ実施するかは、リョー殿の都合のいい日で構わないので、その時に第二拠点を訪ねて頂ければ。それでは我々はこれで」


 うーん、どうするかな、まあ隠し宝物庫の件が終わるまでは、僧兵団と一緒の方が良いのかな。でもな、やっぱり心配だしマイラスとかリューンの連中に疑われたら面倒そうだしな、どうしよう。


「むこど、いいやリョー殿、ここにおわしたか」


 今度はなんだ、てか今なんて呼ぼうとしたんだ、こいつらは。あれラッテルの連中か、どうしたんだろ。


「キッシュ、さま。お久しぶりです」


「う、うむ、久しいな」


 うわーよそよそしいな、まあ少し前までお姫様と家臣だったのが、今は冒険者の奴隷と名門の騎士の関係になったからな。なかなか態度を切り替えられないよね。


「それで、何の用だ」


「そうであった、リョー殿には、並々ならぬ恩が有る為、この『大規模討伐』では、我ら一同リョー殿の手助けとなり、少しでも役に立つべく……」


「いらん、邪魔だ」


 こいつらに付きまとわれちゃ、『勇者』関係の秘密が漏れかねないからね。それに亜種のオーガを捕まえるのにも、装備の貧弱なこいつ等じゃ巻き添えで全滅しかねないし。それに……


「だ、だが……」


「お前らが優先するのは、ラッテル領の名誉挽回だろうが、それだったら単独行動する俺達に引っ付いてないで、もっと集団の中で活躍した方が良いだろうが」


 人目のあるところで目立った方が良いだろうし、大人数と一緒の方が安全だろうからね。あんまりこいつらが死ぬとトーウが心配しそうだし。


「そ、それはそうだが、我らは」


(はっきりとは言わんが、トーウの事が心配なんじゃろうの)


 ああ、そっかそうだよね。


「奴隷は大切な財産だ、『迷宮』に入る以上、多少の危険はあるだろうが、価値を落とすような事はしない」


 こういえば安心してくれるかな。


(なぜお主は、素直に俺が守るから心配するなといえんのかのう)


(そんな臭いセリフ、誰が言うってんだ)


 少なくとも俺はしらふでは言えないよ。


(かつての『勇者』たちは平然と言っておったがのう)


 おう、それはホントに『勇者』だな。まあチート能力のおかげで自信が付いて、気分が大きくなってるんだろうな。だからそんなマンガみたいな臭いセリフが簡単に言えるんだろうね。


「そ、そうか、我らは第一拠点に詰める予定なので、何か我らで力になれる事が有れば声をかけてもらいたい」


「解った、必要が有れば頼る」


「では、我らはこれで」


 やっと離れて行ったか。


 他にはもう俺等と関係ありそうな相手はいないよね。


「旦那様、先頭の集団が『迷宮』内に入りだしました」


「リャーどうするのー」


「ああ、俺達も行こう、とりあえずは今日のノルマ分は狩らないとな」


 でもどうするかな。第四は問題外としても、今日はどこに泊まろうかな。


ほんとにどうしましょう。


H27年9月18日 誤字修正しました。

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