わがまま、始動!
中学校の2学期が本格的に始まったころ、中学3年の村上浩介(むらかみこうすけ)は、金曜日の夜、ケータイをいじっていた。
『明日、ヒマ?』
送信先は後藤百合(ごとうゆり)浩介が想いを寄せる女性だ。百合は引っ込み思案であまり話さない。にもかかわらず、行動だけは大胆だった。夏休みに部活に顔を出せば部活が終わったころに現れ、話かけずに帰る。そんな百合に浩介は最初、「なんだあの女」程度にしか意識しなかった。だが、もともと強引でわがままな性格の浩介は、引っ込み思案の百合に、惹かれていった。メールアドレスを交換したのは、同じ部活で友達の、栗山雅紀(くりやままさき)と斎藤俊(さいとうしゅん)と一緒に祭りに出かけたときだ。百合もその祭りに来ており、そのときに、雅紀と俊が好きな松本織(まつもといおり)、工藤未来(くどうみく)も来ていたのだ。雅紀と俊はアドレスを交換しなかったのだが、浩介は思い切ってアドレスを聞いたのだ。それも、1ヶ月ほど前。
『うん、ヒマだよ』
メールでの百合は以外と大胆だ。言葉にするのは苦手でも、文章だと楽なのだろう。
『明日、映画観にいかない?』
『いいけどぉ、2人で?』
『俺は雅紀と俊を誘うからさ、誰か誘えよ』
誰かと銘打ってはいるが、浩介は100%織と未来が来ると予想していた。百合にとって、2人は安心できる居場所なのだ。
『分かったよ。織と未来誘っておくね』
「オッケー」
浩介はつい口で言ってしまった。本心では、普段でもこうして百合と話していたかった。
『明日ヒマ?カラオケ行こうぜ』
百合との約束をすませると、浩介は俊にメールを打ち始めた。映画ではなく、カラオケといえば、ノリのいい俊は必ず食いつくと考えたのだ。俊は自分がわがままなのはしっているのだから、と浩介は決め付けていた。
『オッケー♪さぁ~てと、十八番の準備でもしておきますか♪』
この文面で、俊がカラオケを楽しみにしていると分かった浩介は、映画の後にカラオケに行こうと決めた。浩介の計画は隙がないので、雅紀と俊はいつも引っ張られている。
『じゃぁ、明日の8時30分にカードショップな。雅紀も誘っておくから』
浩介はすばやくメールを打つと『送信』を押した。
「雅紀は、どうせヒマだから明日でいいか・・・」
浩介はそういうと、ケータイを閉じ、ベットに潜りこんだ。
翌日、浩介はカードショップに自転車を走らせた。朝おきてすぐに、雅紀にメールを送った。
『やっほぉ~♪今日はヒマかな?あのさぁ、コンパあるんだけどくる?3対3で!来るなら早めにメール返信頂戴ね』
メールを送ってすぐに返信がきた。雅紀は織がすきなのだが、告白に失敗、気を間際ら世帯のだろう。
『オーケー』
『じゃさ、いつもの店で集合ね。』
『どこでやんの?』
『カラオケ。支度できたらすぐ集合ね』
『ん』
そこでメールは終了した。一言の文面なので、返信はしない。
「おお~い」
浩介がカードショップにつくと、雅紀の姿があった。
「よっ」
「おっす」
浩介の挨拶に続いて雅紀もあいさつを返した。
「なぁ、ほかのメンバーって誰よ?」
雅紀がもっともらしい疑問をだした。
「ん?あぁ・・・。俊、そろそろくんじゃね?」
浩介は近くにあった自動販売機でコーラを買いながらいった
「ちーっす」
浩介の来た方角から、俊も到着した。俊はスポーツバックを持っていた。いつものバックだ。その点、雅紀と浩介は身軽だ。軽めのショルダーバックを持っている。浩介のバックには、P○Pと財布、ケータイしか入っていなかった。ふくらみからして、雅紀も同じようだ。浩介も雅紀のバックを見ていたのだが、なぜか目線があった。
「さぁ~てと、行動開始といきますか」
3人が揃ったのを見計らってか、浩介が言い放った。
「女子の皆さんはもう会場についてるってよ」
ニヤリ。今はその効果音が一番似合うだろうと思わせる顔を浩介はした。
「?」
「?」
雅紀と俊には意味が理解できなかった。
「今日って、カラオケっしょ?」
俊が浩介に聞く。
「違う!今日は、映画の後にカラオケ!」
声を張り上げて浩介は叫ぶ。
「はぁ!?」
雅紀は意味がわからないといった風に言った。だが、浩介の意見だからか、文句はいわなかった。
15分後、自転車で隣町の映画館につくと、私服の女子3人組がいた。
「お~い」
浩介が声を大きくして呼ぶ。3人が振り向いた。そこには、あの3人がいた。
「!?浩介、何考えてんだよ!メンバー、聞いてねぇぞ」
雅紀は緊張のあまり、声が裏返ったが、今はそんなことは気にしていられない、といわんばかりに言った。
「そうだよ、意味分かんね」
俊も緊張気味で言った。
「だって、今日は告白コンパだぜ?」
浩介の言葉を聞いて、2人は「えっ?」といった顔をした。
(俺だって、告白してやんだ!)
浩介は心に決めた。いざ、戦場に。




