第8章:最初の襲撃
ガイウスの黒い執着は、すぐに行動となって現れた。
ある夜、閉店後の『物語の揺りかご』に、不穏な気配が忍び寄る。俺はカウンターの整理をしながら、セレスティアとリリアナの三人で談笑していた。その時、ふと店の入り口に飾ってある古いランタンが、チカチカと不規則に点滅を始めたのだ。
「ん?」
「どうしたの、アルト?」
セレスティアが不思議そうに尋ねる。
「いや、あのランタンが……。何かを伝えようとしているみたいだ」
あのランタンは、かつて港町の灯台守の家で、何十年も家族の帰りを待ち続けた品だった。俺がその『家を守り続けた精霊の物語』を読み解いたことで、悪意ある侵入者を知らせる守護の結界へと生まれ変わっていたのだ。
俺は真剣な顔で告げた。
「誰かが、この店に侵入しようとしている。それも、強い殺意を持って」
その言葉に、セレスティアの表情が険しくなる。リリアナは不安げに俺の袖を掴んだ。
「迎撃するわ。リリアナは奥へ」
セレスティアが杖を構えた瞬間、店の窓ガラスが音を立てて砕け散り、黒装束の男たちが数人、店内に転がり込んできた。暗殺者だ。
「伝説の鑑定士はどいつだ!大人しく俺たちと来てもらおうか!」
リーダー格の男が、下卑た笑みを浮かべて短剣を構える。狙いは俺だと一目で分かった。
だが、彼らは完全に相手を間違えていた。
「私の友人に、無礼な真似はさせないわ!――【アイシクル・ランス】!」
セレスティアが詠唱すると、絶対零度の氷の槍が無数に出現し、暗殺者たちに襲いかかる。元Sランクパーティーの天才魔導士の魔法は、チンピラ同然の暗殺者では防ぎようもない。
「ぐわぁっ!?」
「な、なんだこいつは!話が違うぞ!」
さらに、店の外からも怒号が聞こえてきた。
「何事だ!」「アルトさんの店に押し入るとは、いい度胸だ!」
騒ぎを聞きつけた街の衛兵たち――その中には「勇気の短剣」で街を救った彼の姿もあった――そして、呪いを解いてもらった元騎士団長が、武器を手に駆けつけてくれたのだ。
「アルト殿、ご無事か!」
元騎士団長は、かつての勇姿そのままに、逃げようとした暗殺者の一人をいとも簡単に取り押さえる。
「お前たち、誰の差し金だ!」
暗殺者たちは、完全に包囲され、あっという間に制圧された。彼らはガイウスに雇われたチンピラだった。アルトの力を奪うため、手始めに送り込まれてきた斥候だったのだ。
この一件で、街の住民と俺たちの絆は、より一層深まった。俺はもう一人じゃない。この街には、俺を、そして俺たちを守ろうとしてくれる仲間がいる。
襲撃の恐怖よりも、その事実が胸を温かくした。しかし同時に、ガイウスの執念深さを思い知り、これから起こるであろう本格的な対決を予感せずにはいられなかった。




