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Sランクパーティー役立たずと追放された僕。でも俺のスキルは、ガラクタを伝説級に変える最強鑑定士でした  作者: 黒崎隼人


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第12章:英雄じゃない、ただの骨董品屋さ

 俺の叫びに、ガイウスの動きがぴたりと止まった。

「な……にを、言っている……?」

「その剣は聖剣なんかじゃない!持ち主を増長させ、破滅させるだけの呪われた魔剣だ!お前はそれに操られていただけなんだ!」

 俺は残された魔力のすべてを、いや、生命力さえも振り絞り、魔剣の物語に干渉する。上書きするのだ。この邪悪な物語を、たった一つの、ささやかな物語へと。

(書き換われ……!『持ち主に、真実の姿を映し出す鏡』の物語に!)

 俺の強い願いに応えるように、魔剣が甲高い悲鳴を上げた。そして、それまで放っていた神々しい輝きが、まるでメッキが剥がれるように消え失せていく。ただの鈍い鉄の剣へと変わっていく。

 ガイウスを増長させていた力が、霧散したのだ。

 途端に、ガイウスの瞳から傲慢な光が消えた。彼の目に映るのは、自分の行いによって傷つき、恐怖に怯える人々、そして何より、自分の過ちに気づいてしまった絶望だった。

「あ……あぁ……。お、俺は……なんてことを……」

 彼は手にした剣を取り落とし、その場にへなへなと崩れ落ちた。戦意は、もはや欠片も残っていなかった。

 リーダーの崩壊を目の当たりにした勇者パーティーのメンバーも、次々と武器を捨てて投降した。こうして、決戦は呆気ない形で幕を閉じた。

 事件の後、王都から調査団が派遣され、ガイウスの悪行と、【勇者の剣】の真実が白日の下に晒された。彼は勇者の称号を剥奪され、パーティーも解散。一つの伝説が、静かに終わりを告げた。

 そして、もう一つの奇跡が起きた。

 リリアナを縛っていた「沈黙の呪い」。その呪いは、「歌姫が再び愛されることで完成する物語」を必要としていた。

 事件が解決し、安堵に包まれた店の中。リリアナは俺の前に立ち、その青い瞳に涙を溜めながら、必死に何かを伝えようとしていた。

(ありがとう、アルト。あなたを、愛してる)

 彼女がそう「心で歌った」瞬間だった。

 彼女の喉元から、柔らかな光が溢れ出す。呪いをかけていたペンダントに亀裂が入り、砕け散った。

「……ア……ル……ト」

 か細く、しかし確かに、彼女自身の声で、俺の名前を呼んだ。

 呪いは、完全に解けたのだ。俺はリリアナを強く抱きしめた。彼女の温もりと、取り戻された声の響きに、心からの喜びを感じていた。


 後日、王様から直々に、俺を宮廷鑑定士として迎えたいという使者がやって来た。破格の待遇と名誉。かつての俺なら、飛びついていただろう。

 だが、俺は丁重にその誘いを断った。

「光栄なお話ですが、僕にはこの街で、まだ耳を傾けるべき小さな物語がたくさんあるので」

 俺の居場所は、もうここにある。英雄になるつもりなんてない。俺は、ただの骨董品屋だ。

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