第11章:決戦、勇者の剣の『物語』
決戦の火蓋は、セレスティアの魔法によって切られた。
「【ブリザード・ストーム】!」
彼女が放った極大の吹雪が、勇者パーティーの視界を奪う。その隙に、元騎士団長を先頭にした街の防衛隊が、パーティーの取り巻きへと突撃した。
「うおおお!アルトさんの街は俺たちが守る!」
「こ、こいつら、ただの街人じゃないのか!?」
俺が物語を解放した武具を装備した彼らは、以前とは比べ物にならない力を発揮していた。数の上では不利だが、地の利と、何より街を守るという強い意志が彼らを支えている。
「セレスティア!後は頼んだ!」
「ええ、任せて!アルトは、あなたのすべきことを!」
セレスティアたちが勇者パーティーの他のメンバーを引きつけている間に、俺はまっすぐにガイウスへと向かっていった。
「ようやく一対一か、アルト。戦闘能力皆無のお前が、この俺に何ができる?」
ガイウスは嘲笑を浮かべ、その手に持つ荘厳な【勇者の剣】を俺に向けた。それは、建国王から代々の勇者に受け継がれてきたとされる、伝説の聖剣だ。
彼はゆっくりと剣を振りかぶる。俺に避けられるはずもない、確実な一撃。
だが、俺の狙いはそこにあった。
(やるしかない……!)
俺は逃げもせず、防御もせず、ただ両手を広げ、ガイウスが振り下ろす剣に向かって突き進んだ。
「馬鹿め!」
ガイウスの刃が、俺の肩を深く切り裂く寸前――俺は命がけで、その【勇者の剣】の刀身に両手で触れた。
激痛が走るよりも早く、【物語鑑定】を発動させる。
(見せろ!お前の、本当の物語を!)
瞬間、俺の脳内に、衝撃的な「真実の物語」が流れ込んできた。
――それは、聖剣などではなかった。
遥か昔、ある小国の王がいた。彼は英雄に憧れていたが、実力もカリスマ性もない凡人だった。彼は邪悪な魔術師に魂を売り、一本の魔剣を作らせた。
その剣は、持ち主の功績を人々に対して何倍にも誇張して見せ、偽りのカリスマ性を与える。そして、持ち主の心を少しずつ傲慢さに蝕み、他者を見下させ、やがては自らの慢心によって破滅へと導く――。
それこそが、この剣の正体、『虚飾と破滅の魔剣』の物語だったのだ。
代々の勇者たちは、この剣の力によって英雄に「見られて」いただけ。その実態は、剣に心を喰われた哀れな操り人形に過ぎなかった。
鑑定を終えた俺は、血を流しながらも、確信を持って叫んだ。
「ガイウス!お前は勇者なんかじゃない!その剣に心を喰われた、ただの道化だ!」




