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星の子と鬼の子【2000文字】

作者: 有梨束
掲載日:2026/01/05

明るい里に、星の子が暮らしていました。

周りを明るく照らす星の子は、いつもみんなに囲まれて楽しく過ごしていました。

星の子は誕生日になると、たくさんの人からお祝いされます。

いつもより豪勢な料理、数々の贈り物、賑わう声。

そして、心からの「おめでとう」という言葉をもらえて、星の子は1年で誕生日が1番好きでした。

森の奥には、鬼の子がひっそりと暮らしていました。

みんなに煙たがられ、人里に降りることが怖かった鬼の子は、森の中で1人でいました。

時々、森の入り口まで下りていっては、里の明かりを見るのが好きでした。


森には恐ろしい生き物がいるから入ってはいけません。

昔から里に伝わる教えの1つです。

ところがある日、星の子はその生き物を一目見たくて、森の中に入っていきます。

最初は里と変わらない明るさの森に、星の子はひょいひょいと進んでいきます。

次第に森全体の色が黒くなっていき、進めば進むほど、道が狭くなっていきます。

星の子はとぼとぼ進み、のろのろ進み、とうとう立ち止まってしまいました。

意気揚々と入ってきたものの、暗くて、寒くて、ひとりぼっちなことにどんどん寂しくなっていくのでした。

帰りたい。

そう思った時には、ここがどこだかわかりませんでした。

きょろきょろ周りを見渡しても、草、草、草。

左を見ても右を見ても、木、木、木。

それはまるで森の中に閉じ込められたみたいでした。

ここにいるのに、ここにいるよと誰にも言えなくて、自分の居場所があやふやです。

いよいよ泣きそうになった時でした。

「誰かいるの?鹿さん?」

か細くて、静かな、ころころした声がしました。

「鹿じゃないよ、ぼくだよ」

星の子が返事をすると、草むらの向こうでざわざわと音がしました。

風の音もざわざわしています。

それから、怯えるように鬼の子が草むらからそっと顔を出しました。

「君は里の子?どうしてここにいるの?」

「恐ろしい生き物を見たくて、森に入ってきたんだ。でも迷子になっちゃったみたい」

星の子は、助けてほしくてそう言いました。

鬼の子は、草むらの向こうから出てこようとしません。

「君は里までの道を知っている?ぼくのことを連れていってほしいんだ」

星の子は道案内を頼みました。

いつも里のみんなが親切にしてくれるように、鬼の子にもお願いしました。

「それに、みんなが心配するから帰らなきゃ」

星の子がそう言うと、鬼の子は震える声で答えました。

「知っているけど、森の入り口までしか案内できないよ」

「いいけど、どうして?」

「おいらは、里に行ってはいけないことになっているんだ」

「よくわからないけど、案内してくれるんだね!ありがとう!」

星の子の笑顔に鬼の子は驚いた様子でしたが、こくりと頷きました。

「こっちだよ」

鬼の子はゆっくり歩き始めます。

星の子はすぐに隣に行くと、手を差し出しました。

「また迷子になったら困るから、手を繋いでくれる?」

鬼の子は、またびっくりしました。

「おいらのこと、気味悪くはないの?」

「気味悪い?頭の角がぼくと違うなって思うだけだよ」

鬼の子は目をぱちぱちさせて、それから自分の手をそろりと差し出しました。

星の子はその手を握りました。

「これで安心だ」

星の子につられて、鬼の子も少し笑いました。


「君は森の中で暮らしているの?じゃあ恐ろしい生き物も見たことがある?」

「動物しか見たことないよ」

鬼の子が案内してくれるうちに、森はどんどん明るくなっていきます。

「いつも1人でいるの?」

「いつも1人でいるよ」

「寂しくはないの?」

「たまに里の明かりを見ると寂しくないよ。それが1番好きなんだ」

「ぼくは、誕生日が1番好きだよ。君の誕生日はいつ?」

「今日だよ」

星の子は繋いでいた手を、空に向かって上げました。

「今日が誕生日なの?じゃあ、お祝いしなくっちゃ!」

「お祝いするの?」

「そうだよ、誕生日はお祝いするんだよ」

ようやく森の入り口まで来て、里の明かりが見えました。

「待ってて。ぼく、お祝いの用意をしてくるから」

星の子は走って里に戻り、いつもの料理と、もう読まなくなった絵本と、道端の花を摘んでまた走って戻りました。

「これが誕生日なの?」

「そうだよ。料理と贈り物でお祝いするんだよ」

里の明かりがすぐそばで見えるところで、2人きりの誕生日会が始まりました。

「誕生日おめでとう」

一緒に料理を食べて、絵本と花を手渡され、そして星空の下で笑う星の子の笑顔が、鬼の子には何よりの贈り物に見えました。

「おいら、うれしい」

「だったら来年もお祝いしなくちゃね」

「来年も誕生日があるの?」

「誕生日は毎年あるんだよ」


翌年、鬼の子は自分の誕生日に森の入り口までやってきました。

ですが、星の子はきませんでした。

それでも鬼の子は、誕生日にはお祝いすることをもう知っていました。

いつもより多めの木の実と、鹿肉と、花を摘んで、里の明かりを見ながらお祝いしました。

その日は、一番星が一等輝いていました。




毎日投稿5日目。お読みくださりありがとうございました!

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