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君がいてよかった  作者: 龍田まや


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組曲とは

浅倉にミーティングの内容をメールで知らせたところ、「今すぐ来い!」との返信が届いたので、そのまま浅倉宅へ向かうことにした。

2人のソングライターによる両面アルバム、浅倉も興奮を抑えきれないのだろう。


「さぁ、入ってください」


浅倉が出迎えてくれた。

早く話を聞かせろという顔だ。

まぁ待て落ち着け。


「メールの件ですけど、本当なんですか?」

「ホントもホント。アルバムの曲をナオさんと半々で作ることになった。しかもそれぞれの曲を固めて収録するらしい」

「固めるというのは、アルバム前半がナオさんの曲で、後半が私たちの曲になるってことですか?」

「御名答。どっちが前半・後半かはまだ決まってないけど、形としてはそんな感じ」

「かなり大胆ですね。前半と後半で作風がガラッと変わるかもしれないのに。特にテーマとかは決められてないのですか?」

「基本的には好きなように作ってくれと。明らかに前半と後半で開きがあれば考えるようなことも言ってたけど、まずは曲を仕上げてほしいと。今の時点で曲のストックはどれくらいあるの?」

「今ですか?そうですね…完成形に近いのは8曲ほどあります。ただ、今回の件を聞いて、アルバムの半数を作ることになるとは想定外だったので、新たに作るほうが良いのかなと思ってます」

「今ある曲だと何かマズいの?」

「マズくはないんですが、一曲単体で作ったのが8曲あるってだけで、そのアルバムのコンセプトにはそぐわないような気がして」

「コンセプト?テーマみたいなこと?」

「意味合い的には似てますね。私はてっきり出来上がった曲を持ち寄ってみんなでディスカッションして曲順を決めると思っていたんです。それが一般的だと思いますし。ですが、半分ずつ作って曲順も作曲者で固めるならある程度作曲者のカラーを出したほうがいいかなと。好きなように作って良いなら求められた曲やバンドに合わせた曲を作るのではなく、書きたい曲を作るほうが理に適ってると思います」

「なるほど。で、具体的なアイデアは何かあるの?」

「そのことをメールで聞いてから私なりに考えたんですが、組曲なんてのはどうでしょう?」

「組曲?え?何それ?」

「組曲知らないですか?…じゃあ、1階に行きましょう」


浅倉は俺を1階のリビングまで連れていった。

その部屋にはたくさんのレコードとCDが棚に並んでいる。

ちょっとしたお店のようだ。


「私の父の物です」

「お父さん音楽好きなの?」

「ええ。子供の頃から父が好きなレコードをたくさん聴かされて、今では私のほうが好きなくらいです」


浅倉は棚からレコードとCDを数枚取り出した。


「これがさっき言った組曲が入ったレコードですね。コンセプトアルバムとも言いますが。試しにこれから聴かせます」


スピーカーから大音量で流れ出した。

洋楽なので何を歌ってるかまでは分からない。

ただ、あるテーマを元に一曲の中でいくつも展開が変わるということだけは分かった。

こういうのを作りたいのか。


「これ結構難しくない?」

「ここまで難しいのはさすがに今の私では作れません。あくまでイメージとしてです」

「長い曲を一曲というイメージ?」

「いや、単品でも聴けるように基本はバラです。バラの曲を統一性を持たせて一曲になる感じにしたいんです。分かりやすく言えば、長い曲を一曲作って、それをバラす感じです」

「ナオさんは普通にいつもの感じで5曲くらい書いてくるだろうから、前後半でまるっきり違うアルバムになるね。最悪の場合は全部ボツになる可能性もあるけど」

「もし、そうなったら今ある8曲から差し替えれば問題ありません」

「かなり大変な作業になるけど、それは大丈夫なの?」

「これくらいプレッシャーあるほうが逆に燃えてくるんですよ。ボツになったらなったで、アルバム1枚を組曲にする方向で作り直せばいいだけなので」

「分かった。そこまで言うなら任せる。とりあえず期日にはまだ余裕あるから僕にもやれることあれば言ってよ」

「それじゃあ、ここにあるレコードとCDを聴いて、私の考えを理解してもらうことから始めてもらっていいですか?」

「今出したやつ全部?結構多くね?」

「昔のやつは曲数少ないからそんなに時間かからないですよ。ここで聴いてもらっても構いませんし、何なら貸し出しもしますけど」

「じゃあ、お言葉に甘えてここで聴かせてもらうよ」

「私、部屋で作業始めるのでどうぞご自由にしててください」


浅倉はそう言うと部屋に戻っていった。

1人残された僕は先ほど言われたように組曲のお勉強をすることにした。

浅倉が始めて作ってバンドに持っていった曲やT-28の曲もこういったフレーバーがあったなと今更ながら気付いた。

こういうタイプの音楽が好きなのかな?

バンドに鍵盤奏者がいないとこういった音楽はやりづらいよね。

その分、僕のハードルが上がるってわけだが。


「おや?いらっしゃいませ」


浅倉のお祖母さんだ。

買い物袋を手に提げている。

そういえば、この間浅倉が僕の家に来た時にウチの親が浅倉の家族によろしく言っといてみたいなこと言ってたが、そのことは伝えてるんだろうか?


「ええっと…どちら様でしたっけ?」


まったく伝えられてないことが秒で分かった。





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