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君がいてよかった  作者: 龍田まや


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ニュー・アルバム

今日はバンドミーティングの日。

議題はニュー・アルバム制作についてだ。


Base Areaはナオさんがメインソングライターだが、僕が加入したことでソングライターが2人になった。

決してナオさんのワンマンだったわけではなく、バンドに曲を作れる人がナオさんしかいなかったので、結果的にそうなっただけだが、ファンの間でもナオ節のようなものが染み付いてるだろう。

そこをあえて打破したいというボーカルのウツさんの強い想いから僕を迎え入れてくれたんだと思う。


ある日、僕にこのようなことを言った。

「今のままでは前には進めても上には進めない」と。


つまり、もう一段階バンドとしてレベルを上げるには変化が必要だと。

いろいろ考えた結果が新メンバーの加入に落ち着いたんだろう。

僕に求められている役割は次第に大きくなっていると肌で感じている。

ここまで僕はバンドに対して良い効果をもたらしているだろうか?


「みんな集まったね、そろそろ始めようか」


いつものようにナオさん宅に集まった。

まずは新曲の進捗状況についてだ。

僕は浅倉から預かった新曲音源を持参してきた。

あのあと、改めて浅倉の自宅で聴かせてもらったが、素直に良い曲だと思った。

彼女自身作曲を始めて間もないから、いわゆる決まった型がない。

いろんなタイプの曲を書いてくる。

もちろん彼女なりにこれまでのBase Areaのスタイルに合わせてきてはいるだろうが、バンドに新たな風を呼び込むようなそんな曲を作っていると僕は感じた。

僕は自信満々で音源を再生した。

さぁ、みんなの反応は?


「かなりポップだね。こうきたか」

「でも、メロはキャッチーだし」

「覚えやすいかもね」


上々といったところか?


「それじゃ次はナオの曲、聴かせてもらおうか」

「そんじゃ行くよ」

いつものようにラジカセを再生した。


一聴してナオさんの曲だと分かる、いわゆるナオ節の曲だ。

変化球ではなく自分の得意なスタイルをさらに突き詰めた感じだ。

おそらく自分の役割はこれまで通り大幅に変えず、新しいバンドのスタイルは僕に任せてるのだろう。

全体的にガラッと変えてしまっては従来のファンも失いかねない。

そのあたりのさじ加減が難しいところだと思う。

僕はナオさんの曲を聴いてその意図を感じ取った。


「うん、悪くないね」

「まぁ、いつものだよね」

「それって褒めてるのかよ?」

「褒めると調子に乗るでしょ?」

「たまには調子に乗らせてくれよ」

「それじゃ、次は楽曲配分も決めようか」


アルバムとなると大抵10曲前後が収録の目安となる。

アルバムのオープニングはアップテンポな曲、次にミディアムテンポな曲を挟んで後半にバラードを配置するのが多くのバンドがやっている流れだ。

楽曲が出揃ってから曲順を決めるのが常だが、アルバムのカラーに合わなかったりすれば追加で作曲するのも普通にあるだろう。

これまではそれら全てナオさんが担ってきたので、僕にはどのようなお題が与えられるのか内心ドキドキしていた。


「今回は10曲仕上げるのを目標で、楽曲配分は半々で行こうと思う」


え?

ウツさんの言葉に思わず耳を疑った。

半々ってことは最低でも5曲ってことになる。

数の多さに驚いたというより半々にすると言ったことに驚いた。

20曲収録で5曲ならまぁ理解できる。

しかし、20曲収録のアルバムを作るのは現実的ではない。

メジャーデビューしてるアーティストでもなかなかいないだろう。

ニュー・アルバムの半分が新入りの曲とは常識では考えられない。

1曲、2曲と段階を経て増やしていくのが普通だろう。

つまりファンの反応を伺って、または自信をつけさせてから増やしていくのが正当な手段だと思う。

客観的に見たら随分なギャンブルだと思うが…。


「あの、半々ってことは最低5曲ですよね?」

僕は当たり前のことを再確認した。

内心冗談であってくれと思っての再確認だ。


「そう。アルバムの前半と後半で分けるから。つまりナオサイドとテツサイドの両面アルバムにする」


え?

またしても言葉を失った。

それって、アルバムとしては完全に前半と後半でカラーが分かれることになるけど。

そんな作りのアルバムあまり聴いたことない。

アルバムとして成立するのか?


「それってかなり実験的だよね」

ナオさんの言うことはごもっともだ。

ウツさんの提案にさすがに不安の色は隠せない。もちろん僕もだが。


「やってみる価値はあると思うんだよね。アルバムとしての統一感を出すのは難しいかもしれないけど、何ていうか1枚で2度オイシイみたいなさ、そんなアルバム作ってみたいんだよね」


「チロルチョコみたいだな」

アベさんが分かりやすい例えをしてくれた。


「あらかじめ2人にはお互い相談なしでそれぞれが思うがままに作曲してほしい。出来上がったものが明らかにかけ離れてるなら修正してもらいたいけど、基本は好きなように今のBase Areaでやったら面白い曲を作ってもらいたい」


ウツさんのこの意見にナオさんはしばし沈黙した。


「よし、分かった。それでやってみようか」


ナオさんは腹が決まったのか言葉を振り絞った。

ナオさんがそう決めたなら年功序列のこの世界、従うまでだ。


「僕も頑張ります!」


こうしてニュー・アルバムは前代未聞の2人のソングライターによる両面アルバムとなることが決まった。















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