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君がいてよかった  作者: 龍田まや


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母との再会

浅倉はいつも以上に饒舌に新曲について語り尽くした。

僕は途中から飽きてしまい適当に相槌を打つだけだったがそんなことはお構いなしに語ってくれた。

気付いたら1時間近く経っていた。


「ちょっとトイレ行ってくるわ」

僕は逃げるようにして一旦退出した。

すると、玄関のドアが開く音がした。

あれ?こんな早くに誰が?

「ただいま、いたの?」

帰宅した母親が買い物袋を提げてリビングにいた僕に声を掛けた。


「今日は仕事早かったね?」

「うん、お客さん少ないから先に上がっていいと言われたの。誰か来てるの?」

「え?ああ、友達が来てて」

「もしかしてこの間来た子?」

「いや、今日は違う子で…」

「あら?何?お母さんちょっと挨拶してくるわ」

母はそう言うと僕の部屋に向かった。

「あ、いや、そんなことしなくていいから」

母は僕の制止など無視してドアを開けた。

「こんにちは、哲哉の母です」

浅倉はビックリした顔のまま、

「あ、お邪魔してます…」

「あれ?どこかで見たような…」

母は浅倉の顔を凝視した。すると、

「もしかして加里ちゃん?」

「はい、…お久しぶりです」

え?どういうこと?

2人は知り合いなの?

「母さん何で浅倉のこと知ってるの?」

「何でってあなた忘れたの?子供の頃に一緒によく遊んでたでしょ?」

子供の頃って?

え?いつの話?

「久しぶりねぇ。こんな美人さんになって。お母さんたち元気してる?」

「はい、みんな元気です」

「今、こっちに住んでるの?」

「はい、数年前に引っ越して来ました」

「皆さんによろしく言っといてね」

「はい、伝えときます」


何が何だか分からない。

僕は浅倉を部屋に残して、再びリビングで母に話を聞くことにした。


「子供の頃っていつの話?」

「あなた本当に忘れたの?私たちがこっちに引っ越してくる前の話よ。よく家に遊びに来てた女の子がいたの覚えてない?」


引っ越してくる前の話…。

そう、僕ら家族は以前は団地に住んでいた。

その時の記憶を呼び起こしてみる…。

すると、おぼろげながら僕と一緒にいる女の子が頭に浮かんだ。

同じ団地に住んでて、お互い友達が少なかった。

その女の子はショートカットで口数が少なく当時の僕は女の子と認識していただろうか?

そうか、あの子が浅倉だったのか。


「何となくそんな子がいたような気がする」

「思い出してきた?ちょっと待ってて。アルバム出してくるから」

母は押し入れから昔のアルバムを出してきた。そこには小さな僕と僕と背丈が変わらないショートカットの子が一緒に写っていた。

この子が浅倉なのか?

「どう?思い出した?この子よ」

確かに目元に面影がある。

母は次から次へと写真を僕に見せた。

間違いなさそうだ。

ということは、浅倉は俺のことを知っていたことになるけど、何故今まで黙っていたんだろう?

それともさっき母に言われて気付いたのか?

いやいや、そんな反応ではなかったし。

僕はモヤモヤとした感情のまま部屋に戻った。

そして浅倉に声を掛けた。


「あのさ、もしかしてというか、僕のこと初めから知ってたの?」

「…はい」

「知ってたけど知らないフリをしていたってこと?」

「…黙ってるつもりじゃなかったんですけど、話すきっかけを失って…そのまま今に至った、そんな感じです」

浅倉は申し訳なさそうな顔をして俯いた。

「随分前のことだから私のこと覚えてないだろうなとも思っててそれで…」

確かに随分前だから正直僕は忘れていた。

子供の頃に一緒に遊んでいたと言われたとしてもパッと思い出せたかどうか。


「怒って…ますか?」

「いや、怒ってるというより驚きのほうが勝ってる感じかな」

「ごめんなさい」

「いや、こっちこそ母親に聞くまで思い出せなくてごめんなさい」

微妙な空気になってしまった。

僕は別に怒ってはいない。

むしろ、今知れてよかったと思っている。 

お互い何となく壁のようなものがあったから、これを期にというのはアレだが、一致団結してチームとしてやっていけるんじゃないだろうか。

「このタイミングで言うのは変だけど、これからもよろしくね」

「はい、こちらこそ」

お互いハニカミながらそう言った。


「加里ちゃん、晩ごはん食べていきなさいよ」

「ちょ、またそんな勝手に」

「いいでしょ、久しぶりなんだし。加里ちゃん遠慮しなくていいのよ」

「分かりました。それじゃご馳走になります」

断りきれないと察した浅倉は参ったなという表情をしたが声は嬉しそうだった。

今夜は父は出張で不在だった為、3人での食事となった。

母は僕が覚えてないようなことを嬉々として話した。

浅倉も気を遣ったのか、それとも昔話が懐かしかったのか、いつもより愛想よく、いつもより若干口数多く話した。

僕は二人の話を終始聞いてるだけで終わった。


「ほら、夜遅くなったから加里ちゃん送ってやって」

「あ、大丈夫ですよ。1人で帰れますから」

「いいのよ遠慮しなくて。ほら早く送ってあげて」

僕は浅倉を途中まで送ることにした。

「ごめんね、ウチの母が面倒で」

「いえ、久しぶりだったし私も嬉しかったです」

「今度は母さんがいないときに来てもらうから」

「私はどっちでもよいですよ」

最寄り駅に着いた。

「それじゃ、お休みなさい」

「おやすみ」

「今度は私の家で夕飯ご馳走しますから」 

「え?」

「大丈夫です。毒なんていれませんよ」

浅倉は少し悪そうな顔をして笑った。

いつもの浅倉だ。












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