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君がいてよかった  作者: 龍田まや


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浅倉のイメージ

バンドミーティングで新曲のアレンジを行った際に録音した音源を浅倉に聴いてもらうことにした。

バンドに参加しているのは僕だが作曲者のイメージ通りになっているかどうか確認する必要があると思って。

放課後に彼女を呼び出した。


「ごめん、呼び出して」

「大丈夫ですよ。新曲のアレンジ確認ですよね?」

「うん、まだまとまってはいないけど、みんなで合わせた音源を一度聴いてもらいたいと思って」

「ありがとうございます。聴くの楽しみです」


彼女にイヤホンを渡して聴いてもらった。

目を閉じて無言で聴き入っている。

果たして受け入れてもらえるだろうか?

聴き終えると静かにイヤホンを外した。


「どうかな?」

「こんな感じになるんですね。私のイメージしていたのとは違ってて驚きました」

「バンドメンバーからいろいろ質問とかされたんだけど、浅倉的には問題ない感じかな?」

「そうですね…まだ仮歌しか入ってない状態ですが、作った時に何となくウツさんのボーカルを立たせた感じをイメージしてました。演奏は音数少なく極力シンプルで」

「ちょっと凝った感じがした?」

「ですね。例えばイントロはボーカルとキーボードだけで入って、途中からバンドが加わって盛り上げるみたいな。よくありがちなパターンですけど」

「なるほどなるほど」

「あくまで私のイメージですけど」

「分かった。次のミーティングでこのことは伝えておくから」

「今度からある程度私のイメージも伝えておきますね」

「オッケーそうしよう」


作曲者本人の口からメンバーに伝えるのが一番手っ取り早いのだが、浅倉が作曲した曲は僕が作ったことになってるので、浅倉の考えをしっかり理解しなくてはならない。

そういう意味では一心同体にならなくてはならない。

面倒くさいがバンドに加入するとなった時点でこうなることはある程度予測はついていたハズだ。

その予測を今回は怠ってしまった。

特殊な事情だからな。


「ところで、この間のことですけど、あれから上手くいきました?」

「この間って?」

「ほら、自宅に伺ったじゃないですか。あの、その…」

「ああ、あの日ね。ありがとう。気を遣ってくれたんだね」

「突然お邪魔した私が悪いんですけど」

「ホント突然でビックリしたよ」

「で、どうでしたか?」

「いや、特に何もなかったけど。そっちはあれから久保とは仲良くなれたの?」

「ええ、まぁその…。何で今まで教えてくれなかったの?みたいなことを言われました」

「人見知りだから無理だよね」

「それもあるんですけど、余計なことを言いたくなかったので」

「でも、実際こうやって話すようになったのも最近だし、多くは語れないよね」

「そう…ですね。そういえば、彼女、近々バイトを始めるみたいです」

「え?バイトを?」

「推し活にお金がかかるのでお小遣いだけでは厳しくなってきたからだそうです」

「何のバイト始めるんだろ?」

「そこまでは聞いてないですね」


そういや、僕も貯金叩いて楽器買ったから懐事情が厳しくなってきたな。

バンドマンは金がかかるらしいし。

ナオさんはバンド活動の合間に実家の手伝いしてて、リズム隊の二人は本職をやりつつサポートとしてバンドに参加してる。

ウツさんだけは謎だ。

生活感がまるで無いからな。

ひょっとしたらナオさん宅に居候してるんじゃないかと思っているが。


「僕もバイト始めようかな?」

「いいんじゃないですかね?いつも暇してますし」

「浅倉はバイトどう?」

「私は毎日忙しいので」

「同じ学生なのに忙しさはそんなに変わらないでしょ?」

「人見知りが忙しいので」

「なんじゃそりゃ」

「バイトもいいですが、練習もしっかりやってくださいね」

「はいはい分かりましたよ」


そうか、久保がバイト始めるとは良いこと聞いた。

ライブのチケット代やグッズ代もバカにならないからな。

あわよくば一緒のバイト先で働けるかも?

いやいや、それじゃ下心丸出しだ。

バイトをするのはあくまでバンド活動のためだ。

キーボードを2台目3台目と買って要塞みたいにするのがとりあえず今の僕の夢だ。


「バイトといえば、この間、ZONEの前を通りかかったんですけど、店先にバイト募集の貼り紙が貼ってありましたよ」

「え?ホント?」

「ええ。ババンと貼ってありました。急募なのかもしれないですね」

「今度店長に聞いてみようかな」

「接客業とか得意な人ですか?」

「うーん、そもそもバイト自体やったことないからな。迷惑な客がきたらやっかいなイメージはあるよね」

「私は絶対に無理ですね」

「だろうね。人間嫌いだし」

「何で知ってるんですか?」

「だって人見知りなんでしょ?」

「人見知りだけど、人間嫌いとまでは言ってないです」

「それを人見知りと言うんだよw」

「松本さんは数少ない話せる人間のひとりですよ。どうぞ誇ってください」

「何で上から目線なのよ?(笑)」

「そうだ、バイトの履歴書に書いてもらっても大丈夫ですよ」

「コミュ障のお客さんとも仲良くなれますって書いとくわw」










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