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君がいてよかった  作者: どらさん


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新曲発表会

今日はバンドメンバー全員が集まっての本格的な曲作りの日。


曲作りと言っても厳密には作曲者がほぼ完成形を持ってきて、それを聴いた他のメンバーがアレンジを加える形だ。

いろんなやり方があると思うが、Base Areaに関してはバンド結成してから一貫してこのやり方らしい。


集合場所はナオさんの自宅兼スタジオ。


スタジオと言っても単に楽器が揃っているだけで、本格的なレコーディングができるわけではない。

始めはメンバーの溜まり場だったのだが、毎夜毎晩飲み明かしたメンバーがそのまま楽器を置いて帰るようになり、いつしか練習場所となってしまった。


「えーっと、この家だな」


♪ピンポ~ン


「おっ、来たね。上がって」

インターホン越しにナオさんが僕に呼びかけた。

それでは、おじゃまします。


「あ、思っていたより広い」


部屋に入るとところ狭しと楽器が置いてある。

キーボードはもちろんドラムもだ。

自宅にドラムがあるなんてなかなかない。


「すごい数の楽器ですね」

「俺の物じゃないのがほとんどだけどね」

「みんな置いてっちゃうんですか?」

「そう、他人の家にドラムセット置いてくなんてありえないだろ?」

「完全に確信犯ですよね(笑)」


ナオさんの自宅は人里離れたというほどではないが、周りに民家がほとんどなく、楽器を演奏する環境としては最適だ。


リビングにはウツさんが座って食事していた。


「おはよう。カレーあるけど食べる?」

「お手製ですか?」

「うん、ナオママの」

「おい、俺の家だぞ!少しは遠慮しろよ」

「カレーだけは美味いから」


そう言うとお皿にカレーをよそってくれた。


「あ、ホントに美味しい」

「でしょ?」


アベさんとカツラギさんもすでに来ていて楽器のチューニングをやっていた。

彼ら2人はバンド以外に仕事もやっているので、現在は正規メンバーではなくサポートという立場で参加している。

それでもナオさんの作った曲に対して各々のパートについてアレンジで貢献している。


「全員揃ったし、まずは俺のデモテープ聴いてもらおうか」


ナオさんはそう言うとラジカセを持ってきた。

PCなど使って作るのではなく、昔ながらのアコギをジャカジャカ鳴らしながら、ピアノをポロポロと弾きながら歌う弾き語りのスタイルだ。

デモテープと言っても今の時代に実際カセットテープに録音することは少なくなっている…というかほぼないと思うが、ナオさんは昔ながらのやり方にこだわりがあるようだ。

ラジカセを物珍しそうに見ている僕に対して再生ボタンを押す前にナオさんが言った。


「あ、俺は機械とか苦手だからいつもこのやり方なのよ」


こだわりじゃなかったのね(笑)


「それじゃ3曲続けて流すから」

カチャッと再生ボタンを押した。


テープが流れている間、目を閉じてリズムを取ったり、手にしている楽器に触れてフレーズを探ったりと様々だ。

意外と言ってはなんだが、仮歌で入っているナオさんのボーカルも良い。

ライブのコーラスでも活躍してるもんな。

やっぱりなくてはならない存在だわ。


3曲あっという間に終わった。


「相変わらずヒドイ声だね」

「俺がメインボーカルじゃなくてよかっただろ?」

「でも、メロディーラインはいつものナオ節が出ててよかったよ」

「ドラムは派手目に入れたほうがいいかな?」


メンバーそれぞれが感想を述べる。

僕も何か言ったほうがいいのか?


「テツヤくんはどう思った?」

ナオさんが僕に問いかけた。


「いつもこんな風に曲作りしてるんだと驚きました」

「古いスタイルで驚いたろ?」

「裸を見てるようで恥ずかしかったです」

「それだったら恥ずかしいのは俺のほうだろ!(笑)」

「ナオの尻は茄子尻だから」

「おい!見たことないだろ!(笑)」


浅倉の曲は結構きっちり作り込んであるのに対してナオさんは作り過ぎてないというか、余白を残して作ってる感じがした。

大まかに作ったからあとはみんなにお任せって感じだろうか。

バンドみんなで曲を作り上げている。


「ところで、テツヤくんのほうは何かアイデア持ってきてくれた?」

「はい、一応」

そう言うと1枚のCD-Rを差し出した。


「録音してきてくれたの?」

「はい、2曲」

「え?2曲も出来たんだ」

「驚かせようと思って黙ってました」

「よし、さっそく聴いてみよう」


プレイヤーに入れて再生した。


再生中、誰一人言葉を発しなかった。

流れてくる曲に真剣に耳を傾けていた。

この反応はどっちなんだろうか?


そして、静かに曲が終わった。


「どうでしょう?」

「ビックリだね」

「うん、ナオとは正反対の曲だわ」

「何ていうか、1段階レベルが上がったそんな感じ」

「ナオさん、どうでしたか?」

「いや、正直ここまでの曲作ってくれるとは思わなかった、うん」

「今のバンドの曲として使えますか?」

「ウツどうする?」

「曲は良い。けど、ナオの3曲にこの2曲だとバンドの方向性が見えないから、まずは1曲だけ仕上げてみようか?ライブでやってファンの反応も見たいし」

「分かりました」

「これで俺の負担も少しは減るかな?ソングライターが2人になったことだし」

「そうだね。ファンに飽きられそうで困ってたから」

「俺の曲、まだ大丈夫でしょ?」

「これからも良い曲頼むよ」


ということで、2曲持っていったが1曲採用という形になった。

もう1曲も何れは形にしたいということで、ストックとして残すことになった。

この結果に浅倉は満足してくれるだろうか?

















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