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君がいてよかった  作者: どらさん


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2/22

バンドやってくれますよね?

ライブハウスから自宅に帰って改めて今日の出来事を振り返る。


デートに行ったが相手が異なる→異なる相手にライブハウスへ連れて行かれる→ライブハウスで本来のデート相手になるべき人を発見→異なる相手と一緒にライブを見る→ライブ終わってようやく異なる相手の身元判明(名前のみ)→よからぬ計画を聞かされる→NOと言えない雰囲気→とりあえず返事は保留


こんな流れだ。

たった数時間で怒涛の展開が待ち受けていた。

今でも軽いパニック状態で本来の目的すら分からなくなってきた。


まず、あの女、浅倉だ。

下の名前聞いてないから呼び捨てにする。

席を間違えたとはいえ、他人に送った手紙を開封するか?

普通にあり得ないだろ。

しかもラブレターだぞ。

他人に見られて恥ずかしいものランキングで上位にランクインする代物だ。

そういや、僕のこと知ってる素振りだったな。それだから好き好きオーラが見えていたのか?

いやそれ怖いだろ。オカルトだ。

久保のことも知ってて僕のことも知ってるヤツって一体誰だ?

全く思い当たる節がない。

分からん、今は分からん。


それとバンドだ。

確かBase Areaだったな。

久保がそのバンドのバンギャであることは分かった。

その情報はサンクス。

バンギャについては後から調べるとして、久保と交際するのにバンドに加入すること前提なのが分からん。確かに仲良くなるきっかけとしてはこれ以上ないとは思うが、突拍子過ぎるアイデアだろ。

その交換条件(?)として、浅倉が作った曲をそのバンドのボーカルに歌ってもらうって、プロデューサーにでもなるつもりなのか?

その足掛かりとしてあのバンドなの?

分からん、全く分からん。


バンドに加入前提で話を進めてきたってことは、相当自信があるのだろうか?

曲の出来もそうだが、それ以前に僕がバンドに認められる腕前じゃないとその計画も破綻するのだが。

僕がキーボードか…。


物心ついた頃から中学入学までエレクトーンを習っていた。

辞めた理由は嫌いになったわけではなく、勉強が忙しくなるから学習塾に通いなさいと親に言われたから。

何かしらのコンクールで立派な成績を収めたわけではないが、クラスの催し物で歌を披露する際には必ずエレクトーンを弾いていた。

他に弾ける人がいなかったというのもあるが。

しばらく弾いてないな…。


1日考えると言ったが、彼女の連絡先を聞いてない。

そういや会うときにメール届いたな。

これに返信すればいいのか。

でも、それじゃ素っ気ないし、学校で会ったときに気まずい思いをするよな。

まぁ、久保と同じクラスだから教室行けば会えるし直接言う方がよいだろ。

でも、あんな大人っぽい女の子いたか?

あんな子いたら目立つと思うけど。

とりあえず返事はまだ保留。

もう少し時間もらうか。 

いろいろあって今日は疲れた。

平凡な高校生にはヘヴィーな1日だった。



翌朝、学校にて。

「(浅倉っぽい子いないな?)」

クラスを覗いたがそれらしき人はいない。

「(まだ来てないのか?出直すか)」

と、そのとき、1人の女生徒が現れた。 


「あ、おはようございます」

「(え?誰?この子)」

「昨日は来てくれてありがとう」

丸眼鏡で髪の毛を後ろで結ってて気付かなかったが、浅倉だ。

昨日とは別人に見えた。

少し間が空いてしまった。


「いや、こちらこそ」

「ホームルーム始まるから放課後にまた」

「うん、分かった」


ヘアスタイルとメイクでだいぶ変わるもんだな。バンドマンが化粧上手いのも分かる気がする。

ちょっといいかも?

いやいや、僕は久保ひとすじだから。


放課後になり再び彼女のクラスへ。

廊下に浅倉がいた。

「立ち話も何だから図書室行きましょう」


放課後の図書室。

窓側の隅っこの席に向かい合わせで座った。


「バンドの件なんだけど…」

そう切り出すと遮るようにこう言った。

「これ聴いてくれますか?」

彼女は携帯音楽プレイヤーを取り出した。

そしてイヤフォンを僕に手渡した。

耳に装着したのを見て再生スタート。

すると聴いたことがない曲が流れてきた。

歌詞はないインストゥルメンタルだ。

ポップでメロディアス。

思わず鼻歌でメロディーを歌ってしまうそんな曲だ。

誰の曲なんだろ?

曲が終わると彼女はにこやかな表情をした。


「感想聴かせてもらえますか?」

「うん、とてもよかった。ポップでメロディアスで歌いたくなるような」

「これをウツに歌ってもらいたいんです」

「これ作ったの君なの?」

「はい」


驚いた。

昨日彼女から聞いた計画の一番の胆となる部分がこれでクリアになった気がした。


「バンド…やってくれますよね?」

迷いが消えてYESとしか言いようがない。

「バンド、やるよ」

にこやかな表情でこう返した。

安心したかのように彼女は微笑んだ。

















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