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君がいてよかった  作者: どらさん


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18/24

聴く耳を選ぶ

浅倉の自宅。

曲作りもいよいよ大詰め。


カタカタカタカタ…

「よし、これで完成っと」

予定していた2曲の完パケ終了した。

あとは、松本さんに聴かせるのみ。

ん?ちょっと待てよ。

せっかくなら…。



「こんにちは」

「加里ちゃん、いらっしゃい」

「突然すいません」

「いいのよ、今日は一人?」

「はい。実は出来た曲を聴いてもらいたくて」

「私に?」

「はい、一番最初に」

「それは光栄だわ」


浅倉は出来上がった曲を松本ではなく、先生にまず聴いてもらいたいと思った。

一番近いところの第三者の感想が知りたかったのだ。

今までの彼女ならそう思わなかっただろうが、松本の言うわだかまりが解けたことが彼女の心境の変化にも繋がった。


「それじゃ再生します」


スマホから出来立てホヤホヤの音源を聴かせた。

自信は勿論あるが、やはり反応は気になる。

先生は目を閉じて足でリズムを刻み始めた。

一言も発せずにただ曲に耳を傾けている。

そして、曲は終了。


「…どうですか?」

「うん、とても良かったよ。けど…」

「けど?」

「バンドでやる曲というよりソロアーティストがやる曲に聴こえたかな」

「えっ…?」

「なんとなくそんなイメージがしたんだけどね」


先生の指摘は間違いではない。

作曲中、浅倉の頭の中では常にBase Areaのボーカルであるウツの声が頭に鳴っていたが、他のパートに関しては疎かになっていたのか事実だ。

ギターにベースにドラム、そして松本のキーボードも加わり5人組となった。

勿論、この曲をバンドに持ち込みアレンジを加えればバンドサウンドに変えることは可能だが、現時点でそれが見えてこない曲として完成している。

BAはリズム隊はサポートメンバーでもウツとバックバンドという関係性ではなく、5人揃ってのバンドなのだ。


「確かに先生のおっしゃる通りかもしれません。ソロとバンドは違いますもんね」

「多分、単にリスナーの立場ならそこまで気にならないことかもしれないけど、私のように音楽を教えてる立場の人間だからこそ気付くことかな」

「ちょっと自慢入ってますか?」

「ちょっとじゃなくてかなりね(笑)」


浅倉は最初に聴かせたのが先生で間違いなかったと思った。

松本なら語弊はあるが、いいんじゃない?程度で終わっていたかもしれない。

正しい耳で聴いてもらって指摘してくれたことに意味がある。


「まだ時間あるので練り直してきます」

「そうね、今度は松本くんと2人で聴いてあげる。そのほうがいろんな意見が出てよいと思うし」

「わかりました」

「でも、松本くんより先に私に聴かせるって意外だったわ」

「え?そんなにですか?」

「だって、この間まで挙動不審だったし」

「そんなに?!」

「これも松本くんのおかげだね」


浅倉は俯きながら少し照れくさそうにした。

普段見せない人間味があるような感じだ。

これ以上恥ずかしい姿を見られたくないのか、そそくさと帰ってしまった。


あ、メールしないと。


「お疲れ様です。曲作りですが、もう少し手直ししたいので、完成までもうしばしお待ち下さい」


さて、帰って作業再開しないと。



「ナオ、曲作りはどう?」

「今んとこ3曲くらい形になりそう」

「EPとして出すなら5曲くらい欲しいよね」

「EP出すの?聞いてないけど?」

「だって、今思いついて言ったから」

「ウソだろ??」

「EPは後々にするにしても曲は増やしていきたいよね」

「ウツも曲書いたらどう?」

「歌うことに専念したいから無理」

「ウソだろ?」

「それにウチにはナオという名ソングライターがいるから心配してないよ」

「そうか?そこまで言うなら俺頑張っちゃおうかな?」

「頑張れ頑張れ」



あ、浅倉からメール届いてる。

もう少し時間かかりそうみたいだな。

この間に何もすることないってのが、暇を持て余してるようで申し訳ない気持ちでいっぱい。

プロのライブDVDでも観てステージングの研究でもするか?

それとも自主練?

そうだ!誰かのライブ観に行くのはどうだろ?

バンドに加入したとは言え、音楽の経験もステージングもまだまだド素人同然だし、直接目で見て耳で感じるライブが一番刺激を受けることだと思う。


よし、そうしよう!


どうせなら同じインディーズのバンドのライブのほうがいいかな。

プロだと圧倒されて逆に自信なくすかもだし。

ZONEで誰かライブやらないかな?

店長の貴水さんに聞いてこようか。

そうと決まれば今からだ。

ZONEへ向かおう。


「こんにちは」

「いらっしゃいませ」

「店長いらっしゃいますか?」

「店長なら不在ですけど何か御用でしたか?」

「あ、いや、近々ここで誰かライブやらないかなぁと思って」

「今、あるバンドに出演交渉しに行ってますけど、そちらへ行ってみますか?」

「え?どこですか?」

「ライブハウスVISIONです。そこに店長は行ってますよ」


そう言うと店員はスマホでそのライブハウスまでの地図を見せてくれた。


「わかりました、そこに行ってみます」


そこで誰のライブやってんだろう?

調べてみるか。

どれどれ、スケジュールを確認っと。

ん?November Rainって、この間一緒に出演したバンドか。

トリ務めたくらいだから人気あるんだろうな。

あのときはBAの即逃げとかあってちゃんと観てなかったから一度ちゃんと観ておくか。











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