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君がいてよかった  作者: どらさん


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17/25

ソングライティング

「松本くん、おはよう」

「おはよう」


校内でも久保と話す機会が自然と多くなった。

クラスが違うのでそんなに頻繁にではないが、それでも数ヶ月前には考えられなかったことが起きている。


「そういえばまだ言ってなかった」

「何を?」

「Base Areaに加入おめでとう!」

「あ、ありがとう」

「裏のリーダーってことでいいですか?」

「はぁ?何言ってんの?まだペーペーだよ」

「でも、バンドにキーボードが入るとサウンドの幅が広がりそうだよね」

「そうなれるように頑張るよ」

「次からライブのチケットタダになるよね?」

「それはさすがにないわ」

「私が間に入ったおかげじゃないの?」

「まぁ、それも少しはあるかもしれないけど」

「認めるんだ」

「そこまで言われるとね」

「じゃあ、ライブ最前列でまけとく」

「それは自力で何とかしてよw」

「どケチ!(笑)」


こんな感じで冗談を言い合えるようにもなった。

まさに今が幸せの絶頂だ。

もうバンド辞めても後悔しない。

いやいや、それはダメだ。

前言撤回。


「ライブはしばらくないんだよね?」

「曲作りに入るからね」

「新曲どんな感じになるんだろ?」

「ナオさん気合入ってたからな」

「ナオさんスゴイよね。BAの曲を全曲1人で作ってるし」

「え?そうなの?」

「え?知らなかったの?」

「ごめん、勉強不足でした」


バンドの曲作りというものはいくつかパターンがある。

①メインのソングライターがバンドに一人ないし二人いて作るパターン。

②メンバー全員がアイデアを出し合って作るパターン。

③メンバー全員が単独で曲を書けるパターン。


BAの場合は①のパターンだが、多くのバンドはボーカリストが作詞するのが普通というか、当たり前というか、歌う人が歌詞を書くのが自然の流れだろ?みたいになってると思う。

しかし、BAのボーカリストU2は作詞をしないし、作曲もしない。

与えられた世界を自分なりの解釈で歌い上げるボーカリストでありシンガーなのだ。


「それじゃあ、ナオさんの負担が大きいよね」

「う~ん、その辺は中に入らないと分からないし。あ、中に入る人がここにいた!」

「確認してこいと?」

「確認というか、スパイ?」

「メンバーなのにスパイって何よ?」

「スッパイ(失敗)しないようにしてよ」

「寒すぎて凍傷になるわw」


ナオさんの負担を減らす意味でも僕も曲を作って、いや、作るのは浅倉だ。

このことは浅倉も知ってるのかな?


「松本くんは曲作れるの?」

「えっ?」

「だって、T28の曲は松本くんが作ったんでしょ?」

「あー、あれ…そうだね」

作ったのは浅倉だが本当のことは言えない。


「まだ新入りだから出しゃばるのは良くないと思うから、新曲のアイデアを出すくらいならいいよね?」

「それくらいなら多分大丈夫だと思う」

「頑張って作ってみたら?上手くいけば採用されるかも?」

「そうだね、やってみるよ」

こりゃ、浅倉にも相談だな。



「業務連絡。新曲制作の進捗状況を教えてください」

教室にいる浅倉に廊下からメールを送った。



「お疲れ様です。8割くらい完成したものが1曲、制作途中のものが1曲です。完成したら聴かせますね」


「それなんだけど、最初から完成したものじゃなくて断片的なアイデアだけメンバーに提示するほうがいいんじゃないかな?いきなり完成形の曲を持っていったら生意気とか何様とか思われそうで」


「それなら多分大丈夫です。BAはナオさんしか曲を書いてないので、遅かれ早かれアイデアは枯れます。そうなる前にアナタが曲を少しずつ持ち込めばナオさんにも良い刺激を与えられると思うし、お互いが相乗効果を得られると考えてます」


「でも、他のメンバーも曲を書くとなる可能性もあるのでは?」


「それも大丈夫です。なぜならあのバンドのベーシストとドラマーは正規のメンバーではありません。サポートメンバーです。なので、現状ナオさん以外に曲を書けるメンバーはいません。ウツも多分書かないでしょうし」


え?ベーシストとドラマーがサポートメンバー?

それも初耳なんだけど?!

メンバーになるんだからもっとバンドのこと知らなきゃダメだな。

そうか、それならいきなり完成形の曲を持っていっても多分問題ないか。

むしろ歓迎されるかもしれない。


「分かった。それなら当初の予定通りで。浅倉は今の曲を完成させてください。出来上がるの楽しみにしてます」


「はい、しばしお待ち下さいね」


それにしてもナオさんの才能が遅かれ早かれ枯れるって、本人の前では言えないことをズバズバ言うよな。

確かにどんなアーティストでも曲作りのピークはブレイク時から数年かアルバム数作で、それ以降は人にもよるが下降の一途を辿るもんな。

ナオさんと僕とでバランスよく作っていけば、急激に作品のクオリティーが下がることもないだろう。

勿論、浅倉のほうもいつかは才能が枯れる日が来るとは思うが。


あ、浅倉がこっち見た!

早くあっち行けって顔してる。

完全に変質者扱いだな。

昨日わだかまりが解けたばっかじゃなかったっけ?

あれは夢か幻だったのか?









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