第七話
「方法が無い可能性もある」
――だなんて、少し感傷に浸って言ったけど。
実のところ、もう“あたり”はつけてある。
きっかけは、”SP(崇拝ポイント)”の存在だった。
最初は「スキルポイントじゃないんかいっ!」ってツッコんでたけど、その用途を見てゾクリとした。
スキルの取得、付与、外界への干渉、下賜、天啓――どれも「神」って存在じゃなきゃ関われないようなトンデモな代物ばかり。
それだけでも十分すぎるくらい凄いと思ったが、さらに衝撃だったのは、その獲得条件。
“崇拝されること”。
この言葉を見た時、なんていうか……脳の奥で、カチッと何かがハマった。
「ああ、そういうことか」って。
だって逆に考えてみれば、崇拝されなきゃSPは手に入らない。
SPがなけりゃ神らしいことは何一つできない。
で、そのSPは時間制限のあるこの状況で、唯一“減らない”ポイント。
……そうまでされてるってことは、SPを集めることで助かるんじゃないか?
矮小な存在が、多くの人々から信仰されて強大になっていく。
そんな展開、サクセスストーリーじゃ王道中の王道だろ?
ちょっと違うけど、某野菜超人のエナジーボールにも通じるところがあるな。
一人ひとりの力は小さくても、全員の想いが集まればとんでもないパワーになる……あれだ。
つまり、このカウントダウンを止める方法――
それはおそらく、“崇拝されること”。
もとい、SPを稼ぐことなのだろう。
が、そこでぶち当たるのが――最大の問題。
「……崇拝されるって、どうやって……?」
俺は確かに神らしい。
けど、俺を“拝んでくれる”ような存在なんて本当にいるのか?
この小石の中に宿る神の存在に、誰が気づくだろうか。
誰が、こんな何の変哲もない石ころを見て、「ありがたや……」なんて思う?
(……いや、やりようはある。きっと、あるはずだ)
そう信じていないと、やってられない。
◇
あれからしばらく経った
俺は”信仰されるには、どうすればいいか”をずっと考えていた。
その問いに一応の答えを見つけることが出来たのは偶然だ。
きっかけとなったのは、これまたSPの存在だった。
SPの取得条件である”崇拝されることで自然と蓄積される”を再び目にした時、ふと疑問に思った。
「信仰されることでSPが増えるなら……SPが1あるってことは、既に誰かに、信仰されたってことか?」
けれど、その“誰か”に心当たりはなかった。
俺は何もしていない。ただ転生して、のんびりしたかと思えば、白い空間で頭を抱えているだけだ。
それでもSPは1ある。つまり、何かがすでに起きていた。
「逆に考えれば、俺が何もしていないのにSPが入ったってことは……自然発生的に信仰された可能性がある、ってことだよな」
じゃあ、どうすれば“自然に”信仰されるのか。
「……奇跡? 啓示? 恩恵? いや、それらは全部“能動的に与えるもの”だ。つまり、SPを使う」
脳裏にあの神の”お詫び”の言葉がチラつく。
一瞬可能性があると思ったが、思い直した。
お詫びの詳細を教えて貰っていないからと言って、自分の都合の良い出来事を何でも”お詫び”と捉えることは”毒”だと考えたからだ。
今後もこの考えを続ければきっと、自分の努力の結果すらも神様によるお詫び……アフターサービスだと考える。
そしていつしかやる気を失ってしまうだろう。
それに何となく違う気がする。
だから今考えるべきは、SPを使わずに信仰される方法だ。
俺はSPを1しか持っていない。貴重すぎる1点だ。迂闊に使うつもりはない。
「何もしなくても信仰された。それなら、“存在そのもの”が何らかの影響を与えたのか?」
もしかして――どこかの誰かの信仰が偶然”俺の存在”と似ていた”から、信仰ポイントが生まれたのでは?
「つまり……“信仰される”とは、信じられることだけじゃない。“感じ取られる”ことも含まれてるんじゃないか?」
自分では意識していなくても、ふとした瞬間に祈るような気持ちになったり、何かに頼ったり――
そんな“かすかな思い”が、神への信仰の最初の火種になるのだとしたら?
「ならば、俺がやるべきは“存在を感じさせること”だ」
誰かの心に触れる。無意識の奥で何かを感じさせる。
SPを使わずにできる範囲で――ただ“いる”ことを知らせる。
それが、最初の信仰への一歩なのかもしれない。
「……まずは、その方法を探るしかないか」
SP1。
まだ消費には早い。
だが、俺の中で少しだけ希望が灯った。